3月13日更新:中東情勢の緊迫とホルムズ海峡封鎖でガソリン価格の値上げが大幅に加速

2026年2月28日(日本時間)に始まったアメリカとイスラエルによるイランへの軍事攻撃を発端とした中東情勢の緊迫によって、世界経済への影響、特に中東への依存度の高い原油価格への影響を懸念する声が広がっています。原油価格の高騰はそのままガソリン価格の高騰にも繋がり、私たちのカーライフや運輸業など様々な産業にとっても大きな影響を生み出します。今回は、中東情勢の最新動向を整理するとともに、懸念される原油価格・ガソリン価格への影響についてまとめます。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

※ 本記事をお読みいただくにあたって

本記事は、中東地域で発生している軍事衝突に関連する内容を含んでいます。この紛争により被害を受けられた方々、ご家族を亡くされた方々、そして現地で避難を余儀なくされている方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。また、物流の混乱により経営に深刻な影響を受けておられる事業者の皆さまにも、一日も早い事態の収束と正常化をお祈りいたします。本記事はファクトを整理・考察する目的で作成したものであり、紛争を肯定・助長する意図は一切ございません。

中東地域で、いまなにが起きているのか

「アメリカとイスラエルがイランに軍事攻撃」。先週末の2026年2月28日に突然飛び込んできたこのニュース速報に、多くの人が驚かされたのではないでしょうか。アメリカ軍とイスラエル軍による連合軍は、イラン全土の軍事施設や政府中枢を対象にした大規模なミサイル攻撃を展開。この軍事作戦の背景には、アメリカとイランによる核開発問題を巡る交渉の決裂、イランを中心とするテロ組織支援ネットワークの破壊、37年間にわたり権力を掌握してきた最高指導者アリ・ハメネイ師を頂点とするイラン現体制の変更など、様々な大義名分があると言われていますが、この両国の動きに対して国際法違反を指摘する声もあり、その是非については世界中で議論となっている状況です。

 

米国トランプ政権はこの軍事作戦を「必要な限り継続する」と表明していますが、一方で攻撃を受けたイランは、イスラエル本土や中東各国にあるアメリカ軍の拠点などへの報復攻撃を展開。さらに、UAE(アラブ首長国連邦)の国際空港やカタール、バーレーン、サウジアラビアなど中東各国へのミサイル攻撃・ドローン攻撃も確認されており、今後も攻撃と報復の応酬が続けば、中東全域を巻き込んだ大規模な紛争へと拡大する懸念も否定できません。イランはアメリカとイスラエルだけでなく両国と親密な中東各国にも報復攻撃の矛先を向け、かつ空港など民間施設なども攻撃のターゲットにしていることから、今後さらなる被害の拡大も懸念されます。

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「ホルムズ海峡の封鎖」とはどういうことか

そして、今回の軍事攻撃によって大きな影響が懸念されているのが、「ホルムズ海峡」の動向です。ホルムズ海峡とは、イランとオマーンに挟まれた全幅わずか約33kmの非常に狭い海峡で、サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、UAEなどアラブ各国へとアクセスできるペルシャ湾とアラビア海(外洋)へとアクセスできるオマーン湾を繋ぐ重要な役割を果たしています。

ホルムズ海峡の位置(Googleマップより引用)

ペルシャ湾沿岸には多くの産油国があることから、世界の石油流通量の約20%〜25%、日本をはじめ中国、韓国、インドなどアジア各国が輸入する原油の約70%〜90%がこのホルムズ海峡を通ると言われており、アジアのエネルギー需要にとって非常に重要な場所です。また、UAEやサウジアラビアをはじめペルシャ湾沿岸の各国は日本にとって重要な貿易相手国であることから、日本からの輸出ビジネスとっても海路の要衝にあたります。

 

そして、「ホルムズ海峡の封鎖」とは、海難事故などによって海峡の船舶航行が困難になる「物理的な封鎖」と、付近の情勢不安などにより船舶の航行が困難になる「事実上の封鎖」の2種類があり、今回懸念されているのは後者の「事実上の封鎖」です。

 

イランの軍部にあたる革命防衛隊は、今回の軍事攻撃を受けてすでに「ホルムズ海峡の航行を全面禁止する。いかなる船舶の航行も認めない」と警告しており、実際にオマーン湾では石油タンカーがミサイル攻撃を受けて火災になったという報道もあります。「ホルムズ海峡を航行したら攻撃される」という安全上のリスクが極度に高まっていることから、ここを航行する予定の多くのタンカー・コンテナ船が周囲の安全な海域に足止めに。ペルシャ湾から出られなくなっているタンカーやコンテナ船も多数あるとの報道もあります。産油国が集中するペルシア湾から海外に向けて海路での原油供給網が遮断されてしまっているというのが、現在の状況なのです。

 

(2026年3月13日更新)イランは3月12日の声明のなかで、ホルムズ海峡の今後について「あらゆる手段で封鎖する」という意向を示しており、石油タンカーや貨物船など船舶の安全な航行ができない状態は長期化する可能性も考えられます。

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「ホルムズ海峡の封鎖」によってガソリン価格はどうなる?

