7月16日更新 日産エルグランド16年ぶりの刷新!新型のリセールバリューはどうなる?歴代モデルとアルファードの関係は?

日産の大型ミニバン「エルグランド」が、2026年7月16日にフルモデルチェンジしました。現行モデル(3代目・E52型)が登場したのは2010年。実に16年ぶりとなる全面刷新で、4代目となる新型(E53型)はすでに5月28日から先行受注が始まっています。

かつて「高級ミニバンの元祖」と呼ばれ、この市場そのものを切り開いたエルグランド。しかし現在、高級ミニバン市場の王座はトヨタ「アルファード」に譲り渡したままです。今回は、エルグランドの歴代モデルとアルファードとのライバル関係を振り返りながら、まもなく登場する新型エルグランドのポイントや現行アルファードとの比較、まもなく旧モデルとなるエルグランド現行モデルの中古車相場やリセールバリューの行方などをまとめます。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

「高級ミニバンの元祖」といえば、日産 エルグランドだった

エルグランドが登場したのは今から29年前の1997年。発売当初から1999年までは日産の販売店系列に合わせて「キャラバン エルグランド」「ホーミー エルグランド」という2つの車名で販売されました。ちなみに、「エルグランド」という車名は、スペイン語の定冠詞「EL」と英語の「GRAND(偉大な)」を組み合わせた造語です。

 

エルグランド登場前夜の大型ミニバン市場は、トヨタの「ハイエース」や日産の「キャラバン」など商用のワンボックスカーをベースにした乗用仕様が中心でした。広さや実用性は満たしていたものの、内装の質感や乗用車らしい走り味という点では物足りなさが残っていたのです。

 

そこに投入されたエルグランドは、SUV「テラノ」のコンポーネントを流用した専用設計のFR(後輪駆動)ミニバン。短いボンネットを持つセミキャブオーバー型とすることで低床化を実現し、押し出しの強いメッキグリルと堂々としたスタイリングをまといました。エンジンは3.3L V6ガソリン(VG33E型/170ps)と3.2L直4ディーゼルターボ(QD32ETi型/150ps)の2本立てで、4WDには電子制御の「オールモード4×4」を設定。乗車定員は7人と8人が選べました。

 

「乗用車としての質感」と「ワンボックスならではの広さ」を両立させたこの1台は大ヒットとなり、一時は月販1万台を超える売れ行きを記録します。トヨタが1995年に投入していたハイエースベースの大型ミニバン「グランビア」を大きく上回る人気を集め、「高級ミニバン」という新しい市場をつくり上げました。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    エルグランドが爆発的なヒットとなったことで、他メーカーも本腰を入れて高級ミニバンを開発するようになりました。皮肉にも、エルグランドによる市場の開拓が、最大のライバル「アルファード/ヴェルファイア」の誕生につながっていきます。

歴代エルグランドの歩みと、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」とのライバル関係

2代目(E51型/2002年〜2010年)――アルファード登場という転機

2002年5月21日、エルグランドは2代目(E51型)へとフルモデルチェンジします。駆動方式はFRを継続し、エンジンは3.5L V6(VQ35DE型/240ps)に一本化。リアサスペンションのマルチリンク化や5速ATの採用などで、走行性能と乗り心地をさらに引き上げました。

 

しかし、その翌日となる5月22日、トヨタが初代「アルファード」を発売します。エルグランドの発売日に合わせて、同じ高級ミニバン市場で真っ向勝負を挑んできた形です。

 

アルファードが選んだのは、エルグランドとは対照的なFF(前輪駆動)ベースのパッケージでした。床下にプロペラシャフトを通す必要がないFFは、フロアを低く抑えやすく、室内空間の確保に有利です。さらにトヨタは、車両価格・燃費・自動車税のいずれでも有利な2.4L直4エンジンを用意し、2003年7月にはハイブリッドモデルも追加。「広さ」と「経済性」という、ファミリー層が重視するポイントを的確に押さえてきました。

 

エルグランド側も、後に税制面で有利な2.5L V6エンジンモデルを追加して対抗しますが、販売の勢いは徐々にアルファードへと傾いていきます。

3代目(E52型/2010年〜)――FF化と「低全高」という判断

2010年8月、3代目エルグランド(E52型)が登場。ここで日産は長年こだわってきたFRを捨て、ついにFF(および4WD)へと転換します。

 

FF化によってフロア高は先代比で129mm下がり、全高は95mm低い1,815mmに。重心が下がったことでコーナリング時の安定感や乗り心地は大きく向上し、自動車専門家の評価も高いモデルでした。

 

ところが、市場が求めていたのは別のものでした。同時期のアルファードは全高1,900mm台をキープし、堂々とした佇まいと高いアイポイント、そして室内空間の広さを訴求。「背が高く、立派に見えること」が高級ミニバン選びの重要な要素だったのです。走りの質を優先して背を低くしたエルグランドは、この土俵で不利な戦いを強いられることになりました。

 

