【調べてみた】ライブコマースで自動車やロケットを販売!?ライブコマースの可能性に迫る

中国をはじめとするアジア諸国で大きな成功を収め、市場を拡大させている「ライブコマース」。近年では韓国の自動車メーカー「ヒョンデ」がライブショッピングイベントを開催し、電気自動車の紹介と販売を行ったことで話題となりました。
そこで今回は、ライブコマースについて調べてみました。

【リセバ総研編集部員】YA

リセールバリュー総合研究所 編集部員

主に記事の執筆・編集・取材などを担当している。書籍の編集プロダクション、雑誌の編集プロダクション、バラエティ雑貨メーカー、PR会社などを転々と渡り歩き、様々なジャンルのコンテンツを制作してきた。クルマよりも電車が身近な東京都23区で生まれ育ってきたため、クルマについては現在勉強中。割とガジェット好きな一面があり、某フリマアプリで売買を繰り返しては、色々なガジェットを試している。

ライブコマースとは何か?

ライブコマースとは、ライブ配信を通じて商品を紹介し、その配信を観た人がその場で購入できる仕組みのことです。アジア諸国で大きな成功を収め、特に中国の市場規模は2025年には6兆元(100兆円)を超えると言われています。

近年、日本でもライブコマースが注目されており、主にファッションやコスメなどで活用されています。その中で、特に注目を集めているのが、自動車業界の参入です。

自動車業界では韓国メーカー「ヒョンデ(旧ヒョンダイ)」が2022年10月にライブコマース

韓国の自動車メーカー「ヒョンデ」は2022年10月の「Hyundai IONIQ 5 ライブショッピング」にて、大手自動車メーカーとして日本で初めてライブコマースを活用して新車を販売する試みに挑戦しました。これは、自動車という高額商品をオンラインで直接販売するという大胆な取り組みです。

ヒョンデは、ライブ配信アプリ「17LIVE」が展開するライブコマースソリューション「HandsUP(ハンズアップ)」を用いて、購入希望者に対してクルマの性能やデザインの詳細を実演形式で紹介しました。また、リアルタイムで視聴者からの質問に答えることで、ショールーム訪問と同様の体験を提供しています。
初回の試みでは、1時間で3台販売し、新規見積の申し込みが10件あったそうです。この成功事例は、他の自動車メーカーにも今後、大きな影響を与えていくでしょう。

中国では、インフルエンサーが既に自動車を数千台単位で販売!

2021年の日経新聞の記事によると、中国でのライブコマースによる新車販売はパンデミック以降急速に広がり、インフルエンサーが1回のライブ配信で数千台を販売したことが話題となっていました。

中国で「ライブコマースの女王」との異名を持つ有力インフルエンサー、薇婭(viya)氏も自動車分野に乗り出しています。彼女はなんと、ライブ配信で4,500万元(約7億円)の小型ロケットの販売にも成功して話題を集めています。

中国のライブコマース事情について、詳しくはこちらをチェック

薇婭は、2020年には上海汽車集団の中国独自ブランド「栄威」の新車を30秒間で4180台販売し、2021年4月には東風汽車集団の独自ブランド「東風風神」の新車を2830台販売することに成功したとのことです。

さらに、プラットフォーム面でも進化しています。ショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するバイトダンスは、自動車情報を扱うアプリ「懂懂養車」で新車のライブコマースを強化。1万2000社を超える自動車販売会社が参画しました。

このように、中国ではライブコマースによる新車販売が当たり前になりつつあります。

国内の新車販売、中古車販売でライブコマースを活用する可能性は?

