自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! たった3年で半額!? 神コスパ中古車:トヨタ 2代目ミライ
自動車情報メディア「CORISM」編集長
目次
神コスパ中古車の定義とは?
とても良いクルマなのに、需要が少なくリセールバリューが良くない中古車。
激安中古車の中でも、専門家からみて「良いクルマ!」と断言できる中古車。
神コスパ中古車は、どうやって生まれる?
神コスパ中古車は、リセールバリューから生まれる
リセールバリューとは、リセールバリュー(残価)や売却価格、査定価格といった金額のこと。
リセールバリューや売却価格、査定価格などが高ければ、中古車価格は高価になり、安いと中古車価格は安価になるのだ。
では、リセールバリューがどうやって決まるのだろうか?
端的に言えば、中古車マーケットでの需要と供給で決まる。
ここで、勘違いしてほしくない点がある。
新車で爆発的に売れた人気車だからと言って、必ずしもリセールバリューが高くなるとはかぎらないからだ。
例えば、新車時にとても人気があって売れたモデルでも、中古車流通量が多すぎると、人気車なのに中古車価格は安くなることもある。
とくに、コンパクトカーはその傾向が強めだ。
逆に、新車販売台数は少なくても、マニアック層に熱烈な支持を得ているモデルは、新車販売台数が少なく中古車流通量も少ないため、中古車価格は高くなるのだ。
さらに、中古車の場合、海外への輸出もリセールバリューに大きな影響を与えている。
最近では、極端な円高の影響もあり、輸出用中古車の価格が高騰中だ。
こうした傾向が強く、長年高リセールバリューを維持している代表格がトヨタ ランドクルーザーなどだ。
また、日本ではほとんど売れずに生産を終了してしまったトヨタ プレミオ/アリオンなどは、一部のアジアの国で大人気。日本では、ほとんど売れない中古車なのに、リセールバリューは新車価格に近い価格が付くこともあるのだ。
リセールバリューが高くても良いクルマであるとは限らない
さらに、知ってほしいことがある。リセールバリューや売却価格、査定価格などが高いクルマであっても、必ずしも良いクルマとは限らないのだ。
専門家から見ると、ライバル車と比べたらやや劣るようなクルマであっても、リセールバリューが高いクルマはよくあること。
逆に、クラストップレベルの実力をもつクルマであっても、リセールバリューが低く中古車価格は安値になるモデルもあるのだ。
このように、車両の実力はクラストップレベルでも、中古車マーケットでの評価は低く中古車価格は激安という通なモデルを「神コスパ中古車」としてピックアップした。
「トヨタのミライ」にまつわる国策とトヨタの取り組み
水素を燃料として走行するトヨタが生み出した究極のエコカー
トヨタ ミライの初代は、2014年12月に発売開始した。この初代ミライは、画期的なモデルで世界中の自動車メーカーを震撼させた存在であった。
当時、初代ミライのようなモデルはFCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池車)と呼ばれていた。
字面だけだと大変分かりにくいが、要は水素を燃料として、酸素と反応させ発電。その電力でモーターを駆動させて走行するクルマのことだ。
排出されるのは水のみ。そのため、究極のエコカーとも呼ばれていた。
さて、中学生の頃、化学の時間に水の電気分解を習うが、初代ミライはその逆で電気を発生させる。私は子供の頃に習ったシンプルな化学反応で「クルマが走る」ことに、いたく感動したことを覚えている。
当時、世界中の自動車メーカーが初代ミライのようなFCVを開発にしのぎを削っていた。
そんな中、トヨタが世界初の量産車としてデビューさせたのだ。
こうした技術力が評価され、初代ミライは「自動車史に残すべきクルマ」として、2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会特別賞を受賞した。それほど、専門家の評価は高かったのだった。
2015年に行われたG7伊勢志摩サミットでも紹介
故・安倍元首相が「水素社会の幕開け」と評価した最先端の先進技術
この初代ミライの発売月は、2014年12月。この発売日には、国策が大きく影響を与えていた。
それは、2015年に行われた「G7伊勢志摩サミット」だ。
世界中でも火力発電が多い日本は、G7伊勢志摩サミットの地球温暖化対策で非難を浴びることは確実視されていた。
そこで、当時の政府が目を付けたのが、究極のエコカーであるFCVだ。初代ミライが世界に先駆け市販されていることをG7伊勢志摩サミットアピールし、地球温暖化対策に積極的であることをアピールしたい狙いもあった。
このG7伊勢志摩サミット前、ミライ発売直後2015年1月には、経産省、国交省、環境省、内閣官房に1台ずつ納車。
当時の、故・安倍元首相は、「加速が良く、静かなこのクルマに試乗し、水素社会の幕開けを実感しました」とコメントとしているほどだ。
水素社会に向けた政府の取り組みに賛同したトヨタ
水素をエネルギーとしたスマートシティを目指すプロジェクトなどを実施
このコメント通り、政府は「水素」を新たなエネルギーのひとつとして位置付け、同時に地球温暖化対策にも対応する目論見もあった。
そんな水素社会に向けた政府の取り組みに対して賛同していたのが、トヨタだった。
その後、トヨタはFCVだけでなく、東富士工場跡地に「ウーブンシティ」と呼ばれる水素をエネルギーとしたスマートシティを目指したプロジェクトを進めていた。
ある意味、初代ミライはスマートシティ構想を目指すトヨタにとって、重要なクルマだったのだろう。
新車価格でも破格の723万円!「赤字覚悟」と囁かれた初代ミライ
補助金もあり新車でも神コスパだったが販売面では低迷
そんな重責を担った初代ミライ。国内の販売価格はデビュー時で7,236,000円という大バーゲン価格だった。トヨタは赤字覚悟だったとも言われているほどだ。しかも、国の補助金が約200万円出ていたので、実質500万円ちょっとで、世界トップレベルの先進技術を搭載した初代ミライが買えるのは、まさに新車でも神コスパだった。地方自治体によっては、さらに補助金がプラスされていたほどだ。
しかし、初代ミライは……売れなかった!
