イラン情勢の影響は? (3月8日更新)ホルムズ海峡「事実上の封鎖」で中古車輸出に激震か? UAE経由の輸出網はどうなる?

2026年2月末、米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃を受け、世界のエネルギー・物流の大動脈であるホルムズ海峡が「事実上の封鎖状態」に陥ったようです。先日公表された2025年の貿易統計で国別輸出先首位に輝いたばかりのUAE向け中古車輸出は、今後どうなっていくのでしょうか。気になったので調べてみました。

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。
※ 本記事をお読みいただくにあたって
本記事は、中東地域で発生している軍事衝突に関連する内容を含んでいます。この紛争により被害を受けられた方々、ご家族を亡くされた方々、そして現地で避難を余儀なくされている方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。また、物流の混乱により経営に深刻な影響を受けておられる事業者の皆さまにも、一日も早い事態の収束と正常化をお祈りいたします。本記事は中古車市場への影響についてファクトを整理する目的で作成したものであり、紛争を肯定・助長する意図は一切ございません。

目次

中東情勢が気になったので調べてみた

先日、リセバ総研で「2025年の貿易統計が発表:中古車輸出先で地域別首位はアフリカ、国別首位は中東UAEに」という記事を掲載しました。2025年の日本の中古車輸出先として、国別ではUAE(アラブ首長国連邦)が22万3,999台で堂々の首位という結果でした。

その記事からわずか1か月足らず。2026年2月28日(金)、米国とイスラエルがイランに対して大規模な軍事作戦(Operation Epic Fury)を実施し、中東情勢は一気に緊迫化しました。3月1日時点で、ホルムズ海峡は「事実上の封鎖状態」にあると各種報道が伝えています。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    中古車輸出先の国別1位がUAEで、そのUAEの玄関口にあたるペルシャ湾の入口が封鎖──。

    これは中古車市場にとって他人事ではなく、「あの貿易統計の記事を出した直後にこの事態か」と緊張が走りました。

    この封鎖が中古車輸出市場にどんな影響を及ぼしそうなのか?

    AIの力を借りつつ3月1日時点で調査したレポートをベースに、自分なりに整理して記事にしました。

3月8日更新:「Claude」に聞いてみた:ホルムズ海峡の最新状況

今回は、Anthropic「Claude」に「ホルムズ海峡の最新の状況」と「運航の回復の見込み」について、初回の掲載内容を最新の情報に更新する前提で質問してみました。以下は、2026年3月7日に取得したClaudeの回答を原文のまま掲載しています。

【編集注記】 以下はClaudeによる回答の原文ママです。AIによる生成物であり、著作権法上の「著作物」に該当しない可能性が高いと解されていますが、出典の透明性を担保する目的で、そのまま転載しています。なお、AIの回答内容の正確性については、後述の調査結果と合わせてご判断ください。

質問

ホルムズ海峡の最新の状況は? 運航の回復の見込みは?

Claudeの回答

2026年3月8日時点のホルムズ海峡における最新状況と、今後の見通しについてお答えします。

2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃(Operation Epic Fury)から8日が経過しました。ホルムズ海峡の商業通航は依然として事実上の停止状態が続いていますが、注目すべきはイラン国内で「封鎖」をめぐる主張が分裂している点です。

ホルムズ海峡の最新の状況(3月8日時点)

通航はほぼ完全に停止したまま:合同海洋情報センター(JMIC)の3月6日付リポートでは、過去24時間の商業通航はわずか2件で、いずれも原油タンカーではなく貨物船でした(Bloomberg 3月6日報道)。通常は1日あたり約60隻が通航する海域が、ほぼ完全に止まっている状態です。NHKは3月5日に「約1日半ぶりに貨物船2隻が通過」と報じましたが、散発的な通航があるだけで回復の兆しとは言えません。