それでは、日本発の自動車メーカーは、ライブコマースを行っているのでしょうか。編集部で今回調べたところ、現状ライブ配信をしながらその場でクルマを購入できる仕組みを展開している企業は見当たりませんでした。

ただし、日産では「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」にて、業界初(※日産調べ)となるYouTubeライブストリーミングを実施しています。特定の時間になるとEVコンセプトカー&それを運転するコンセプトキャラクターが登場し、クルマの詳細を紹介していくという配信を行っていました。

またトヨタ自動車でも、2022年1月にYouTube Liveにて新型LXの紹介を行い、ライブ配信中にてチャットで質問を受け付けました。

このように大手自動車メーカーではライブ配信を実施している状況なので、今後は配信を観て直接購入できるライブコマースの仕組みが世の中に浸透していく可能性も大いにあります。

ライブコマースでは、主に何が売られている?

それでは国内全体でのライブコマース市場は、現在どのようになっているのでしょうか。

ライブコマースは、2020年の新型コロナ感染拡大以降、急速に注目を浴びるようになりました。
取り扱われている商品・サービスとしてはコスメなどトレンド商品が多いですが、近年では購入前に詳細を確認したい高額商品、地方の農産物や手作り工芸品などの意外な商品などの配信も注目を浴びているようです。

ライブコマースで販売されている高額商品の事例

小型キャリアロケット

上で紹介した中国の有力インフルエンサー、薇婭氏は、過去に小型キャリアロケットを売り出しています。
経緯としては、公式微博(ウェイボー)で大勢のネットユーザーが薇婭氏に「ロケットを準備してよ」と書き込んだところ、航天科工ロケット技術有限公司が「弊社はロケットを提供できます」と連絡。そして4,500万元(約7億円)のロケットは最終的に長光衛星技術有限公司によって購入されたとのこと。

高級腕時計

ライブコマースプラットフォームを運営する株式会社カウメルでは、2023年9月13日(水)にライブコマース「カウメル」にて、10万円の高級腕時計を1時間で5本販売しました。
配信は、カウメル専属のライブコマーサーが行いました。

電化製品(ダイソン羽根のない扇風機HP03)

ビックカメラの通販サイト「ビックカメラ.com」は、クラウド型ライブコマース・サービス「TAGsAPI」を利用して「ダイソン羽根のない扇風機HP03」をライブコマースで実演販売しました。

ライブコマースで販売されている意外な商品の事例

地方の農産物

日本では、地方特産品がライブコマースで人気を集めています。たとえば株式会社マイファームが配信している「やっちゃばライブショッピング」では、2021年3月に宮城県亘理郡山元町の食べる宝石「ミガキイチゴ」をライブ配信で紹介。栽培方法や美味しい食べ方を紹介しつつ、産地直送商品を販売しました。

配信者が産地を訪問し、生産者と一緒に商品の魅力を語る形式が支持されています。

伝統工芸品

地方の農産物と同じく、伝統工芸品もライブコマースが行われています。
日本工芸株式会社が運営している伝統工芸品特化型ライブコマース「日本工芸ライブショッピング」サービスでは、普段は手に入れることが難しい掘り出し物、限定の工芸品を中心に、その魅力を紹介しつつ販売を行っています。

日本のライブコマース事例

ユナイテッドアローズのLIVE Shopping

アパレルメーカーの「ユナイテッドアローズ」では、「LIVE Shopping」というサービスで、ライブ動画を見ながらオンラインでお買い物ができるサービスを行っています。

内容としては、スタイリストさんや人気スタッフさんのおすすめグッズを紹介して、そのグッズを購入できる形になっているものが多いです。

ペルノ・リカール・ジャパン株式会社のライブコマース

ペルノ・リカール・ジャパン株式会社本ライブ配信では、ワインの特徴や美味しい飲み方だけではなく、ワインに合う食事も紹介されました。

配信中の画面上にはYouTubeのアイコンが表示され、視聴者がアイコンをタップすると食事の作り方が紹介された動画を視聴できる工夫がされています。

まとめ

近年、パンデミック以降、ライブコマースではあらゆるものが販売されています。中国の市場に比べて、まだまだ日本では伸びしろがありそうなライブコマース市場。今後の進展に注目したいところです。