中古車買取市場に潜む「信頼の溝」〜調査で明らかになった情報格差と求められる透明性〜

リセバ総研は2026年1月に中古車の売却・買取査定に関する意識調査を実施。464名から回答を得た。この調査から浮かび上がったのは、「情報の非対称性」に起因する消費者の不信感だった。約3人に1人が買取査定で不信感を抱いた経験があり、半数近くが中古車相場を全く把握していないという実態が明らかになった。

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。
2026年1月29日に公開された同調査に関する詳しいプレスリリース

中古車買取業者に対する「不信感」の実態

リセバ総研は「中古車のガリバー」を全国に展開する株式会社IDOMが運営し、同社が持つ中古車相場データを用いて情報を発信しているが、週報などの相場情報に設置されたガリバー公式サイト(221616.com)へのリンク等を除き、記事の制作においては独立性を保っている。そのため、今回の調査においては客観的かつ中立な視点で執筆している点にご留意いただきたい。

当調査に関しては、すでに解説記事も公開済みであるが、改めて調査結果を深堀りしつつ振り返ってみたい。

さて、調査結果で注目したいのは、中古車買取業者への信頼性に対する回答だ。「中古車買取業者を信頼できる」と回答したのは43.5%で、17.5%は「信頼できない」と回答している。

さらに注目すべきは、33.6%の回答者が買取査定で「不信感を抱いた経験がある」と答えた点だ。

最も多い不満は「後出し減額」と「根拠不明な査定」

不信感を抱いた理由(複数回答)のトップは「後出しで減額された」が40.4%で、僅差で「査定額の根拠が不明確」が39.7%だった。続いて「相場より明らかに安いと感じた」30.8%、「手数料・条件などの説明が不十分だった」30.1%と続き、情報開示の不足が不信感につながっている。

「強引に即決を迫られた」23.7%、「他社を過度に否定された」26.3%といった営業姿勢に関する不満も一定数見られ、消費者が冷静な判断をする機会を奪われていると感じているケースが少なくないことがわかる。

半数近くが相場を「全く知らない」という情報格差

また、消費者と中古車買取事業者の間に存在する情報格差も浮き彫りになった。「中古車相場の動向やトレンドをまったくわかっていない」と回答した人は46.8%に達し、半数近くが相場に関する基本的な知識を持たない状況が判明した。「よく知っている」と答えたのはわずか8.0%に過ぎない。

リセールバリューの把握度も低い

自分のクルマのリセールバリュー(残価)についても、「まったくわからない」が36.6%、「あまり把握していない」が29.1%と、合わせて65.7%が十分に把握できていない状況だ。「正確に把握している」はわずか9.1%に留まった。

さらに、「自分のクルマは今売ると何%くらいで売れそうか」という質問には、30.8%が「わからない」と回答。実際に予測した人の中では「40%以下」が最も多く22.6%を占めた。一方、理想のリセールバリューについては「70%台」25.6%、「60%台」23.5%と、現実と理想の間に大きなギャップが存在することも明らかになった。

リセールバリュー情報をお届けする我々「リセバ総研」も、改めて力不足を痛感する。中古車相場の情報が生活者の皆さんに広く届くよう、更なる努力が求められる。

年齢が上がるほど情報格差が拡大

特筆すべきは、年齢層別の分析で明らかになった傾向である。50代以上で「相場をよく知っている」と答えたのはわずか2.7%で、「まったくわかっていない」が62.6%に達した。

一方、20代では「よく知っている」が14.7%と相対的に高く、若年層ほどインターネットを活用した情報収集が進んでいることが推察される。高齢者層ほど情報弱者になりやすい構造が、業界全体の課題として浮かび上がった。

信頼を得るため必要なこととは?

