CORISM編集長とリセバ総研所長のクルマ放談:EV開発からの撤退と巨額の損失・・・これからのホンダは?
自動車業界で日々生まれる様々なトピックスについて、リセバ総研の“ご意見番”であり日本カー・オブ・ザ・イヤーの運営にも関わっている自動車webサイトCORISM編集長の大岡智彦と、リセバ総研所長の床尾一法の二人が本音で語り合う「クルマ放談」。今回は、ホンダが今年3月に発表したEV戦略の見直し・開発中止と最大2兆5000億円という巨額の損失について、その影響と今後のホンダについて語り合います。
自動車情報メディア「CORISM」編集長
リセールバリュー総合研究所 管理運営者
当記事における発言内容は、床尾一法と大岡智彦の個人的な主観・考察によって構成されています。公式の見解ではございませんのでご注意ください。
日産を助ける存在になるはずだったホンダが、まさか・・・
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リセバ総研所長 床尾一法
個人的に、今年上半期の自動車業界で最大のトピックスとして捉えているのが、ホンダのEV戦略見直しと業績の大幅な下方修正・巨額の赤字計上です。
衝撃的なニュースでしたが、自動車業界のなかではどのような話題になっているんでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
ホンダといえば、過去には業績不振の日産と資本提携するみたいな話があったじゃない。
そのときには日産を助ける側としてかなり強気な姿勢に出ていたホンダが、まさかこんなことになるとは誰も思っていなくて。
自動車業界って「一寸先は闇」なんだなということを実感させられたよね。だって、もう損失見込みの桁が違う。
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リセバ総研所長 床尾一法
最大2兆5000億円・・・。
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【自動車のプロ】大岡智彦
もう小さい国の国家予算レベルじゃないの??って思っちゃうレベル。
そんな金額が損失とか赤字とか言われると、もう僕たちのレベルから見るともうポカーンって感じ。
ただ、今回のホンダの損失に関しては、ちょっとEVに先走り過ぎたというか、EVに“全ベット”したのが完全に裏目に出てしまったという印象ですね。
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リセバ総研所長 床尾一法
ちょっと気になっているのが、ホンダ経営陣の方々は、「クルマ」というものに対してどういう向き合い方というか、距離感なんだろうといところです。
クルマに対する思いや情熱というか、私自身が昔は熱烈なホンダ党だったっだけに思うんです。
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【自動車のプロ】大岡智彦
うーん。
ホンダの社長は代々本田技術研究所の所長(社長)を歴任してるし、社長の三部さんはクルマづくりをしていたエンジニア出身。
本田技術研究所というのは本田技研工業の子会社なんだけど、本田技研工業の社長は代々子会社の元社長がやるという・・・。
少なくとも、自動車の技術という視点で開発現場を経験している人ですよね。
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リセバ総研所長 床尾一法
そんなエンジニア出身の経営陣がどうして「エンジンを捨ててEVに全振り」する決断をして、そしてそれが失敗したのか。

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【自動車のプロ】大岡智彦
EVシフトのスピード感が、ホンダが想定していたよりもずっと緩やかだったということでしょうね。
欧州では「世の中はEVに行くんだ」と勢いづいていずれはガソリン車を禁止するなんて話も飛び出した。北米でもテスラを中心にEVが市場シェアを大きく伸ばしていった。
世界的にEVシフトが加速する気運が高まったことで、ホンダにとってもEVの潮流に乗ることがベストだと判断したのでしょう。しかし、欧州ではEV拡大の気運が若干トーンダウンして、米国ではトランプ政権になってEV補助金が打ち切りになったりしてEV市場が急減速した。そこにホンダの想定外があったんだと思います。
でもね、中長期的に見たらトランプ政権もあと数年したら任期満了なわけだし、大統領が変わればまた世界的なEVシフトの潮流は進むかもしれないし、なんでこのタイミングでEV開発をやめてしまうのかなと。欧州も減速したとはいえEVシフトは続いている。規模を縮小してでも、もう少し我慢してみてもよかったんじゃないかなとも思うんだけどね。
もしかしたら、中国のBEVと価格や性能面で、現在の状況では勝負できるレベルにないと思ったのかもしれません。
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リセバ総研所長 床尾一法
ちょっともったいないという気持ちもありますね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
これはホンダの企業風土なのかもしれません。
ホンダは過去にも挑戦と撤退を繰り返している印象があって・・・2代目NSXもそうでしたよね。
トヨタという会社は「勝つまで挑戦し続ける」みたいな風土があるんだけど、ホンダはどんどん挑戦するものの撤退という決断も早い。その辺の“我慢しきれない病”みたいなのが出てしまったのかな。
ジャパンモビリティショーで公開されたEVの「ゼロシリーズ」や「アキュラRSX」なんて、せっかく開発してプロトタイプまで完成していたんだから、そのタイミングで辞める必要ないだろと思います。