イラン国内で「封鎖」の主張が分裂:この危機で特異なのは、イラン内部の主張が一貫していないことです。革命防衛隊(IRGC)の高官エブラヒーム・ジャッバリー氏は3月2日に「海峡は閉鎖された。通過しようとする船は焼き払う」と宣言し(Al Jazeera 3月2日報道)、IRGC海軍のアクバルザデ報道官も「海峡はイラン海軍の完全なコントロール下にある」と述べています(Fars通信 3月5日)。一方、アラグチ外相はNBC Newsに対し「海峡を封鎖する意図はない」と明言し、IRGC高官の一人も国営テレビで封鎖の報道は「不正確だ」と述べました(CGTN 3月7日報道)。

しかし、その「封鎖していない」という声明と同日に、IRGCは石油タンカー「プリマ」へのドローン攻撃と、米国系タンカー「ルイーズP」への攻撃を主張しています(Wikipedia「2026 Strait of Hormuz crisis」3月7日更新)。IRGCの立場を整理すると、「海峡は封鎖していない。ただし戦時下においてイランは航行を管理する権利があり、米国・イスラエル・欧州の船舶の通航は禁止する」というものです。事実上の封鎖を維持しながら、国際法上の「封鎖宣言」の責任は回避する戦略と見られます。

攻撃の実態が深刻化:開戦から8日間で、少なくとも8隻以上の船舶が被弾または損傷しています。3月6日にはマルタ船籍「サフィーン・プレステージ」の救援に向かったタグボートがミサイル2発を受け、乗員8名全員が死亡したと報じられています。IRGCは10隻以上のタンカーを攻撃したと主張しており(Al Jazeera 3月5日報道)、救助船すら標的になるという状況が海運業界の恐怖を増幅させています。

原油価格が90ドル台に急騰、100ドル目前:WTI原油は3月6日に90ドル台に到達し、2023年10月以来の高値を記録しました。週間上昇率は約35%と過去20年最大です(Bloomberg 3月6日報道)。ブレント原油も92ドルを超え、複数のアナリストが数日以内の100ドル到達を予測しています。RBCキャピタル・マーケッツのクロフト氏は「1970年代の石油禁輸以来、最大のエネルギー危機に直面している可能性がある」と警告しています(NPR 3月4日報道)。

湾内に約3,200隻が滞留:海運データ大手のクラークソンズ・リサーチの推計では、ペルシャ湾内に約3,200隻(世界の船舶トン数の約4%)が動けない状態で滞留しています。うち約1,230隻は湾内のみで運航する船舶ですが、それ以外は国際航路の船です。さらに湾の外側(UAE・オマーン沿岸)にも約500隻が待機しています(AP通信、Al Jazeera 3月5日報道)。日本船主協会の報告では、日本関係船44隻が湾内に足止めされており、船員の食料・水の供給問題も浮上しています(日本経済新聞 3月4日報道)。

イランは安価なドローンで封鎖を達成:注目すべきは、イランが機雷や大規模な海上封鎖ではなく、安価なドローンによる選択的攻撃だけで事実上の通航停止を実現した点です(NPR 3月4日報道)。これにより保険会社が戦争リスク保証を停止し、海運会社がコスト面で航行不能に陥る──物理的な封鎖がなくても「経済的封鎖」が成立するという新しいパターンが示されています。

運航の回復の見込み

結論から申し上げますと、短期的な運航回復の見込みは極めて厳しい状況です。主な理由は以下の通りです。

海運業界は「停戦なくして再開なし」:日本船主協会の会合(3月4日)では、コンテナ船社の関係者が「護衛がついたとしても、一番始めに通航する決断をすることはない。まずは停戦合意されることが再開を判断するうえで重要になる」と明言しました(日本経済新聞 3月4日報道)。CNNの取材でも、ロサンゼルス港のセロカ局長が「停戦以外に船を動かす要因はない」、ギリシャの海運大手CEOが「航路が本当に安全だという確信が必要」と語っています(CNN 3月6日報道)。

