中古車相場のマメ知識 【中古車相場のプロに聞く(3)】相場のプロが最も驚いた「世界に300台のクルマ」

「中古車相場のプロ」〝IK〟さんに聞く、今回はガリバーの中古車査定事情について語っていただきました。

【中古車相場のプロ】〝IK〟

中古車売買の査定部門管理職

株式会社IDOM(旧社名:株式会社ガリバーインターナショナル)で中古車マーチャンダイジングチームの査定部門に所属。中古車の販売価格や売却価格を決める「査定」の仕事に20年以上携わっている、中古車相場のプロ。 ちなみに自身は、同じクルマを長く乗り継ぐタイプ。

査定は1日に4000台行うことも!

  • 編集部:AK

    今回はガリバー社内で「相場のプロ」として知られる〝IK〟さんにいろいろ教えていただきます。お名前は明かせないとのことですが、普段はどのような仕事をされているのでしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    ガリバーで20年以上にわたり、中古車の販売価格を決める「査定」の仕事をしています。直営とフランチャイズの各店舗が仕入れた全ての中古車は、私がいる部署で精査して売値を決めているんです。そのほかにも、オークションでの中古車売却や、中古車の調達などにも携わっています。

  • 編集部:AK

    どのようにして販売価格は決めるんですか?

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    各店舗から仕入れた中古車に関するあらゆる情報が、私のいる部署に日々送られてきます。

    ガリバーでは専用のアプリを用意してあって、全国のガリバー店舗にはそこにクルマの基本情報や、内装や外部の状態、傷、オプションなどのデータを入力して送信してもらっています。

    私達はその情報をもとに中古車の状態を確認したうえで、弊社にある全国のオークションで取引された中古車の価格情報などの相場に関する約10年分のデータベースと照らし合わせて、値段を決めているのです。

  • 編集部:AK

    相場のデータベースがあるんですね! 1日に、どれぐらいの中古車を査定するんですか?

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    毎年3月の繁忙期は1日で約4千件の査定をすることもあります。
    ガリバーは今年が創業30周年で、現在は取扱件数が15万件あり、そのうち買取は5万件と業界でも非常に多いほうです。中古車オークションと向き合ってきた長年の経験や知見の蓄積があるので、多くの査定をスピーディに、タイムリーに行うことができるんです。

  • 編集部:AK

    1日4千件は驚きです!

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    はい。うちは店舗数も取扱件数も多いですから。

    取引価格は相場で日ごとに変わるため常に一定ではなく、同じ車種でも日によって販売価格が異なるため、毎日それぞれの査定をする必要があるんです。そもそも中古車には全く同じ状態のクルマというものは存在しないので、毎日相場をにらみながら査定を行っています。

珍しいクルマは相場も大きく変動する

  • 編集部:AK

    「日によって相場が変わる」なかで販売価格を決めるのは、大変なことですよね。

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    そうですね。ただ、日々変わるといってもプリウスのように街中でよく見かけるクルマ、いわゆる大衆車はそんなに大きな価格変動はないんですよ。

  • 編集部:AK

    車種によって価格変動の差があるんですね。〝IK〟さんが最もよく査定する車種もやはり「街中でよく見かけるクルマ」ですか?

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    そうですね、プリウスとアクアが最も多いです。
    新車販売台数が多いものは査定台数も当然多くなり、世の中の「新車販売ランキング」と弊社の「査定数ランキング」は、わりとイコールの関係にあるんです。ここは相場とも関わってくる話ですね

  • 編集部:AK

    なるほど! 逆に、「相場が大きく変動するクルマ」もありますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    ありますね。相場で価格が大きく変化する可能性があるものは、年間で数回しか見かけないような珍しいクルマです。たとえば生産台数の少ない「限定車」や、昭和に発売されたクルマなどがそれに該当します。私もそういうクルマの査定をするのは年に数回程度ですけれど。

オークション会場の価格メーターを振り切った「伝説のクルマ」

  • 編集部:AK

    そういった珍しい中古車は相場の観点から販売価格を付けるのも難しそうですね。

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    はい、とても難しいんです。
    ガリバーでは通常は過去4週間程度の相場価格を参考にして値付けをしていきますが、そういう珍しいクルマは半年や1年など期間を広げて過去の相場データを調べていきます。

  • 編集部:AK

    過去の相場もさらに調べていくわけですね。

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    それをしたうえでもピンポイントで「この金額が正解!」とは私達も言い切れないのが、正直なところなんです。最終的には購入希望者と折り合ったところが中古車業界での「新しい相場」になっていきますね。

  • 編集部:AK

    ちなみに、Xさんがこれまで20年間のキャリアで最も驚いたクルマ、値付けに苦労したクルマはありますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    ありますね。世界に300台程度しかないトヨタの2000GTというクルマを査定したことが一度だけあります。

  • 編集部:AK

    世界に300台! それは超レアなクルマですね。

  • 【中古車相場のプロ】〝IK〟

    その時は10年以上のオークションのデータベースを見返してもデータが見つからず、社内でも誰も本当の価値がわからない状態でした。

    私もネットでしかそのクルマを見たことがありませんでしたしね。
    そういうクルマはコレクターが所有していて、世の中に出回ることはほぼないんです。

    また、別のクルマですけど、「1億円を超えるんじゃないか?」と言われているクルマがオークション会場に出品されたことがありまして、実は会場にある競りの価格を表示するメーターは9,999.5万円までしか表示できないんです。そのなかで最終的に競りが1億円を超えてきて、ウチがそのクルマを落札した、なんてこともありましたよ。

  • 編集部:AK

    1億円越えのクルマ・・・凄いお話ですね!(つづく)