思いつきで車中泊を決行してみたら案外心細かった件〜コスト削減はどれくらいできるのか〜

「そうだ。車中泊、しよう」。
突然ですが、車中泊で日本一周を実現した黒木美珠さんへのインタビューを複数回行い、車中泊の魅力に触れてきた筆者は、いつの間にか自分自身でも車中泊を実行してみたくなっていることに気が付きました。
黒木美珠さんほどしっかりとした車中泊アイテムは揃っていないけれど、仕事の合間にクルマのなかで仮眠することが多い筆者は、ある程度クルマのなかで寝ることには慣れています。実際、車中泊をしてみるとどんな楽しさが体験でき、そしてどんな課題を実感するのか。我が身で体験してみることにしました。

ライター
この記事はライターの個人的な体験談を元に執筆しています。車中泊をする際には事前に計画を立てて準備をしっかりしましょう。また滞在予定の駐車場、道の駅、サービスエリアなどで車中泊ができるかを事前に確認するとともに、RVパークなど車中泊専用施設の利用もご検討ください。車中泊の滞在中は、原則エンジンを切るのがルールです。長時間のアイドリングはオーバーヒートなどの原因にもなりますのでご注意ください。
目次
夜の山道を、いざ西へ!
ある日の仕事帰りの夜。梅雨の中休みで晴れが続き日中は35度の猛暑日に迫ろうかという厳しい蒸し暑さでしたが、そんななか無謀にも「そうだ。車中泊、してみよう」と思い立った筆者。21時頃に東京都内から西へとクルマを進め、以前から「車中泊をするならここ!」と決めていた場所を目指すことにしました。そして、今回は徹底的に経費を削減するために、高速道路も使わず一般道で目的地まで走ることに。中年オヤジによる夜中の大冒険(?)が突然始まりました。

今回、目的地へのアクセスに使用したのが、国道413号「道志みち」。神奈川県の相模原市と山梨県の山中湖村を繋いでおり、行楽シーズンには高速道路の裏道として活躍しますが普段はあまり交通量の多い道路ではありません。
東京オリンピックでは自転車ロードレース競技のコースにもなった道路で、途中の道志村を経由して相模原市から約50キロほどで山中湖にたどり着きます。そうです。今回の記事では、「山中湖畔でいきなり車中泊してみよう!」というチャレンジの顛末をご紹介していきます。
夜の山道は気をつけるべきポイントがたくさん!
実際に夜中の国道413号を走ってみた印象ですが、意外なことに交通量は結構多め。多くはツーリングをしているバイクや地元のクルマ、そして一番目立っていたのが(本当は良くないですが)山道を攻めまくっている走り屋さんたちでした。
道幅は一部区間を除いて十分にあるので走りやすい道ですが、山の中は急カーブが多いほか、山中湖に向けてずっと登りっぱなしではなくアップダウンがめまぐるしく速度調整がシビアな道路なので、気がついたらオーバースピードでカーブに侵入していたということがないように。カーブの手前ではしっかりと減速するようにしましょう。
またカーブのなかでスピードに乗った対向車が迫ってくるとかなり怖いので(主に走り屋さんでした)、カーブの手前で減速してミラーを確認しながら対向車の存在に注意するようにしましょう。後ろから速いクルマやバイクが迫ってきたら、できるだけ長い直線区間を探して後続に道を譲るのが安全です。山道には街灯がほとんどないので、常にヘッドライトはハイビームの状態で。対向車が来たら一時的にロービームに落とすようにしましょう。

そして、この国道413号を走る際の最大の注意点が、「コンビニ・ガソリンスタンド・トイレなし!」という点です。
コンビニは相模原の市街地を抜けると山中湖までの全区間でなく(あっても夜間は営業終了している)、ガソリンスタンドは道中だけでなく山中湖エリアでも夜間営業終了している場所がほとんど。トイレはちょうと中間地点にある「道の駅どうし」で立ち寄れますが、その1か所だけです。そのため、給油やトイレは必ず山道に入る前に済ませておくようにしましょう(筆者は道の駅までのトイレ我慢が本当に地獄でした)。ガソリンは翌日まで給油できない恐れもありますので、満タン給油がおすすめです。

