中東情勢の緊迫で日本のガソリン価格はどうなる?“ホルムズ海峡封鎖”で原油価格高騰は必至
2026年2月28日(日本時間)に始まったアメリカとイスラエルによるイランへの軍事攻撃を発端とした中東情勢の緊迫によって、世界経済への影響、特に中東への依存度の高い原油価格への影響を懸念する声が広がっています。原油価格の高騰はそのままガソリン価格の高騰にも繋がり、私たちのカーライフや運輸業など様々な産業にとっても大きな影響を生み出します。今回は、中東情勢の最新動向を整理するとともに、懸念される原油価格・ガソリン価格への影響についてまとめます。
ライター
※ 本記事をお読みいただくにあたって
本記事は、中東地域で発生している軍事衝突に関連する内容を含んでいます。この紛争により被害を受けられた方々、ご家族を亡くされた方々、そして現地で避難を余儀なくされている方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。また、物流の混乱により経営に深刻な影響を受けておられる事業者の皆さまにも、一日も早い事態の収束と正常化をお祈りいたします。本記事はファクトを整理・考察する目的で作成したものであり、紛争を肯定・助長する意図は一切ございません。
中東地域で、いまなにが起きているのか
「アメリカとイスラエルがイランに軍事攻撃」。先週末の2026年2月28日に突然飛び込んできたこのニュース速報に、多くの人が驚かされたのではないでしょうか。アメリカ軍とイスラエル軍による連合軍は、イラン全土の軍事施設や政府中枢を対象にした大規模なミサイル攻撃を展開。この軍事作戦の背景には、アメリカとイランによる核開発問題を巡る交渉の決裂、イランを中心とするテロ組織支援ネットワークの破壊、37年間にわたり権力を掌握してきた最高指導者アリ・ハメネイ師を頂点とするイラン現体制の変更など、様々な大義名分があると言われていますが、この両国の動きに対して国際法違反を指摘する声もあり、その是非については世界中で議論となっている状況です。
米国トランプ政権はこの軍事作戦を「必要な限り継続する」と表明していますが、一方で攻撃を受けたイランは、イスラエル本土や中東各国にあるアメリカ軍の拠点などへの報復攻撃を展開。さらに、UAE(アラブ首長国連邦)の国際空港やカタール、バーレーン、サウジアラビアなど中東各国へのミサイル攻撃・ドローン攻撃も確認されており、今後も攻撃と報復の応酬が続けば、中東全域を巻き込んだ大規模な紛争へと拡大する懸念も否定できません。イランはアメリカとイスラエルだけでなく両国と親密な中東各国にも報復攻撃の矛先を向け、かつ空港など民間施設なども攻撃のターゲットにしていることから、今後さらなる被害の拡大も懸念されます。
「ホルムズ海峡の封鎖」とはどういうことか
そして、今回の軍事攻撃によって大きな影響が懸念されているのが、「ホルムズ海峡」の動向です。ホルムズ海峡とは、イランとオマーンに挟まれた全幅わずか約33kmの非常に狭い海峡で、サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、UAEなどアラブ各国へとアクセスできるペルシャ湾とアラビア海(外洋)へとアクセスできるオマーン湾を繋ぐ重要な役割を果たしています。

ペルシャ湾沿岸には多くの産油国があることから、世界の石油流通量の約20%〜25%、日本をはじめ中国、韓国、インドなどアジア各国が輸入する原油の約70%〜90%がこのホルムズ海峡を通ると言われており、アジアのエネルギー需要にとって非常に重要な場所です。また、UAEやサウジアラビアをはじめペルシャ湾沿岸の各国は日本にとって重要な貿易相手国であることから、日本からの輸出ビジネスとっても海路の要衝にあたります。
そして、「ホルムズ海峡の封鎖」とは、海難事故などによって海峡の船舶航行が困難になる「物理的な封鎖」と、付近の情勢不安などにより船舶の航行が困難になる「事実上の封鎖」の2種類があり、今回懸念されているのは後者の「事実上の封鎖」です。
イランの軍部にあたる革命防衛隊は、今回の軍事攻撃を受けてすでに「ホルムズ海峡の航行を全面禁止する。いかなる船舶の航行も認めない」と警告しており、実際にオマーン湾では石油タンカーがミサイル攻撃を受けて火災になったという報道もあります。「ホルムズ海峡を航行したら攻撃される」という安全上のリスクが極度に高まっていることから、ここを航行する予定の多くのタンカー・コンテナ船が周囲の安全な海域に足止めに。ペルシャ湾から出られなくなっているタンカーやコンテナ船も多数あるとの報道もあります。産油国が集中するペルシア湾から海外に向けて海路での原油供給網が遮断されてしまっているというのが、現在の状況なのです。
「ホルムズ海峡の封鎖」によってガソリン価格はどうなる?

