自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! ダイハツ e-ハイゼットカーゴ試乗記〜軽バンなのにタントを超える上質な乗り心地〜

認証不正による出荷停止を乗り越え、約2年遅れでついにデビューしたダイハツ e-ハイゼットカーゴ。まさかのBYD製LFP電池を積む軽BEVバンの航続距離257kmの実力、軽乗用タントを超える乗り心地とハンドリング、ライバルN-VAN e:との装備と価格の差まで、リセールバリュー予想の解説とともに試乗記をお届けする。

【自動車のプロ】大岡智彦

自動車情報メディア「CORISM」編集長

自動車情報専門のWebサイト「CORISM」編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、カスタムカーまで幅広くこなす。クルマは予防安全性能や環境性性能を重視しながらも、走る楽しさも重要。趣味は、コスパの高い中古車探しと、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

本来ならN-VAN e:より先だった!? 約2年遅れでデビューしたダイハツ e-ハイゼットカーゴ

2026年2月、約2年遅れで軽BEVバンのダイハツ e-ハイゼットカーゴがデビューした。本来ならば、ホンダ N-VAN e:よりも早い2023年度内にデビューする予定だったモデルで、軽BEVバンの先駆けとなるはずだった。

ところが、発売直前の2023年12月にダイハツの認証不正が発覚。新型車を含む全車種が出荷停止となった。それから約2年が過ぎ、ようやくe-ハイゼットカーゴが発売された。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ようやくなのか、やっとなのか。

    とにかく、待望の軽BEVバンがついに出た!

新型e-ハイゼットカーゴは、ダイハツとトヨタ、スズキによる共同開発車。トヨタの電動化技術に、ダイハツとスズキの軽バンのノウハウを結集した。3社で共同販売することで一定の販売台数が見込め、コストダウンも図られている。

ダイハツ e-ハイゼットカーゴの駆動用バッテリーはまさかのBYD製

新型e-ハイゼットカーゴの開発コンセプトは「暮らしを守る働く車」。軽バンとしての基本性能を担保しながら、BEVらしい環境性能、給油する必要がない利便性、低ランニングコストといった付加価値がプラスされる。

注目の電動パワーユニットは「e-SMART ELECTRIC」と名付けられた。後輪駆動軸上に搭載された「eAxle(イーアクスル)」は、モーター、インバーター、減速機を一体化したコンパクトな設計。床下には、駆動用の薄型リチウムイオンバッテリーを搭載する。

バッテリーは「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池」を採用した。商用バンに搭載するということもあり、主にコストと安全性(発火リスクの低さ)、長寿命というメリットを優先したという。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    当初は、トヨタグループのPPES製かと思っていた。

    それが、まさかのBYD製とは!

えっ? 空冷バッテリーで大丈夫?

昨今のBEVではバッテリーの温度管理が重要とされ、さまざまな方法でバッテリー温度をベストな状態に保つ工夫がされている。ところが、e-ハイゼットカーゴに搭載されたリチウムイオンバッテリーは、なんと空冷式を選択。コストを優先した結果だ。

もっとも、不安要素もある。かつて先代日産リーフの空冷リチウムイオンバッテリーは、夏の高気温時に高速道路を走行するとバッテリー温度が上昇し、出力制限がかかったり、急速充電器で満足に充電できなかったりというトラブルに見舞われたからだ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    もちろん、ダイハツはそうした心配はないとしているが、先代リーフの前例があるだけに、ちょっと気になる。

航続距離のe-ハイゼットカーゴvs電費のN-VAN e:

そんなリチウムイオンバッテリーの容量は、なんと36.6kWh。N-VAN e:のバッテリー容量が29.6kWhなので、約24%も容量アップしたバッテリーを搭載している。当然、航続距離(一充電走行距離、WLTCモード)は257kmと、N-VAN e:の245kmをわずかに超える。

e-ハイゼットカーゴとN-VAN e:のバッテリー容量、航続距離、電費を比較した。

項目 ダイハツ e-ハイゼットカーゴ(4シーター) ホンダ N-VAN e:(e: L4)
バッテリー容量 36.6kWh 29.6kWh
一充電走行距離(WLTCモード) 257km 245km
電費(一充電走行距離÷バッテリー容量) 約7.0km/kWh 約8.3km/kWh
車両重量 1,260kg 1,130kg
駆動方式 後輪駆動(2WD) 前輪駆動(FF)
バッテリーの温度管理 空冷式 冷却&加温機能付き
*電費は一充電走行距離÷バッテリー容量で編集部算出