トランプ大統領の護衛・保険策は効果限定的:トランプ大統領は3月3日、米国際開発金融公社(DFC)を通じた約3兆円規模の政治リスク保険提供と、米海軍によるタンカー護衛を表明しました(時事通信 3月7日報道)。しかし、これに対しIRGC報道官のナイニ氏は3月6日、「米海軍の存在を歓迎する。我々は待っている」と挑発し、1987年のタンカー「ブリッジトン」火災事件を引き合いに警告を発しています。米政府高官もCNNに対し護衛開始の「具体的なタイムラインはない」と認めており、実現性には疑問が残ります(Bloomberg 3月4日報道)。

外交的解決の糸口が見えない:イラン国内では、外交筋が「封鎖の意図なし」と対話の余地を残す一方、IRGCは攻撃を継続・拡大しており、指揮命令系統の不統一が外部からの交渉を困難にしています。米上院ではイラン攻撃権限の制限案が否決され(3月5日)、トランプ政権はイランの新指導者選出への関与まで要求するなど、事態収束の兆しは見られません。中国の外交介入が唯一の変数として指摘されていますが、パキスタンがサウジアラビアに紅海側のヤンブー港経由での原油調達を要請するなど(Al Jazeera 3月5日報道)、各国は外交解決よりも代替ルートの確保に動き始めています。

産油国の生産停止リスクが浮上:封鎖の長期化に伴い、新たな局面が出てきています。湾岸に停泊する空の大型タンカーが減少しており、サウジアラビア・イラク・UAEなどでは原油を積み出せないために貯蔵タンクが満杯に近づき、一部油田で生産削減を余儀なくされ始めています(Bloomberg 3月6日報道)。Wall Street Journalは混乱が1カ月以上続くと予測しており、輸出できない原油が貯蔵限界に達すれば、生産の全面停止という事態も現実味を帯びます。日本の石油備蓄は約146日分(国家備蓄)とされていますが、天然ガスの備蓄は約3週間分にとどまる点にも注意が必要です(Business Insider Japan 3月3日報道)。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    Claudeの回答を踏まえ、Bloomberg、日本経済新聞、NHK、Al Jazeera、CNN、NPR、CGTN等の報道と照合してみました。

    今回、最も注目したのは「イラン国内の主張の食い違い」です。

    革命防衛隊(IRGC)が「海峡は閉鎖した、通過する船は焼き払う」と宣言する一方で、アラグチ外相は「封鎖の意図はない」と否定し、IRGC高官の一人も国営テレビで「不正確だ」と述べている。ところがその同じ日に、IRGCはタンカーへのドローン攻撃を発表している──この矛盾した構図は複数の海外メディアで裏付けが取れています。

    これが意味するのは、イラン側に交渉窓口が一本化されていないということです。外交筋と話がついたとしても、IRGCが独自に攻撃を継続する可能性がある。海運業界が「停戦合意がなければ動かない」と言い切る背景には、この不透明さがあるのだと感じました。

    また、3月2日の調査でGeminiが回答した時点では「150隻以上が待機」だった数字が、8日間でさらに膨れ上がり、クラークソンズ・リサーチの推計では湾内滞留が約3,200隻にまで拡大しています。海峡手前で待機する段階を超え、産油国側が貯蔵タンク満杯で生産削減に追い込まれるという新たな局面に入りつつあります。

    AIの回答はあくまで参考ですが、今回も複数の一次ソースとの整合性は高く、特にイラン国内の主張の分裂という論点は、この先の展開を読む上で重要なポイントになりそうです。以下では引き続き、複数の情報源から確認できたファクトをもとに、中古車市場への影響を整理していきます。

海運の状況は?日本の海運大手3社も航行停止

今回の事態の深刻さを物語っているのが、日本の海運大手3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)がそろってホルムズ海峡の航行停止を決定したという事実です。報道によると、平時であればペルシャ湾内にはLNG船、原油タンカー、自動車運搬船など日本関連だけで数十隻が常時航行しているとのことです。

