車中泊で日本一周を実現した黒木美珠さんに聞く「暑い季節の車中泊、ここに注意!」

初夏の陽気から梅雨空となり、蒸し暑さも感じられるようになって夏へのカウントダウンが始まったこの季節。今年の夏は車中泊で旅をしたい!と思っている方も多いのではないでしょうか?
 
しかし、そんな願望を叶えようとすると避けて通れない大きな課題が、夏場の厳しい蒸し暑さです。車中泊で日本一周を実現した黒木美珠さんは、旅のなかで遭遇する蒸し暑さにどのような対策をしてきたのでしょうか?また蒸し暑い季節の車中泊でどのような点に注意してきたのでしょうか?お話をお伺いしてみました。

1996年生まれ。静岡県出身。自動車系YouTuber、自動車ライター、自動車インフルエンサー。幼少期から車に親しみ、Super GT観戦や、祖母のS2000でのドライブを通じてクルマへの情熱を育む。洗車専門のYouTubeチャンネルを立ち上げたことをきっかけに、95日間の車中泊での日本一周旅や、メーカー試乗会での新車紹介動画、アフターパーツやモビリティ施設取材など、クルマに関わる幅広い内容を発信。クルマの性能だけでなく、作り手の想いも伝えるジャーナリストを目指している。普通自動車免許(MT)・普通自動二輪免許(MT)・小型船舶免許一級を所有しており陸海は自走可能。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

夏場の車中泊で対策すべき3つのポイント

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    黒木さんは車中泊で日本一周したのが4月から6月の時期だったと思いますが、蒸し暑さで苦労した経験などはあったのでしょうか?

黒木さんの車中泊で日本一周の模様はこちらのインタビューでチェック!
  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    実は、日本を一周する地域の順番で蒸し暑い季節に暑い地域に行かないように工夫していましたね。

    例えば、まだ気温が穏やかな季節は西日本エリアを中心にまわり、5月中旬から東北・北海道に行くような。
    90日という期間で就寝する時間帯の気温がなるべく均等になるように、過ごしやすい気温で過ごせるように工夫していた形です。ただ、(日本一周とは別に)6月下旬に北関東で車中泊した際には結構蒸し暑くて、朝起きたときには日差しがかなり厳しいと感じましたね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    最近の日本の蒸し暑さは本当に厳しいですもんね。この蒸し暑さ対策でどのような工夫をしたのでしょうか?

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    まず気をつけたのは、車内の湿気対策ですね。湿気が溜まるとシートや内装がカビてしまうので、例えば車内に敷くマットレスに除湿シートを挟んだり、シートの足元にクローゼット用の除湿剤を置くなどの対策をしました。

    加えて、車内の換気対策も工夫していて、私は小型の扇風機を持ち込んで使用したり、ドアガラスの部分に使用して網戸にできるアイテムなどを活用して車内に空気の流れを作ってあげるようにしました。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    湿気対策はもちろん、夏場は換気をしたり車内に空気の流れを作るのが大切なんですね。

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    そうですね。例えば就寝時の締め切った車内でも空気の流れがあるだけで体感気温もだいぶ変わります。

    ソロ車中泊ならばそこまで気にならないかもしれませんが、2人で車中泊をすると狭い車内にはだいぶ空気が籠もってしまいます。空気を流してあげると快適性は相当高まると思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    窓を開けて換気というお話もありましたが、そうなると夏場は蚊などの虫も心配じゃないですか?

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    虫対策は湿気や換気と並んで大切ですね。

    私の場合は、ワンプッシュタイプの虫除けスプレーを車内で使用したり、住宅のベランダなどに引っ掛けて使うタイプの虫除けをクルマの吊り革部分に引っ掛けたりして虫対策をしていました。夏場は蒸し暑さも大敵ですが、虫も安眠の大敵なので注意が必要ですね。

夏場の暑さを避ける工夫にはどのようなものがあるの?

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    夏場の車中泊で対策しなければならないのは「湿気」「換気」「防虫」という3つのポイントであることがわかりましたが、そうは言っても夏場は暑さが非常に厳しいですよね。熱中症のリスクもあるなかで、暑さを避けるためにできる工夫にはどのようなものが考えられるでしょうか?

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    そもそも猛暑で気温の高くなる地域での車中泊はなるべく避けるべきですが、まずできる工夫という点では、車中泊の準備を始める時間帯ですね。

    まだ太陽が出ている日中からクルマを駐車して(エンジンを切って)車中泊の準備を始めると、クルマ自体が日差しで熱せられて車内もかなり暑くなってしまいます。日没まではクルマを運転して車内のクーラーをしっかり掛けて車内を冷やして、日没したあとに車中泊の準備を始めるとよいのではないでしょうか。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    車中泊をする場所と滞在を始める時間は、夏場は特に注意ということですね。

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    そうですね。場所については、夏場はなるべく標高の高い地域を旅行先に選ぶとよいかもしれません。標高が100メートル上がると気温は0.6度下がると言われているので、いわゆる避暑地と呼ばれる地域を旅行先として検討されるといいと思います。

