自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! ホンダ WR-V 試乗記〜はたしてインド産SUVは売れるのか?リセールバリューは?〜

ホンダ WR-Vはインドで生産されて日本に輸入されているコンパクトSUV。リーズナブルな価格設定によって、各メーカーの激戦区となるSUV市場でも強力な価格競争力を持っている。さらにWR-Vのボディサイズや価格設定をジックリと見てみると、価格戦略だけではないホンダのしたたかな戦略が垣間見えてくる。
果たしてWR-Vは売れるのか?WR-Vの中古車はリセールバリューの観点でどのように評価されるのか?
そこで今回は、比較対象となる競合車種と比べつつ、試乗記を交えてWR-Vの素性を深堀りしてみよう。

自動車情報メディア「CORISM」編集長
目次
ホンダ WR-Vの競合車種とボディサイズや価格を比較する
ホンダ WR-Vと競合車種のボディサイズを比較する
車名 | ホンダ WR-V |
ホンダ ヴェゼル |
トヨタ ヤリスクロス |
トヨタ ライズ |
---|---|---|---|---|
全長 | 4,325mm | 4,330mm | 4,180mm | 3,995mm |
全幅 | 1,790mm | 1,790mm | 1,765mm | 1,695mm |
全高 | 1,650mm | 1,580mm | 1,590mm | 1,620mm |
ホイールベース | 2,650mm | 2,610mm | 2,560mm | 2,525mm |
まず、ボディサイズでWR-Vとヴェゼルを比べると、全長と全幅はほぼ同じ。全高とホイールベースは、WR-Vの方がやや大きい。そして、WR-Vはヤリスクロスよりやや大きく、ライズは1クラス下となるボディサイズになっている。
WR-Vと競合車種の価格帯を比較する(FF、ガソリン車のみ)
車名 | ホンダ WR-V |
ホンダ ヴェゼル |
トヨタ ヤリスクロス |
トヨタ ライズ |
---|---|---|---|---|
新車価格 | 2,098,800~ 2,489,300円 |
2,648,800円 (4WDのみ/FF設定なし) |
1,907,000~ 2,551,000円 |
1,717,000~ 2,049,000円 |
ここで、注目したいのが、ボディサイズと価格の関係。ヤリスクロスより、ややボディサイズが大きく実用的で価格はほぼ同等。1クラス下のライズより少し高価なくらい。つまりWR-Vは「コスパ高いでしょ!」と、アピールしたいと推測できる。また、ヴェゼルのガソリン車には4WDの設定しかないため、FF車を望むユーザーの受け皿にもなる。
ホンダは、こうした価格やボディサイズの隙間を上手く攻めてくるメーカー。もちろん、本来なら圧倒的ナンバー1であるトヨタに対して真っ向勝負を挑みたいところだ。しかし、強すぎるトヨタに対して、こうした隙間をつくような戦略しかできないのも現実。
2023年度の登録車販売台数ランキングで、ベスト10中なんとトヨタ車が7台も占めている。ホンダ車で一番売れている登録車は、先代フリード。ランキングでは、なんとか10位に入っている程度だからだ。
しかも、ホンダの場合、Bセグメントのコンパクトカーしか売れていない状態。ホンダで2番目に売れている登録車は、ヴェゼルでランキングは12位。3番目がフィットで14位。そして、ようやく4番目にMクラスミニバンのステップワゴンが15位に出てくる。このステップワゴンも、ライバル車ノアが6位、7位がセレナ、8位がヴォクシーとかなり離されている。こうした状況だと、やはり得意なコンパクトカーカテゴリーで盤石な基盤を固めたいと考えるのは、当然のことだ。
販売好調!? WR-Vの売れ筋グレードやボディカラーは?
こうしたコンパクトSUVの隙間を狙った戦略は、概ね成功を収めている。WR-Vが発売されたのは、2024年3月。それから約1カ月後の時点で総受注は約13,000台。販売計画は3,000台/月なので、間販売計画の4倍以上も1カ月で売れたことになる。
初期受注が、販売計画の数倍になるのは、新型車であればよくある話。とくに、珍しいことでもないが、2024年5月の登録車販売台数ランキングでは、販売計画通り3,083台を売り19位に入っている。国内ホンダシェア拡大に大きく貢献したといえるだろう。
発売から1カ月後の人気グレードとボディカラーは以下の通り(構成比)。
WR-Vのグレード別の販売構成比
グレード名 | 販売構成比 |
---|---|
X グレード | 15% |
Z グレード | 55% |
Z+ グレード | 30% |
一般的に、新型車の発売直後は、最上級グレードの構成比が高くなる傾向が多い。
しかし、WR-Vは発売直後から中間グレードの構成比が高いことから、ホンダの狙い通り、価格志向の顧客が多いと予想できる。
WR-Vの人気ボディカラーベスト3と構成比
人気ランキング | ボディカラー | 販売構成比 |
---|---|---|
1位 | プラチナホワイト・パール | 35% |
2位 | クリスタルブラック・パール | 28% |
3位 | メテオロイドグレー・メタリック | 18% |
モノトーン系が上位になるのは、他のモデルと同様だ。
ただしボディカラーは、リセールバリューに大きな影響を与える要素のひとつ。人気色である1位のホワイトと2位のブラック系以外を選択すると、リセールバリューが下がることが予想できる。
ホンダ WR-Vは実用性に優れたSUV
ホンダ WR-Vの開発コンセプトは「VERSATILE FREESTYLER」。“VERSATILE”とは多様なライフスタイルやニーズに適応できる特性を意味し、 “FREESTYLER”とは、さまざまな制約を乗り越え、自由に自分らしいスタイルで生きることを表現している。
こうした開発コンセプトを分かりやすくすると、実用性が高く使い勝手がよいということだ。これは、主に実用性を重視するインドマーケットのニーズでもある。インドマーケットのニーズとはいえ、実用性が高く、使い勝手が良ければ、良いクルマの条件を満たしている。だから、日本もマーケットでも売れると想定できる。
ホンダらしくない?トレンド重視のデザイン

