イラン情勢がもたらす物流への影響は? ホルムズ海峡封鎖から1週間〜3月7日までの中古車査定データに現れ始めた「二極化」の兆候

前回の記事で予測した「車種カテゴリーごとの二極化」は、実際に起きているのでしょうか。封鎖前の週(2月22日〜28日)と封鎖直後の週(3月1日〜7日)の中古車買取査定データを比較して、何が見えてきたのかを整理してみました。

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。
前回の記事

封鎖状態から1週間が経過し中古車市場のデータに何が現れたかのか?

前回の記事では、ホルムズ海峡封鎖が中古車輸出市場にもたらしそうな影響として、「車種カテゴリーによる極端な二極化」を予測しました。UAE・アフリカ向けトランジット需要に依存した低価格車は下落し、非中東ルートを持つハイブリッド車や高年式SUVは安定するという見立てです。

あれから1週間。リセバ総研が集計している「中古車のガリバー」(株式会社IDOM)の買取査定データを見ると、封鎖前の週(2月22日〜28日)と封鎖直後の週(3月1日〜7日)で、車種や年式によってかなり異なる動きが出始めていることがわかりました。

とはいえ、まだまだ1週間分のデータですので断定はできませんが、前回の予測がどの程度当たっていそうか、あるいは予想外の動きがあるのか、データを見ながら整理してみます。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    まず最初に取り上げるのは、輸出市場で異なる性格を持つ代表的な4車種(プリウス、ハイエースバン、ヴィッツ、アルファード)の年式別データ。

    そして査定件数上位25車種のランキングデータです。

    「封鎖の影響を受けそうな車」と「受けにくそうな車」の違いが、わずか1週間で数字に表れ始めているのかどうか?見ていきましょう。

代表的な4車種の中古車買取相場を封鎖前後で比較してみる

以下では、輸出市場で異なる性格を持つ4車種について、年式別で封鎖前後の「平均売却予想額」(買取相場)を比較してみます。前週比が100%を下回っていれば下落、上回っていれば上昇です。

トヨタ プリウスの中古車買取相場(3月1日週の査定順位:2位)

経年 年式 封鎖前週 封鎖後週 前週比
1年落ち 2025年式 ¥3,071,111 ¥2,970,000 97%
3年落ち 2023年式 ¥2,722,222 ¥2,766,000 102%
4年落ち 2022年式 ¥2,195,000 ¥1,897,500 86%
5年落ち 2021年式 ¥1,914,000 ¥1,620,000 85%
8年落ち 2018年式 ¥1,109,231 ¥1,172,000 106%
11年落ち 2015年式 ¥541,765 ¥582,381 107%
16年落ち〜 2010年式以前 ¥256,250 ¥245,970 96%

※ 紙幅の都合上、特徴的な年式を抜粋して掲載。© 2026 IDOM Inc. リセールバリュー総合研究所

プリウスは全体的にはまだ大きな崩れが見られません。ただし、50系の4〜5年落ち(2021〜2022年式)が85〜86%と突出して下落しています。この年式帯はマレーシア向け輸出(AP制度で5年規制)のギリギリの対象であり、輸出需要の先行き不透明感が早めに反映された可能性が考えられます。

一方で、30系後期にあたる8年落ち(2018年式)は106%、11年落ち(2015年式)は107%と微増しています。このあたりの年式帯はモンゴルやニュージーランド向けの需要が中心であり、ホルムズ海峡を経由しないルートのため底堅いのかもしれません。

トヨタ ハイエースバンの中古車買取相場(3月1日週の査定順位:22位)

経年 年式 封鎖前週 封鎖後週 前週比
2年落ち 2024年式 ¥2,895,000 ¥3,740,000 129%
4年落ち 2022年式 ¥3,256,667 ¥3,215,000 99%
5年落ち 2021年式 ¥2,978,000 ¥2,455,000 82%
8年落ち 2018年式 ¥2,412,500 ¥1,702,500 71%
9年落ち 2017年式 ¥1,453,333 ¥1,946,250 134%
11年落ち 2015年式 ¥1,512,500 ¥1,044,000 69%
16年落ち〜 2010年式以前 ¥855,172 ¥880,000 103%

