カー・オブ・ザ・イヤー実行委員の大岡(と、COTYとなんの関係もないリセバ総研所長)に聞く 今年の「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」の10ベストカーから見る自動車業界の今
今年もこの時期にがやってきました、2024-2025年度の「日本カー・オブ・ザ・イヤー(JCOTY)」の選考。11月6日には、全31台のノミネート車から選ばれた、「10ベストカー」が発表されました。最終選考会は12月5日で、今年度のイヤーカーが決定されます。「リセバ総研」編集部メンバーの反応や如何に??
※当記事の内容は、それぞれ個人の主観による意見で構成されています。
リセールバリュー総合研究所 編集部員
目次
【続報】ミニバン史上初!2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーは「ホンダ フリード」に決定!
ホンダの受賞は2010-2011の「CR-Z」以来となり、14年ぶりの受賞となる。 また、日本カー・オブ・ザ・イヤーの歴史において、ミニバンとしての受賞は初となる。
今年の10ベストカー一覧
自動車業界で毎年注目されている「日本カー・オブ・ザ・イヤー 2024-2025」。今年も自動車に詳しい選考委員59名によって10ベストカーがノミネートされました。
この後、二次選考を経て2024年12月5日(木)の最終選考会で、1台が決定します。
はたして、どのクルマが選ばれるのでしょうか。
「10ベストカー」を見た、「リセバ総研」編集部の反応は如何に!?
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【リセバ総研編集部員】YA
それでは2024年のカー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされたクルマについて、感想をお聞きしたいのですが・・・
あくまで個人の感想として。
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【自動車情報のプロ】大岡智彦
ぶっちゃけ、飛び道具的な技術などを搭載したモデルがないかな~。「これ」っていう、圧倒的なパフォーマンスをもつモデルがない気がしますね。
また、世界中のメーカーSUVやEVに注力しているのが伝わってきますね。
10ベストカーのほとんどがSUV。今までセダンとかハッチバックのカテゴリの人達が「飽きたよね」って言って、SUVに来ているようです。
あとEVも増えました。
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リセバ総研所長
つくづく、セダンが中心だった時代(※かなり前)から随分と変わりましたよね。
SUVのシェアが何か大きな要因があって増えたとか、断定して言えるようなことはないですが、結局「あの形が売れる」から、作るのもSUVになるのでしょう。
個人的な感想ですが、スマホの主流が顧客体験の設計が上手いiPhoneに収斂して、通勤電車の中を見回してもiPhoneだらけになってるような状況に近いのかもしれないなぁと。
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【リセバ総研編集部員】YA
確かに、話題の作り方やサービス体験も含めて、iPhoneでいいやっていう方も多いと感じます。
Androidは毎年たくさんの機種が登場しますが、こだわりのある人が自分なりの価値観で実用的な機能を中心に選んでいるような印象があります。
便利さとちょっとした非日常感があるSUVと、クルマ求める要素が保守的なセダンのような関係にみえなくもないです・・・かね?
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リセバ総研所長
個人の解釈ですが、SUVはワイルドな非日常感と都会的なデザインの洗練度を適度に織り交ぜたスタイルが特徴だと思っています。
いまさらな話かもしれませんが、SUVを形で選んでみたものの、乗り降りのしやすさ、視界の高さ、荷室の大きさと出し入れのしやすさ、その便利さに顧客が気づいてしまったのかもしれないなぁ、なんて考えちゃいます。
かつては「フォーマルな場にはセダン」というイメージもあったんですけど、今やフォーマルなSUVが出てきましたからね。
あのトヨタ クラウンをはじめ、センチュリーでさえSUVのスタイルになったわけですから。アメリカ大統領が乗る「ビースト」もセダンとSUVとも受け取れるデザインです。
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【リセバ総研編集部員】YA
もはやSUVが一般的なクルマの形なのかもしれませんね。
それでは、この10ベストカーを見た皆さんの率直な感想を、教えてください!
