2026年は“電気自動車・本格化”の1年に 日本カー・オブ・ザ・イヤー2026-2027の10ベストカーが決定!10台中6台がEVの顔ぶれに見る電動化の新潮流

一般社団法人日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は2026年11月2日、「第47回 2026-2027 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考に進む「10ベストカー」を発表しました。ノミネートされた33台のなかから、自動車評論家やジャーナリストで構成される選考委員58名の投票によって選ばれたのは、国産車6台と輸入車4台の計10台。そのうち6台を電気自動車(BEV)が占めるという、近年の国内市場の変化をそのまま映したような顔ぶれになりました。
そこで今回は、選ばれた10台それぞれの特徴や販売動向を整理したうえで、軽EVをめぐる日本メーカーと海外メーカーの直接対決から「ソフトウェア」という新たな評価軸まで、今年の顔ぶれから見えてくる選出の傾向を掘り下げて解説します。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

本記事は2026年11月5日現在の情報をもとに執筆しています。記事の内容には筆者の主観的な考察・意見が含まれており、リセバ総研の公式な見解ではない点にご留意ください。

そもそも「日本カー・オブ・ザ・イヤー」とはどんな賞?

日本カー・オブ・ザ・イヤー2025-2026 で大賞に選ばれたスバル フォレスター

日本カー・オブ・ザ・イヤー(JCOTY)は、日本のモータリゼーションの発展と、最新のクルマや技術に関する情報をユーザーに届けることを目的に1980年に創設された賞で、今年度でちょうど47回目を迎えます。選考対象となるのは、2025年11月1日から2026年10月31日までに日本国内で発表または発売された乗用車。コンセプトやデザイン、性能、品質、安全性、環境負荷、コストパフォーマンスなどを総合的に評価して、その年を代表する1台を決めるという仕組みです。

選考は2段階で行われます。まずはノミネート車(今年は33台:日本メーカー12モデル、海外メーカー21モデル)が公開され、選考委員の一次選考で上位10台の「10ベストカー」が選出されます。10ベストカーに選ばれたクルマは、今後開催される「10ベストカー試乗・取材会」において選考委員が改めて試乗評価したうえで、12月3日に開催される予定の最終選考会・表彰式で最終投票が行われます。その模様は日本カー・オブ・ザ・イヤー公式YouTubeチャンネルでライブ配信される予定です。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    最終投票では、各選考委員が10台に対して評価の高い順に25点、18点、15点、12点、10点、8点、6点、4点、2点、1点(合計101点)を配分し、総得点が最も高いモデルがイヤーカーに選ばれます。1人が1台だけに投票するのではなく、10台すべてに点差をつけて評価する方式なので、「多くの人から一定以上の評価が得られた1台」が強いのがこの賞の特徴です。なお、インポート・カー・オブ・ザ・イヤーやデザイン、テクノロジーといった部門賞は、10ベストカーに限らずノミネート全33台が対象となります。

昨年の結果はこちらをチェック

2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー「10ベストカー」はこの10台!

まずは選ばれた10台を、公式発表のノミネート順に整理してみましょう。

メーカー 車種名 区分 パワートレイン 発売日
スズキ eSKY 国産車(軽乗用) BEV 2026年11月16日
トヨタ RAV4 国産車 HEV/PHEV 2025年12月17日(HEV)
日産 エルグランド 国産車 e-POWER(HEV) 2026年7月16日
日産 キックス 国産車 e-POWER(HEV) 2026年6月18日
ホンダ Super-ONE 国産車 BEV 2026年5月22日
マツダ CX-5 国産車 ガソリン+マイルドHV 2026年5月21日
BMW iX3 輸入車 BEV 2026年7月22日
BYD RACCO 輸入車(軽乗用) BEV 2026年7月28日
Kia PV5 輸入車 BEV 2026年5月15日
ボルボ ES90 輸入車 BEV 2026年7月8日

国産車の「10ベストカー」6台はどんなクルマ?