調べていくと、海運への打撃は物理的な航行停止だけにとどまらないということがわかってきました。ロイズなどの国際的な海上保険市場では、ホルムズ海峡周辺の海域が「ハイリスク・エリア」に指定され、戦争保険料(War Risk Premium)が急騰しているようです。通常は船舶価値の0.2〜0.3%程度だった保険料が0.5%以上に跳ね上がり、一部ルートでは数日のうちに40〜60%の上昇が報じられています(注釈※1)。さらには保険の引き受け自体が拒否されるケースもあるとのことで、仮に航路が安全になったとしても、経済的に航行が成立しないという構造的な問題を抱えていることになります。

ここで思い出されるのが、2023年後半から続いた紅海・バブ・エル・マンデブ海峡でのフーシ派による攻撃(いわゆる「紅海危機」)です。紅海危機では、同水域の交通量が大幅に減少し、多くの船舶が喜望峰回りの迂回を強いられた結果、輸送日数が15〜20日延長され、運賃は一時的に2〜3倍に高騰した事例が報告されています(注釈※1)。今回も同様か、あるいはそれ以上の混乱が起きる可能性があると考えられます。

【表1】海運環境の変化:平常時と封鎖時の比較
指標・項目 平常時(2025年実績) 封鎖時(2026年3月〜) 想定される影響
海上戦争保険料率 船舶価値の 0.2〜0.3% 0.5%以上(特定ルートで40〜60%増) 1航海あたり20万〜50万ドルの追加コストが見込まれる。引き受け拒否も
コンテナ・RORO運賃 需給に応じた安定推移 通常の2〜3倍(紅海危機時の実績ベース) 低価格車の輸出が経済的に成立しにくくなると考えられる
輸送リードタイム 通常スケジュール +15〜20日(喜望峰迂回・沖待ち) 資金回収サイクルの長期化。中小輸出業者の経営圧迫につながる可能性
中東域内トランジット ドバイ(Jebel Ali)中心 湾外港(Sohar、Salalah等)での代替 港湾混雑、陸送コストの大幅増加が想定される

※ 上表は各種報道および調査レポートをもとに作成。数値は推定を含みます。

中古車輸出に影響が出そうな国や地域は?

UAE:年間22万台の輸出先が「物理的に遮断」される

前回の貿易統計記事でお伝えした通り、2025年の日本からUAEへの中古車輸出は22万3,999台(約1,114億円)で国別首位でした。調べてみると、UAEの中核港であるジェベル・アリ港は2024年に年間約96万台の自動車を処理しており、世界最大級の自動車トランジット拠点として機能していたようです(注釈※2)。

このジェベル・アリ港は、ホルムズ海峡の「内側」に位置しています。つまり海峡が封鎖されると、海上からのアクセスは実質的に遮断されるということになります。年間130万台規模のエコシステムの心臓部が止まる──これがどれほどの影響をもたらすのか、調べれば調べるほど深刻さが見えてきました。

アフリカ:UAEの「ハブ機能」停止の影響を最も受けそうな地域

前回の貿易統計記事で、JETROが「日本からアフリカへの自動車輸出は、UAE経由も多い」と報告していたことをお伝えしました。調べてみると、UAEは単なる最終消費地ではなく、アフリカや中央アジアへの「再輸出拠点」として非常に大きな役割を担っているようです。ドバイやシャルジャでは、日本から輸入した中古車を現地で解体し、エンジンやトランスミッションなどの部品としてアフリカ諸国へ再輸出する巨大なビジネスモデルが構築されていることがわかりました(注釈※3)。

このハブが機能不全に陥ると、アフリカの消費者は修理部品の供給を断たれ、車両の延命が困難になると考えられます。日本からの直接輸出(ダイレクト・シッピング)への移行が進むことになりそうですが、ケニアやタンザニアでは「製造から8年以内」の年式規制があり、さらに輸入関税(CIF価格の25%)、物品税(20%)、付加価値税(16%)など多重課税が課されるとのことで(注釈※4)、消費者への価格転嫁は避けられそうにありません。