今回のアメリカとイスラエルによるイランへの軍事攻撃を巡る動きは、週明けの原油市場を直撃しました。原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格は、日本時間2026年3月2日朝の取引開始から高騰し、一時は1バレルあたり75ドルに。先週末から約12%の急騰となりました。この動きは中東情勢の急激な悪化を受けた一時的なパニック買いによるものとの見方もありますが、今後情勢不安が長期化すると価格の高騰が止まらなくなり、本格的なインフレの加速や原油の供給不足による世界的なエネルギー問題の顕在化にも繋がる可能性があります。特に、日本は中東からの原油輸入に対する依存度が高いことから、その影響は特に大きくなる可能性が懸念されます。
日本政府は、日本の石油備蓄状況について国家備蓄と民間備蓄を合わせて約8.5ヶ月分の在庫があり、「直ちに需給に影響が出るわけではない」として国民に冷静な対応を呼びかけていますが、原油価格の高騰が長期化すればガソリン小売価格への影響は避けられないものと考えられます。すでにガソリンスタンドでは今回の軍事攻撃を受けて早期にガソリン価格を値上げする動きも見られるほか、経済アナリストのなかには「影響が長期化すればレギュラー1リットル200円を超える」という分析も。ガソリン価格は2025年12月の暫定税率廃止によって20円以上の値下げを実現したばかりですが、その値下げ分が吹き飛ぶほどの価格高騰も懸念されます。
ちなみに、過去に中東の情勢不安がガソリン価格を直撃した事例として、湾岸戦争(1990年)の際の動向と比較してみると、今回の情勢不安の深刻度が「ホルムズ海峡の事実上封鎖」という輸送安全上のリスクによるものであることがわかります。
湾岸戦争の際には、ともに産油国であるイラクとクウェートによる紛争であることから一時的にガソリン価格は高騰しましたが、近隣のサウジアラビアが大規模な増産をしたり、国際エネルギー機構(IEA)が備蓄放出を行ったりなどして原油市場のパニックを抑え込みました。当時のガソリン価格も、一時は20円以上値上げしたものの、紛争の収束とともに価格も平時に戻っています。そもそも湾岸戦争の際には一時的な安全上のリスクはあったもののホルムズ海峡の封鎖にまでは至っておらず、対して今回はイランがホルムズ海峡の航行を阻害する安全上のリスクを明確に示していることから、原油供給網の寸断が長期化すれば、過去に経験したことのない価格の高騰に至る恐れがあります。
レギュラーガソリン1リットルあたりの店頭小売価格推移(資源エネルギー庁資料より)
| ガソリン小売価格 | 前週比 | |
| 2月24日 | 157.1円 | +0.4円 |
| 2月16日 | 156.7円 | +1.2円 |
| 2月9日 | 155.5円 | −0.1円 |
| 2月2日 | 155.6円 | +0.2円 |
資源エネルギー庁が毎週水曜日に発表している「給油所小売価格調査」によると、ここ最近のガソリン小売価格は155円から157円へと微増を続けています。次回は、2026年3月4日に3月2日時点での価格の発表を予定しており、中東の情勢悪化を受けての影響も反映され始めるものと思われます。今週のガソリン小売価格発表は今後の値動きを占う重要なものとなるため、ぜひ注目したいところです。