スズキ e SKY:ガソリン軽から違和感なく乗り換えられる「普通さ」

スズキ初の軽乗用EVとして2026年10月6日に発表され、11月16日に発売されるのが「e SKY(イースカイ)」です。「Easy to Switch」をコンセプトに、ガソリンの軽自動車から違和感なく乗り換えられることを狙って開発されました。

EV専用プラットフォーム「HEARTECT-e」を採用し、26kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池でWLTCモードの一充電走行距離310km、交流電力量消費率97Wh/kmを達成。この電費は軽EVクラストップの数値です(2026年10月現在、スズキ調べ)。急速充電は約25分で80%まで回復し、最小回転半径は4.4mに収まっています。

トヨタ RAV4:トヨタ初の「Arene」採用でSDVへと進化

6代目へフルモデルチェンジしたミドルサイズSUV「RAV4」は、ハイブリッド車が2025年12月17日、PHEVが2026年2月19日に発売されました。最大のトピックは、トヨタのソフトウェアづくりのプラットフォーム「Arene(アリーン)」を同社として初めて開発に活用したこと。購入後もソフトウェア更新で機能を拡充できる、トヨタ初のソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)と位置づけられています。

先代にあったガソリン車は廃止され、2.5Lハイブリッドとプラグインハイブリッドの2本立て、駆動方式は全車が電気式4WDの「E-Four」に。2026年11月2日の一部改良では、路面に合わせて4WD制御を切り替える「マルチテレインセレクト」が新搭載されました。

日産 エルグランド:16年ぶりに刷新した高級ミニバンの先駆者

16年ぶりの全面刷新で4代目となった「エルグランド」は、2026年7月16日に発売されました。パワートレインは第3世代に進化した「e-POWER」と電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」の組み合わせのみで、駆動方式も4WDに一本化。電子制御サスペンションを組み合わせ、ミニバンでありながら走りの質を前面に押し出したのが特徴です。インテリアには国内モデル初となる14.3インチの大画面統合型インターフェースディスプレイを採用しています。

発売前の先行受注では6,000台を超え、10月4日時点で累計受注は1万300台を突破。受注の内訳では標準グレードのXが全体の9%にとどまり、上位グレードに人気が集中しています。

日産 キックス:第3世代e-POWERを国内初搭載

コンパクトSUV「キックス」は6年ぶりのフルモデルチェンジを受け、2026年6月17日に発表、18日に発売されました。日本市場で初となる第3世代「e-POWER」を全車に搭載し、4WDモデルにはキックスとして初めて電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を採用。運転支援技術「プロパイロット」が全グレード標準装備になった点もトピックです。

発売から約1ヶ月となる7月27日時点で受注台数が1万台を突破し、購入者のうち約4割がe-4ORCE搭載車を選んでいます。

ホンダ スーパーワン:軽をベースにした「走って楽しい」小型EV

軽EV「N-ONE e:」をベースに、ブリスターフェンダーで全幅を拡大した専用シャシーを組み合わせた小型EVが「Super-ONE(スーパーワン)」です。2026年5月22日発売で、価格は339万200円。ドライブモードを「BOOST」に設定するとモーターの最大出力が47kWから70kWへ拡大し、仮想的な変速ショックやサウンドの演出も加わります。車重は1,090kgと軽量で、WLTCモードの一充電走行距離は274kmです。

全幅を広げた結果、ベースのN-ONE e:とは異なり軽自動車ではなく小型登録車(普通車)となる点は押さえておきたいポイント。4月10日の先行予約開始から勢いよく受注を集め、6月上旬時点で受注は約1万1,000台に達しました。Super-ONEは年間販売計画1万台規模に対して、発売からわずか2週間程度でその台数を受注してしまった形です。

マツダ CX-5:9年ぶりに全面刷新したマツダの基幹SUV

9年ぶりのフルモデルチェンジで3代目となった「CX-5」は、2026年5月21日に発売されました。開発コンセプトは「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」で、前後席の居住空間や荷室容量の拡大を重視し、日常のファミリー用途での快適性を高めています。

パワートレインは2.5L直列4気筒ガソリンエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせた1種類のみ。「S」グレードは330万円〜という価格設定も話題になりました。月間販売計画2,000台に対し、6月21日時点で国内受注が1万台を突破しています(計画の5倍超)。

輸入車の「10ベストカー」4台はどんなクルマ?