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リセバ総研所長
うーん……私は純粋に、国産メーカーさん、国内の市場をもっと盛り上げてほしいなぁと感じました。
日本の市場を鑑みると、世界戦略車を中心に考えなければいけないのだろうな、と。わかるんですけどね。
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【リセバ総研編集部員】YA
世界戦略といえば、中国のBYDや韓国のヒョンデとか、勢いがすごいように感じます。
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リセバ総研所長
BYDはもともとリチウムイオン電池の製造で世界第2位のシェアを誇る中国の企業ですが、そのノウハウを活かして自動車産業に進出した新興ブランドです。
韓国のヒョンデ(旧称ヒュンダイ)は旧財閥系から派生した企業で、日本ではあまり聞かないブランドかもしれませんが、世界シェアではトヨタ、フォルクスワーゲンに次ぐ第3位のメーカーですよ。
アメリカでもテレビドラマでも見ますね。『ウォーキング・デッド』にも(荒廃した世界なのにとっても綺麗な)ヒョンデのクルマが出てきます。
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【リセバ総研編集部員】YA
ああ、プレイスメント(映画やドラマの中に商品やサービスを登場させるPR手法)なんかをしているんですかね?
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リセバ総研所長
どうなんでしょうか?実態はわかりませんが、少なくともそういったプロモーションに力を入れていると受け取れるような演出でしたね。
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【自動車情報のプロ】大岡智彦
ヒョンデはネット販売に力を入れてます。逆にBYDは、どんどん販売店舗を増やしていっています。
ヒョンデは、過去に日本から撤退した経緯があるので、ひょっとすると店舗を増やすことに不安があるのかもしれませんね。
ただ、これからの自動車販売はネット販売にシフトする企業が増える可能性もあって、そういう意味では、ヒョンデは日本でのネット販売のノウハウを得ようとしているともいえますね。
ヒョンデの販売方法には注目です。
実は苛酷なニッポンの走行環境
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【リセバ総研編集部員】YA
世界で大きなシェアを持つメーカーでも、日本への進出は難しいものなんでしょうか?
フォルクスワーゲンはよく見かけますが、日本車のようにディーラーがたくさんあるわけではなさそうですし。
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リセバ総研所長
外国の自動車メーカーにとって日本への進出はなかなか障壁が大きいように感じます。法規制や、よく言われる日本人が輸入車に求める「外車」観というか、文化的な障壁というのもあるでしょう。
ですが、私個人の意見として、シンプルに日本の気候や環境の影響も強いのではないかと考えています。
夏は酷暑に冬は極寒、しかも大渋滞で冷却ファンは回りっぱなし。
ノロノロ運転のストップアンドゴーでトランスミッションはローギアとハイギアの繰り返し。エンジンや駆動系への負荷も相当です。
海外諸国の環境で作られたクルマは、日本の気候や環境では部品の劣化が早いことも多々あります。さらに日本は湿度が高くて、自動車に限らずゴム製部品の加水分解による劣化も他の地域より早まります。
アフターサービスや保守に関しても、日本のディーラーのような体制を取る必要がありますし、輸入に頼らざるをえない部品の供給も一定数を確保する必要があります。日本車の部品は相当手厚くストックされていますからね。
外国車のリセールバリューが低い傾向にあるのも、その影響が考えられます。
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【リセバ総研編集部員】YA
日本の環境での負荷や保守体制を考えると、海外のメーカーには厳しい環境なのかもしれませんね。
それに、小さな島国にこんなに自動車メーカーがたくさんあるわけですもんね。
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リセバ総研所長
逆に「日本車は日本の過酷な道路事情と開発競争の中で鍛えられたクルマ」とも言えます。どんな環境でも壊れにくいという諸外国での評判につながっているのでしょう。
クルマのDIY文化が根付いているアメリカでは、数十年前に発売された日本車が普通に走っている映像もよく目にします。
日本と違い空気が乾燥している地域では、おそらく外装や部品も劣化しにくいんでしょうね。日本のクルマはロシアの極寒でもアフリカの荒野でも壊れにくくよく走る、といったエピソードを目にすることがありますが、いま日本の中古車が人気で輸出が理由も円安の効果だけでなく、こういう点にもあると思います。治安の問題で、クルマの故障はドライバーの生死に関わる地域もあるようですから。
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【リセバ総研編集部員】YA
日本車って、世界中でそういう「丈夫で安心なクルマ」というブランド力をもっているのでしょうかね。
中国のブランドは技術だけではなく顧客体験も成長中
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【リセバ総研編集部員】YA
そういえば、近年の中国の技術向上は凄まじいものがありますよね。それは自動車業界にも反映されているのかなと思ったのですが、先ほどの所長のお話ですと、まだまだ日本車の技術の方が高いんですかね?