    一方で盆地などは熱が非常に籠りやすい地形なので注意が必要です。また川の近くも冷たい空気が流れていたり、水の音がよい清涼感を与えてくれるので暑さ対策になりますが、一方でゲリラ雷雨などによる急な増水の危険性もあるため天気予報はしっかり確認したほうがいいと思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    実際の気温だけでなく清涼感のある場所を選ぶというのはいいですね。山間部で木々に囲まれたオートキャンプ場なども素敵だと思います。

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    ただ、山間部だと気をつけたいのは野生動物ですね。私も車中泊旅行のなかで熊やイノシシ、サルなどに遭遇したことがあります。

    例えば夜間にクルマを離れてお手洗いに行く際には、念の為に熊よけの鈴を持って警戒しながら移動していました。熊よけの鈴はかなり大きな音が鳴るので、車中泊する際の防犯アイテムとしても役立ちましたね。

換気対策と防犯対策、どのように両立する?

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    熊よけの鈴のお話のなかで「防犯」というキーワードが挙がりましたが、換気するということはクルマの窓を開けることですが、そうなるとどうしても人が外部からアクセスしやすくなってしまいます。この「換気」と「防犯」をどのように両立させたのかお聞かせいただけますか?

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    私の場合は、車中泊で就寝するときには窓は1センチも開けずに締め切った状態でした。

    男性だけで車中泊するときには換気しながら就寝しても問題ないかもしれませんが、私はやはり(外部からアクセスできる状態にすることは)怖かったですね。もしも夜間も換気しながら車中泊をしたい場合には、管理人さんが常駐していたり防犯カメラが備わっていたりするオートキャンプ場や車中泊専用の施設(RVパーク)などを利用すると安心だと思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    寝るときには全く窓を開けないという徹底ぶりだったんですね。

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    車中泊旅行をする前に「車中泊で遭遇した怖い体験」というのを調べていたら、わずかな窓の隙間からタバコの吸い殻を入れられたという体験談を読むことがあって、1センチの隙間でもリスクがあると感じて就寝時の換気は諦めることにしました。

    ただ、先ほどのお話の通り締め切った車内では空気が籠もってしまいますので、空気の流れを作るための扇風機や車載型の空気清浄機、車内の二酸化炭素濃度を測るためのセンサーなどはあると安心だと思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    あとは、なるべく人の目がある場所を選ぶことで安心感を得るという工夫ですね。

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    プライバシー対策は窓ガラス用に目隠しを用意するなどで対策ができると思いますので、道の駅などで車中泊する場合でも運送トラックなど職業ドライバーの人が停めている近くを選んだり、街灯や防犯カメラの範囲に入るように駐車したりなど、あえて人目の届く場所を駐車場所にすることで安心感を得ていました。

    また、車内の防犯対策という点ではドライブレコーダーもおすすめですね。車内を含めて360度撮影が可能なものや、駐車中も録画してくれるものがありますので、こうした装備を活用するのもいいと思います。

注釈:車中泊の場所として道の駅やサービスエリア、ドライブインなどを選択する場合には、事前に車中泊をして問題ないか、車中泊を禁止していないかを確認するようにしましょう。また、コンビニエンスストアやショッピングモールなど商業施設の駐車場、観光地などにある公共駐車場やコインパーキング、トラックドライバー専用のドライブイン「トラックステーション」、私有地(空き地など)などで車中泊してはいけません。違法駐車、不法侵入など法令に違反する場合もあるため十分に注意しましょう。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    とはいえ、寝るときにはエンジンを止めた状態で完全に車内を締め切ると考えると、ますます車中泊の準備は寝る直前の時間帯にして、それまでは移動しながら車内の換気と冷却を徹底したり、日帰り温泉などで夕食や入浴などをしてなるべく暑さを凌げる行動をとるのが良さそうですね。

  • 【クルマ系YouTuber / 自動車ライター】黒木美珠

    そうですね。あと私の工夫したポイントでもあるのですが、就寝時に使用する窓の目隠しを作る際に材料に断熱材を使用して、アルミシートで断熱材を包んであげたりもしました。

    目隠しに断熱材とアルミを使用することで冷やした車内の空気が保温される効果、外の熱が窓ガラスを通じて車内の空気を温めない効果が期待できるんです。ホームセンターなどで断熱材を買ってきてDIYすることができるのでおすすめですよ。

まとめ

黒木さんのお話から、夏場に車中泊をする際には避暑地など暑さの影響が少ない地域を選び、車中泊を始める時間も日没後の暑さが和らいだ時間帯にすることや、締め切った車内で湿気が籠もらないようにする除湿対策や空気の流れを作る換気対策、虫が寄ってこないようにする防虫対策、なるべく人の目がある場所を選ぶ防犯対策をしっかりすることが重要だとわかりました。
読者のみなさまも、熱中症や脱水症状の対策を怠らずに車中泊を楽しんでくださいね。