水素の充填スタンドなどのインフラが整っていないだけでなく、手作業工程が多く3,000台/年の生産が限界だったというのも理由のひとつだ。
初代ミライの世界販売台数は、約1.1万台と非常に少なかった。
初代ミライとは全く違ったモデルに進化した2代目
「エコカーであっても楽しい走りができる」ことを証明した1台
販売面では低迷した初代ミライだが、トヨタは諦めなかった。
勝つまでやるのがトヨタ流。
2020年12月には、フルモデルチェンジし2代目ミライが登場した。
2代目は、初代のメカニズムをベースに深化させた焼直し的フルモデルチェンジが多いのだが、2代目ミライは初代ミライとは、まったく違ったモデルへ生まれ変わったのだ。
プラットフォーム(車台)は、走行性能にこだわった結果、レクサスLSなどにも使われているGA-Lを採用。
なんと、初代ミライのFF(前輪駆動)からFR(後輪駆動)へ変更した。
その他、ほぼすべての部分が刷新されている。モーター出力も従来の154㎰から182㎰へ大幅にアップ。前後の重量配分は理想的な50:50とした。
なぜ2代目ミライは、ここまで走りにこだわったのか?
それは「エコカーの走りはつまらない」と思っている人に対して「エコカーであっても楽しい走りができる」ということを証明したかったからだ。
だから、ミライに乗ると楽しい。
低重心化されたGA-Lプラットフォームに、水素タンクやFCスタックなどの位置を最適化したことにより、カーブでは車体の傾きは少なく、路面に張り付いたように走る。ステアリング操作に対するフロントノーズの動きも軽い。全長4,975mmという大型車なのに、ヒラヒラと舞うように走るのには驚いた。
モーターの最高出力は182㎰と、それほどパワフルな数値ではない。単純な速さという面では、少し物足りなさを感じる。
しかし、瞬時に最大トルクを発生するモーターの恩恵でレスポンスのよい加速が楽しめる。
こうした走りの楽しいクルマというと、乗り心地が硬めな印象をもつかもしれない。しかし、2代目ミライの乗り心地は、とても快適だ。むしろ、柔らか目の乗り心地で、たまにフワンフワンした動きになるほど。それでいて、フラットライドな走りなのだから恐れ入る。
こうした走りの良さに加え、ボンネットの中では、世界最先端レベルの水素と酸素を反応させて電気を取り出すという想像するだけでワクワクするようなシステムが動いている。こうなると、もう、無条件で新世代のクルマに乗っている感で心が満たされドキドキが止まらなかった。
半自動運転? 手放し運転が可能な運転支援機能アドバンストドライブを搭載
これだけでも十分だったのだが、トヨタは2021年4月、2代目ミライに「アドバンストドライブ」と呼ばれる高度な運転支援機能を追加した。
この機能は、自動運転レベル3に近い自動運転レベル2となる高度な運転支援機能。ドライバーが常に監視していることが条件だ。
まず、目的地をナビに設定後に高速道路などを走行するとシステムが起動。一定条件を満たすと制限速度内でハンズオフが可能となり、高速道路などの分岐まで運転を支援してくれる。遅いクルマに接近した場合などは、車両側から追い越し提案があり承認すると、ドライバーはステアリング保持する必要があるが、自動でウインカーが点滅し車線変更してくれる。元の走行車線へ戻るとこも同様な操作になる。
こうした車線変更やカーブなどでの運転も、ビックリするくらい上手い。自分の運転だけでなく、自称運転が上手い人レベル以上。少し慣れてくると、クルマに任せてしまった方が、むしろ安心感がある。
「ハンズオフすることに、それほど大きなメリットがあるのか?」 と、乗る前は思っていた。
しかし、実際にアドバンストドライブを使って10分も走ってみると、そのメリットに驚いた。
腕や肩、首が緊張感から解放され、大幅な疲労軽減が実感できた。
低速域のみで、ハンズオフできる機能は徐々に増えつつあるが、高速道路上などで、制限速度内全域でのハンズオフが可能になるシステムを搭載したモデルは、とても数少ない。アドバンストドライブも先進性と利便性に優れた機能だ。
すでに2代目も赤字覚悟の大バーゲン新車価格!その理由とは?