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【自動車情報のプロ】大岡智彦
ヒョンデやBYDは、もはや欧州や日本メーカーに並ぶ高いレベルの技術をもつメーカーといっていいでしょう。
両社とも、優秀なエンジニアをお金をかけて世界中から集めていますから。とくに、BYDのコストパフォーマンスには、世界中の自動車メーカーが脅威に感じていると思います。
ヒョンデは「2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」で初受賞しましたけど、その時の反響はすごかったですね。
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リセバ総研所長
中国は技術と共に、ものづくりの文化水準も上がっている印象があります。
私は写真関連の機材をよく買いますが、中国は撮影機材のメーカーがたくさんあって、特に三脚やカメラ周辺機材は中国のメーカーの独壇場と言えるくらいです。製品も設計が練り込まれていて、日本のメーカーよりも快適で便利に感じる機材ばかりです、ちょっとさみしいですけど・・・
日本のお家芸だった写真用レンズも、中国ブランドのレンズの品質と性能が日本のメーカーに追いつくレベルにありますし、実際に私も愛用している中国ブランドのレンズがあります。
そして動画系のカメラも中国の独壇場と言えます。たとえばDJIやInsta360といったメーカーは、製品のUIやUX(顧客体験)、所有感を満たすパッケージデザインを見ても、中国のメーカーだと意識している人は少ないと思います。
ソフトウェアやインターフェースもどんどん進化していますし、かゆいところに手が届く製品の発売ラッシュが続いています。もう日本の光学メーカーは中国に追い越されてしまうんじゃないかと、ちょっと心配してます。
結局、どのクルマがベストカーに選ばれる?
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【リセバ総研編集部員】YA
ところで、結局どのクルマがベストカーに選ばれると予想されますか!?
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リセバ総研所長
えーと・・・では、自動車評論家であり「CORISM」の編集長でもある大岡センセー、お願いします(笑)
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【自動車情報のプロ】大岡智彦
私、この「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」の実行委員の1人だから、どのクルマが受賞しそうとか、予想であっても言えないんですよね(笑)
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【リセバ総研編集部員】YA
あらら…..(笑)
ちなみに、ここ最近の選出傾向としてはどうなのでしょうか?
「あ、このクルマが選ばれるだろうな」って、何となくわかっていましたか?
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【自動車情報のプロ】大岡智彦
そうですね。
今までは毎年「ああ、これが選ばれるんだろうな」って思うものが1~2台くらいあって、ほぼ当たっていました。
たけど、今年はどれも読みづらいですね。かなり混戦状態です。
これほどの混戦は、珍しいかもしれません。去年の受賞車プリウスなんかは、とてもわかりやすかったですけどね。
今回、あくまで個人的に注目しているのは、以下のモデルです。
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・MINI
日本でも人気の輸入車です。
内外装デザインも近未来的になり、かなり洗練されています。
また、EVも投入されました。
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・CX-80
マツダのラージと呼ばれる後輪駆動ベースの3列シートSUV。
目新しい技術はありませんが、マツダ渾身の1台です。
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・BYDシール
もはや、圧巻のコストパフォーマンスです。
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リセバ総研所長
では、私は個人的にほしいなぁー、と思っているクルマを・・・
この10台の中で好きなのはスズキ フロンクスです。
同じく海外生産の逆輸入車として、ホンダ WR-Vも安さで話題になりましたが、フロンクスは装備も全部入りに近く、自動車評論家の方のコラムでも評判は上々。
しかも全長は4mを切って(3.995m)、最小回転半径は4.8m。
我が家のように細い道が入り組んでいる地域に住んでいて、「子供も小学生になったしスライドドアの軽自動車ハイトワゴンからSUVに乗り換えようか?」なんていうご家庭にもピッタリなんではないかと。
カー・オブ・ザ・イヤーと関係なさそうな評価ポイントですけど。
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【リセバ総研編集部員】YA
いただきました!
はたしてこの3車種(+所長が欲しがっている1車種)から受賞がでますでしょうか?……今年の選考結果に、注目したいと思います。
お2人とも、ありがとうございます!
まとめ
12月5日には、この「10ベストカー」から1車種のみが選ばれる予定です。はたして、どのクルマが選ばれるのでしょうか?
今後リセバ総研では、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の歴代ベストカーのリセールバリューチェックなど、
他のメディアとは別の切り口で取り上げていきたいと思います。
ぜひお楽しみに!