リユース市場探訪 中古車と中古ブランド品でリセールバリューの考え方に違いはあるのか?ブランドオフに聞いてみた(中編)

古くはYahoo!オークションに始まり、メルカリをはじめとしたフリマサービスの隆盛によって、現在でも成長が続くリユース品(中古品)の市場。
自分の所有しているものが不要になれば、たとえ価値が低くても「オークションやフリマサービスで売却する」「買取専門店で買い取ってもらう」という考え方は、いまやあたりまえの生活文化になったと言っても過言ではない。
リセバ総研では、リユース市場における中古車のリセールバリューをテーマとしてメディア運営に取り組んでいるが、はたして中古車以外のリユース市場ではどのようにリセールバリューが捉えられていて、商品のリセールバリューはどのような要素で決まっていくのだろうか?
今回は「中古ブランド品」にフォーカスし、中古ブランド品の買取・販売店「ブランドオフ」を全国で展開する株式会社K-ブランドオフの西部優太さんにお話を聞いてみた。

西部 優太

株式会社K-ブランドオフ 営業企画部 部長

株式会社コメ兵2007年入社、売場経験を経て各店の副店長、店長を経験し2017年頃より中国事業に携わる。 現地での店長、商品管理、マーケティングなど様々な業務を経験し2023年よりK-ブランドオフへ出向。 店舗事業部を経て、現在は営業企画部の部長に就いている。

リセバ総研所長

リセールバリュー総合研究所 管理運営者 兼 アナリスト

中古車情報誌の最大手での制作、旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)で自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティング界隈でインハウスやコンサルタントとして活動してきたが、2017年に人材開発の世界へ転向。インストラクショナルデザインや対話空間の設計、学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。
  • リセバ総研所長

    (2024年9月上旬時点で)いま中古車市場は非常に活況で、円安効果もあってか輸出ニーズが高い傾向にあります。中古ブランド品市場の動向についてはいかがでしょうか?

  • 西部 優太

    日本は現在少子高齢化で生産人口、労働人口の減少が進んでいて、国内経済の成長も厳しいと言われているところですが、一方でリユース市場はずっと成長が続いている状況なので、ブランド品も含めたリユース市場はまだまだ成長すると見ています。

    しかし一方で、車を購入する際には中古車が選択肢に入ることは当たり前だと思いますが、ブランド品については「まず中古を買ってみよう」とはならないんですね。ほとんどの方が「まずはブランド直営店で買おう」となります。

    リユース市場の成長は、消費者が「中古品を選択肢に入れてみよう」というマインドに変わっていく過渡期にあるのではないでしょうか。バッグだけでなく時計や宝飾品も需要が高く購買力もある中国などに流れていく傾向がありますので、日本国内のブランド直営店では今まで以上に購入しにくくなっていく可能性があり、そうした動きもリユース市場の成長を加速させるのではないかと考えられます。

  • リセバ総研所長

    リユース市場では中古ブランド品の買取をしている会社が多数ありますが、その中でブランドオフさまの強みはどのような点なのでしょうか?

  • 西部 優太

    私たちの強みのひとつが買取だけでなく小売(国内・海外・オンライン)にも強いという点です。他の買取事業者さんの場合、買取した商品をすぐにオークションに流してお金に変えるというスキームでビジネスを行っているところが多く、買取専門店の場合は店舗サイズが小さく販売在庫を抱える必要もありません。

    中古車市場と比べ商品1点1点の物理的サイズが小さいので中古車市場と比較して、中古ブランド市場の参入障壁はより低いと言えるかもしれませんね。ただ、販売スキルや言語スキルを持った人材や販売在庫管理が必要な小売(国内・海外・オンライン)まで展開している事業者は多くはありません。

    そしてもうひとつの強みが、お客様への対応力ですね。デジタルの時代になり査定金額で他社への差別化が難しくなってきている中で、その中でお客様に継続的に選ばれるお店になるためには接客という店舗運営の原点に立ち返ることが大切だと思っています。たとえば、ブランドオフと他店を比較して、ブランドオフの方が査定金額の面で厳しかったとしても、選ばれるようなお店を目指したいですね。長年買取ビジネスを続ける中でベテランのスタッフとお客様との間で生まれた深い結びつきというのがありますので、これからはそれを若いスタッフに継承していければと考えています。

  • リセバ総研所長

    (インタビューをしている)このオフィスには研修センターという場所がありますね。

    そこではどのような研修をされているのでしょうか?