ロシア・中央アジア:直接的影響は限定的だが間接的に競争が激しくなりそう

日本からロシアへの輸出(2025年実績:18万6,582台で国別2位)は、主に日本海側の港からウラジオストク等へ直接輸送されるルートが中心のようです。そのため、ホルムズ海峡封鎖の直接的な物流影響は限定的と考えられます。同様に、モンゴル(6万3,366台、国別7位)向けも中国経由の陸路が主流とのことです(注釈※5)。

ただし、UAE経由の調達ルートを失ったジョージアやアゼルバイジャンなどコーカサス・中央アジア諸国が、日本からの直接輸入やロシア経由のルートに移行してくる可能性があります。そうなると、特定市場での供給過剰と競争激化が起きてくるのではないか、というのが気になるところです。

【表2】日本の中古車輸出上位10か国とホルムズ海峡封鎖の影響度
順位 国名 2025年輸出台数 輸出金額 封鎖の影響度
1 UAE 22万3,999台 1,114億円 ◎ 極めて大きい(海路遮断)
2 ロシア 18万6,582台 2,163億円 △ 間接的(競争激化リスク)
3 タンザニア 10万5,250台 623億円 ○ 大きい(UAE経由分の断絶)
4 チリ 7万3,337台 274億円 △ 限定的
5 ケニア 7万0,325台 866億円 ○ 大きい(UAE経由分の断絶)
6 ニュージーランド 6万8,903台 528億円 △ 限定的
7 モンゴル 6万3,366台 746億円 △ 限定的
8 スリランカ 5万8,566台 1,372億円 ○ やや大きい(運賃高騰)
9 南アフリカ 5万2,024台 197億円 ○ 大きい(UAE経由分の断絶)
10 パキスタン 4万4,911台 726億円 ○ やや大きい(運賃高騰)

※ 輸出台数・金額は財務省「貿易統計」(2025年分)より。影響度は各種情報をもとに整理した評価です。

中古車市場で影響を受けそうな車種は?

価格下落リスクが高いと考えられる車種

UAE・シャルジャ向けにトランジット(部品取り・再輸出)を前提として取引されてきた低価格帯の車両は、行き先を失う可能性が高いと考えられます。

たとえば、車両本体価格が数十万円程度のコンパクトカー(トヨタ ヴィッツ/ヤリス、ホンダ フィットなど)。これらは「薄利多売」のビジネスモデルで成り立っていた車種であり、海上運賃と保険料の高騰によりCIF価格(運賃保険料込み価格)が車両本体を上回る「運賃負け」が発生するということになります。また、過走行・事故歴ありの車両で、シャルジャの解体市場へ流れていたいわゆる「部品取り車」も、需要が急減すると考えられます。アフリカ向けトランジットを前提とした低年式・低グレード車も同様の影響を受けそうです。

価格が維持または上昇する可能性がありそうな車種

一方で、中東情勢の影響を受けにくい輸出先を持ち、かつ需要が底堅い車種は価格維持が見込めそうです。

ニュージーランドやモンゴル向けに需要の高いハイブリッド車(トヨタ プリウス、トヨタ アクアなど)は、輸出ルートがホルムズ海峡に依存していないため、相場への直接的なダメージは限定的と考えられます。また、トヨタ ランドクルーザーをはじめとする高年式の大型SUVは、原油高で潤う産油国からの特需が発生する可能性もあり、むしろ価格が上がる要因を抱えているという見方もできそうです(注釈※5)。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    リセバ総研でもお伝えしている通り、2025年のオークション市場は引き続き好調でした。

    USSの11月平均落札価格は約129万7,000円(前年同月比9.6%増)、成約率も68.1%と高い水準です。

    しかし、最大の輸出先であるUAE向けの動きが止まれば、この需給バランスは一変する可能性が高くなります。

    トランジット向けの低価格車は「行き場を失った在庫」となり、オークションでの成約率低下と価格崩落が現実味を帯びてくるように思います。

為替や国際経済に与えそうな影響は?