道の駅でのトイレ休憩を挟みながら、山道を走って1時間あまりで山中湖村に入りました。全区間の大部分が山道となる国道413号では、野生動物との遭遇にも注意が必要で、特に山中湖エリアは「鹿」が非常に多い印象を受けました。
あちこちで鹿を見かけますし、道路の脇で木の芽を食べている様子も観察できました。そして野生動物との遭遇で気をつけなければならないのが「交通事故」です。今回のドライブでも突然クルマの前に鹿の親子が飛び出してきて、慌てて急ブレーキを踏むシーンがありました。大型の野生動物に激突するとクルマもダメージを受けることがあるので、十分に注意してください。
目的地が近づいたら、まずやることは?
車中泊をする駐車場に辿り着く前に必ず訪れたいのが、コンビニです。一度クルマを停めるとなかなか移動することもできないので、ここで水分や食料などを買い込んでおきます。そして筆者が目的地に到着したときには立ち寄り温泉がもう終わってしまっていたので、今夜は汗ふきシートで凌ぐことにします。立ち寄り温泉によっていきたい場合やお目当ての飲食店がある場合などは、営業時間に注意して移動計画を立てるようにしましょう。

そして、気になるこのときの山中湖の気温なのですが、なんと18度!同じ時間の東京の気温より6度も低く、湖畔からは冷たい風が吹き続けています。
日中の都内の暑さが嘘のように涼しい。いや、むしろ半袖だと寒い!山中湖は富士山のふもと標高約1000メートルにあり6月の夜だとかなり肌寒いので、都心の暑さに関係なく防寒できるものがあるといいかもしれません。7月、8月も現地の気温は事前に確認しておくとよいでしょう。
さて、どう寝るか。それが問題だ。
目的地としていた湖畔の駐車場に到着し、ここから車中泊の準備をすることに。まずは寝る場所の用意です。
筆者のクルマは残念ながらフルフラットにすることができずマットレスも載せていないので、今回はシートを倒して寝床とすることにしました。そのままだとシートの凹凸が気になってしまうので、車内仮眠のために用意していたクッションと枕を活用することに。クッションは腰の下に入れることで寝るときの腰への負担を軽減できるのでは?と工夫してみました。

そして、クルマを停めたらエンジンはすぐにオフ。換気のために少しだけ窓を開けていましたが、小さい虫が結構車内に入ってきてしまったのですぐに締め切ることにしました。ただ外気温が18度と低いので、窓を締め切ってもあまり蒸し暑くはなりません。半袖でちょうどいい室温になりました。
また、寝る前に少しだけパソコンで作業をしたのですが、車内で役に立ったのがハンドルに引掛っけて装着するタイプの簡易デスク。ノートパソコンなら余裕で置けますし、飲食する際にもとても便利です。車内で長時間過ごすのにおすすめのアイテムなので、車内で仕事をすることの多い方や車中泊をされる方はぜひ。

天然のクーラーと波の音という子守唄
車内のセッティングが終わったら、少しクルマの外に出てみました。眼前に広がるのは、山中湖の壮大な風景。雲が出てしまってあいにく富士山を見ることはできませんでしたが、夜の静寂に波の音だけが聞こえる夜の湖はなんとも幻想的で、湖から吹く冷たい風はまるで天然のクーラーのよう。
ただ、人の気配はまったくなく、この日は周囲に車中泊しているクルマも少なかったため、一人で夜の湖畔にいるのはかなりの心細さを感じます。これは車内で寝る際にも感じたことですが、街灯なしの状態でエンジンを切っているとクルマのなかは完全に暗闇です。慣れていない人にとっては怖くて眠れない場合もあるかもしれないので、心配な人はクルマが集まっている車中泊スポットを選ぶか、まず近場で練習してみるのもよいかもしれません。
ただ、湖畔から見えるこの景色はホテルに宿泊していてはなかなか見られないもの。今回の車中泊で一番印象的なシーンになりました。波の音を子守唄にしながら、今夜は早めに寝るとしましょう。