今回のアメリカとイスラエルによるイランへの軍事攻撃を巡る動きは、週明けの原油市場を直撃しました。原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格は、日本時間2026年3月2日朝の取引開始から高騰し、一時は1バレルあたり75ドルに。先週末から約12%の急騰となりました。この動きは中東情勢の急激な悪化を受けた一時的なパニック買いによるものとの見方もありますが、今後情勢不安が長期化すると価格の高騰が止まらなくなり、本格的なインフレの加速や原油の供給不足による世界的なエネルギー問題の顕在化にも繋がる可能性があります。特に、日本は中東からの原油輸入に対する依存度が高いことから、その影響は特に大きくなる可能性が懸念されます。

 

(2026年3月13日更新)その後、原油先物市場の価格は、ホルムズ海峡封鎖以降に一時1バレルあたり119.48ドルとなり、ロシアによるウクライナ侵攻開始時(2022年)以来となる高値にまで高騰しました。各国が協調して石油備蓄の放出に動くのではないかという憶測が広がると原油先物価格は下落の動きを見せ、実際に3月11日の深夜には日本を含む国際エネルギー機関(IEA)全加盟国が石油の協調放出を行うことで合意したとしています。しかし、こうした動きがあってもなお、原油先物市場は再び1バレルあたり100ドルを超えるなど、価格高騰は収まる様子がありません。

 

日本政府は、日本の石油備蓄状況について国家備蓄と民間備蓄を合わせて約8.5ヶ月分の在庫があり、「直ちに需給に影響が出るわけではない」として国民に冷静な対応を呼びかけていますが、原油価格の高騰が長期化すればガソリン小売価格への影響は避けられないものと考えられます。すでにガソリンスタンドでは今回の軍事攻撃を受けて早期にガソリン価格を値上げする動きも見られるほか、経済アナリストのなかには「影響が長期化すればレギュラー1リットル200円を超える」という分析も。ガソリン価格は2025年12月の暫定税率廃止によって20円以上の値下げを実現したばかりですが、その値下げ分が吹き飛ぶほどの価格高騰も懸念されます。

 

(2026年3月13日更新)日本政府はガソリン価格高騰の懸念から石油備蓄を早期に放出することや、昨年まで実施していたガソリン価格に対する補助金を再開することなどを表明しましたが、そのなかでは「ガソリン価格を170円程度に抑えることを目標にする」としており、暫定税率の廃止で値下がった分が相殺されるのは必至の状況です。

 

ちなみに、過去に中東の情勢不安がガソリン価格を直撃した事例として、湾岸戦争(1990年)の際の動向と比較してみると、今回の情勢不安の深刻度が「ホルムズ海峡の事実上封鎖」という輸送安全上のリスクによるものであることがわかります。

 

湾岸戦争の際には、ともに産油国であるイラクとクウェートによる紛争であることから一時的にガソリン価格は高騰しましたが、近隣のサウジアラビアが大規模な増産をしたり、国際エネルギー機構(IEA)が備蓄放出を行ったりなどして原油市場のパニックを抑え込みました。当時のガソリン価格も、一時は20円以上値上げしたものの、紛争の収束とともに価格も平時に戻っています。そもそも湾岸戦争の際には一時的な安全上のリスクはあったもののホルムズ海峡の封鎖にまでは至っておらず、対して今回はイランがホルムズ海峡の航行を阻害する安全上のリスクを明確に示していることから、原油供給網の寸断が長期化すれば、過去に経験したことのない価格の高騰に至る恐れがあります。

2026年3月13日更新:全国のガソリン価格が急速に高騰 地域によっては「30円以上値上げ」も

資源エネルギー庁が毎週水曜日に発表している「給油所小売価格調査」によると、2026年3月11日に発表された「3月9日時点」でのレギュラーガソリン1リットルあたりの全国平均小売価格は161.8円で、前週比で3.3円の値上がりとなりました。4週連続の値上がりとなりましたが、前週まで1円前後の微増だったのに対して今週は前週比で3円を超える値上がりとなり、イラン情勢の緊迫とホルムズ海峡封鎖の影響が早くも出始めている形です。

 

また一方で、3月12日の一部報道によると、石油元売りの卸売価格が値上がりしたことなどを理由に全国的にガソリン価格の大幅な値上げがすでに始まっているとのことで、地域によっては30円を超える値上げを行っているというケースも。政府はガソリン価格を抑制するための補助金などを再開する予定ですが、実際に補助金の高価が価格に反映されるまではタイムラグがあることから、しばらくは価格が高騰した状態が続くことが考えられます。今後の政府補助金の動向やガソリン小売価格の動向を注視するようにしましょう。

レギュラーガソリン1リットルあたりの店頭小売価格推移(資源エネルギー庁資料より)

レギュラーガソリン小売価格 前週比
3月9日 161.8円 +3.3円
3月2日 158.5円 +1.4円
2月24日 157.1円 +0.4円
2月16日 156.7円 +1.2円
2月9日 155.5円 −0.1円
2月2日 155.6円 +0.2円