ファイナンシャルプランナー 高山 一恵のクルマ生活指南 自動車の月額購入費、どのように捻出する?

「生活する上でクルマは絶対に必要」という方や、クルマが趣味で「クルマが欲しい」という方は少なくないのではないでしょうか。しかし、クルマは「買ったら終わり」ではなく、その後もさまざまな維持費がかかります。
そこで今回は、平均的な世帯の生活費とクルマの月額購入費(クルマの購入費+維持費)をご紹介。加えて、月額購入費を捻出するための家計の見直しポイントも紹介します。

【お金のプロ】高山 一恵

(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の強化書』(宝島社)など著書累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

平均的な世帯の生活費はどのくらい?

まずは平均的な世帯の生活費を確認してみましょう。単身世帯の支出の平均は次のようになっています。

<単身世帯の1か月あたりの支出平均>
総務省「家計調査」(2023年)より(株)Money&You作成

単身世帯全体の1か月あたりの支出の平均は16万7,621円となっています。支出を細かく見ると、住居費が安いと思われるでしょう。家計調査には、持ち家などで住居費がかからない人や住宅ローンを返済している人の返済金額が含まれていません。そのため、住宅ローンを返済している場合や賃貸住宅にお住まいの場合は、さらにお金がかかります。
賃貸住宅は住む場所や地域、間取りによって金額がさまざまですが、全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」(2024年2月)によると全国平均は5万5,689円、もっとも高い東京都だけで見ると7万5,179円です。
同様に2人・3人・4人世帯の1か月あたりの支出平均も見てみましょう。

<2人〜4人世帯の1か月あたりの支出平均>
総務省「家計調査」(2023年)より(株)Money&You作成

世帯の人数が増えるにしたがって支出が増える傾向にはあります。しかし、たとえば2人世帯と4人世帯では人数が倍だから支出も倍違う、といったことはありません。子どもがいると思われる3人世帯・4人世帯では、教育費がかかっている様子がわかります。

自動車の月額購入費はどれくらい?

上記で紹介した家計調査の「交通・通信」には、「自動車等関係費」という費目が含まれています。

<家計調査の「自動車等関係費」>
総務省「家計調査」(2023年)より(株)Money&You作成

このうち「自転車購入」は自転車なので別として、「自動車等購入」「自動車等維持」は特に3人以上の世帯で多くなっていることがわかります。家計全体の15%前後が自動車関連の費用にかかっています。もっとも、このデータはクルマを保有していない世帯を含んだ平均ですので、実際にはこの金額以上にお金を払っているはずです。
具体的にクルマの購入・維持にどんなお金がかかるかを紹介します。

1.購入費

クルマの購入費は新車/中古の違い、車種やグレード、年式、装備品などによって大きく違います。おおむね100万円〜300万円程度ですが、もちろんもっと高いクルマもあります。できるだけよい自動車に乗りたい気持ちはわかりますが、何もかもこだわると金額がかさみますので、こだわりに優先順位をつけて費用を抑えたいところですね。
リクルート自動車総研「中古車購入実態調査2023」によると、中古車の購入単価は172.1万円となっています。

2.自動車税

自動車税は、自動車を持っている人(ローン返済中の場合は自動車の使用者)が納付する税金です。軽自動車の場合は「軽自動車税」です。
自動車税の金額は、車の排気量によって変わります。また、購入時期が2019年9月までか10月以降かでも金額が変わります。

<自動車税の金額>
(株)Money&You作成

このほか、新規登録から13年以上経過したガソリン車の場合はおおむね15%、軽自動車の場合はおおむね20%税額が増えます。
※自動車税:自動車を持っている人(ローン返済中の場合は自動車の使用者)が納付する税金

3.自動車重量税

自動車重量税は、クルマの重量・用途区分・経過年数などに合わせて納める税金です。軽自動車以外の場合0.5トンにつき年間で4,100円、軽自動車は一律で3,300円ですが、一定の燃費基準を満たすエコカーの場合、割引になったり免税になったりする措置もあります。なお、新規登録から13年目・18年目以降は金額が増加します。自動車を購入したときの登録や車検の際にまとめて納付します。
※自動車重量税:クルマの重量・用途区分・経過年数などに合わせて納める税金

4.自賠責保険

自賠責保険は、万が一事故を起こしたときに被害に遭った方を救済する保険です。自動車やバイクを運転する際には必ず加入しなければなりません。自賠責保険の金額は車種や契約期間などによって異なりますが、一般的な自動車の場合24か月で17,650円です。
※自賠責保険:万が一事故を起こしたときに被害に遭った方を救済する保険。自動車やバイクを運転する際には必ず加入しなければならない。