車重やモーター、駆動方式も異なるので単純比較はできないが、BEVシステムの効率という点ではN-VAN e:がやや優勢といった印象だ。その要因と思われるのが、駆動用バッテリーの冷却機能の差。e-ハイゼットカーゴは空冷式で、N-VAN e:は冷却&加温機能付きだ。

加えてN-VAN e:は、ブレーキペダルを踏むと低速域まで回生ブレーキ主体で減速する協調回生ブレーキを採用している。車重の軽さも電費に貢献している。どちらが良いとは一概に言えないが、こうした機能の差は、それぞれのメーカーの考え方の違いによるものだ。

装備充実のダイハツ e-ハイゼットカーゴだがACC非装備のチグハグ感

こうした考え方の違いは、装備にも現れている。駆動用バッテリーではコスト優先の印象が強いe-ハイゼットカーゴだが、利便性の高い装備はライバルのN-VAN e:を上回りかなり充実している。N-VAN e:ではオプションとなる急速充電インレット(一部グレード標準装備)やAC100V/1500Wアクセサリーコンセントが、e-ハイゼットカーゴでは全車標準装備になる。

装備 ダイハツ e-ハイゼットカーゴ ホンダ N-VAN e:
急速充電インレット 全車標準装備 オプション(一部グレード標準装備)
AC100V/1500Wアクセサリーコンセント 全車標準装備 オプション
アダプティブクルーズコントロール(ACC) 設定なし 標準装備(ホンダON限定タイプを除く)

標準装備がよいのか、オプションがよいのかは、顧客の使用シーンによって異なる。近隣での使用が中心で遠くへ行く必要がない顧客にとっては、普通充電だけで十分。急速充電インレットが要らない分、車両価格が安い方がよいからだ。

一方、AC100V/1500Wアクセサリーコンセントは、災害による停電時に電源車として使えるうえ、電動工具やPCの充電にも使える。こちらは標準装備化が望ましいだろう。

気になるのが、運転支援機能であるアダプティブクルーズコントロール(ACC)がe-ハイゼットカーゴには装備されていないこと。N-VAN e:では標準装備(ホンダON限定タイプを除く)だ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    急速充電インレットが標準装備なら、遠出も前提にしているはず。

    それならACC装着車も用意すべきだと思うのだが……。

どこかチグハグ感がある装備のe-ハイゼットカーゴと、ユーザーのニーズ次第で選べるN-VAN e:といった印象だ。装備が充実している分、e-ハイゼットカーゴの新車価格はやや高めとなっている(価格は後述のグレード選びで比較)。

ダイハツ e-ハイゼットカーゴの荷室はガソリン車同等以上も最低地上高は30mmダウン

働くクルマであるe-ハイゼットカーゴにとって、荷室の広さは最重要項目だ。一般的にBEV化するとフロア下に駆動用バッテリーを搭載するため、荷室高は低くなるケースが多い。ところが、e-ハイゼットカーゴはベース車と同等以上の積載性を確保した。

その代わり、最低地上高はガソリン車の160mmから130mmへと30mm低くなっている。後輪駆動のみの設定なので、雪道といった悪路を走るケースは少ないと思われるが、少し注意が必要な部分だ。

フツーが一番!? ダイハツ e-ハイゼットカーゴの加速はあえてのガソリン車風

さて、試乗のため運転席に乗り込む。まず目に飛び込んできたのがデジタルメーター。軽バンながら、BEVらしい先進性を視覚で感じる部分だ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    デジタルメーターなのに、パーキングブレーキは旧態依然の足踏み式。

    先進さと古さが入り乱れ、ちょっとカオスだ。

アクセルをゆっくりと踏み込むと、スイーと滑らかに走り出した。さすが、BEV。最高出力64ps、最大トルク126Nmのモーターは、BEV化で約300kgも重くなった車体をストレスなく加速させる。

加速感は、いたってフツー。モーターは最大トルクを瞬時に発生できる特性をもつが、あえて緩やかに加速させている。アクセルオフでは、エンジンブレーキのような一定の回生ブレーキが作動する。アクセル操作ひとつで加速から減速・停止までこなし、ブレーキの踏みかえを激減させて疲労を軽くする1ペダルドライブの機能はない。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    何か、こうBEVらしさってないの?と、思えるくらいフツー。