  • 西部 優太

    研修センターでは、店頭で買取を行うバイヤーがデビューする前の研修を行なっており、フランチャイズを含めた全店舗のバイヤーに対して教育を行なっています。

    バッグ、宝石、時計という3つの商品カテゴリーについて基礎的な知識や買取査定で重要な真贋判定の技術を講義形式で学び、接客についても研修を行います。

    最終的には買取を実践するテストを行い合格した人が、実際にお客様と対面して買取査定を行う形ですね。

  • リセバ総研所長

    買取の査定にあたっては、商品の査定基準についてどのように定められているのでしょうか?

  • 西部 優太

    品物によって異なりますが、ブランドバッグについてはコンディションの査定も含めて多数の査定ポイントがあります。

    さらにこの査定ポイントの中には全商品で共通して見るポイントとブランドごとに個別のポイントがあり、この査定ポイントと基準はフォーマットされています。これは研修でも学びますし、フランチャイズを含めて全店舗共通の基準で査定を行なっています。

  • リセバ総研所長

    市場の動向についてもう少しお話をお伺いしたいのですが、リユース市場に対するお客様の意識や考え方について、なにか変化のようなものは見られますか?

  • 西部 優太

    お客様の指向としては、クルマの購入と同じくブランド品を資産価値として見る人が多くなってきていて、購入時にリセールバリューを考える人は着実に増えていますね。

    購入を検討している商品は買取査定に出すといくらになるのかというのを購入の段階でスタッフと相談したり、事前にネットで調べたりするというケースが増えていて、結果的に今まで購入していた中価格の商品より少し高い価格の商品を、リセールバリューを考慮して購入するという傾向も生まれています。

    また、ブランドオフのターゲットとなるのは30代から50代の方々ですが、“脱物質主義”と言われているZ世代の方々も“高価なものに触れておこう”という意識からブランド品に対する興味が戻ってきている印象があります。

  • リセバ総研所長

    消費行動そのものにも変化が生まれているのでしょうか?

  • 西部 優太

    新しいものをどんどん買うというスタイルが、消費行動としてはエシカルではないという意識が高まっていますね。

    自分の周りを整理してミニマルな生活を送るというスタイルの増加も近年の象徴的な変化ですし、新しいものを買い足すのではなく今使っているものを処分して新しいものにアップグレードするという考えが当たり前になりつつあると思います。

    こうした消費行動の変化を踏まえて、未来の価値=リセールバリューの提案まで含めてお客様とコミュニケーションを取っていきたいですね。

  • リセバ総研所長

    ちなみに、ブランド品のリセールバリューというのはツーオーナー、スリーオーナーと渡っていった場合でも維持されるものなのでしょうか?

  • 西部 優太

    海外のお客様はワンオーナーであることや商品の年式を気にされますが、基本的には商品のコンディションで価値が決まりますね。

    バッグは難しいですが、時計や宝飾品の場合は綺麗に磨き上げれば車の板金塗装のように新品に近い状態に戻せますので、経てきたオーナーの数よりもコンディションが重視される傾向があります。

  • リセバ総研所長

    海外の方は、「新しいモノの方が価値がある」と感じている人が多いんですね。

  • 西部 優太

    台湾や香港などはファッショントレンドのスピードがどんどん早くなっているので、日本よりトレンドのサイクルが速いんですね。

    日本では10年〜20年前の商品でも選ばれますが、海外だと2年前、3年前でももう型落ちと考える方もいらっしゃる。

    だから年式が重視されるのだと思います。ちなみに海外では日本より若い人がブランド品を購入する傾向が強く、20代のお客様も多いです。背景には、海外で富裕層が増えて可処分所得が日本より多くなっているという点や、円安による効果もあると思います。

  • リセバ総研所長

    年式が重視されるのですね。そのあたりはクルマと同じですね。

    海外は20代のお客様も多いというのも興味深いところです。

    (後編につづく)