原油価格の急騰リスク

ホルムズ海峡は世界の海上石油貿易の約20%(日量約2,000万バレル)が通過する大動脈とのことです(注釈※6)。封鎖が長期化した場合、国際原油価格(ブレント原油)は1バレル120ドル〜最大150ドルに達するリスクが指摘されています(注釈※7)。サウジアラビアやUAEの迂回パイプラインを最大限稼働させても、ホルムズ海峡の輸送量を完全にカバーすることはできないようです(注釈※8)。

日本はエネルギー供給の約83%を化石燃料に依存し、原油のほぼ全量を輸入に頼っている国です(注釈※9)。仮に原油が150ドルに達すれば、国内のガソリン価格は大幅に上昇し、物流コスト全般の押し上げを通じて、消費者物価にも深刻な影響が及ぶと考えられます。

為替の変動と「有事のドル買い」

2026年初頭の為替市場は、すでにトランプ米政権の「ドル安」志向により、1ドル=159円台から152円台へと円高方向に振れていたようです(注釈※10)。

しかし、有事発生後は「有事のドル買い」が作用し、再び円安方向に振れる可能性も指摘されています。為替の変動幅が大きくなること自体が、輸出業者にとっては仕入れ価格の予測を困難にし、事業リスクを増大させる要因になると考えられます。

「スタグフレーション」的な環境の到来

原油高による物価上昇と、経済成長の鈍化が同時に進行する「スタグフレーション」的な環境が、現実味を帯びてきます。

消費者の購買力が低下すれば、新車の販売台数が減少し、中古車市場に流入する良質な「下取り車両」の供給が細ることになります。これは中古車輸出市場にとって、需要減と供給減が同時に起きるという厄介な状況ということになりそうです。

今後の中古車相場の展開はどうなる?

オークション相場は相反する力が働く可能性

ここまで調べてきた内容を総合すると、中古車オークション市場には相反する二つの力が同時に作用しそうだということが見えてきます。

一方では、中東・アフリカ向け輸出需要が減退することによる「価格下落圧力」。もう一方では、原油高による新車販売の低迷がもたらす「良質な中古車の供給不足」による「価格維持・上昇圧力」。この二つの力が綱引きすることで、車種カテゴリーごとに明暗がはっきり分かれる相場展開になるのではないかと考えられます。

言い換えれば、輸出業者にとっては「売り先(中東・アフリカ向け)が消えたのに、仕入れ価格は下がらない」という厳しい事業環境に直面する可能性がある、ということになります。

代替ルートの模索

調べていくと、ホルムズ海峡の「外側」に位置する港湾が代替拠点として注目されているようです。特に有力なのがオマーンの2港とのことでした。

【表3】代替港湾の機能比較
港湾名 所在地 処理能力 中古車輸送の代替可能性
ソハール港 オマーン北部(オマーン湾) 約94万TEU、RORO 8.7万台(2024年) UAEへの陸路接続(ブライミ経由)が可能とされる。ただし陸送コスト増が課題
サラーラ港 オマーン南部(アラビア海) 600万TEU(拡張済み) 海峡リスクを完全回避。アフリカ東岸への直接積み替え拠点として最有力とみられる
フジャイラ港 UAE(オマーン湾) 72万TEU 石油・バンカリング主体で、大規模なROROの受け入れキャパシティには限界がありそう

特にサラーラ港は、紅海危機の際にトラック陸送や航空貨物との組み合わせ(マルチモーダル輸送)で高い柔軟性を示した実績があるとのことです(注釈※11)。中古車輸出においても、ジェベル・アリに向かうはずだった車両をサラーラ港でコンテナに積み替え、ケニアやタンザニアへ直接再輸出するルートが主流化していく可能性があると考えられます。

中国車が台頭し日本の中古車がシェアを失う可能性も

調べていて見逃せないと感じたのが、中国車の動きです。米国による対中関税(145%)の余波で行き場を失った中国メーカー(Jetour、Geelyなど)の安価な新車(EVやガソリン車)が、中東・アフリカ市場へ急速に流入しつつあるとの報告がありました(注釈※12)。

