中古車相場のプロに聞く!最新中古車市況(4) 【2024年総括】中古車流通市場の2024年を振り返る

2024年もあと少し、今年の中古車流通の市場ではどんな動きがあったのか?世界の政治的情勢による影響は、今も続いているのだろうか?
中古車仕入れのプロに、2024年秋の相場変動、そして2024年の中古車業界の動きを振り返ってもらい、所感を聞いてみた。

【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

中古車マーチャンダイジング部門管理職

大学生時代は自動車研究部でジムカーナや耐久レースに没頭し、2009年入社に旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)入社。 ガリバーの店舗で営業職を2年経験した後、本社に異動。電話によるクルマ買取サービスを2年担当する。その後、マーチャンダイジング部門で中古車買取価格の設計、オークションでの売却担当などを歴任。 現在はマーチャンダイジング部門の管理責任者として、中古車の仕入れや商品構成の設計を統括する。お客様のご来店を促進させる在庫構成を設計する、中古車のスペシャリストだ。

リセバ総研所長

リセールバリュー総合研究所 管理運営者 兼 アナリスト

中古車情報誌の最大手での制作、旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)で自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティング界隈でインハウスやコンサルタントとして活動後、2017年に人材開発の世界へ転向。インストラクショナルデザインや対話空間の設計、学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。

2024年9月から例年通りの相場下降

  • リセバ総研所長

    早いもので2024年もまもなく終わりですね。

    OKBさん的に2024年を振り返ってみていただきたいのですが、まずはこの秋の繁忙期()についての所感からお話しいただけますか?

※例年、2〜3月頃と9〜10月頃は自動車業界の繁忙期となる。

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    以前に()「例年通りなら、9月中旬ころから中古車流通の相場は下降傾向に転じるはず」とお話してしていたかと記憶していますが、やはりその通り、相場は落ち込みました。

※下記記事を参照

  • リセバ総研所長

    たしかに2024年の平均売却予想額()データでは、下記画像のようになっていますね。

    10月から相場は下落していますが、こうして見ると、そこまで極端には落ちていないような気もするのですが……?

2024年12月現在:月別平均売却予想額(リセバ総研トップページのグラフより)

※平均売却予想額とは?
買取査定に持ち込まれ査定検査したクルマがオートオークション等で落札または売却される際の金額を予測し、全査定件数で平均化した金額です。
平均売却予想額は、あくまで中古車流通における売却金額の予測値を平均化した数値であり、ガリバー店頭での買取金額とは異なります。ガリバー店頭での実際の買取金額は、クルマのグレードや装備、使用状態によって異なります。

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    全体のデータで見ると10月に入って緩やかに落ちている感じがするんですけど、車種ごとに細かく見ていると、実際にはもう9月から落ち込む兆しが見えていました。

    私の仕事としては、兆しを掴むというか、データが変動する前にどれだけ早い段階で相場変動を予測できるかが重要なんです。

    だから関係者との世間話で「9月から相場が落ちこむと思うよ」と話していても、周囲では「いやいやまだ高いんじゃない?」という声の方が多数でした。

    で、11月ごろには周囲でも「やはり相場が落ちてきたかな」という雰囲気になってきました。

  • リセバ総研所長

    実は私もそうだったんですよ。

    9月にお話をうかがった時にOKBさんが『兆候ありますよ』っておっしゃっていたので、その後は週次で流通データを色々と見ていましたが、10月ごろまで具体的な兆しを掴めずじまいで。

    ちなみに、今年の秋のそういった傾向は、例年とほぼ同じ傾向なんですか? それとも何か、例年とは違った特殊性は何かあったんでしょうか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    まぁ例年と同じ傾向ではありましたね。

    ただ、「自分が予想していたほどには相場が落ちなかったな」というのが所感ですかね。

    もっと落ちると思っていました。

  • リセバ総研所長

    むむっ?ではOKBさんが「もっと下落するんじゃないか」と予想していたのに、実際には市場価格が踏みとどまった要因って、なんだと思いますか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    やっぱり、輸出による買い支えが強かったですね。ある国の政治的な背景で、中古車輸出需要が高まったんです。