日産は2014年のマイナーチェンジで国産車最大級のメッキグリルを与え、3列目シートに前後スライド機能を追加。さらに2020年10月の改良では先進安全装備を全車標準化するなど手を打ち続けましたが、パッケージングそのものを変えることはできませんでした。

両車の販売実績の差は、現在では歴然としています。2025年の新車登録台数は、アルファードが86,959台、ヴェルファイアが33,031台。対するエルグランドは1,426台にとどまりました。エルグランドが開拓した高級ミニバンの王座は、トヨタ アルファード/ヴェルファイアが揺るぎないものにしていったのです。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    誤解されがちですが、E52型エルグランドは決して「出来の悪いクルマ」だったわけではありません。走りや乗り心地への評価は高く、根強いファンも存在します。ただ、高級ミニバンを買う人の多くが求めていたものと、日産が提供したかったものが噛み合わなかった。それがアルファード/ヴェルファイアとの差となっていると言えるでしょう。

ちなみに、エルグランドとアルファードの差は中古車相場にも表れています。ガリバーの在庫データを調査してみたところ、2010年式から2025年式までの在庫はアルファードが587台(平均価格:413万円/最多在庫:2021年式)だったのに対して、エルグランドの中古車在庫はわずか68台。在庫が最も多い年式は2017年と古く、直近5年以内の高年式在庫はごくわずかという状況です。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    ただ、ほとんどの在庫が300万円を切る価格となっており、アルファード/ヴェルファイアというブランドにこだわらなければ、在庫によってはアルファードよりもコスパが良い点には注目したいところ。ただし、年式の古いクルマは走行距離が10万キロに迫るものも多いため、メンテナンスコストも加味した検討が必要です。

新型エルグランド(E53型)はどう変わる?アルファードとの違いは?

それでは、2026年7月16日にフルモデルチェンジされる新型エルグランドは、どのような注目ポイントがあるのでしょうか。ライバルであるアルファードとも比べながら見ていきましょう。

① ボディサイズ――「背の高さ」で真っ向勝負

新型のボディサイズは全長4,995mm×全幅1,895mm×全高1,975mm、ホイールベース3,000mm。現行モデルから全高を一気に160mmも引き上げてきました。全長とホイールベースはアルファードと同値、全幅は45mm、全高は40mm上回ります。

 

低全高でアルファード/ヴェルファイアに敗れた過去を踏まえ、堂々とした佇まいと高いアイポイント、頭上空間という「ミニバンの王道」に正面から向き合った格好です。

② パワートレイン――ガソリン車を廃止し「e-POWER+4WD」に一本化

新型はガソリンエンジン車と2WD(FF)を廃止し、第3世代「e-POWER」と電動4WD「e-4ORCE」の組み合わせに一本化されました。

 

e-POWERは、エンジンで発電しモーターで走るシリーズハイブリッド方式。新型では発電専用に開発された1.5L直3ターボ(ZR15DDTe型)を搭載し、モーターや発電機など5つの部品を一体化した「5-in-1」ユニットによって静粛性と燃費性能を高めています。駆動は前後2つのモーターが担当し、前205ps/後136ps、システム出力は340ps相当とされています。

 

そのほか、路面状況に応じて減衰力を電子制御する「インテリジェント ダイナミック サスペンション」を全車標準装備。国内モデル初となる14.3インチの大画面ディスプレイ、BOSEの22スピーカーサウンドシステム、高速道路でのハンズオフ走行に対応する「プロパイロット2.0」などが用意されます。

③ グレード構成と価格

グレードは標準の「e-POWER X」「e-POWER G」に加え、カスタム系の「AUTECH LINE」「AUTECH」、ショーファードリブンを想定した「VIP」を設定。全車が3列7人乗り・e-4ORCE(4WD)です。

 

車両本体価格(税込)は、「e-POWER X」が689万7,000円、「e-POWER AUTECH LINE」が717万9,700円、「e-POWER G」が757万9,000円、「e-POWER AUTECH」が824万7,800円、「e-POWER VIP」が869万8,800円となっています。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    先代E52型のエントリー価格が約408万円だったことを考えると、値上がり感を感じてしまう方もいるのではないでしょうか。装備や電動化技術を考えれば納得できる範囲とも言えますが、高価格化したことで購入層が絞られることも予想されます。

アルファードも大規模改良とモデル追加で対抗

対するアルファードは、2026年6月3日に一部改良を実施したばかり。全車に周波数感応型ショックアブソーバーを標準装備し、PHEVを「Z」グレードにも拡大、ハイブリッドの新グレード「G」を追加するなど、新型エルグランドを強く意識した内容となりました。

 

売れ筋グレード同士で比べると、エルグランドの「e-POWER X」が689万7,000円、アルファードの「ハイブリッドZ(E-Four)」が約662万円。その差は約28万円で、エルグランドのほうがやや高い設定です。

 

一方、エルグランドは1.5Lエンジン(発電用)を積むため、年間の自動車税(2026年度の試算)は30,500円。2.5Lエンジンのアルファード(43,500円)より年13,000円安くなります。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    装備内容を見ると、電子制御サスペンションやe-4ORCEを全車標準装備するエルグランドは、走りに関わる部分に惜しみなくコストをかけています。ただ、アルファードの2列目にある固定式アームレストや天井のオーバーヘッドコンソールといった「ひと目でわかる豪華さ」では、エルグランドが見劣りするという指摘も。高級ミニバンにおいて“わかりやすい豪華さ”は無視できない要素なので、このあたりをユーザーがどう評価するかは注目です。

まもなく旧モデルとなる現行エルグランド(E52型)のリセールバリューはどうなる?

