台風にゲリラ豪雨、クルマにとっても危険がいっぱい・・・ 【知っておきたい】豪雨で冠水した道路は走っちゃダメ!絶対!クルマの水没はリセールバリューの“致命傷”に

全国的に記録的な猛暑が続く今年の夏。湿度も非常に高く、夕方から夜に掛けては大気の状態が非常に不安定になることによって各地で激しいゲリラ雷雨が発生し、都市部でも道路の冠水など様々な影響が生まれています。また、8月後半から秋に掛けては台風の接近に伴う豪雨も懸念され、クルマを運転していても突然の集中豪雨による道路の冠水に遭遇することがあります。そんなとき、「きっと大丈夫だろう」という安易な考えで冠水した道路に飛び込むのは非常にリスクがあります。今回は、冠水した道路に潜む危険や水没するとクルマはどうなってしまうのかについて解説しましょう。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

冠水した道路に潜む3つの危険

水没の危険

冠水した道路に突入してしまった際の最も怖いリスクが、水没の危険です。たとえば、道路に薄く水が張ってしまいクルマが通った際に大きな水飛沫が上がるという程度でしたら、支障はありません。一般的に、「水面がタイヤの高さの半分以下」が、クルマが安全に走行できる限界と言われています。

しかし、一見すると平坦に見える道路でも、場所によっては地形の浮き沈みによって小さい谷間ができている場合があり、そこに大量の水が溜まると人の膝上や腰の位置まで冠水する場合があります。ひとつの通りを走っていても冠水の深さには大きな差が生まれ、いつの間には走行不能に陥るような深さの冠水に突入してしまう場合も。

加えて、アンダーパスや地下道などで排水が追いつかないほどの水が溜まると、道路そのものが水没してしまう場合も。ゲリラ雷雨や台風による集中豪雨は短時間に大量の雨を降らせますので、交通規制などが始まる前にクルマの走行に支障がある冠水が発生する可能性もあります。

脱輪の危険

道路が冠水するほどの集中豪雨が降ると、道路上には波打つ水しか見えず、道路に引かれたラインや車道と歩道の境界、そして道路と側溝の境界が非常に見えづらくなります。特に側溝が見えにくくなるのは、クルマの運転にとっては非常にリスク。側溝に蓋がないのに気がつけないままクルマのタイヤを脱輪させてしまう場合もあります。

完全に側溝にタイヤが落ちてしまった場合には、レッカー車などで引き上げないと、脱出はほぼ不可能。待機している間に冠水が水かさを増して、そのままクルマが水没してしまう恐れもあります。また、側溝以外にも注意したいのが、マンホール。急激な集中豪雨によってマンホールの蓋が浮いてしまったり外れてしまうケースがあります。こうして開いてしまったマンホールの穴に脱輪してしまうと、この場合もほぼ走行は不可能になります。

事故の危険

最後の危険は、事故の危険です。道路を冠水させるほどの猛烈な集中豪雨に遭遇すると、ドライバーの視界は非常に悪くなります。ワイパーを高速で動かしても前のクルマが跳ね上げた水で視界が不鮮明になり、後方は雨の猛烈な勢いによって全く視認できないほどに。こうした視界不良により、前方への追突事故や歩行者・自転車への接触事故などのリスクは急激に高まります。

そして、集中豪雨で最も気をつけたいのが、対向車や2車線以上の道路で隣を追い抜いて行ったクルマが跳ね上げた大量の水が、フロントウインドウを直撃する場面。雨とは異なり、こうした場面の水はまとまった量が一度にフロントウインドウを覆うため、一時的に視界がゼロになる場合があります。速度を出して走っている場面で前方確認ができない状態に陥ると、非常に恐怖を覚えますし追突などのリスクが非常に高まります。冠水するほどの集中豪雨に遭遇した場合には、すぐに止まれる程度まで徐行するなど、十分な注意が必要です。

水没してしまうと、クルマはどうなるの?

では、集中豪雨による深い冠水に突入してしまったことでクルマが水没してしまうと、クルマはどのようになってしまうのでしょうか?

エンジンの故障

クルマにとって最も致命的なのが、エンジンの故障です。エンジンはエンジンルームに備え付けられており雨が降っても濡れないイメージがありますが、実際にはフロントバンパー付近には空気をエンジンに取り入れるためのラジエーターがあり、後方にはエンジンから出た排気を外に放出するマフラーがついています。

これらの場所から大量の水がエンジン内部に入り込むと、本来はガソリンと空気を混ぜて燃やしているエンジンのピストンシリンダー内部に水が混ざってしまい、エンジンが故障して動かなくなってしまいます。加えて、エンジン内部ではバッテリーから供給される電気で火花を起こしてガソリンを燃やしていますが、この電気系統に水が侵入するとエンジン内部で漏電が発生してしまい、クルマは動かなくなってしまいます。

電装品の故障

ドアを覆うほどの深い場所で水没してしまうと、水はクルマの中に侵入してきてしまいます。車内はエアコンやオーディオ、ナビやドライブレコーダーなど重要な電装品でいっぱい。これらの装備は防水に対応していないものがほとんどのため、浸水によって完全に故障してしまう場合があります。もちろん、すべての電力の供給元になるバッテリーや車内の電力を制御するヒューズなども、水没してしまうと使い物にはなりません。

内装の浸水

クルマが水没して車内にまで水が浸水してしまうと、内装にも大きなダメージがあります。泥水によって汚れた車内の内張りやフロアマットはしっかり洗浄して乾燥させないとカビの原因になるほか、クルマの床下にあるフロアパネルやクルマのフレームは金属のため錆びてしまう可能性も。クリーニングや交換に多額の費用が掛かってしまう場合があります。

水没してしまったクルマのリセールバリューは?

不幸にも集中豪雨によって水没してしまったクルマは「水害車」という扱いになり、水没の程度にもよりますが、買取査定した場合の査定価格は非常に低くなります。特にエンジンや電気系統にダメージがあったクルマについては、一般的な買取事業者では取り扱ってもらえない場合も多く、同じ年式、同じ走行距離でも一般的な買取価格に対して水害車のリセールバリューはほぼゼロに等しくなってしまうと考えるべきでしょう。集中豪雨による水没は、クルマのリセールバリューにとって致命傷といえるほど重大なことなのです。

まとめ

強引に冠水した道路に飛び込んでしまい、そこで予想以上の水位によってクルマが浸水し走行不能に陥ってしまうと、浸水前に戻すための修理費用は莫大になるほか、売却を検討しても買取価格は非常に低いものになってしまいます。冠水の恐れがあるほどの集中豪雨に遭遇した場合には無理な運転を控えて、少しでも周囲より高い安全な場所で雨をやり過ごすようにすることをおすすめします。また、走行していなくても低い土地にある駐車場に止めている場合には、駐車中に水没してしまう恐れもあります。そうした場合には、浸水の恐れが懸念された段階で早めに車を安全な高い場所に避難させることを検討しましょう。