    我々はオートオークションを利用していますが、輸出に関わっているわけではありませんので、仕向地(輸出先の国)は明言できませんが。

2024年秋は軽自動車相場の下落が目立った

  • リセバ総研所長

    やはり輸出が要因ですか。

    さきほど、「9月下旬から既に下がる傾向にあった」とのお話でしたが、中古車流通の相場が下がる傾向が顕著だった車種やジャンルとか、あったんでしょうか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    軽自動車ですね。

    今まで軽自動車の相場が市場を引っ張っていたんですが、この秋は軽自動車の中古車流通の相場が落ちる傾向にありましたね。

2024年9月〜11月 平均売却予想額の日別推移
日別のグラフを見ると、相対的にではあるが軽自動車の相場下落幅が大きい。
  • リセバ総研所長

    つまり、輸出の影響を受けない軽自動車の中古車流通相場の下落が目立った一方で、相変わらず旺盛な輸出需要を抱えた国の買い支えがあり、予想したほど中古車市場の相場は下落しなかったという所感につながっている・・・というわけですね。

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    まぁそうですね。

    そもそも、これまで全体的に中古車価格の超高騰期がずっと続いていましたからね。

    「クルマは全体的に高いけど軽自動車だったら安いだろう」と思っていたら、軽自動車の相場も上がってしまっていた、という具合に。

2024年12月現在:軽自動車の月別平均売却予想額(リセバ総研トップページのグラフより)
  • リセバ総研所長

    なるほど、そもそも軽自動車の中古車流通の相場は想定以上になっていたと?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    ええ、全体的に150万円や200万円台で買えたクルマが30~40万円ぐらい高くなっていましたからね。

    お客様も「それだったら軽自動車でいいか」と軽自動車の需要に流れた結果、軽自動車の相場も上がっていたのではないかと考えられます。

    で、中古車市場の相場変動期を迎えて下落傾向になると、その市場の高値を下支えしていた軽自動車の中古車流通相場が例年の相場感に戻っていった、という感じです。

2023年と2024年で比較すると、軽自動車の査定件数の伸び幅(倍率)は、12〜4月を除き査定全体の伸び幅とあまり差がない。しかし、平均売却予想額の伸び幅でみると、2024年の上半期は6月をピークに軽自動車が査定全体の伸び幅を超える月が目立ち、8月以降は概ね査定全体の伸び幅を下回っている。この動きが、OKBが話していた軽自動車の中古車流通相場の高騰と収束を表している。

2024年の中古車業界はメーカーの動向に影響を受けた年

  • リセバ総研所長

    それでは、2024年全体の振り返りのお話をしていきたいんですけど、OKBさん的には中古車仕入れのプロとしてどのような年だったと感じていますか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    自動車メーカーの動向に右往左往し続けた年だったんじゃないかなぁと思いますね。

  • リセバ総研所長

    それは、検査の不正によるリコールの問題ですか? それとも出荷台数ですか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    自動車業界のトラブルも出荷台数の不足も、両方ですね。

    メーカーさんも認証試験の不正問題で大変でしたしね。まぁそういった影響が色々と大きかった年ではあったかなと思いますね。

不正問題があったダイハツと、軽自動車や小型車で競合するスズキの査定に絞り、査定件数を2023年と2024年を比較してみた。問題の影響か、査定件数の伸び幅(倍率)はスズキや査定全体を下回っているが、平均売却予想額の伸び幅は査定全体やスズキを上回っており、ダイハツ車の在庫不足による影響が考えられる。供給が回復した2024年下半期は、9月から平均売却予想額の伸び幅が急激に鈍化している(それでも平均売却予想額は前年を上回っているが)。
  • リセバ総研所長

    中古車を買われるお客様の視点でみると、どのような影響があったんでしょうか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    やっぱり、普通に販売しているクルマが買えないっていうのは、お客様にとっても販売する側にとってもストレスですよね、「メーカーの都合で納車できません」ってなることは。

    お客様が選ばれる車種によっては、中古車の流通価格が新車より高いことがある……なんていう状況でしたから。

  • リセバ総研所長

    自動車業界以外でも、いろいろな業界で起こっている現象かもしれませね。

    写真業界でも、消費が落ち込み光学機器メーカーの国内出荷台数は少なく、円安の影響で中古カメラも輸出や転売で海外に行ってしまう。

    「写真をはじめたいから中古のカメラが欲しい」っていっても、気軽に手に入らないんですよね。10年前は中古で5〜6万円で揃えられた機材が、今では10数万円以上はします。