デザインの点で感想を述べるとすると、「ホンダらしくない」といったところ。
ホンダのSUVは、ヴェゼルやZR-Vなど、他社とは異なるデザインテイストで独創性をアピールし続けてきた。しかし、WR-Vは、全世界的なSUVデザイントレンドのど真ん中といった印象。
大きな顔と大きなグリルを組み合わせに、フェイス上部サイドに睨みの効いた細めのヘッドライトを配置。これは、多くの人気SUVデザインの定石だ。その結果、コンパクトSUVながら、重厚感と迫力のあるフェイスに仕上げている。

また、ボディサイドは、面の張りが強く筋肉質なデザインに、樹脂製ブラックのフェンダーアーチモールが加わる。リヤは、水平基調のコンビネーションランプでワイド感をアピールし、安定感のあるシルエットを生み出した。まさに、オフローダー系タフネスデザインの王道を行く。最近では、都会派SUVより、こうしたオフローダー系デザインの人気が高い。
こうしたデザインを採用したことにより、WR-Vはスペック上のボディサイズより大きく見える。大きく見えるデザインというのも、売れるSUVの条件でもあるからだ。
水平基調のデザインでシンプル&スッキリ

WR-Vにインテリアは、シンプルでスッキリ系。インパネは、水平基調のデザインとし広さをアピール。スイッチ類などは、センターコンソール上部に集中配置し使いやすさをアップしている。
メーターは、7インチTFT液晶メーターとアナログスピードメーターを組み合わせ。7インチTFT液晶メーターには、スピードメーターや走行モードなどの基本情報に加え、ホンダセンシングなどの情報が表示される。
装備面では、エアコンの風を後席へ届けるリアベンチレーションを全車標準装備。後席空間の快適性を向上させている。
荷室の容量はクラストップレベル

そして、荷室容量。WR-Vの荷室容量は、クラストップレベルとなる458L。ヴェゼルが404Lなので、実用性は高いレベルにある。リヤゲートもワイドで大きく開くので使い勝手もよい。もちろん、後席はこのクラストップレベルの広さを誇る。
ホンダ WR-V 試乗記

それでは試乗記といこう。
WR-Vの運転席に座ると、まず驚くのが視界の良さだ。ダッシュボードのデザインも影響していて、死角の少ない視界になっている。また、フロントフードの先端やフェンダーサイドの距離感もつかみやすく、多くの人が運転しやすいと感じるはずだ。
コストダウン!? 懐かしい?手引きのサイドブレーキ