※ 紙幅の都合上、特徴的な年式を抜粋して掲載。© 2026 IDOM Inc. リセールバリュー総合研究所

4車種の中で最も変動が激しいのがハイエースバンです。8年落ち(2018年式)が71%、11年落ち(2015年式)が69%と大きく下落している一方、2年落ち(2024年式)は129%、9年落ち(2017年式)は134%と急騰しています。

ケニアの年式規制(製造8年以内)を考えると、2018年式はちょうど規制の境界にあたります。UAE経由が使えなくなったことで、ケニア向けダイレクト・シッピングへのルート変更が模索される中、「規制ギリギリの年式」が最も不安定になっているという解釈ができそうです。逆に高年式(2〜4年落ち)は国内需要と非中東ルートの堅い引き合いに支えられ、むしろ値上がりしている可能性があります。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ハイエースバンのデータを見て驚いたのは、同じ車種の中でこれほど明暗が分かれるのかという点です。

    69%と134%が同居し。これはまさに「二極化」そのものだと感じました。

    ハイエースは輸出市場の「象徴」だけに、この車種のデータが今後の相場の方向性を示唆しているように思います。

トヨタ ヴィッツの中古車買取相場(3月1日週の査定順位:28位)

経年 年式 封鎖前週 封鎖後週 前週比
10年落ち 2016年式 ¥445,455 ¥390,000 88%
11年落ち 2015年式 ¥430,000 ¥358,571 83%
14年落ち 2012年式 ¥253,333 ¥268,000 106%
16年落ち〜 2010年式以前 ¥208,621 ¥167,222 80%

※ 2020年生産終了のため高年式データなし。特徴的な年式を抜粋。© 2026 IDOM Inc. リセールバリュー総合研究所

ヴィッツは前回の記事で「運賃負け」リスクを指摘した車種です。16年落ち以上(2010年式以前)が80%と大きく下落しています。この価格帯(16〜20万円台)はまさにUAE・シャルジャ向けの部品取り・トランジット車両の相場帯であり、封鎖による行き先喪失が早くも反映されている可能性が考えられます。11年落ち(2015年式)も83%と弱含みです。

トヨタ アルファード ガソリン車の中古車買取相場(3月1日週の査定順位:7位)

経年 年式 封鎖前週 封鎖後週 前週比
当年式 2026年式 ¥5,910,000 ¥6,140,000 104%
2年落ち 2024年式 ¥5,490,500 ¥5,490,000 100%
5年落ち 2021年式 ¥3,488,846 ¥3,202,759 92%
12年落ち 2014年式 ¥986,667 ¥750,000 76%
14年落ち 2012年式 ¥772,000 ¥537,273 70%
15年落ち 2011年式 ¥485,714 ¥371,429 76%

※ 特徴的な年式を抜粋して掲載。© 2026 IDOM Inc. リセールバリュー総合研究所

アルファードは同じ車種の中での二極化が最もくっきり出ている車種です。40系にあたる高年式(当年式〜2年落ち)は100〜104%で安定。マレーシア向けの堅い需要に支えられ、ホルムズ海峡とは無関係の輸出ルートが機能していると考えられます。

一方、20系後期〜30系前期にあたる12〜15年落ち(2011〜2014年式)は70〜76%と軒並み急落しています。この年式のアルファードはUAE経由のアフリカ・中央アジア再輸出向けの価格帯(50〜100万円台)に入るため、封鎖の影響がダイレクトに出ている可能性があります。

査定件数ランキングから見る中古車市場全体の動き

続いて、封鎖直後の週(3月1日〜7日)の査定件数ランキング上位25車種のデータから、市場全体の温度感を見てみます。ここでの前月比率は、最多年式の平均売却予想額を前月と比較したものです。

ホルムズ海峡封鎖の影響が出ていそうな車種

順位 車種 最多年式 平均売却予想額 前月比
12位 ホンダ フィット 2013年式 ¥229,167 70%
15位 スズキ ワゴンR 2013年式 ¥108,421 71%
10位 トヨタ ヴェルファイア 2013年式 ¥561,000 77%
17位 スズキ ハスラー 2015年式 ¥301,579 77%
9位 ホンダ ステップワゴン 2013年式 ¥337,692 79%
5位 トヨタ アクア 2013年式 ¥256,078 89%
4位 日産 セレナ 2017年式 ¥732,647 87%