フルモデルチェンジによって旧型となる現行エルグランド(E52型/2010年〜2026年)ですが、今後新型への乗り換えなどで売却する際のリセールバリューはどのようになっていくでしょうか?リセバ総研所長、床尾一法の見解は・・・

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    元祖高級ミニバンとして、指名買いによる需要も想定されますし、その中で高評価を得られればヒットする可能性も十分にあります。

    ただし、いくら元祖といえど、アルファードをはじめとするトヨタ車一強に近い現在の市場においては、新型エルグランドが「ミニバン選び」の選択肢として顧客にライナップしてもらえるか、という戦い方になるでしょう。

    日産というメーカーの現況を踏まえると、よほどの話題性がない限り、新車販売も厳しい戦いが続くことになると考えられます。

集計期間:2026年1月1日(木)〜2026年6月30日(火) 査定件数
日産 エルグランド TE52型 250ハイウェイスターS(7人乗り) 133 件
経年 年式 新車価格※ 平均売却予想額
(買取相場)
リセールバリュー値
2年落ち 2024年式 408.2万円

¥2,425,000

59%

3年落ち 2023年式 403.8万円

¥2,695,000

67%

4年落ち 2022年式 379.9万円

¥2,321,666

61%

6年落ち 2020年式 369.5万円

¥1,566,000

42%

7年落ち 2019年式 353.2万円

¥1,208,260

34%

8年落ち 2018年式 353.2万円

¥1,133,000

32%

10年落ち 2016年式 339.6万円

¥898,400

26%

11年落ち 2015年式 339.6万円

¥605,000

18%

※車両本体価格(当該年の後半に改定された価格は翌年に反映している場合があります)
  • リセバ総研所長 床尾一法

    上記は流通量の少ない先代エルグランド(E52系)の中で、買取査定のサンプルが比較的多かったTE52型「250ハイウェイスターS(新車価格は7人乗り)」のリセールバリュー値です(集計期間は2026年1〜6月)。

    経年2年落ちの数字が極端に低いのは集計母数が少ないための個体差で、本来はおそらく70%前後の値だと思われます。

    新型エルグランドの場合はどうでしょうか。
    もちろん、16年前に比べ、電動化技術や安全装備のテクノロジーもはるかに進化していますし、旧型と同列には比較できないでしょう。それに、アルファード級に対してひさびさとなる競合車種の出現です。供給不足や初物ご祝儀相場で、リセールバリュー値(残価率)が100%前後で推移する可能性は否定できません。

集計期間:2026年6月14日(日)〜2026年7月11日(土) 査定件数
トヨタ アルファード AAHH40W型 ハイブリッド Z 60 件
経年 年式 新車価格※ 平均売却予想額
(買取相場)
リセールバリュー値
当年式 2026年式 635.0万円

¥5,846,666

92%

1年落ち 2025年式 635.0万円

¥5,650,000

89%

2年落ち 2024年式 620.0万円

¥5,162,903

83%

3年落ち 2023年式 620.0万円

¥5,055,000

82%

※車両本体価格(当該年の後半に改定された価格は翌年に反映している場合があります)
  • リセバ総研所長 床尾一法

    現行型(40系)アルファード・ハイブリッド車の場合、リセールバリュー値は、2026年7月11日時点で当年式が92%程度、経年1年落ち以降は80%台後半を推移しています。

    エルグランドの場合はそのさらに下、経年1年落ち以降で80%に届くかどうか、70%台後半あたりに着地するのではないかと予想します。

まとめ

1997年にエルグランドが切り開いた高級ミニバン市場は、アルファード/ヴェルファイアの登場を境に主役が入れ替わり、現在では「アルファード/ヴェルファイア一強」と言える状況が続いてきました。

そこに投入される16年ぶりの新型エルグランドは、かつての敗因を克服し、日産が磨き上げてきたハイブリッド技術「e-POWER」と電子制御4WD「e-4ORCE」という日産の最新技術を全面に据えた一台です。一方で、パワートレインも駆動方式もシートレイアウトも一種類のみという割り切ったラインナップは、パワートレインだけでもガソリン、ハイブリッド、PHEVと幅広い選択肢を用意するアルファード/ヴェルファイアとは対照的な戦略でもあります。

どちらが優れているかを一概に語ることはできません。その判断は、ユーザーの価値基準がどこに据えられているかによるのではないでしょうか。7月16日新型エルグランドの発売を経て、この30年近く続いてきた対決がどう動くのか。まずは新型エルグランドの初動の販売台数に注目したいところです。