自動車情報サイト「CORISM」の大岡編集長に相談してみた スポーツカーを買いたい!と思ったとき大事にしたい価値観とは?自分は何を基準に考える?

「クルマが欲しいけれど、たくさんある選択肢の中からどんな基準でクルマを選べばいいのかわからない」。そんな悩みを持たれる方は多いのではないでしょうか?価格が大事なのか、燃費が大事なのか、大きさや収納力が大事なのか、デザインやカラーが大事なのか・・・クルマのものさしは無限と言えるほどで、どれが最適解なのかイメージすることは簡単ではありません。

そこで今回は、リセバ総研の“ただのクルマ好き”であるライターの井口と、リセバ総研の“ご意見番”で日本カー・オブ・ザ・イヤーの運営にも関わっている自動車webサイトCORISM編集長の大岡智彦が、「スポーツカーが欲しい!」というテーマでクルマ選びを語り合ってみました。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

【自動車情報のプロ】大岡智彦

自動車情報メディア「CORISM」編集長

自動車情報専門のWebサイト「CORISM」編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、カスタムカーまで幅広くこなす。クルマは予防安全性能や環境性性能を重視しながらも、走る楽しさも重要。趣味は、コスパの高い中古車探しと、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

「実はスポーツカーが欲しいんです」という相談に大岡編集長の回答は・・・

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    実は子どもの頃からスポーツカーに憧れてて、いつか買いたいなと思ってるんですが、大岡さんにも「スポーツカー欲しい!」という人から相談されたりすることってありますか?

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    スポーツカーが欲しいっていう人は、だいたい欲しい車種が決まっている人が多いけどね。

    まぁ仮に「どれ買えばいい?」と聞かれたら・・・

    「気に入ったクルマを買えば?」って感じになるのが正直なところかな。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    確かにスポーツカーは車種のキャラクターが明確だから、そうなりますよね(笑)。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    仕事柄、よく聞かれる質問で色々とアドバイスはするんだけど、結局最後は各々で「これが欲しい!」というクルマを買うんですよ、皆さん。

    「いやいやいや、それを選ぶならこっちのほうがいいよ」と言ったところで、だいたい自分が決めたクルマを買っちゃうの(笑)。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    推しの1台が決まるとブレないんですね。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    そもそも論になるけれど、「スポーツカー」って「こうじゃないといけない」という明確な定義ってないじゃないですか。

    それこそ、仮にミニバンを選んだとしても、運転してる本人が「スポーティーだ」と思えば、それもその人にとってはスポーツカーなんだろうなと。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    確かにワゴンやハッチバック、コンパクトカーもスポーティーさを特徴にしているクルマは多いですもんね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    だからこそのクルマ選びの難しさがあるんだけど、一般によく言われる「マツダ ロードスター」のみたいな2ドアのクルマをスポーツカーと定義するのであれば、まずは「自分がそのクルマでどんな楽しみ方をしたいのか」が大事なんじゃじゃないかと。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    クルマのキャラクターと自分の嗜好性が合っているかという点ですね。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    そう。例えば同じスポーツカーでも、「マツダ ロードスター」と「トヨタ 86」は違うし。

    ロードスターだったら、屋根を開けてオープンエアでドライブを楽しみたい人に向いているし、86はドリフト走行やサーキット走行に興味がある人に向いている。

    もちろんロードスターでサーキット走行する人もいるとは思うけれど、大きくこういう嗜好性の違いがあるわけです。

    「スポーツカーが欲しい」といっても、サーキットに挑戦したいのか、街中でドライブを楽しみたいのか、自分の価値観で選ぶクルマも違ってくるのかなと。突き詰めていくと、結局は自分のライフスタイルに近いクルマがいいのかなと思いますね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    確かに、同じ2ドアのクルマでも、「トヨタ 86」や「スバル BRZ」、「日産 GT-R」はストイックなスポーツカーで、「レクサス LC」や「日産 スカイラインクーペ」はスポーツというよりグランドツーリングカーというイメージの違いがありますよね。