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リセバ総研所長 床尾一法
そういう企業姿勢って、ブランド価値に大きな印象を与えると思いますが、どう思いますか?
ユーザーからすると、結構不安要素なのかなとも思いますが。
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【自動車のプロ】大岡智彦
例えば、買ったクルマがすぐに生産終了してしまったら、自分の選択が否定されたような気持ちになっちゃうよね。
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リセバ総研所長 床尾一法
市場や文化醸成を継続せずに1代限りで終わったホンダの車種も多すぎて・・・
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【自動車のプロ】大岡智彦
じゃあ、不採算の車種をずっと続けるのかと言われたらね。
もちろんどこかで整理したほうがいいに決まっている。
一方のトヨタがすごいなと思ったのが、レクサスのブランドを国内で立ち上げたとき。
当時、売れる車種が少なすぎて、しかもそれが何年も続いたのね。1年のうちクルマが売れるのが、(お客さんになる社長の)会社法人の決算がまとまる3月で、それ以外は全くクルマが売れない。
そんな状況が続いていたけれど、今やレクサスは高級ブランドとしての地位を確立。短期的に儲からなくてもやり続けることの意義というのは、こういうところにあるのかなと思いますわ。
技術開発で世界をリードしたホンダは、再び輝けるのか
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リセバ総研所長 床尾一法
今回のEV戦略見直しで、ホンダのエンジニアの方たちにも動きがあるんでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
簡単にリストラできるものでもないので、恐らく配置転換などが進んでいるのかもしれないね。あくまで想像に過ぎないけど。
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リセバ総研所長 床尾一法
こういった中で失われていったエンジンの技術って、簡単に戻ってくるもんじゃないと考えてるんですが・・・
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【自動車のプロ】大岡智彦
どうなんだろうね。
技術開発って何年も止めてしまうとどんどんダメになってしまうという話は聞いたことがあるけれど、ホンダと言えばエンジン開発なのでそこを完全に捨てきっているということはないと思うんですよね。
近年は相当EV開発に振り切っているとは思いますが。
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リセバ総研所長 床尾一法
ホンダのF1への再参入はあまり上手くいっていない印象があります。エンジンサプライヤーとして2021年に世界チャンピオンになりましたが、それでも苦労の時間のほうが長かった。エンジンって一度開発が途絶えてしまうと厳しいんじゃないかなと。
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【自動車のプロ】大岡智彦
エンジンだけじゃなくて、自動車の技術って一度開発・進化が途切れるとダメでしょうね。
それこそ、スズキの軽自動車開発における軽量化技術なんて、続けてきた賜物なんだよね。
日産と三菱が合弁会社を作って軽自動車を共同開発したときに、車重がスズキのクルマと比べて明らかに重かった。その理由を聞いたら「いや、うちは軽自動車の開発しばらく休んでましたから」と。
エンジニアが「(スズキの軽量化技術を)真似するのはムリ」と言うくらい、蓄積してきたノウハウって大きいんだよね。

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リセバ総研所長 床尾一法
どの業界でも、機械造りは一度やめてしまうと二度と復活できないという技術が多いですね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
ホンダが色々なことをやったり、やめたりしている間に他社はもう着実に様々なノウハウを貯めていっている。
2025年度のメーカー別新車販売台数ではスズキがホンダを抜いて初めて2位になりましたが、継続することで生まれる強さというのは、侮れないと思いますよ。
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リセバ総研所長 床尾一法
ホンダはこれからどうなっていくんでしょう?
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【自動車のプロ】大岡智彦
短期的には、もうハイブリッド(e:HEV)をどんどん推進していくしかないという感じじゃないかな。
もちろん、ホンダのハイブリッドはエンジンで発電するわけなので、そこの開発が停滞していたとしたら(開発を続けている)他社と比べて遅れてしまっている可能性もある。
もう一度e:HEVを盛り上げるんじゃないかと思うね。
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リセバ総研所長 床尾一法
ただ、今回の一連の流れがブランドそのものにマイナスの影響して、「ホンダのクルマを買う」ことへの疑念を顧客に抱かせてしまう危険もあります。
その点、大岡さんはどう感じますか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
そこの点は、大丈夫。
日本にはN-BOXがあるから!
新車販売台数は5年連続で、軽四輪車の新車販売台数は11年連続の首位獲得という金字塔を打ち立ててますから。
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リセバ総研所長 床尾一法
ホンダを代表する、「国民的軽自動車」N-BOX。
競合のスペーシア(ギア)に乗る身としては、元ホンダ党の私にとってもN-BOXは常に気になる存在です。
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【自動車のプロ】大岡智彦
ステップワゴンもフィットも人気が落ち込んでしまったし、あとはフリードくらいでしょうか。
お手頃なクルマのイメージが強くなってきちゃってるから、高額なクルマを売りにくくなっちゃうね。
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リセバ総研所長 床尾一法
強いて言えば、ヴェゼルでしょうか。
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【自動車のプロ】大岡智彦
そうだね。結構根強い人気がある。
スタイリングなんだろうね、価格は少し高めだけどね。
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リセバ総研所長 床尾一法
そうそう、ホンダSUVといえば、先日発売されたCR-Vの魅力ってなんだと思いますか?

