リセールバリュー白書 2024年第1四半期中古車売却相場レポート

2024年1〜3月までのガリバー買取査定データをもとに、前四半期(2023年10〜11月)と比較検証しながら中古車買取相場をレポートします。

リセバ総研所長

リセールバリュー総合研究所 管理運営者 兼 アナリスト

中古車情報誌の最大手での制作、旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)で自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティング界隈でインハウスやコンサルタントとして活動してきたが、2017年に人材開発の世界へ転向。インストラクショナルデザインや対話空間の設計、学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。

2024年第1四半期の査定件数と平均売却予想額

査定件数は大幅に増加しつつも市場価値は保たれている

2024年1Q査定件数の全て

自動車業界にとって、第1四半期はクルマの流通量が毎年もっとも増加する繁忙期である。また、コロナ禍以降は半導体不足など市場構造の変化により新車の納期も長くなり、連動して中古車市場でも需要が高まっている。そのため中古車の流通量も流通価格も増加傾向にある。
2024年第1四半期におけるガリバーでの中古車流通量は、そういった市況の変化を引き続き反映し、2023年第4四半期と比較して査定件数が大きく増加している。特に国産車は1.4倍近くまで増加。一方で平均売却予想額(※下記参照)ほぼ同じ水準であり、流通量が増加しても市場での価値が保たれている点が特筆される。
特に軽自動車だけは平均売却予想額が微増しており、市場での需要の高さが窺える。

平均売却予想額とは?

買取査定に持ち込まれ査定検査したクルマがオートオークション等で落札または売却される際の金額を予測し、全査定件数で平均化した金額です。

※平均売却予想額は、あくまで中古車流通における売却金額の予測値を平均化した数値であり、ガリバー店頭での買取金額とは異なります。

※ガリバー店頭での実際の買取金額は、クルマのグレードや装備、使用状態によって異なります。

登録年式別(過去20年)の検証レポート

2024年第1四半期:国産車の査定件数と平均売却予想額

2024年1Q国産車

国産車(軽自動車を除く)について過去20年間の登録年式別でみると、査定件数構成は2013年式(登録から10〜11年経過)前後のクルマが中心となり、特に2005年式、2007年式、2009年式、2013年式、2023年式の査定件数が前四半期から大きく伸びている。
平均売却予想額でみると、市場のクルマ不足が影響しているためか2023年式は査定件数が増えつつも前四半期の水準を保ち、その他の年式も2〜3%の減少に収まっている。しかし、14〜15年を経過した2009年式の平均売却予想額だけは大きく下がり、12%も減少している。

2024年第1四半期:軽自動車の査定件数と平均売却予想額

2024年1Q軽自動車

軽自動車について過去20年間の登録年式別でみると、査定件数構成は2013〜2015年式(登録から8〜11年経過)前後のクルマが中心となり、登録から10年以上経過した2013年式や、2005年式、2007年式の査定件数が前四半期から大きく伸びている。また、登録から18年近く経過した2006年式の査定件数は9%も減少し、かつ平均売却予想額は33%も増加している点が興味深い。
軽自動車の平均売却予想額は前四半期に比べ査定件数とともに増加傾向にあり、需要の高さが窺える。特に先述の2006年式のほか、登録から13年以上経過した2010年式の平均売却予想額も21%増加している。

2024年第1四半期:輸入車の査定件数と平均売却予想額

2024年1Q輸入車

輸入車について過去20年間の登録年式別でみると、査定件数構成は2013〜2019年式(登録から4〜11年経過)前後のクルマが中心となり、年式の幅は広い。登録から14年以上経過した2009年式や、2005年式、2007年式の査定件数が前四半期から大きく伸びている。一方、15年以上経過した2008年式の査定件数は9%の減少、19年以上経過した2004年式は14%も減少している。
輸入車の平均売却予想額は前四半期に比べ査定件数が増加した影響で減少傾向にあり、市場の供給不足の続く国産車や軽自動車と異なる傾向とっなている。その中でも登録から7〜9年が経過した2015年式と2016年式が平均売却予想額を前四半期に比べて維持または増加しており、登録から12年以上が経過した2010年式も査定件数とともに平均売却予想額が増加している。査定件数が減少した先述の2008年式に至っては、平均売却予想額が16%も増加しており、登録年式過去20年間の中では前四半期比でもっとも伸びている。

2024年第1四半期:ミニバンの査定件数と平均売却予想額

2024年1Qミニバン

ミニバンについて過去20年間の登録年式別でみると、査定件数はどの年式も大きく増加し、平均売却予想額の前四半期に対する増減から見ると、登録から10〜11年経過した2012年式や2013年式までが中古車需要の高い範囲とみなすことができる。11年以上経過したミニバンの平均売却予想額は減少傾向にあるものの、中古車市場での供給バランスよる影響も考えられるので、値ごろ感のある足グルマとして今後の需要変化によっては平均売却予想額も変動する可能性がある。
また、登録から17年以上経過した2006年式や2004年式は、査定件数の減少にともなって平均売却予想額を維持または増加させている。古いミニバンは、安価な中古車として輸出の需要も高い。