    どんなカーライフをイメージしているかで選ぶクルマも異なってくると思います。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    そう。そういうクルマのキャラクターを見極めてどちらが自分の好みかを考えていくことも重要だし、一方で女性に多いんだけど「クルマのデザインが好き」という直感的な部分も大切にすべきじゃないかなと思いますね。

    これはスポーツカーに限らず、その人が持っている価値観によって、クルマの選び方は全然変わってくると思いますよ。

その「好き」は本物か?クルマ選びで後悔しないために

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    とはいえ、スポーツカーって憧れで買う人が多いのかな?って思ってます。

    気に入ったクルマがあって、情熱と勢いで買ってしまう人というか・・・悪く言えば、後先を考えずに行き当たりばったりで買ってしまう人もいるんじゃないかと思うんですが。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    そうだねぇ・・・スポーツカーのファンじゃない人がノリや雰囲気で買ったりすると結構後悔するんじゃないかなぁ?なんて思うんです。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    ほうほう。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    好きな人には怒られそうだけど、スポーツカーは人や物を運ぶクルマとして使い勝手が良いとはいえない。ドアは2つ(とは限らないが)、諸侯が低くて乗り降りも一苦労、荷物はそれほど載せられないし、乗り心地は固くて女性には敬遠されそう。

     

    そういう不便の中でもやっぱりスポーツカーを選ぶということは、その「好き」という濃度の濃さみたいなものが大事だと思うんですよね。

    濃ければ濃いほど、スポーツカーが持っている特有のネガティブな要素が気にならなくなっていくというか。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    確かに。居住性は期待できないし燃費も気になる。

    そういう不便さとトレードオフになっても「それでも欲しい」と思えるかって大切だと思います。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    ジャンルは違うけれど、例えばいま人気の「スズキ ジムニー」を買う人って、乗り心地が悪いとか、エンジンがうるさいとか、そういうのは関係なくてとにかく「ジムニーが好きだ!」っていう人が多いんだと思うんですよ。

    気になるのは、「ジムニーが流行ってるから乗ってみよう」と手を出してしまった人。

    実際に乗ってみたらイメージしていたものと違っていたということもあると思います。だから軽い気持ちで個性の強いクルマを選ぶのは、ちょっと注意が必要なのかなと思いますね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    スポーツカーに話を戻すと、仮にネガティブな点があったとしても、それを補って余りある価値を手に入れられると思えるかという点が大切ということですね。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    そう、スポーツカーによって得られる価値が10個あって、それが自分自身が求めているものだとしたら、ネガティブなポイントが100個あってもそのクルマを楽しめると思うし、満足できると思うんです。

    好きの濃度が濃ければ濃いほど、ネガティブな要素があっても関係なくなってしまうので。逆に、あまり薄っぺらい動機で買ってしまうと後悔しますよ(笑)。

クルマとの出会いが人生の新しい扉を開くことも

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    ここまで動機が大事って話をしてきたけれど、実は自分は欲しくてスポーツカーを乗っていたわけじゃない時期があったんですよ。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    え?そうなんですか?

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    うん、「マツダ ロードスター」に乗っていた時期があって。別に欲しいクルマではなかったんだけれども、自分がクルマ選びをしていた時期にたまたま知り合いがロードスターを手放すタイミングで、「じゃあ乗るよ」って買い取ったんです。

     

    実際に乗ってみるとその楽しさにびっくりして、そのロードスターで運転を覚えたし、スポーツカーを勉強させてもらいました。

    元々はそんなにスポーツカーが好きなほうじゃなかったしオープンカーも全く興味がなかったけれど、実際に運転してみることで新しい発見が得られるクルマのジャンルでもあると思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    確かに。

    実際に触れてみて運転してみることで発見できるクルマの魅力ってありますよね。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    実際に運転してみて「これすげぇ楽しいじゃん!」っていう発見はありますよ。

    ロードスターってパワーがあるわけじゃないし、走りの部分でちょっと足りないと感じる部分があって。

    そうした足りない部分をマフラーを変えたり車高調を入れたり好みに合わせてカスタマイズして楽しめたのもよかったですね。そうした(カスタムの)余白を残しているのがロードスターの魅力というか。

