カー・オブ・ザ・イヤー実行委員の大岡が本音で語る! 【リセバ総研編集部座談会】「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」 を受賞した新型 ホンダ フリード、ぶっちゃけどんなクルマ?(後編)
自動車業界を代表する賞と言っても過言ではない「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」。2024年 12月5日(木)の最終選考会にて、ホンダ フリードが選ばれました。
ということで、クルマに関しては一家言あるリセバ総研編集部の面々に、前回に引き続き、ホンダ フリードの乗り心地やエンジンについてなど、気になる点を本音で語ってもらいました。どうぞお楽しみください。
自動車情報メディア「CORISM」編集長
リセールバリュー総合研究所 管理運営者 兼 アナリスト
目次
先代よりもゆったりとした運転が楽しめるクルマに
-
リセバ総研所長
では前回に引き続き、「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」の「授賞理由」を読み解きながら、新型フリードについて探っていきます。
この「居住性、使い勝手に磨きをかける」という部分。こちら、大岡さんから見て、どのように思いますか?
基本5ナンバーサイズで3列シート。日本市場で重用されるファミリーカーゆえ、これまでは突出したキャラクターを生み出しづらかったことも事実。ホンダはそこに切り込んだ。居住性、使い勝手の良さに磨きをかけるとともに、動的質感の向上、ひいては操縦の喜びをも加味することに成功した。ガソリンエンジンモデルに加え、ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」を加えたことも大きな魅力のひとつ。ホンダが大切にしているM・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想を見事現代に体現した1台である。
(「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」ホンダ フリード授賞理由)
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
まず居住性や使い勝手は(元から良いので)それほど変わっていないとは思いますけどね。
大きく変わっているなと思ったのは、パワーユニットです。
ハイブリッドシステムがSPORT HYBRID i-DCDから、e:HEVに代わりました。
-
リセバ総研所長
以前のハイブリッドシステムはいろいろとあったというお話を聞くのですが……。
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
以前のシステム(SPORT HYBRID i-DCD)がフィットに搭載されてから、リコールが続きました。それでも、あのシステムを搭載していた期間は長かったですね。
ただ、フリードの発売が後だったので、フィットほど大きな影響はなかったと記憶しています。
そういえば、かつて日光での大渋滞事故があった時、フィット系のクルマがことごとく動かなくなっちゃったって、一時期ネットで話題になったことがありました・・・
-
リセバ総研所長
動力系の話はまた後ほどお聞きするとして、受賞理由の「動的質感の向上、ひいては操縦の喜びをも加味することに成功した」と記載がある部分について、大岡さんのご意見をいただいてもよいでしょうか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
どちらというと、先代の方がスポーティーで、今回の新型は良い意味で走り心地が柔らかくなった印象がありますね。
前のやつはキュンキュン動く感じで足も硬め。ステアリングのレスポンスもダルな方向性になって、ゆったり柔らかめになってきました。
ホンダといえば、フィットもそういう傾向になってきていますね。キュンキュン走る「ホンダらしさ」よりも、より多くの人が運転しやすく、乗り心地が良いと感じるようなクルマづくりに、方向転換してきているような気がします。
-
リセバ総研所長
では、授賞理由に書いてある「操縦の喜び」っていうのは、今仰っていたような(ゆったり柔らかな)部分ってことですか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
うん。「操縦の喜び」っていうのは、極端に言ってしまえば「スポーティーな方がいい」ってわけでもないじゃないですからね。「ダルでダラッと走っている方がいい」場合もあるし。
それでいくと、より万人に受け入れられやすいクルマになったという感じではありますかね。
ガソリン車から乗り換えても違和感のないホンダのe:HEV
-
リセバ総研所長
では、先ほど「大きく変わったのはパワーユニット」というお話に戻りますが、現行のハイブリッドシステム、e:HEVに対して大岡さんとしてはどのように評価していますか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
いわゆる「シリーズハイブリッドタイプ」ですね。エンジンはほぼ発電に徹していて、モーターで補充する、っていうようなクルマになってます。
ホンダの場合、さらにエンジン直結モードなんていうのがあって、「モーターで走るよりエンジンの出力で直接タイヤ動かした方が効率が良い」という場合にはそのモードを使って走るという形になっていて、なかなか凝った仕組みになっています。
-
リセバ総研所長
乗ってみての感想はいかがですか?