    ホント、「普通」。

端的に言えば、ほとんどガソリン車のような運転感覚だ。もっとも、そのフツーこそがダイハツの狙いでもある。軽バンを多く扱う運送業では、日々同じドライバーが同じクルマに乗るとは限らない。今日はe-ハイゼットカーゴでも、明日はガソリンのハイゼットカーゴに乗る、というケースもある。

そのため、BEVであっても乗りなれたガソリン車風に仕上げることで、違和感を無くし運転しやすくしているのだ。

まぁ、保守的な考え方で、納得もできる。だが、e-ハイゼットカーゴをより多く売るためには、多くのドライバーに「e-ハイゼットカーゴに乗りたい!」と言わせるくらいの特別感ある運転感覚も必要ではないだろうか? 個人事業主に対しても、同じことがいえるはずだ。

フツーじゃない! ダイハツ e-ハイゼットカーゴの乗り心地は軽乗用のタント超え

フツー、フツーと書き連ねてしまったが、加速と減速感以外はかなりフツーではない。これが軽バンなのか? と思わせるくらい、e-ハイゼットカーゴは驚愕の走行性能を誇っている。

その驚愕の走行性能、ひとつ目が乗り心地。車重が約300kgも増えているので、タイヤやサスペンション、ブレーキは新開発されている。走り出すと、とにかく乗り心地がよい。もはや、軽乗用車のタントより快適と思わせるほどだ。

タントは、とにかく車体を傾かせないぞ! とばかりに、ガッチリと固められたサスペンション。対してe-ハイゼットカーゴは、想像以上にしなやかに動く。小さな凸凹程度であれば、スイーと何事もなく走る。空荷でやや大きめの凹凸がある路面だと、リヤサスがちょっとピョコピョコした動きになるが、荷物を積めば十分に落ち着くレベルだろう。

高空気圧のLTタイヤなのに快適でタイヤ寿命もガソリン車並み

これほど快適な乗り心地なのに、タイヤは小型トラック用のLT規格。空気圧は前輪300kPa、後輪450kPaという高空気圧だ。なんと、タイヤもe-ハイゼットカーゴ用に横浜ゴムが新開発した。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    後輪450kPaのLTタイヤで、この乗り心地とは恐れ入る。

一般的にBEVは、車重が重く、トルクも大きいため、タイヤの寿命が短くなる傾向にある。その点、e-ハイゼットカーゴ用のタイヤはガソリン車と同等の寿命を確保した。納入先で「タイヤの減りが早い」という指摘を避けるための工夫だ。

重心高はミライース並み! ダイハツ e-ハイゼットカーゴのハンドリングはもはや軽バンではない

驚愕の走行性能、ふたつ目はハンドリング。e-ハイゼットカーゴは床下に駆動用バッテリーを搭載し、事故でバッテリーが破損しないよう周囲を頑丈な部材で囲んで守っている。この頑丈なバッテリーがボディの剛性アップ部材となり、ボディのねじり剛性は大幅にアップした。このボディ剛性の向上が、乗り心地にも大きな影響を与えている。

それだけでなく、カーブでも異次元の走りを披露する。ボディ下に重い駆動用バッテリーを設置したことで、重心高が大幅に下がっているのだ。カーブの手前でステアリングを操作すると、手応えこそあまりないが、スイっと向きを変える。反応も早い。

しかも、車体の傾きもしっかりと抑えられていて、ピタッと路面に張り付いたように走る。ハンドリングもタント越えレベルだ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    重心高は、ミライース並みだという。

    もはや、軽バンの走りではない!

荷崩れまで考えた! 軽バンの枠を楽々超えたダイハツ e-ハイゼットカーゴ

小さなことだが、アクセルオフやブレーキング時に車体の動きが少ないのも特徴。カーブでの車体の傾きを抑えていることも含め、こうした仕様にしているのは荷崩れのリスクを少なくする狙いがある。細部にまでこだわりがあるのも商用バンらしい。

e-ハイゼットカーゴの静粛性は、キーンというインバーターの音が多少聞こえるくらいで、優れたレベルを確保している。大きなノイズがガンガン入ってくるガソリン車とは比べ物にならない。同時に発売された、荷物をたくさん積む趣味のクルマとして使えるe-アトレーなら、静粛性はさらに1ランク上だ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    軽バンとしてだけでなく、パーソナルユースでも十分に使えるレベルに仕上がっている。

ダイハツ e-ハイゼットカーゴのグレード選びは2人乗りか4人乗りかの2択

e-ハイゼットカーゴのグレードは、シンプルに2人乗りの「2シーター」と4人乗りの「4シーター」の2タイプのみ。車両本体価格はどちらも314万6,000円と同額なので、自身の使い方で選べばよい。機能的なオプションをできるだけ減らしてシンプルにすることで、コストダウンを狙っているのだろう。