2024年第1四半期:SUVの査定件数と平均売却予想額

2024年1QSUV

SUVについて過去20年間の登録年式別でみると、査定件数は登録から10年以内程度(2013年式以降)のクルマが中心で、SUVが定番の車種として定着した近年の傾向が読み取れる。ただ、市場での供給不足の影響であろう2023年式を除き、登録から12年以内の2012年式までは平均売却予想額が前四半期から減少している。
一方で、登録から12年以上が経過したクルマは査定件数が前四半期から増加しながらも、平均売却予想額は(2009年式を除き)前四半期に比べ増加している。特に登録から20年近く経過した2004年式は前四半期に比べ査定件数が16%も増加しているにも関わらず、平均売却予想額は前四半期に比べ22%も増加している。古い年式であっても、平均売却予想額の水準自体は他の形状に比べて高めであり、ランクルやハイラックスサーフなど市場での稀少性が高いクルマや輸出需要が高いクルマが、平均売却予想額を押し上げる要因となっている。

車種と年式単位での検証レポート

2024年第1四半期:国産車の査定件数上位20車種

2024年1Q査定件数TOP20国産車

国産車の査定件数はプリウスとアクアが各登録年式で上位を占め、そこにアルファード、セレナ、ノートが入り込む形だ。いずれも中古車として人気の高いクルマだが、査定件数上位20件のほとんどがトヨタ車である点が現在の国産車勢力図をよく表している。
日産車のセレナやノートも前四半期に対して査定件数が大きく増加しているが、トヨタ車と異なり平均売却予想額が減少。しかし、2017年式のノートは前四半期比で査定件数が71%も増加しながらも、平均売却予想額は6%増加している。

2024年第1四半期:軽自動車の査定件数上位20車種

2024年1Q査定件数TOP20軽自動車

軽自動車の査定件数上位はN-BOXが上位を占めるが、スズキ車も前四半期比で査定件数が大きく増加している。平均売却予想額も、登録年式によって増減のばらつきがあるN-BOXに比べ、並み増加している。
対象的なのはダイハツ車で、一連の騒動の影響もあってか、一部の年式を除いて平均売却予想額が減少している。

2024年第1四半期:輸入車の査定件数上位20車種

2024年1Q査定件数TOP20輸入車

母数は国産車ほど大きくないものの、輸入車の査定件数は大きく増加している。しかし、一部の車種や年式を除き、査定件数の増加に伴って平均売却予想額が減少している。定番のMINIも一部の年式で平均売却予想額が増加しているが、2013年式のフォルクスワーゲンup!は査定件数が45%も増加しつつも、(低額だが)平均売却予想額が7%増加している。

前四半期比で変動比率の高い車種と年式の検証レポート

査定件数が増加した上位20車種

2024年1Q査定件数増加TOP20
※四半期内での査定件数が30件以上の車種

次は各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて増加している順に見てみよう。査定件数を倍増させている車種が大半となり、連動して平均売却予想額も減少しているが、逆に予想額を維持または増加させている車種も散見される。
納期の長い超人気車のジムニーシエラはともかく、予想金額の水準的にも2013年式のCX-5や2015年式のN-WGN、そして2021年式のハスラー、微減ではあるが同じく2021年式のルーミーも目を引く。

査定件数が減少した上位20車種

2024年1Q査定件数減少TOP20
※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて減少している順に見てみよう。流通量は少ないものの、低年式車が中心のため平均売却予想額の水準が低いが、予想額の増加そのものは顕著に見られる。中でも予想額が21%も増加している2014年式のフォルクスワーゲン ザ・ビートルは、平均売却予想額の水準的にも注目だ。

平均売却予想額が増加した50〜99.9万円の車種TOP20

2024年1Q予想額上昇50万円以上TOP20
※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い50~99.9万円の車種を見てみよう。もとの査定件数が少ない車種も多いため平均売却予想額のブレ幅も大きいと思われるものの、上位のアルトの増加率が著しい。また、平均売却予想が増加しながら査定件数も大きく増加している車種が多く、売りどきの車種たちといえるだろう。

平均売却予想額が増加した100〜199.9万円の車種TOP20

2024年1Q予想額上昇100万円以上TOP20
※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い100~199.9万円の車種を見てみよう。こちらも同様に、平均売却予想が増加しながら査定件数も大きく増加している車種が多く、平均売却予想額の水準的にも売りどきの車種たちである。中でも2022年式のスペーシア、2018年式のフォレスター、2021年式のCX-30の査定件数が僅かだが減少しており、このあたりの車種は他の年式も含め買取ニーズが高まる可能性がある。

平均売却予想額が増加した200〜299.9万円の車種TOP20

2024年1Q予想額上昇200万円以上TOP20
※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い200~299.9万円の車種を見てみよう。プラドやレクサスを除き高年式車が中心で、このあたりの平均売却予想額の水準になると増加の幅も穏やかになるが、それでも上位の車種は20万円前後増加している。ほとんどの車種がSUVタイプと本格的なクロカンで、中古車市場もSUVが流通の主軸として回っていることを改めて確認できる。

平均売却予想額が増加した300万円以上の車種TOP20

2024年1Q予想額上昇300万円以上TOP20
※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い300万円以上の車種を見てみよう。ランドクルーザープラドとレクサスに独占されており、300万円以上の国産車はトヨタ車が市場を形づくっている(それ以外の価格帯もだが)。査定件数の増加率も高く、特にランクルプラドの査定ニーズは衰える気配がない。

まとめ

先述の通り、第1四半期はクルマの流通量が毎年もっとも増加する繁忙期であり、それを反映して査定件数も増加傾向にある。また、査定件数の増加に比例して平均売却予想額も増加傾向にあり、中古車市場の旺盛な需要がうかがえる。
新車の供給不足もあり、今まさに「クルマの売りどき」という状態が長らく続いているが、中古車市場は為替の変動や輸出の状況に大きく影響を受ける。必ずしもこの状態が続くわけでもないことは、過去の市場データからも明白である。
引き続き市場の変動を注視していきたい。