さらに驚きだったのは、手引きのサイドブレーキだったこと。軽自動車のN-BOXでも電子制御パーキングブレーキを装備している時代。それなのに、まさかの手引きのサイドブレーキとは・・・。懐かしさもあったが、コストダウンの影響を感じた部分だ。その一方、内装の質感は、それほど悪くない。車両価格なり、といった印象だ。
力強い走りだが静粛性には難あり

WR-Vに搭載されたエンジンは、直4DOHC 1.5L。最高出力118㎰、最大トルク142Nmをアウトプットする。全車前輪駆動(FF)となる。
アクセルを少し踏み込むと、スルスルと元気よく走り出す。感覚的には、ヴェゼルより力強く感じた。ただ、エンジンの回転数が4,000rpm前後を超え、速度が上がるとロードノイズも加わり、車内はなかなか賑やかだ。速度の低い市街地では、エンジンの回転が高くなることもないので、静粛性はクラス平均レベルといえる。
環境重視時代にアイドリングストップ機能が無い!
そして、市街地での走行をしばらく続けると、コストダウンの影響を受けた部分を発見。なんと、アイドリングストップ機能が無いのだ。
ホンダは、2040年にグローバルでのEV/FCEVの販売比率を100%とする目標を掲げている。
その過程で、アイドリングストップ機能無しの純ガソリン車をハイブリッド比率の高い日本に投入するというのは、経営方針とは真逆の営業戦略にも見える。それほど、営業面で背に腹は代えられない状況なかもしれない。
WR-VのWLTCモード燃費は16.2~16.4㎞/L。同じくアイドリングストップ機能が無いヤリスクロスの燃費は、17.6~19.8㎞/L。燃費面では、なかなか厳しい結果 となった。
スポーティなハンドリングと7段変速CVT+パドルシフト

WR-Vの乗り心地は、少し硬めだ。
大きな凹凸が続く路面だと、リヤサスペンションを中心にゴトゴトした突き上げ感があった。ただ、速度が上がると乗り心地はしなやかさを増していく。
ハンドリングは適度なスポーティさで、キビキビ曲がり気持ち良い。そこに、リニアな加速感が得られる「G-Design Shift」を搭載した7段変速が可能なCVTが加わる。
WR-Vには、パドルシフトが全車標準装備されているので、スポーティな走りを楽しむことも可能。エンジンブレーキを積極的に使い、軽く減速したいときにも便利で、実用面でもメリットは大きい。
そして、WR-Vの特徴のひとつが195mmもある最低地上高。FFのみの設定なので、ハードな悪路は厳しいが、ラフロードくらいなら余裕タップリで走り抜けてくれそうだ。
情緒的価値観を排除し実用性重視のホンダ WR-V