4シーターには、ほんの少し豪華なセットオプションが設定されている。電動格納式カラードドアミラーやスライドドアレールカバー、ボトルホルダー(後席)といった内容で、これも好みで選ぶとよい。両グレードとも、運転席/助手席シートヒーターやLEDヘッドライトをはじめ、充実した装備が標準装備されている。

ライバルのN-VAN e:と価格を比較してみよう。

車種名 グレード(駆動方式) 車両本体価格(税込) 国の補助金(CEV補助金) 補助金適用後の実質価格
ダイハツ e-ハイゼットカーゴ 2シーター(2WD) 3,146,000円 356,000円 2,790,000円
ダイハツ e-ハイゼットカーゴ 4シーター(2WD) 3,146,000円 356,000円 2,790,000円
ホンダ N-VAN e: e: L4(FF) 2,699,400円 580,000円 2,119,400円
ホンダ N-VAN e: e: FUN(FF) 2,919,400円 580,000円 2,339,400円
*補助金額は2026年10月時点

車両本体価格の差は約23〜45万円。しかも、補助金はN-VAN e:の58万円に対し、e-ハイゼットカーゴは35.6万円にとどまる。補助金を差し引いた実質価格では、差が約45〜67万円まで開く計算だ。

ダイハツ e-ハイゼットカーゴのリセールバリュー予想は?

最後にリセールバリューを予想してみよう。BEVには多額の補助金が支払われる。そのため中古車市場では、新車価格から補助金を引いた金額が本当の価値とみなされやすく、BEVは総じてリセールバリューが低め。とはいえ、補助金をもらっている分、それほど損はしていない。

e-ハイゼットカーゴは2026年2月に発売されたばかりで、査定データがまだ無い。そこでまず、参考となるガソリン車のハイゼットカーゴのリセールバリューを確認した。集計期間は過去90日間(7月20日〜10月17日)だ。

集計期間:2026年7月20日(月)〜2026年10月17日(土) 査定件数
ダイハツ ハイゼットカーゴのリセールバリュー値(過去90日間:平均売却予想額の中央値÷新車価格の中央値で算出) 78 件
経年 年式 新車価格中央値※ 平均売却予想額の中央値
(買取相場)
リセールバリュー値
当年式 2026年式 156.8万円

¥1,225,000

78%

1年落ち 2025年式 136.4万円

¥995,000

73%

2年落ち 2024年式 133.1万円

¥1,020,000

77%

3年落ち 2023年式 130.3万円

¥835,000

64%

4年落ち 2022年式 134.8万円

¥830,000

62%

5年落ち 2021年式 130.3万円

¥825,000

63%

※算出の対象とした型式:S700V・S700W・S710V・S710W
※新車価格は、その年式が販売された年の車両本体価格。査定データに実在する型式の全グレード・全月の価格から中央値を求めています。
リセールバリュー値=平均売却予想額の中央値÷新車価格の中央値。中央値は一部の高額・低額な車両に左右されにくいため、代表的な残り方を示します。

ガソリン車ハイゼットカーゴのリセールバリュー(残価率)は、1年落ち(2025年式)で73%、3年落ち(2023年式)でも64%。5年落ち(2021年式)でさえ63%と、年数を経てもほとんど値落ちしない。働くクルマとしての根強い需要が、相場を支えているのだ。

2年落ち(2024年式)が1年落ちを上回る逆転も見られるが、これは査定件数が78件と多くないことによる個体差だろう。この数値は、あくまで参考値として扱いたい。

ならば、e-ハイゼットカーゴも同様に高リセールバリュー確定! というわけにはいかないだろう。参考に、軽乗用BEVの日産 サクラのリセールバリューも確認した。

集計期間:2026年7月20日(月)〜2026年10月17日(土)
日産 サクラのリセールバリュー値(過去90日間:平均売却予想額の中央値÷新車価格の中央値で算出)
経年 年式 新車価格中央値※ 平均売却予想額の中央値
(買取相場)
リセールバリュー値
当年式 2026年式 — — —
1年落ち 2025年式 270.9万円

¥1,260,000

47%

2年落ち 2024年式 265.9万円

¥910,000

34%

3年落ち 2023年式 254.9万円

¥945,000

37%

4年落ち 2022年式 239.9万円

¥890,000

37%

5年落ち 2021年式 — — —
※新車価格は、その年式が販売された年の車両本体価格。査定データに実在する型式の全グレード・全月の価格から中央値を求めています。
リセールバリュー値=平均売却予想額の中央値÷新車価格の中央値。中央値は一部の高額・低額な車両に左右されにくいため、代表的な残り方を示します。