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【自動車のプロ】大岡智彦
ホンダとしては、SUVはZR-Vがあればいいと思ってたのだそうだけど、ZR-Vでは小さいと評価する層もいるので、その穴埋めのためにCR-Vを日本市場に復活させたというシナリオみたい。
販売計画台数は400台/月ということから、ホンダ自身もたくさん売れるクルマではないという感じなのかと。しかも、CR-Vはグローバルモデルということから、タイで生産され日本へ輸入されるモデルだし。
そもそもホンダって他のメーカーとは違うことをやりたがるメーカーだと捉えてるし、それがホンダらしさで魅力的なモデルを続々と送り出してきたし、新たなマーケットを創り上げたことも多々ある。
だけど、他のメーカーとは違うことを狙い過ぎて、消費者のニーズとマッチしないこともあるんですよね。
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リセバ総研所長 床尾一法
そこは共感できますね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
いまのSUVブームって、フォレスターにしてもRAV4にしても、どちらかというとアウトドア色の強いデザインに対して人気が集まってる。
でも、ホンダのSUVラインナップを見てみると、ヴェゼルも、ZR-Vも、CR-Vも、みんな“都市型SUV”というキャラクターになっている。
このラインナップを見て、「もう少しアウトドア寄りのクルマがほしいよね」と思う人は結構いるんじゃないかな。
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リセバ総研所長 床尾一法
ヴェゼルのHuNTパッケージやZR-Vに特別仕様車クロスツーリングで、アウトドアテイスト出してきてますね。
敢えて問いたい、「ホンダのクルマを選ぶ理由とは?」
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リセバ総研所長 床尾一法
スバルとホンダのクルマばかり乗ってきた自分が言うのもなんですが、今はホンダの魅力を掴みにくい。そこに来てこの危機的な状況なので、この先あえてホンダのクルマを選ぶ理由というのがますます見えにくくなってしまうんじゃないかと。
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【自動車のプロ】大岡智彦
まぁ、自分もそう思うし、日産も同じ状況に陥ってしまっている。
車種によっては指名買いもあるんだろうけど、日産のクルマが欲しいという決定的な理由というのがないんだよね。
その点、全方位的な選択肢を用意してお客さんに選ぶ自由度の高さを生み出しているトヨタの商品戦略はさすがだなと思うよね。幅広い選択肢のなかから「お好みの1台をどうぞ」って言えるんだもの。

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リセバ総研所長 床尾一法
日本の自動車メーカーはトヨタだけになっちゃうんじゃなかって、以前は冗談半分で言っていましたが、本格的にそうなるのかもって恐れが強くなってきました。
海外のようにホンダ、日産、三菱でステランティス※のような自動車メーカー連合を組んで部品やプラットフォームの共通化をするという可能性はあるんでしょうか。
※ステランティス:アルファロメオ、クライスラー、シトロエン、フィアット、プジョーなどのブランドを傘下に置く多国籍企業
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【自動車のプロ】大岡智彦
あると思いますよ。
もはやトヨタの規模と比べたら同じ価格で同じレベルのクルマは作れないでしょう。
とはいえ、本当に提携したとしても大変なんじゃないかなと思いますけどね。
提携協議の破談を見ていても、ホンダと日産が提携したとしても順調に進みそうなイメージがなかなか湧かない。むしろ、トヨタと手を組んだほうがいいんじゃないかとも思ったり。
日本という小さな島国に自動車メーカーが7社もあるというのが特殊だからね。もちろん、様々なメーカーがあることで個性を持った様々なクルマが走る社会になったというのは楽しいことですが、これだけ企業によって業績の良し悪しに差が生まれてくると、今後業界が再編されたとしても仕方のないことなのかなと感じます。
正直、そうなったらちょっと寂しいけどね。
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リセバ総研所長 床尾一法
日本の自動車がつまらなくなってしまわないことを祈りたいところです。
では盛り上げようというところで、直近のホンダの新型モデルで、大岡さんが気になるクルマはなんです?
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【自動車のプロ】大岡智彦
これからのホンダは、「N-ONE e:」ベースの電気自動車「Super-ONE」、BEVとして復活する「インサイト」。
あとはドル箱の「N-BOX」がマイナーチェンジするという噂もあるし、新型フィットの登場も噂されてる。
正直、それぞれどこまで売れるクルマになるのかは未知数だけど、これからホンダがどのように市場で勝負していくのか、注目していきましょう。