予防安全装備と運転支援機能の機能は、「ホンダセンシング」を全車標準装備しているので安心だ。
ただ、運転支援機能である前走車に追従して走行するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、コストダウンの影響を受けている。電子制御パーキングブレーキの装備を見送ったことで停止維持ができないため、車速が25km/h未満になったときに機能が自動でオフになる。
今時は、渋滞時のストップ&ゴーを簡単な操作で繰り返すことが可能な機能が当たり前の時代なので、ちょっと残念な仕様となった。
総合的に見て、WR-Vは実用面ではなかなか優れたモデルとなっている。また、マーケットイン的手法だが、大きく立派に見えて多くの人に好まれるデザインも秀逸だ。
コストダウンによる残念な部分も見受けられものの、価格的に見れば許容範囲といったところ。過度な装備などは必要としない実用性重視の人に好まれる1台に仕上がったといえる。
WR-Vのおすすめグレードは最廉価のX? それとも?
WR-Vには、基本的にメーカーオプションという設定が無く、グレードにより装備差がつけられている。
グレードは、エントリーのXグレード、中間のZグレード、最上級のZ+グレードの計3タイプが用意されているが、ZとZ+の差は小さいので、実質2グレードと考えてもよい。
Z+は、Zに対してZ+専用エクステリア(ベルリナブラック・フロントグリル、シルバー・ドアモールディング、シャープシルバー塗装ドアロアーガーニッシュ)など、主に加飾の違い程度となる。豪華さを重視しないのであれば、Zで十分だ。それだけで、ZはZ+に対して車両価格も約14万円も安価になる。
エントリーグレードのXとZを比べると、とにかく装備差が大きい。下記の装備はXには装備されず、Zには標準となっている主な装備だ。
- ・コンビシート(プライムスムース×ファブリック)
- ・本革巻ステアリングホイール+本革巻セレクトレバー
- ・ソフトパッド
- ・パーセルカバー
- ・LEDフォグ
- ・17インチホイール
上記の装備差で、価格差は約25万円。Zならちょうどよい装備といった印象で、最も売れているグレードになっているのも理解できる。
ただ、逆にシンプルを極めたいのであれば、無くてもよい装備といえる。徹底的に価格重視というのであれば、Xという選択もありだ。
多くの人におすすめなのはZグレード、とにかく安価に手に入れたいのであればXグレードがおすすめ になる。
WR-Vのリセールバリュー予想は?爆上がりの可能性も?
まず、WR-Vは人気のコンパクトSUVカテゴリーなので、他のカテゴリーのモデルと比べれば、かなり高めのリセールバリューとなる可能性がある。
ただし、ライバル車とリセールバリューを比較すると、ヤリスクロス並みにとまではいかないと予想する。
それは、現在の国産車市場はトヨタのブランド力があまりに大きく、トヨタのほとんどのモデルがライバルに対して高めのリセールバリューとなっているからだ。
さらに、日本国内はハイブリッド車の比率が非常に高い。そのため、純ガソリン車であるWR-Vは、あまり注目されずリセールバリューがアップしない可能性もある。
ただし、プラス要因もある。
WR-Vは、インド生産のモデルなので、年間の販売台数がある程度限られてしまう。何らかの理由で、WR-Vが大ヒットしたとしても、そう簡単に流通台数を増やすことができない。
そうなると、国内では供給不足となって高年式の中古車価格が爆上がりし、リセールバリューもアップする、なんて可能性も(僅かだが)あるだろう。
赤いボディカラーはリセールバリュー低下のリスクあり?
グレード別に見ていくと、前述の通りZとZ+は基本的に加飾の違いがメイン。そのため、リセールバリューは両グレートも同等レベルになると予想できる。
Xは他のグレードに比べるとリセールバリューは低めになるだろう。
WR-Vは、メーカーオプションがほとんど無いため、 装備によるプラス査定の要素はとても少ない 。
数少ないリセールバリューアップのポイントとしては、カーナビが販売店オプションということもあり、9インチのホンダコネクトナビが装備されていればプラス査定される可能性も高まる。
そして、リセールバリューの観点でもっとも差がつきやすいであろう点がボディカラー。カタログや広告で全面に押し出されている赤いボディカラーがWR-Vの訴求色だが、発売直後の人気カラーベスト3には赤の「イルミナスレッド・メタリック」が入っていない。
ボディカラーは、新車で人気が無ければ中古車でも人気が無いことがほとんど。そのため、リセールバリューを重視するのであれば、イルミナスレッド・メタリックは選択肢から外した方が無難だろう。
ホンダ WR-V のグレード別新車価格
グレード名 | 新車価格 |
---|---|
X | 2,098,800円 |
Z | 2,349,600円 |
Z+ | 2,489,300円 |
ホンダ WR-V スペック一覧
代表グレード | WR-V Z+ FF |
---|---|
全長×全幅×全高 mm | 4,325×1,790×1,650 |
ホイールベース mm | 2,650 |
トレッド(前/後) mm | 1,540/1,540 |
最低地上高 mm | 195 |
車両重量 kg | 1,230 |
エンジン型式 | L15D型 |
エンジンタイプ | 直列4気筒DOHC |
総排気量 ㏄ | 1,496 |
エンジン最高出力 kW(ps)/rpm | 87(118)/6,600 |
エンジン最大トルク N・m(kgm)/rpm | 142(14.5)/4,300 |
燃費(WLTCモード ㎞/L) | 16.2 |
サスペンション | 前:マクファーソン式 後:車軸式 |
タイヤ 前後 | 215/55R17 |
最小回転半径 m | 5.2 |