発表後5日で5万台受注し受注停止!ジムニーノマドの爆発的人気をカスタムカーの専門家はどう見る?

今年1月30日に発表され、わずか5日間で5万台もの受注を集めたスズキの「ジムニーノマド」。記事公開時点で新規受注の停止が続いており、入手困難な状況になっています。もともと、3ドアの軽自動車でありながら本格的なオフロード走行を楽しめる「ジムニー」や同じく3ドアで普通自動車サイズの「ジムニーシエラ」はアウトドア愛好家を中心に根強い人気となっているクルマで、「ジムニーノマド」の爆発的人気は、改めて「ジムニー」ブランド全体への注目を高めています。
こうした「ジムニーノマド」の爆発的人気をアウトドアカスタムの専門家はどのように受け止めているのでしょうか?IDOMグループが展開するアウトドアカスタム専門店「Brat」を運営するIDOM Brat事業部の鳥海健太郎さんと、実際にアウトドアカスタムのデザイン・設計・パーツ調達を手掛ける専門チーム「Bratベース」から、カスタムデザイン担当の阿部さん、カスタム設計担当の町島さん、パーツメーカー担当の加藤さんにお話を伺いました。
(ジムニーノマド画像提供:CORISM)

ライター
目次
発表からわずか5日で受注停止になったスズキ ジムニーノマド
スズキ「ジムニーノマド」は、1970年から55年もの長い歴史を持つ「ジムニー」のラインナップで初めてとなる5ドアモデルです。もともとは2023年にインドで発売されたモデルで、三菱のピックアップトラック「トライトン」やスズキのSUV「フロンクス」のように、海外で発売された注目のモデルが“逆輸入”するという形に。本格的なオフロード性能を持ちながら新車価格275万円(AT車)というお手頃価格で手に入ることから、1200台という当初の月間販売目標に対して発表からわずか5日間で5万台を受注するという爆発的な人気に。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
記事公開時点では新規受注停止状態となっており、全国各地で予定していた展示会や発表イベントもキャンセルとなっているようです。なお、発売予定日は2025年4月3日となっています。
スズキ ジムニーノマドの人気爆発は“必然”だった?
それではここからは、スズキ「ジムニー」のカスタムも数多く手掛けてきたアウトドアカスタム専門店「Brat」のメンバーに伺っていきましょう。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
スズキ「ジムニーノマド」のこの人気ぶりについて、率直にどのように感じているか教えて下さい。
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Brat 加藤
これまで人気だった「ジムニー」や「ジムニーシエラ」は3ドアのモデルですので、居住性という面でどうしてもユーザーが限られていました。その点で、「ジムニーノマド」は5ドアになったことで十分な居住性を保ちながら、なおかつ面白いキャラクターを持っているということで、ここまで人気が爆発しているのではないかと思います。最初は海外(インド)で発売されたモデルですが、その直後から「なんで日本で発売しないんだ」という声も大きかったですね。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
日本導入が待望されていたという点が、初速5万台という人気に繋がっているんですね。「ジムニー」を「面白い」と表現しましたが、どのような点が面白いと思いますか?
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Brat 加藤
「ジムニー」というクルマは1970年代からずっと変わらないスタイルでモデルチェンジを続けているところが、面白いと思います。一般的に軽自動車というと「アルト」や「ワゴンR」などを想像すると思いますが、そうした中で(オフロードテイストな)あのスタイルを昔から変わらずやっているというのは、根強いファンを生み出している要因なのではないでしょうか。トヨタ「ランドクルーザー」の人気に近いものがありますね。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
歴代モデルを通じて、「ジムニー」のあのワイルドな雰囲気が好きという方が多いということですね。カスタムデザインの立場から見た「ジムニーノマド」の魅力というのはいかがでしょうか?
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Brat 阿部
もともと「ジムニー」と「ジムニーシエラ」は(フロント部分の印象を変える)フェイスチェンジキットをはじめカスタムパーツが豊富なので、個性を表現しやすいクルマだと感じています。個人的には「ジムニーノマド」で5ドアが出たことで、メルセデス・ベンツの「Gクラス(ゲレンデヴァーゲン)」をイメージしたような面白いカスタムができるのではないかと期待しています。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
それはとても興味深いですね!同じくカスタムを作る立場から、町島さんはいかがでしょうか?
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Brat 町島
「ジムニーノマド」の人気に注目が集まりがちですが、もともと3ドア軽自動車サイズの「ジムニー」も現行型の発売当初はすぐにオーダーストップになり納車に何年も掛かるという状況でした。なので、その当時から「普通車サイズだったら相当な人気になるだろう」と感じていましたし、「ジムニーノマド」の人気も「いよいよきた」と受け止めています。この人気は必然なのではないでしょうか。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
加藤さんもお話されていましたが、3ドアで軽自動車サイズというと、興味はあるけれどもどうしても居住性やドア枚数で購入に踏み出せないという人は多そうですよね。軽自動車ではなく普通乗用車がいいという方もいらっしゃる。「ジムニーノマド」の登場はこれまで「ジムニー」を諦めていた方を一気に動かしたということかもしれませんね。
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Brat 町島
そうですね。私も古い「ジムニー」に乗っていますが、2人乗りということもあり割り切って使っています。そこにきて4人乗りで使える「ジムニー」が出てきたというのは相当大きいですね。
スズキ ジムニーはどんな人に向いている?
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【クルマ大好きライター】井口裕右
「ジムニーノマド」の登場によって、コンパクトな軽自動車の「ジムニー」、ワイドボディの「ジムニーシエラ」、5ドアの「ジムニーノマド」と3つのラインナップになりました。それぞれのモデルに特徴はあると思いますが、「ジムニー」シリーズ全体でどのようなユーザーに向いているのか、どのような楽しみ方が実現できるのか教えて下さい。
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Brat 加藤
「ジムニー」というと、本格的に走りたい男性が大好きなクルマというイメージが強い思いますが、最近ではサイズ感という面でも、カスタムデザインという面でも“女性でも気軽に楽しめる四駆”という印象が強くなってきていると感じています。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
例えばファッションとしてクルマを楽しみたいという人も増えているということでしょうか?
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Brat 加藤
そうですね。外装カスタムのパーツメーカーさんを見ていても、女性ユーザーの取り込みを意識しているのは感じますね。ワイルドさだけでなくおしゃれな雰囲気であるとか。もちろん男性ユーザーも多いですが、一方で女性ユーザーにも手軽に楽しめるサイズ感や運転のしやすさがウケていると感じています。