BMW iX3:国内EV最長クラスの航続距離906km

BMWの次世代モデル群「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」の量産第1弾となるBEVが新型「iX3」で、2026年7月22日に日本発売されました。第6世代「BMW eDrive」と800V高電圧アーキテクチャを採用し、最大320kWの急速充電に対応。15分の充電で最大約395km分の電力を補充できます。

109.1kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードの一充電走行距離は「iX3 50 xDrive」が906km、21インチタイヤなどを履く「iX3 50 xDrive M Sport」が835km。前後2モーターでシステム最高出力345kW、最大トルク645Nmを発生します。フロントウインドウ下端に情報を投影する「BMWパノラミックiDrive」も大きな話題となりました。

BYD ラッコ:海外メーカー初の「日本専用設計」軽EV

中国BYDが日本の軽自動車規格に合わせて専用設計した軽EVが「ラッコ(RACCO)」です。2026年7月28日発売で、海外の自動車メーカーが日本の軽規格に準拠して専用設計したEVとしては初の事例となります。軽でもっとも人気のあるスーパーハイト系ボディに両側電動スライドドアを標準装備したのが最大の特徴です。

ラインアップは、バッテリー22.4kWh/航続210kmの「RACCO 200」、バッテリー35.8kWh/航続320kmの「RACCO 300Plus」「RACCO 300Premium」の3グレード。初年度の販売目標は1万台で、9月末時点で累計受注が約1,900台。受注の85%が最上級の300Premiumという結果になっています。

Kia PV5:Kiaの日本本格参入を担う電動PBV

韓国Kiaの日本本格参入を象徴するのが、モジュール化思想に基づく電動PBV(Platform Beyond Vehicle)の「PV5」です。輸入販売は双日の100%子会社であるKia PBVジャパンが担い、2026年5月15日に直営1号店「Kia PBV 東京西」の開業とあわせて発売されました。

ラインアップは2人乗り商用バンの「カーゴ」と5人乗り乗用バンの「パッセンジャー」の2タイプ。PBV専用プラットフォーム「E-GMP S」を採用し、バッテリーは43.3kWh、51.5kWh、71.2kWhの3種類から用途に応じて選べます。直線基調の箱型ボディを生かした室内空間と、低いスライドドアステップによる乗降性のよさが特徴です。2026年度の販売目標は1,000台とされています。

ボルボ ES90:ボルボ初の800Vを採用したフラッグシップ

ボルボの電動化ポートフォリオにおけるフラッグシップが「ES90」です。日本発売は2026年7月8日で、セダンのプロポーションに5ドアハッチバックの実用性、SUV的な室内空間と最低地上高を融合させた新しいスタイルを提案しています。新開発の「SPA2アーキテクチャー」と統合ソフトウェア基盤「スーパーセット・テックスタック」に基づくSDVとして開発されました。

グレードは、92kWhバッテリーでWLTCモード航続665kmの後輪駆動「Plus Single Motor Extended Range」、同じ構成で装備を強化した「Ultra Single Motor Extended Range」、そして106kWhバッテリーで航続720km、システム最高出力500kW(680ps)・最大トルク870Nm、0-100km/h加速4.0秒の4輪駆動「Ultra Twin Motor Performance」の3種類。最上位にはボルボ初の800Vテクノロジーが搭載されています。

今年の「10ベストカー」に見る電動化とSDVの潮流

10台中6台がBEV!しかも二極化が鮮明に

今年の10ベストカーでもっとも目を引くのは、10台のうち6台(スズキ e SKY、ホンダ Super-ONE、BMW iX3、BYD ラッコ、Kia PV5、ボルボ ES90)がBEVで占められた点です。かつて選考対象のBEVは環境性能の象徴や実験的な先進モデルが中心でしたが、今年のBEV6台は価格帯もボディタイプも用途も、まったく異なる領域に散らばっています。

