ファイナンシャルプランナー 高山 一恵のクルマ生活指南 クルマ通勤と電車通勤、どっちを選ぶべき?

みなさんは通勤するとき、クルマと電車、どちらを使っていますか?お住まいも勤務地も人それぞれですから、「クルマ通勤しか考えられない」「電車通勤しかできない」というケースもあるでしょう。では、クルマ通勤と電車通勤がもしも選べるとしたら、どちらを選ぶのがよいのでしょうか。
今回は、クルマ通勤と電車通勤にかかる費用をチェックしたうえで、クルマ通勤のメリット・デメリットを解説します。

【お金のプロ】高山 一恵

(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の強化書』(宝島社)など著書累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

クルマ通勤、年間どれだけかかる?

自分の持っているクルマを通勤で利用するクルマ通勤(マイカー通勤)。クルマ通勤には「社用車が支給されている」ということでもなければ自分のクルマが必要ですよね。その場合、税金・保険・車検などの維持費がかかります。
日本自動車工業会「2021年度乗用車市場動向調査」によると、2021年の自動車の年間維持費は「10万円〜20万円」が28%、「20万円〜30万円」が24%。30万円までで6割強となっています。

クルマの維持費は自己負担ですが、クルマ通勤にかかるガソリン代は多くの場合会社が交通費として支給してくれます。たとえば「1kmあたり10円、往復30kmの距離を20日間通勤」した場合には10円×30km×20日=6,000円が支給されるという具合です。

もっとも、細かなルールは会社により異なり、「毎月1万円支給」などと一定額を支給する会社もあるようです。また、会社に駐車場がない場合などには、有料駐車場の利用料金もかかる場合があります。クルマ通勤を検討しているならば、ガソリン代や駐車場代の扱いがどうなっているのか、事前に確認しておきましょう。

電車通勤、年間どれだけかかる?

電車通勤の場合は、通勤定期を購入するケースが多いでしょう。通勤定期の期間には多くの場合1か月・3か月・6か月の3種類があり、期間が長くなるほど割引が大きくなります。

総務省統計局「小売物価統計調査(2024年3月)」によると、鉄道運賃(JR以外、通勤定期(6か月)、11km)の全国平均価格は6万6648円となっています。この金額は6か月定期のものですから、単純に2倍した13万3296円が年間の電車通勤でかかる金額の平均といってよさそうです。

ただ、平均こそこの金額ですが、調査対象の全国44都市のなかでもっとも高いのは山梨県甲府市(11万6910円)、もっとも安いのは熊本県熊本市(1万8470円)とばらつきがあるのも特徴です。

クルマ通勤のガソリン代と同様、通勤定期代は会社から支給されるケースがほとんどでしょう。中には「毎月の交通費は◯万円まで」と上限が決められている会社もありますが、多くはその上限内で収まっているのではないでしょうか。

クルマと電車、どっちを選ぶべき?

総務省統計局「国勢調査」(2020年)によると、通勤にクルマ・電車を利用している人の割合は次のようになっています。

通勤に「自家用車のみ」を利用している人の割合は全体の46.9%、「鉄道・電車のみ」を利用している人の割合は17.1%です。クルマ通勤の人は、意外と多い印象ですね。
また「鉄道・電車及び自家用車」と、両方とも活用している人も0.9%います。「パークアンドライド」といって、自宅から最寄り駅までは自家用車、そこから電車などで通勤している姿もうかがえます。

ただ、クルマ通勤をしている割合は都道府県によっても大きく異なります。都道府県別に「自家用車のみ」と答えた人の割合が多い・少ない都道府県のベスト3は次のようになっています。

●「自家用車のみ」が多い都道府県
①山形県 79.0%
②秋田県 78.2%
③富山県 77.7%

●「自家用車のみ」が少ない都道府県
①東京都 8.5%
②神奈川県 18.5%
③大阪府 18.6%

「自家用車のみ」が多い地域では、1人1台が当たり前になっていることも。その影響もあってか、クルマ通勤の割合が8割近くに達します。それに対し公共交通機関が整備されている都市部では、クルマ通勤の割合は少ないようです。駐車場代などの維持費が高くなってしまうのもクルマ通勤の少ない要因かもしれません。

先に紹介したとおり、会社がガソリン代または定期代を支給してくれる前提で考えれば、より経済的なのは電車通勤です。クルマ通勤をするには、ガソリン代以外にもクルマの維持費がかかるからです。

しかしクルマ通勤には、電車通勤にはないメリットもあります。

●クルマ通勤のメリット1:時間の縛りが少ない

電車通勤の場合は、電車の時間に合わせて出発しなければなりませんし、1本乗り遅れてしまえば数分、数十分のロスが生じます。さらに、災害や事故などで運転中止になってしまう可能性もあります。
その点クルマ通勤であれば、間に合う時間に家を出ればいいので、時間を有効活用できます。そもそも「乗り遅れる」ということがありません。災害や事故はないとはいえませんが、電車よりは融通が効くケースが多いのではないでしょうか。
また、勤務先によっては、電車で行くよりも通勤時間が短くなることもメリット。時間の縛りが少ないので、時間を有効活用できます。

●クルマ通勤のメリット2:荷物を運びやすい

電車通勤でも荷物を運ぶことはできますが、やはり限度がありますし、混み合う時間帯には気を遣う必要もあります。クルマ通勤であれば、後部座席やトランクに荷物を載せていけばいいだけですので、気楽ですね。手で運ぶよりも一度にたくさんのもの、重いものでも運べるのもメリットです。

●クルマ通勤のメリット3:座れる

電車通勤では、座れるとは限りませんが、クルマ通勤なら間違いなく座れます。人混みも避けることができます。もちろん、安全運転を心がけなければいけませんが、座れない満員電車に揉まれるよりは体も楽ではないでしょうか。


一方、クルマ通勤にもデメリットはあります。

●クルマ通勤のデメリット1:渋滞にはまる可能性がある

地域によっては、渋滞に巻き込まれてしまう場合もあります。電車の場合、何かトラブルがあって遅れた場合には遅延証明書が発行されますが、クルマ通勤で遅れても遅延証明書は発行されません。渋滞を見越して、少し早めに家を出る必要がある方もいるでしょう。

●クルマ通勤のデメリット2:運転中に他の作業はできない

電車通勤ならば、電車に乗っているだけで目的地まで行くことができます。スマホを見たり、読書をしたり、あるいはちょっとうたた寝しても大丈夫です。しかしクルマ通勤ではそうはいきません。スマホや読書などもってのほかですし、疲れていても運転しなければ帰れません。

これに加えて、ここまでお話ししてきたとおり、クルマの維持費がかかるのもデメリットといえるでしょう(もっとも、クルマの維持費はクルマ通勤をするかしないかにかかわらず必要ですので、クルマ通勤のデメリットとはいえません)。


以上見てきたように電車通勤、クルマ通勤どちらにもメリット・デメリットがあります。自分のライフスタイルに合わせて、使い勝手が良いほうを選ぶようにしましょう。

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