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【IDOM Brat事業部】鳥海健太郎
オフロード感のあるクルマを楽しみたいというニーズに対して、どうしてもトヨタの「ランドクルーザー」やメルセデス・ベンツの「Gクラス」など大きなクルマが多いなかで、「ジムニー」はオフロード感を最小サイズで楽しめるというのが魅力なのではないでしょうか。街乗りできるサイズ感で男女を問わずオフロード感を楽しめる、オフロード志向の人にとって万人受けするクルマだと思います。
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Brat 加藤
実際、オフロード感のあるクルマが好きなご夫婦で、旦那さまはメルセデス・ベンツの「Gクラス」に乗っていて、奥さまは「ジムニー」に乗っているというケースもあるみたいですね。「ジムニー」をベンツ仕様にカスタムして乗っているという話も聞いたことがあります。
スズキ ジムニーシリーズはカスタム界でも大人気!
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【クルマ大好きライター】井口裕右
「ジムニー」シリーズのカスタムについても教えて下さい。様々なアウトドアカスタムを手掛けるBratのなかで、「ジムニー」はどれくらい人気なのでしょうか?
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Brat 阿部
各店舗からのカスタムに関する相談が私の方に寄せられるのですが、「ジムニー」に関する相談が圧倒的に多いですね。相談内容もタイヤを大きくしてリフトアップしたい、フェイスチェンジしたいというものから、パーツメーカーのフルキットを組みたいというものまで多岐にわたります。Bratで取り扱うクルマのなかでも最多と言えるほど豊富なパーツからカスタムができるので、そういう点でも男女問わず色々なニーズのお客さまから相談いただいているのではないかと思います。
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Brat 町島
パーツの選択肢については、タイヤメーカーが「ジムニー」専用のタイヤを作るほどです。無限の組み合わせが可能なので、自分だけの個性を表現した唯一無二のカスタムができる点も魅力ですね。
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Brat 加藤
そうですね。例えばフロントの表情を変えたい「フェイスチェンジ」をしようとすると5〜6社くらいがキットを出しています。フロントグリルだけ変えたいというと、選択肢が多すぎて数を把握していないほど選択肢がありますよ。50種類は軽く超えるのではないでしょうか。「ジムニー」はもともとフロントグリルを簡単に交換できる設計になっていて、そこを変えるだけでもかなり印象が変わりますね。