とても先進性があり、車名通り未来を感じさせてくれる2代目ミライ。
2代目ミライの新車価格帯は、デビュー時で710~805万円と、またまたバーゲン価格。
最新(2024年7月)の価格は、726.1~861万円となっている。
2023年度の補助金は145.3万円だった。しかし、フルモデルチェンジ直後こそ売れたものの、その後の国内販売は、やはり低迷が続いている。
そんな2代目ミライ。新車販売は低迷中ということもあり、中古車価格が激安。まさに、神コスパを超え、超神コスパ状態。
近隣に水素ステーションなどがあれば、積極的に購入を考えたい中古車といえる。2代目ミライのように、とても魅力的で超神コスパなモデルは稀だ。
わずか3年で半額以下? 超神コスパの理由とは?
2代目ミライの中古車相場は以下の通り。
*中古車相場は、2024年7月調べ。
2代目トヨタ ミライ中古車相場(2021年式):230~410万円
2代目トヨタ ミライ新車価格:710~805万円
新車価格比:約32~51%
2代目ミライの中古車は、非常に流通量が少ない。そのため、中古車相場はかなり幅がある。高価格帯の中古車両でも、3年落ちの高年式車なのに、中古車価格は約半額状態になっている。低価格帯の車両にいたっては、まさかの新車価格の約32%となった。
前述した通り、クルマとしての性能は超一流。まさに、超神コスパ中古車だ。
これだけリセールバリューが下がっているのは、単に人気がないということではない。
ミライのようなFCEVやEVなどは、多額の補助金が出ている。2代目ミライでは、2023年度の補助金が145.3万円だ。
つまり、顧客は補助金分を引いた金額で購入していることになる。つまり、補助金分を引いた金額が、実質新車価格ということになる。この実質新車価格をベースにしないと、多くの高年式中古車が新車価格越えになるからだ。それでは、中古車は売れない。そこで、実質新車価格をベースにリセールバリューが決まっているようだ。その結果、中古車価格が安くなっているのだろう。
2代目トヨタ ミライ中古車のおすすめグレード
おすすめグレード:Zアドバンストドライブ/Zエグゼクティブパッケージ・アドバンストドライブ
中古車相場(2021年式):約370~430万円(参考値)
新車価格帯:845~860万円
2代目ミライ中古車選びでは、Zアドバンストドライブ/Zエグゼクティブパッケージ・アドバンストドライブがおすすめ。
ただ、高額な運転支援システムが標準装備されているため、新車価格が高い。さらに、中古車流通量は極端に少ないので、中古車相場が形成されておらず、2024年7月現在調べでは、約370~430万円(参考値)となった。
今後、多少中古車相場は動くと思うが、すでに新車価格の約44~50%となっていて、超神コスパといえる。
また、Z系のグレードは、上級グレードになるため本革シートやシートベンチレーションなども標準装備されているので、高級車として十分な装備を誇る。
ただ、前述したように中古車流通量が極端に少ないため、ジックリと時間をかけて探す必要ある。
2代目トヨタ ミライ中古車購入時の注意点
2代目ミライは、水素を燃料として走行する。そのため、すべての人が気軽に購入できるクルマではない。購入時には、下記の点に注意したい。
・自宅付近に水素ステーションがあること
水素ステーションの数(2024年7月5日現在、次世代自動車振興センター調べ)は、首都圏:47箇所、中京圏:45箇所、関西圏:20箇所、九州圏:13箇所、その他:27箇所と極めて少ないからだ。しかも、水素ステーションがあっても24時間365日充填可能ではなく、営業時間や営業日が限定される店舗も多い。今後、徐々に増える見込みだが、近隣に水素ステーションが無いと苦労することは確実だ。
また、2代目ミライの航続距離は、グレードにより若干異なり810~850㎞と十分。ただ、長距離走行が多い人は、移動先もしくは移動経路に水素ステーションがあるか確認する必要がある。
2代目トヨタ ミライの航続距離などスペック
代表グレード | ミライZ アドバンストドライブ |
---|---|
全長×全幅×全高 mm | 4,975/1,885/1,470 |
ホイールベース mm | 2,920 |
最低地上高 mm | 155 |
乗車定員 名 | 5 |
車両重量 kg | 1,970 |
最小回転半径 m | 5.8 |
一充填走行距離[参考値]km | 約810 |
燃料消費率(WLTCモード)燃料電池車 km/kg ㏄ | 146 |
モーター最高出力 ㎰ | 180 |
モーター最大トルク Nm | 300 |
サスペンション フロント/リヤ | マルチリンク/マルチリンク |
駆動方式 | 後輪駆動 |