夜明けとともに起床!最初に感じたことは?
朝5時半、起床。夜明けとともに目が覚めてなんて健康的な朝!と言いたいところですが、実際には「ま、眩しい!!!」という声とともに目が覚めました。というのも、クルマを停めた向きが悪く、太陽が自分の左前に出てきてしまったのです。それにより、太陽の光は私の顔面を直撃。起床を余儀なくされた形です。
ただ、腰の下に敷いたクッションがかなり効果的で、身体はそんなに痛くなく、長時間ドライブの疲れもしっかり取れています。気になったのは寝るときの身体のポジションで、慣れない環境での就寝なのでしっくりくるポジションを探りながら身体を動かしている時間が結構長かったように思いました。結果的に寝落ちするまでにかなりの時間を要してしまいました。

クルマから外に出て身体を伸ばすと、湖畔の澄んだ空気が本当に美味しい!そして周囲には早朝から湖畔を散歩したりランニングしたりする人たちの姿が。思い思いに湖畔の朝を楽しんでいる様子でした。私もせっかく早起きできたので、山中湖畔の周囲を観光しながら、道路が混雑する前に帰路につくことにしましょう。

今回の車中泊でいくらお金が掛かったの?
筆者が思いつきで挑戦した車中泊レポート、いかがだったでしょうか?ここからは気になる車中泊の経費をご紹介しましょう。とはいっても、今回は一般道で目的地に向かったため、ガソリン代以外の経費は掛かっていません。あえて加えるならばコンビニでの買い物代金くらいで、これらに観光地の入場料金や飲食店での食事代金が加わる形です。
一方で、高速道路を使い都内から山中湖に向かい、ホテルに止まった場合には、以下のような料金が想定されます。
・ガソリン代:7000円程度(レギュラー、40リットル換算)
・高速道路料金:4,740円(中央道 高井戸→東富士五湖道路 山中湖/ETC往復料金)
・ホテル代:20,000円〜30,000円程度
・観光地の入場料
・飲食店での食事代金
・現地での買い物代金
このように比較すると、しっかりと事前の準備をしていけば車中泊での旅行はかなりのコスト削減になるのではないかと実感します。もちろん、狭いクルマのなかでの車中泊はホテルほど快適な宿泊ではありませんが、滞在先でやりたいことが明確で宿泊そのものの優先度が低い人や、車中泊という非日常感を楽しみたい人、アウトドアな雰囲気を体験してみたい人にとっては、十分に楽しめる選択肢なのではないでしょうか。
車中泊を振り返り、気になった点や反省点を挙げてみよう
最後に、今回のレポートを通じて感じた反省点をまとめてみましょう。車中泊に挑戦しようとしている人の参考になれば幸いです。
・夜の山道はコンビニ、トイレ、ガソリンスタンドが全くない!
・山道での野生動物との衝突に注意!(クルマが壊れます)
・立ち寄り温泉や飲食店は営業時間に注意しよう!
・標高の高い地域の夜は初夏でも意外と寒い!
・クルマを停めるときには太陽が登る位置を気にしよう!(太陽に背をむけるように)
・窓を開けると虫はやっぱり入ってくる。虫除けスプレー必須!
・シートを倒して寝る際には腰下にクッションが役に立つ!
・夜中の静寂や暗闇に少しでも慣れておこう!(ちょっと恐怖を感じます)
・サンシェードや目隠しはやっぱりほしい!(寝起きの日差しが本当に眩しい)
・夜ふかしは控えて夜明けとともに起きよう!(眩しいし、暑くなる)
今回の車中泊で筆者が感じたことをまとめてみましたが、車中泊で日本一周を実現した黒木美珠さんへのインタビューでは車中泊を成功させるためのポイントや、夏場の車中泊における注意点をまとめています。ぜひこちらもチェックして車中泊旅行を楽しんでくださいね!