サクラのリセールバリューは、1年落ち(2025年式)で47%、3年落ち(2023年式)で37%と非常に低い。販売当時の補助金(2022〜2024年式は55万円、2025年式は57.4万円)を差し引いた実質車両価格で計算し直しても、3年落ちで約47%にとどまる。

前述のとおり、補助金分を新車価格から引いた金額が本当の新車価格とみなされている影響がある。これに、BEVの駆動用バッテリーの劣化を心配するユーザー心理も加わり、リセールバリューは低めに推移していると考えられる。

リセールバリューは、良いクルマだから高くなり、悪いクルマだから低くなるというものではない。あくまで需要と供給のバランスで決まる。

こうしたことを含めて予想すると、2026年式のe-ハイゼットカーゴが3年落ちとなる2029年時点のリセールバリューは、新車価格比で約40〜60%程度になるのではないかと見ている。

グレード 車両本体価格(税込) 補助金適用後の実質価格 3年後の予想買取相場(残価率40〜60%) 実質価格比
2シーター/4シーター 3,146,000円 2,790,000円 約126〜189万円 約45〜68%
*予想値はリセバ総研編集部による試算。補助金額は2026年10月時点

 

サクラより高めとしたのは、ガソリン車と同じく、商用バンとしての需要が一定数見込めるからだ。一方で、その需要がBEVの中古車にどこまで向かうかは読みにくく、予想の幅は広めに取った。上限をガソリン車の64%に近い60%としたのは、商用バンの実需が中古車相場をしっかり支えた場合を想定している。

繰り返しになるが、補助金が支払われるため、リセールバリューそのものは低くなっても、それほど損をすることはないと予想できる。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ガソリン車のハイゼットカーゴは、5年落ちでも6割以上の残価率を保っている。景気に左右されにくい商用車の実需が、相場を支えているからだろう。

    e-ハイゼットカーゴも、この実需の恩恵はある程度受けられるはず。

    とはいえ、配送や営業の現場がBEVの中古車をどこまで受け入れるかは、まだ読みにくい。バッテリー劣化への不安から、相場が伸び悩む恐れもある。購入するなら、補助金を受けた場合の保有期間の条件も踏まえ、長く使い倒す前提で選びたい。

    逆に、数年後に値ごろ感のある個体が出回れば、コスパの高い良質な中古車として狙うのもアリだ。

ダイハツ e-ハイゼットカーゴは「買い」なのか?

e-ハイゼットカーゴは、ガソリン車と同等以上の荷室を確保しながら、軽乗用のタントを超える乗り心地とハンドリング、BEVならではの静粛性を手に入れた。急速充電インレットとAC100V/1500Wアクセサリーコンセントを全車標準装備とし、災害時には電源車としても頼りになる。

一方で、空冷式のバッテリーやACCの非装備といった割り切りもあり、新車価格はN-VAN e:より高め。補助金も35.6万円と少なく、実質価格では差がさらに開く。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    近隣の配送や営業が中心で、事業所で普通充電ができるなら、e-ハイゼットカーゴは十分に「買い」といえる一台だ。誰が乗っても戸惑わないフツーの運転感覚は、現場にとって大きなメリットになる。

    逆に、高速道路を使った遠出が多いなら、ACCを備えたN-VAN e:とじっくり比べてから選びたい。

ダイハツ e-ハイゼットカーゴ(S781V型)スペック一覧

項目 スペック
代表グレード 2シーター(2WD)
型式 S781V
全長×全幅×全高 3,395×1,475×1,890mm
ホイールベース 2,450mm
最低地上高 130mm
車両重量 1,240kg
乗車定員 2名
モーター最高出力 47kW(64ps)
モーター最大トルク 126N・m
一充電走行距離(WLTCモード) 257km
バッテリー種類 リン酸鉄リチウムイオン
バッテリー総電力量 36.6kWh
電費(一充電走行距離÷バッテリー総電力量) 約7.0km/kWh
駆動方式 後輪駆動(2WD)
サスペンション形式 前:ストラット式 後:トレーリングリンク車軸式
タイヤサイズ 前後 145/80R12(LT規格)
最小回転半径 4.2m
車両本体価格(税込) 2シーター:3,146,000円/4シーター:3,146,000円