2024年はある国の旺盛な中古車需要に驚愕

  • リセバ総研所長

    OKBさんにとって、2024年の中古車流通市場で最も印象に残っていることはなんでしょうか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    やっぱりといいますか、ある国への輸出需要による影響が一番大きかったなとは思いますね。

  • リセバ総研所長

    先ほどのお話にあった輸出需要の件ですね。具体的にはどういう影響があったのでしょうか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    もしその国の影響がなかったら、今年の日本の中古車流通の相場下落はもっと加速していたのではないか?と考えてます。

  • リセバ総研所長

    なんと・・・それは2024年のいつごろのことですか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    やはり9月です。

    9月の中古車輸出台数も、その国が断トツで1位です。

    中古車輸出で検索すればすぐに出てくる情報ではありますが。

  • リセバ総研所長

    OKBさん的に、2024年はもうその9月の市場が一番印象に残ってるということですか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    そうです。あのときの相場にはかなり驚きました。

    去年も中古車相場はかなり高騰したんですけど、今年はさらにそれを上回っているんです。自分の感覚では130%増しぐらいでしょうか?

    その国には新車中古車を問わず600万円以上のクルマは輸出できないように規制されていますが、代わりに600万円以下のクルマを輸出したり、別の某国を経由してすごい量のクルマを輸出したりしていたのようなので、日本の中古車流通にも大きな影響がありました。

  • リセバ総研所長

    その中でも、2024年9月の中古車市場を支えてくれた車種って、何でしょうか?

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    ジムニーじゃないかなと。

  • リセバ総研所長

    ジムニー!? 意外ですねぇ!

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    先ほどからお話しているその国に対しては、もともと中古車の輸出が厳しく規制されています。

    EVやハイブリッド車、排気量1900cc以上のクルマが輸出できないんです。

    そこで、どうやら輸出の規制に引っかからない軽自動車も対象になり、ジムニーがめちゃめちゃ重宝されているらしい、という話です。

  • リセバ総研所長

    もともとジムニーは各国で人気がありますが、そんな現象が中古車市場で起きてたんですね。

    ところでジムニーの平均売却予想をグラフで見るとこんな感じなんです。

    このグラフに関しては、どう思われますか?

2024年12月現在:スズキ ジムニーの月別平均売却予想額(リセバ総研トップページのグラフより)
  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    7・8・9月の平均売却予想額が上がっている部分に注目ですね。

    ここで高騰していた価格が、秋以降に落ち着いてきています。

    本来はもっと落ちるのではないかと想定していたんですけど、この高騰した時期の影響を受けています。

  • リセバ総研所長

    いわれてみれば、2024年1~3月頃の価格に戻ってるようにも見えますね。
    では、他の車種で何か印象に残っているものはありますか?
    排気量1900cc以下のクルマというと、ステップワゴンも一時話題になった印象があるんですけど。

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    ステップワゴンは今も相場は高めですけど、同じ傾向だと思いますね。
    ちなみに、この国って自国でもクルマ作ってるんですけど・・・あまり知られていませんね。

  • リセバ総研所長

    そういえば、ウチの近所にその国のメーカーのクロカンタイプの4駆をお持ちの方がいらっしゃいます。一般的な住宅の駐車場で、普通に使われているようでした。

    では、OKBさんにとっての2024年の中古車流通市場は、そとにかくその国への輸出需要が相場を左右した?といったところでしょうか。

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    そうですね。

    もちろんIDOMは直接的な取引で関与しているわけではありませんが、お客様から買取らせていただいた中古車の需要が高まった要因であることも事実です。

    オートオークションなど通して中古車流通に関わるものとしては、市場の相場を支えてもらったと思います。

  • リセバ総研所長

    今回も中古車流通市場に関する興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。

    次回はOKBさんに「2025年の中古車業界の展望」についてお伺いしたいと思います。

    2025年もよろしくお願いいたします!

  • 【中古車仕入れのプロ】〝OKB〟

    こちらこそ、よろしくお願いいたします!

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