    奥さんと買い物に行って荷物を載せるのにえらい苦労をして、そのとき初めて不便さを実感して乗り換えることになりましたが(笑)。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    やっぱり荷物を載せるには不便ですもんね(笑)。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    ただ、いいクルマとの出会いにはなったと思っています。

    後悔することもあるかもしれないけれど、実際に乗ってみることでいい方向に転がる可能性もある。

    今まで1度もスポーツカーに乗ったことがなくて購入を検討しているのだったら、1回乗ってみて楽しさを体感してみるのもいいかもしれないですね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    ガリバーのお店でも気軽に試乗できるので、興味がある人はお店に行って実際に触れて乗ってみるのもいいかもしれませんね。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    短い時間の試乗と、生活のなかに入れてみることでは得られる発見は違うと思いますが、興味があるなら一度乗ってみるといいかもしれませんね。

スポーツカー選びはライフステージと深く関わっているのか?

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    大岡さん先ほどロードスターを手放すきっかけのお話をしていましたが、スポーツカー選びに住環境や生活スタイル、自身のライフステージって考慮する必要はあると思いますか?

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    その人の価値観次第なのかなと思いますよ。スポーツカーを楽しんでいる人の価値観って本当に千差万別です。

    例えば、私の知り合いで「日産 スカイラインGT-R(R32)」を買った人がいたんですよ。

    R32のGT-Rは2ドアだけど4人乗り。その知り合いは子どもが2人いるのですが、彼に「子どもいるのによくGT-Rなんて買ったね」って言ったら、「子どもなんて、後ろに乗せときゃ大丈夫だよ」って言われて。

    子どもだったら後部座席が狭くてもへっちゃらだよって・・・振り切り方に感心しちゃいました(笑)。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    それはGT-Rが好きな気持ちが突き抜けていますね(笑)。

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    もちろん、子どもがいるからミニバンを選ぶというライフステージに合わせたクルマ選びも、その人の価値観なので大切だと思います。一方で、「そんなの関係ねぇ!」ってスポーツカーを選ぶというクルマ選びも、ひとつの価値観だということですね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    ファミリーの場合は、あとは家族の納得を得られるかどうか・・・。大岡さんがロードスターに乗っていたときはどうでしたか?

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    ロードスターに乗ること自体には納得してもらっていたんだけど、文句を言われたのはタイヤとホイールを変えて車高調を入れたとき。外したパーツをベランダに置いておいたら「なんでこんなところに置いておくの!」って怒られましたし、そもそもパーツを交換することにもあまり理解が得られませんでしたね(笑)。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    なるほど(笑)。これこそ千差万別で難しいテーマだと思いますが、そもそも家族がクルマに対してどのような価値観でいてくれるのかって大切なのかもしれないですね。

スポーツカー選びで考えてほしい大切なこと

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    大岡さん、今日は興味深いお話をありがとうございました!

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    スポーツカー選びで大事なのは、ネガティブな要素が気にならないほどの「好き」の濃度があるかどうか、または興味関心から新しい扉を開いてみたいという熱意があるか。そのうえで自分の嗜好性やクルマの楽しみ方に合っているか、そのクルマを選んでデザインや走りで満足できるかといったところを考えていってもらえればいいんじゃないかなと思います。

大岡さんがチョイス!初心者におすすめのスポーツカー

マツダ ロードスター

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    オープンカーとして気軽なドライブも楽しめるし、ある程度本格的なスポーツ走行も楽しめる。フレキシブルに楽しめる点が魅力です。旧モデルであればコスパのいい在庫もあると思います。

スバル WRX STI

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    4ドアの4WDですが、搭載されているEJ20型エンジン(水平対向エンジン)はとても高性能でピュアスポーツのポテンシャルがあり、実際にとても走行性能の高いクルマです。

トヨタ 86/スバル BRZ

  • 【自動車情報のプロ】大岡智彦

    本格的なサーキット走行やドリフト走行に興味がある人におすすめです。特に初代の86はドリフトがしやすいセッティングになっているので、ドリフト初心者向きです。一方のBRZはスタビリティが高くドリフトは抑える方向にセッティングされています。この2車種は兄弟車ですが走りの味付けが違うので乗り比べてみるのがよいでしょう。