日本の中古車の物流が止まっている間に、中国車が一気にシェアを確立してしまうと、サプライチェーンが回復しても日本の中古車が失ったシェアを取り戻すことが難しくなる可能性もあります。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    今回の調査で改めて感じるのは、「物流が止まっている間も現地の需要は消えない」ということです。

    世界中の人々が、(相対的に)安価で高性能な日本の中古車を必要としています。

    それでも日本車が届かないとなれば、代わりの選択肢がその需要を埋めていくことでしょう。

    サプライチェーンの断絶は、一時的な売上減ではなく、市場シェアの恒久的な喪失につながりかねなません

国産車のリセールバリューへの影響は?

ここまでの調査内容を踏まえて、日本国内の「リセールバリュー(中古車の残価・買取価格)」にどのような影響がありそうか、整理してみます。

短期的にリセールバリューが下がる可能性のある車種は?

UAE・アフリカ向けトランジット需要に支えられていた低年式のコンパクトカーや軽自動車、過走行の実用車は、輸出需要の急減により国内のオークション成約率が低下し、買取相場が下落する可能性が考えられます。

具体的には、トヨタ ヴィッツ/ヤリス、ホンダ フィット、日産 マーチといった、低年式や過走行のコンパクトカーは影響を受けるかもしれません。

リセールバリューを維持または上昇の可能性がある車種は?

ホルムズ海峡に依存しない輸出先を持つハイブリッド車や高年式SUVは、引き続き堅調な需要が見込めるでしょう。

トヨタ プリウス/アクア(ニュージーランド・モンゴル向け)、トヨタ ランドクルーザー各種(産油国向け特需の可能性)、トヨタ ハイエース(アフリカ直接輸出の底堅い需要)といった、長年にわたり海外の需要が高い車種たちです。

国内ユーザーへの影響は?

日本国内でクルマを売却しようとしている一般のユーザーの方にとっては、自分の車がどの輸出先で需要があるかによって買取価格への影響が異なってくることになります。

人気車種のハイブリッドやSUVは、当面は強気の査定が期待できると思われます。

一方で、低年式のコンパクトカーや軽自動車は、これまで輸出需要が支えていた「底値の上昇」が止まり、崩れていくリスクも考えられます。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    リセールバリューは「需要と供給」で決まります。

    中東情勢が変われば、需要構造が変わり、リセールバリューも変わります。

    「国際情勢と買取価格がつながっている」というのは、当メディアが繰り返しお伝えしてきた視点ですが、今回の調査を通じて改めてその重みを感じました。

    ご自身のクルマのリセールバリューを改めて意識していただきたいタイミングではないかと思います。

まとめ:単一ハブへの依存リスクが露呈

今回、調べてみて見えてきたのは、2026年3月のホルムズ海峡封鎖が、日本の中古車輸出産業が長年にわたって依存してきた「UAEを中核とする再輸出エコシステム」の構造的な脆弱性です。

先月公表された2025年の貿易統計で、UAEが国別輸出先1位に輝いた直後の事態という意味でも、このタイミングは象徴的だと感じます。

年間22万台を超える輸出フローの行き先が物理的に塞がれる。これは数字の上での話ではなく、日本の中古車輸出に携わるすべての事業者にとって、今まさに直面している現実ということになります。

中古車業界のこれからを占う上で注視すべき3つの焦点

今後の焦点は以下の3点に集約されると考えられます。

1.事態の収束時期

外交的な解決が図られ、海運各社が運航を再開できる環境が整うまでにどれだけの時間がかかるか。これがすべての影響の規模を決定づけることになりそうです。

2.代替サプライチェーンの構築速度

サラーラ港やソハール港を経由した新たな物流ルートがどの程度のスピードで立ち上がるか。また、アフリカへのダイレクト・シッピングがどこまで実効性を持つかという点です。