まずは前月比が大きく下落している車種に注目してみましょう、いずれも「最多年式が10年落ち以上」かつ「平均売却予想額が10〜50万円台」の価格帯に集中しています。これはまさに、前回の記事で「UAE・アフリカ向けトランジット需要に支えられていた」と指摘した車両層と一致しているように見えます。

ホルムズ海峡の影響を受けず相場が安定または上昇している車種

順位 車種 最多年式 平均売却予想額 前月比
20位 マツダ CX-5 2017年式 ¥1,194,762 111%
18位 スズキ スペーシア 2019年式 ¥748,333 107%
1位 ホンダ N-BOX 2013年式 ¥225,000 106%
19位 スズキ ジムニー 2021年式 ¥1,644,286 103%
14位 トヨタ ハリアー 2021年式 ¥2,583,125 102%
16位 ホンダ ヴェゼル HV 2021年式 ¥2,054,167 102%

中古車買取の相場が安定もしくは上昇している車種には共通点が見えてきます。「最多年式が比較的新しい(5〜7年落ち以内)」「平均売却予想額が70万円以上」「輸出ルートがホルムズ海峡に依存していない、もしくは国内需要が主体」という条件を満たす車種が並んでいます。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    興味深いのは、同じ「軽自動車」でも明暗が分かれていることです。

    N-BOX(106%)やスペーシア(107%)は国内需要が強く安定しているのに対し、ワゴンR(71%)やハスラー(77%)は下落しています。

    この違いは、ワゴンRやハスラーの低年式車がUAE・アフリカ向けの超低価格トランジット枠として流通していたという可能性も見えてきます。軽だからといって輸出の影響を受けないわけではなく、「その車種のどの年式帯が輸出先に流れていたか」に連動して大きく変動するということが、改めてデータから読み取れました。

まとめ:中古車相場の二極化はデータでも確認できた

封鎖からわずか1週間のデータではありますが、前回の記事で予測した「車種カテゴリーごとの二極化」は実際に数字として現れ始めていることが確認できました。ここまでの分析をまとめてみましょう。

ただし、ご注意いただきたいのはまだ1週間分のデータであり、サンプル数が少ない年式帯では統計的なブレも大きいと考えられます。また、封鎖以外の要因(季節変動、為替、国内の需給バランスなど)も複合的に影響している可能性があるため、「すべてが封鎖のせい」と断定するのは早計です。

それでも、車種と年式をまたいで共通する「低年式・低価格帯は下落、高年式・高価格帯は安定」という傾向がはっきり見えているのは、偶然ではなさそうです。

来週以降のデータで、このトレンドが加速するのか、一時的なものにとどまるのかを引き続き注視していきたいと思います。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    今回のデータは、かねてからリセバ総研でもお伝えしている通り、「リセールバリューは国際情勢とつながっている」ということを改めて示しています。

    ホルムズ海峡という遠い場所の出来事ですが、石油の運搬をはじめ、世界中のさまざまな物流が影響を受けます。その世界の物流が止まれば、自分のクルマの査定額にもわずか1週間で影響しはじめるという点が、国産中古車の輸出規模がいかに大きいかを表しているといえます。

    当メディアでは引き続き、物流障害がもたらす中古車相場への影響を週次でウォッチしてまいります。

注釈・参考情報

※ データの出典: 平均売却予想額は、買取査定に持ち込まれ査定検査したクルマがオートオークション等で落札または売却される際の金額を予測し、全査定件数で平均化した金額です。あくまで中古車流通における売却金額の予測値を平均化した数値であり、ガリバー店頭での買取金額とは異なります。

※ 前回記事:ホルムズ海峡「事実上の封鎖」で中古車輸出に激震か? UAE経由の輸出網はどうなる?」(2026年3月2日公開、3月8日更新)

※ 本記事の性質について: 本記事はリセバ総研所長がAIや各種公開情報をもとに調査・整理した内容であり、個人的な見解を含みます。投資助言や経営判断の推奨を目的としたものではありません。情報は2026年3月9日時点のものです。