5.任意保険

任意保険は、自賠責保険とは別に運転者が加入する保険です。自賠責保険は被害に遭った方の死亡・ケガしか補償されませんし、補償額にも限度があるため、大きな事故の場合には費用がまかなえない可能性があります。その点、任意保険では対人・対物の補償を無制限で用意できたり、自分や同乗者のケガや自動車の破損などにも補償を用意できたりします。「任意」保険ですので加入は任意ですが、加入しないで運転するのは危険。まず加入するものと考えておきましょう。
※任意保険:自賠責保険とは別に運転者が加入する保険。対人・対物の補償を無制限で用意できたり、自分や同乗者のケガや自動車の破損などにも補償を用意できたりする。

6.車検・点検費用

車検(自動車検査登録制度)は自動車が安全に公道を走れることを確認する制度です。新車で購入した場合は3年目、以後は前回の車検から2年ごとに車検を受けなければなりません。車検の際には、上で紹介した自動車重量税と自賠責保険の保険料、車検証の発行費用となる数千円の印紙代を必ず支払います。また、車検を通すために必要な点検にかかる費用や消耗品などの交換代もかかります。
また、車検とは別に法定点検(12か月点検)もあります。こちらも点検費用や消耗品の交換代などがかかります。
※車検(自動車検査登録制度):自動車が安全に公道を走れることを確認する制度。新車で購入した場合は3年目、以後は前回の車検から2年ごとに車検を受けなければならない。

7.駐車代・ガソリン代

自動車を購入すると、駐車場を確保しなければなりません。自宅にスペースがあればお金はかかりませんが、他に借りる場合は月数千円〜数万円の支出になります。またガソリン代もどれだけ走るかによって変わりますが、一定の金額がかかります。近年はガソリン代も値上がりしているので、1回の給油(満タン)で6,000円、7,000円などとかかるケースもあるでしょう。
日本自動車工業会「2021年度乗用車市場動向調査」によると、2021年の自動車の年間維持費は「10万円〜20万円」が28%、「20万円〜30万円」が24%。30万円までで6割強となっています。

家計で削れそうなところはどの費用?

このように、自動車の購入・維持には結構な費用がかかりますが、結局のところ、家計からお金を捻出するしかありません。家計を節約して、お金を工面することを考えましょう。
節約で大切なのは、優先順位をつけること。節約は固定費から行いましょう。固定費とは、毎月決まって一定額発生する費用です。住居費、通信費、水道・光熱費、保険料、自動車費、その他年会費や月会費などが当てはまります。固定費は、金額が大きなものが多く、見直すだけで、効果が長続きします。

1.住居費

昔はよく「住居費は月収の3分の1が目安」と言いましたが、今は生活費がかさむのでもう少し抑えたいところ。家計に占める住居費の割合は「手取り金額の20〜25%」に抑えるのが理想です。首都圏は家賃の相場が高いので30%程度までは仕方ないかもしれませんが、それ以上になると家計が苦しくなってしまいます。
賃貸住まいならば部屋のグレードを1つ下げて安い部屋に引っ越す、住宅ローン返済中なら借り換えで返済の負担を減らすといったことを検討します。仮に引っ越しで費用が20万円かかっても、住居費を毎月1万円減らせれば2年足らずで元がとれ、以後は毎月1万円節約できます。

2.通信費

通信費も長い間見直していないならばぜひチェック。もしもドコモ・au・ソフトバンクといった大手キャリアのスマホを利用しているならば、「ahamo」「povo」「LINEMO」といった大手キャリアの格安プランに乗り換えることで毎月数千円は削減できます。
ただし、大手キャリアの格安プランの申し込みや問い合わせはオンライン限定。自分で設定したり、問題が発生したときに対処したりする自信がないのであれば、「UQモバイル」「Y!mobile」「楽天モバイル」などの格安スマホを活用しましょう。

3.電気代

値上がりが続く電気代も一度見直しておきたいですね。電気代は契約しているアンペア数が大きいほど、一度に多くの電気が使えますが、基本料金も上がります。10アンペア下げられれば年3,500円ほどの節約ができるので、電気代節約のためにも検討してみましょう。ただ、アンペア数を無理に下げるとブレーカーが落ちやすくなる原因になるので、家電製品の利用状況も確認しましょう。

4.生命保険

生命保険も長い間見直していないならば確認してみましょう。保険は、なんとなく入るものではなく、万が一のときに備えて入るものです。今、その「万が一」が起きたときに必要な保障と、今加入している保険の保障を確認して、不要な保障があるならその分は解約しましょう。不要な特約などもついていないかチェックすることも忘れずに。

5.その他

そのほか、使っていないクレジットカードの年会費やサブスクの料金なども確認してみましょう。多くなってよくわからない場合には、いったん全部解約してから本当に必要なものだけ加入しなおすのも有効です。
自動車を手に入れるには、購入費はもちろん、さまざまな維持費もかかります。家計の中から自動車関係費用を捻出するには、家計の見直しが必要です。ぜひ今の家計をチェックし、まずは、固定費を減らせないかを確認してみてくださいね。

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