3.中古車のリセールバリューへの中長期的な影響

車種カテゴリーごとの二極化がどこまで進行するか。そして、中古車が輸出されている現地で他国車のシェアが拡大した場合、日本の中古車の国際競争力がどう変化していくかという点です。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    最後に改めて、中東地域で被害を受けておられるすべての方々の安全と、一日も早い平和の回復を心から願っています。

    世界では様々な紛争や事件が発生し、人々の命と暮らしへの影響が出ています。

    リセバ総研では、今後も世界の情勢が中古車市場に与える影響を継続的にウォッチし、続報をお届けしてまいります。

注釈/参考視聴
※1 海上戦争保険料や運賃の高騰に関するデータは、Financial Express「Strait of Hormuz blockade: Freight insurance costs set to surge」(2026年3月2日アクセス)および世界銀行「The Deepening Red Sea Shipping Crisis」等を参照。

※2 ジェベル・アリ港の自動車取扱実績は、The Maritime Standard「Dubai Port Sets 2024 Automotive Cargo Record」(2026年3月2日アクセス)を参照。

※3 UAEの解体・再輸出ビジネスの構造は、Mr Aghazamani「The Role of the United Arab Emirates in Global Car Re-Export and Trade」(2026年3月2日アクセス)およびJapan Carrier「2025 Edition: The Complete Guide to Used Car Exports in the UAE」を参照。

※4 ケニアの輸入関税・課税体系は、Next Drive「Import Japanese Cars Mombasa: Affordable & Guide to Duty-Free Clearance & Shipping」(2026年3月2日アクセス)を参照。

※5 日本の中古車輸出市場の全体像と車種別動向は、Provide Cars「[2025 Edition] Japanese Used Car Exports Are Unstoppable!?」および同「Japan Auctions [Jan 2026 Update]」(2026年3月2日アクセス)を参照。

※6 ホルムズ海峡の通過量に関するデータは、米国エネルギー情報局(EIA)「Amid regional conflict, the Strait of Hormuz remains critical oil chokepoint」を参照。

※7 原油価格の高騰リスクに関する予測は、朝鮮日報英語版(Chosun)「Iran’s Hormuz Strait Blockade Sparks $150 Oil Price Fears」(2026年3月1日)を参照。

※8 迂回パイプラインの能力と限界については、Middle East Forum「Could a Strait of Hormuz Closure Stop All Persian Gulf Oil and Gas Exports?」を参照。

※9 日本のエネルギー依存構造は、The Japan Times「Japan’s economy is particularly vulnerable amid Middle East conflict」(2025年6月20日)を参照。

※10 為替動向と衆院選の影響は、Provide Cars「[Feb 2026] Japan Election Update: 4 shifts that can change your Japan used-car buying cost」を参照。

※11 サラーラ港のマルチモーダル実績は、APM Terminals「Port of Salalah introduces viable alternative to Red Sea route」(2024年5月8日)を参照。

※12 中国車のアフリカ進出については、CleanTechnica「A New Wave Of Disruption Could Be Coming To Africa’s Used Car Ecosystem Courtesy Of More Affordable Brand New Cars From China」(2025年11月17日)およびAutoData UAE「H1 2025 Used Car Market Report」を参照。

※ 貿易統計データの出典: 財務省「貿易統計」(2025年分)。リセバ総研の記事「2025年の貿易統計が発表:中古車輸出先で地域別首位はアフリカ、国別首位は中東UAEに」も併せてご参照ください。

※ Geminiの回答について: 本記事に掲載したGeminiの回答は、2026年3月2日時点で取得したものです。AI生成テキストは法的に著作権が成立しないとする見解が有力ですが、念のため原文をそのまま掲載し出典を明示しています。

※ 本記事の性質について: 本記事はリセバ総研所長(床尾一法)がAIや各種公開情報をもとに調査・整理した内容であり、個人的な見解を含みます。投資助言や経営判断の推奨を目的としたものではありません。情報は2026年3月2日時点のものであり、中東情勢は刻一刻と変化しています。最新の状況は各種報道でご確認ください。