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【クルマ大好きライター】井口裕右
「ジムニー」というクルマが歴史のあるクルマで、年式や価格の幅も広く中古車の在庫も豊富なので、安価でベース車両を購入して手軽に始められるのも魅力的なのかもしれませんね。
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Brat 阿部
そうですね。カスタムの入門としてとても適していると思います。カスタムを希望される方は「ノーマルのままで乗りたくない」という意向の方が多いですが、カスタムに関する知識がない初心者の方がちょっとだけカスタムして個性を表現したいという要望にも応えてくれますし、もちろん本格的なアウトドアカスタムをしたいという玄人志向の方の要望にも応えてくれる。それだけカスタムパーツの選択肢が豊富というのが、ジムニー人気の要因なのではないかと思います。


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【クルマ大好きライター】井口裕右
選択するパーツにも依ると思いますが、例えば「ジムニー」をフルカスタムしようとした場合には、どれくらいの費用が掛かるものなのでしょうか?
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Brat 阿部
リフトアップ、フェイスチェンジ、アルミホイールなどを含めて、フルカスタムをすると相場感としては「60万円〜」、ボディーカラーをカスタムする全塗装までいれると「100万円〜」くらいですね。これに工賃が掛かる形になります。Bratで手掛けたカスタムの傾向としても、総額で100万円以内というフルカスタムが多いですね。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
フルカスタムだと数百万も掛かるのではとイメージしていたので、「意外と安い」という印象です。
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Brat 阿部
そうですね。「ジムニー」も「ジムニーシエラ」も長く乗れるクルマですし、「ジムニーノマド」もおそらくそういうクルマになっていくと思いますので、短期間で買い替えるという選択だけではなくカスタムで雰囲気を変えてリフレッシュして乗るという選択もありなのかなと思います。
スズキ ジムニーノマドのリセールバリューはどうなる?
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【クルマ大好きライター】井口裕右
まだ発売前の「ジムニーノマド」ですが、3年後の売却を想定した今後のリセールバリューはどのように推移していくと感じていますか?
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Brat 町島
「ジムニー」や「ジムニーシエラ」よりもリセールバリューは良くなるのではないかと感じています。そもそも現時点でも「ジムニー」は条件によっては中古車価格のほうが高いという状況になっているのですが、「ジムニーノマド」は納期に何年掛かるか見通せない状況なので、発売後は相当高いリセールバリューで推移していくのではないかと予想しています。

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【クルマ大好きライター】井口裕右
「ジムニー」も「ジムニーノマド」もカスタムされる方が多いと思いますが、カスタムされた「ジムニー」のリセールバリューについてはいかがでしょうか?
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Brat 町島
一般の買取店の場合には、クルマのカスタムはあまり査定で加味されないケースが多いですね。カスタムされていることで査定評価が下がってしまうこともあります。Bratではカスタムされたクルマに取り付けたカスタムパーツの評価・査定もしっかり行っていますので、カスタムした場合にはカスタムカー専門店に査定を相談されるのがよいと思います。