特にはっきりしているのが、「シティコミューター領域」と「超長距離・高圧急速充電領域」への二極化です。e SKYとラッコは、日本の軽自動車枠のなかで補助金を含めた購入コストを内燃機関車と同等レベルまで引き下げる現実解を提示しました。対照的にiX3やES90に代表される欧州プレミアム勢は、800V高電圧アーキテクチャによって700〜900km級の航続距離と15分単位の超急速充電能力を実現し、長距離ツアラーとしての実用性を高めています。

さらに、走る楽しさを前面に出したSuper-ONEのようなファンEVや、用途特化型のPV5のような存在も加わりました。BEVが単にエンジンの置き換えではなく、ボディ形状や乗車体験そのものを多様化させる段階に入ったことがうかがえます。

軽自動車規格で日本メーカーと海外メーカーが直接対決

本年度の選考でもっとも象徴的な構図は、日本の軽自動車規格においてスズキ「e SKY」とBYD「RACCO」が揃って選出されたことです。長年にわたり国内メーカーの強固な基盤であった軽自動車市場に、BYDが日本専用設計のスライドドア付き軽ハイトワゴンEVを投入し、それが10ベストカーに選ばれたという事実は、市場の境界線が確実に動いていることを示しています。

両車のアプローチは対照的です。e SKYは既存のガソリン車ユーザーが違和感なく乗り換えられる「普通さ」と97Wh/kmという電費効率、国内生産基盤を強みとします。一方のRACCOは、グローバルなバッテリー調達力と広い室内空間、電動スライドドアの利便性を前面に出しています。

ハイブリッドの熟成と「ソフトウェア」という新たな評価軸

BEVが半数以上を占める一方で、内燃機関をベースとしたハイブリッドも確固たる存在感を示しました。日産がエルグランドとキックスの2台を送り込んだ背景には、第3世代e-POWERと電動4WD「e-4ORCE」による電動ドライブフィールの熟成が評価された点があります。大容量バッテリーを積まなくてもモーター駆動特有の静粛性とレスポンスを提供できるe-POWERは、日本の使用環境における実用的な電動化技術として機能していると言えるでしょう。マツダCX-5のように、2.5Lガソリン+マイルドハイブリッドという比較的シンプルな構成で完成度を突き詰めたモデルが受注1万台を集めたことも見逃せません。

もうひとつ、今年のノミネート傾向として指摘しておきたいのが、ソフトウェアをクルマにおけるもうひとつの中核に据えた「SDV」へのシフトです。トヨタRAV4の「Arene」採用、BMW iX3の「ノイエ・クラッセ」、ボルボES90の「スーパーセット・テックスタック」は、いずれも車載OSやOTA(Over-The-Air)によるソフトウェア更新を前提とした設計思想を持っています。クルマの評価が、メカニカルな走行性能だけでなく、購入後にどう価値を足していけるかという点にまで広がってきているのです。

12月3日の最終選考でイヤーカーに選ばれるのは?

2026-2027 日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストカーは、軽EVからフラッグシップEV、商用バンからミドルサイズSUV、高級ミニバンまで、価格もカテゴリーも大きく散らばった顔ぶれになりました。10台中6台がBEVという構成は、国内市場における電動化が「環境性能を訴求する特別なクルマ」の段階を抜け、用途と価格帯ごとに選択肢が多様化する普及期に入ったことを示しているように見えます。

12月3日の最終選考会では、日本のモビリティ全体の電動化を押し進める普及型軽EVの実用性が支持されるか、プレミアムミニバンの概念を走りで再定義したエルグランドやArene採用でSDVへと進化したRAV4のような主力モデルの完成度が評価されるか、あるいはiX3やES90が体現する次世代EVの革新的な技術に期待が集まるか。クルマを評価する際の視点の違いがそのまま評価の分かれ目になるのではないでしょうか。2026年を代表する「イヤーカー」にはその車種が選ばれるのか。リセバ総研でも注目していく予定です。