一方で、31.9%の回答者が「信頼できると感じた買取査定体験がある」と回答し、信頼構築に成功している事例も多く数存在することが明らかになった。これらの事例から、中古車買取業者に求められる大切な要素見えてくる。

重要なのは「相場情報の開示」と「丁寧な説明」

信頼できると感じた理由(複数回答)のトップは「相場情報を開示してくれた」54.1%と「査定額の理由を丁寧に説明してくれた」53.4%だった。この2つが信頼構築の双璧であり、透明性と説明責任が消費者の信頼を勝ち取る最も重要な要素であること示されている。

続いて「即決を迫らなかった」35.8%、「他社比較を認めてくれた」35.1%が挙げられ、消費者に冷静な判断の機会を与えることが信頼につながることが示された。「契約条件や手続きの説明が明確だった」26.4%も重要な要素として挙げられている。

興味深いのは、「予想より高く売れた(から信頼できると感じた)」からという回答が15.5%と比較的低い点である。消費者が求めているのは必ずしも「最高額」ではなく、「納得できるプロセス」と「適正な価格」であることがわかる。

次回の売却時に重視したいポイントは「価格」と「透明性」

「次にクルマを売る際、最も重視したいポイント」では、「価格の高さ」が36.4%で最多となった。しかし注目すべきは、2位が「査定の透明性」20.0%である点だ。価格を重視しつつも、査定プロセスの透明性への関心が高まっていることが読み取れる。

3位は「営業姿勢や対応の誠実さ」11.9%、4位には「相場情報が事前にわかること」10.8%と「手続きの簡単さ」10.8%が並んだ。消費者は単に高く売れることだけでなく、信頼できる相手と、透明性の高いプロセスで、スムーズに取引したいと考えていることが明確である。

「2026年の相場は不透明?」物価上昇や世界情勢の影響も

2026年の中古車相場については、「正直わからない」が40.7%と最も多く、市場の先行きに対する不透明感が強いことが示された。「横ばいだと思う」26.9%、「上がりそう」25.9%がほぼ拮抗しており、「下がりそう」はわずか6.5%に留まった。

相場予測の理由としては、「物価上昇の問題」30.8%が最多で、続いて「世界情勢の問題」16.2%、「円安の問題」9.5%と続いた。しかし最も多かったのは「正直わからない/直感でそう思った」42.9%で、多くの消費者が明確な根拠を持たずに漠然とした不安を抱えている状況が浮き彫りになった。

相場下落への警戒感は強い

「相場が下がるかもしれない」という想定が売却判断に影響するかという質問には、「かなり影響する」16.2%、「多少影響する」48.3%と、合わせて64.5%が影響を受けると回答した。市場の動向に対する警戒感は強く、タイミングを逃すことへの不安が売却判断の重要な要素になっていることがわかる。

実際、売却タイミングについて後悔した経験では、「もっと後に売ればよかった」14.9%に対し、「もっと早く売ればよかった」11.2%とやや上回っており、売り時を逃した後悔の方がやや多い傾向が見られた。

「思ったよりも・・・?」買取査定体験の満足度と査定額のギャップ

これまでの買取利用経験については、39.0%が「まだ買取査定を利用したことがない」と回答。利用経験者の中では「やや満足」23.3%が最も多く、「非常に満足」10.6%と合わせた満足度は33.9%に留まった。「どちらとも言えない」17.0%、「やや不満」7.3%、「非常に不満」2.8%と、不満を持つ層も一定数存在する。

買取査定額と想定の比較では、「想定より低かった」21.3%に対し、「想定より高かった」は8.0%に過ぎず、多くの消費者が期待を下回る結果に直面していることが明らかになった。「ほぼ想定通り」は26.1%だった。

まとめ

本調査から明らかになったのは、中古車業界への「信頼度」だ。3人に1人が不信感を経験し、半数近くが相場を把握できていない状況は、業界と消費者の間に存在する情報の非対称性が浮き彫りになっている。
一方で相場情報の開示と丁寧な説明によって信頼を勝ち取った事例が31.9%存在し、やはり顧客が「納得できるプロセス」を経ることが重要であることが改めて明確になった。
中古車買取業者に対する消費者の不信感を払拭して信頼を勝ち取るには、情報格差の解消、査定プロセスの透明化、相場情報の積極的開示が必要だ。
リセバ総研も中古車業界が抱える「情報の非対称性」を解消すべく、より有益な相場情報の発信に努めたい。