ハイブリッドシステムの中で、あえてこのe:HEVを選ぶというぐらいの魅力はありそうですか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
考え方次第ですかね。日産にも「シリーズハイブリッドタイプ」のe-POWERというのがあります。
ただ、こちらは先ほど説明したホンダとは逆に、アクセルを踏んだ瞬間にモーターの動力をガチッとあげて力強さを前面に出していくような制御になっています。
一方でホンダのe:HEVはトルクの立ち上げをゆっくりに制御して、ガソリン車に近いようなフィーリングに仕上げていました。
どちらが優れているかを選ぶのは難しいんですけど、私の考えとしては、「ホンダはモータードライブ車を違和感なくガソリン車のような感覚で使えるようにした」っていう評価ですかね。
-
リセバ総研所長
ほほう、それは日産がトルクフルなモーター駆動を演出をしているのに対して、ホンダはどちらかというとモーターで駆動していることを意識させないようなつくりになっているということですかね?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
うーん。
日産はEVのように走らせたくて、ホンダはガソリン車から乗り替えても違和感のないように走らせたい。そういう違いかなぁと思いますね。
-
リセバ総研所長
なるほど。ところで、ハイブリッドとは別に1.5Lのガソリンエンジンも用意されていますが、大岡さんはこのエンジンラインナップについてどう思われていますか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
基本的にはこのクラスのエンジンって「実用性重視」というか、とくに可もなく不可もなく、無難なエンジンだなぁって感じですかね。
-
リセバ総研所長
ラインナップしているのは、経済性のためですかね?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
そうそう。要は、安価な設定が欲しい人向けのラインナップですね。
-
リセバ総研所長
旧モデルの中古車と新車ともにですが、あえてガソリン車を選ぶべきポイントはありますか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
私はあえてガソリン車を選ぶ必要は殆どないと思いますね。やっぱりハイブリッド車を買うのをおすすめしたいところです。
子供がいると、将来の地球環境のことを考えて、エコなクルマ選びをしようかなと思ってしまいます(笑)
フリードは居住性と乗り心地ともに◎
-
リセバ総研所長
では率直に伺いたいんですけど、大岡さんがフリードに試乗したとき、もっとも気に入ったところってどこでした?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
やっぱり「居住性はすごいな」って印象。乗り心地も良くなりましたね。
-
リセバ総研所長
3列目のシートはいかがでしたか?ロングドライブにも耐えられそうですかね?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
大柄な男性だったら厳しいかもしれないけれど、お子さんとか女性の方であれば大丈夫じゃないかなぁと思いますね。
-
リセバ総研所長
ちなみに、大岡さんだったらエア(AIR)とフリード クロスター(CROSSTAR)、どちらを選びますか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
クロスターの方を選びますね。リセールバリューが良さそうだし、見た目もこちらの方が若々しいというか。
-
リセバ総研所長
このカタログのイメージカラーも、アウトドアカスタム系で流行っている色ですね。
デザインテイストの大きな変化
-
リセバ総研所長
もし大岡さんが、ホンダさんからがフリードのコンセプトについて聞いていることがあれば、ぜひお話していただけせんか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
あまり詳しくは聞けてないですけど、「顔がデカいオラオラ系は避けたい」という空気はひしひしと感じます。
「ステップワゴン化してきている」という話はしましたね。そのへんのコンセプトは、ホンダのミニバンの中で統一化されてきているみたい。
-
リセバ総研所長
新型フリードのデザインは、スッキリと洗練されていて優しさも感じますし、私も好感を持っています。大岡さんがおっしゃるように、ステップワゴンの兄弟車のようにも見えます。
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
うん。プラットフォームは流用されているから基本的な骨格は先代モデルと同じで、衝突安全のことを考えたら変えられない部分も多いはず。
先代フリードだとキャラクターラインがいっぱいあって、「どうだスポーティーだろう」って主張する印象が強かったですけどね。
それでも、新型フリードはキュッとかたまり感があって可愛らしくなったし、シンプルだけど柔らかさを感じさせるよう、上手くデザインされていると思う。
-
リセバ総研所長
確かに同じプラットフォームなのに、ここまでデザインを変えられるんですね。
先代のデザインが好きだった方からは賛否両論でしょうが、女性にも受け入れやすいデザインなのではないかなと感じます。
これからの小型ファミリーカー選びはどうなる?
-
リセバ総研所長
デザインをガラッと変えたことについて、大岡さんとしてはホンダさん的にはどういう意向があると思いますか?
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
現行のホンダ フィットが好評価なのは多少影響しているかもしれません。
ホンダ アコード(日本仕様は2024年発売)もデザインテイストが変わったし、インパネの雰囲気もシンプルなクリーンな印象に変わりました。
このあたりから、今までとデザインテイストを変える方向性になったのかなと思います。私から見ても一気に変わったなぁと感じます。
-
リセバ総研所長
最近のホンダ車のデザインは清潔感があってシンプルな印象を持っています。ステーショナリーや一人暮らし向けの家電みたいな、飽きないデザインというか。
それでは最後に、フリードのようなファミリーカーにはどんな未来が見えそうか、大岡さん的にな視点で教えていただけますでしょうか。
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
ファミリーカーという定義がなかなか難しいですが、いわゆるコンパクトカーでいうと、ホンダ フィットとかトヨタ ヤリスクロスといった5ドアハッチバック系が選ばれることが減っていって、フリードみたいなスライドドアのミニバンや、トヨタ ライズ(ダイハツ ロッキー)のようなコンパクトSUVに代わっていくのではないかなと思いますね。
カー・オブ・ザ・イヤーを競ったスズキ フロンクスもお手頃な価格だし、4m以下の全長で取り回しも良い、小型のファミリーカーとして有力な候補になります。
クラスは違うけど、マツダさんは「ミニバンから撤退する」って宣言して、その代わりにCX-80(やCX-8)のような3列シートのSUVをラインアップしてます。
「ミニバンも良いけど3列シートがあるならSUVも良いよね」という層にアピールしている印象です。
国内に投入されるのではと噂されているスズキ ジムニーの5ドアも、ネット上では新車ディーラーでとった見積もり画像まで出回って賑わっているようですし、「非日常感が味わえるならファミリーカーにスライドドアを求めない」なんて層は、ますますSUVに転換していくかもしれませんね。
-
リセバ総研所長
個人的にはマツダが作るコンパクトミニバンも乗ってみたいな、と思っています・・・あと、子供がある程度大きくなると、スライドドアにこだわらず小型のSUVに乗り換えたいなと、私も思いますね。
今回は2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したホンダ フリードについて語っていただきありがとうございました!
来年のカー・オブ・ザ・イヤーでもよろしくお願いいたします。
-
【自動車情報のプロ】大岡智彦
はい、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。