リセールバリュー白書 2024年第2四半期中古車売却相場レポート

2024年4〜6月のガリバー買取査定データをもとに、前四半期(2024年1〜3月)のデータと比較検証しながら中古車買取相場をレポートします。

【リセバ総研所長】床尾 一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者 兼 アナリスト

中古車情報誌の最大手での制作、旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)で自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティング界隈でインハウスやコンサルタントとして活動してきたが、2017年に人材開発の世界へ転向。インストラクショナルデザインや対話空間の設計、学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。

2024年第2四半期の中古車査定件数と平均売却予想額

中古車の買取相場が急騰中

2024年の第1四半期と第2四半期の比較

中古車市場は例年第1四半期に流通量が増加し、第2四半期は減少していく傾向にある。だが、2024年の第2四半期はその動きが大きく異っている。
中古車の査定件数そのものの変化は、2023年の第1四半期と第2四半期の比較と同じ傾向ではあるが、減少幅が2023年より小さい。特に国産車の中古車査定件数の変化は、2023年の第1四半期に対する第2四半期の比率が77%であるのに対し、2024年は82%にとどまり、5ポイントも差がついている。

2023年の第1四半期と第2四半期の比較

注目すべきは平均売却予想額。2023年の第1四半期と第2四半期の比較では減額傾向であるのに対し、2024年はどのジャンルの中古車も増額傾向にあり、(車種や年式にもよるが)中古車の買取相場は現在急騰中であると言ってよい。これはリセバ総研の平均売却予想額グラフ(月次)を見ればおわかりいただけるだろう。

平均売却予想額とは?

買取査定に持ち込まれ査定検査したクルマがオートオークション等で落札または売却される際の金額を予測し、全査定件数で平均化した金額です。

※平均売却予想額は、あくまで中古車流通における売却金額の予測値を平均化した数値であり、ガリバー店頭での買取金額とは異なります。

※ガリバー店頭での実際の買取金額は、クルマのグレードや装備、使用状態によって異なります。

中古車として流通するはずだった3〜4年前の新車が・・・

2023年第2四半期と2024年第2四半期の比較

さらに、2023年と2024年とで同じ第2四半期を比較すると、特に国産車は中古車の査定件数も平均売却予想額も大幅に伸びている。
まず、平均売却予想額が上昇している要因として、コロナ禍(2020〜2022年頃)に販売された新車が大幅に減少していたことと連動し、登録から3〜4年目が経過して車検のタイミングでの下取り乗り換えや売却などで発生する中古車も、連鎖的に減少している点が挙げられる。

円安となれば日本国内で売るよりも・・・

また、品質の良い日本の中古車はもともと海外への輸出需要が高かったが、近年の為替相場における円安加速によって、中古車の海外輸出はさらに急拡大している。国産の中古車は、日本国内で販売するよりも輸出したほうが為替相場の差分だけ利益が出る状態であり、海外でも人気が高い車種の中古車は国内に流通しにくくなる。
弊社のように国内に大規模展示場をもつ企業にとっては、国内のお客様に届けるクルマを仕入れる難易度は増すばかりであり、さらにお客様からの中古車買取を強化させていただいているため査定件数も伸びている、といった次第である。

加えて、2024年上半期の国内における新車販売台数は、一部のメーカーを除き大幅に減少している。
つまり、総合的に見て日本の市場は慢性的なクルマの供給不足が続いている、ということになる。ゆえに中古車の重要は高まり続け、中古車の買取相場も右肩上がりが続いているという状態だ。

登録年式別(過去20年)の検証レポート

2024年第2四半期:国産車の査定件数と平均売却予想額

国産車(軽自動車を除く)について過去20年間の登録年式別でみると、2017年式以前の低年式車を中心に査定件数が大幅に減少している。特に海外各国の中古車輸入規制で多く見られる「登録後7年以内」の範囲ギリギリ(で安価)となる2017年式が大きく減少し、輸出人気ぶりを表している。

連動して、平均売却予想額は2006年式を除き軒並み上昇し、先述の2017年式をはじめ2015年式、2007年式、2004年式が10%以上も増額している。
また、2024年も上半期が過ぎたところで、登録から1年前後の2023年式の中古車がじわりじわりと査定件数を増やしてきている。

2024年第2四半期:軽自動車の査定件数と平均売却予想額

軽自動車について過去20年間の登録年式別でみると、国産車と同様の傾向であり、2017年式以前の低年式車を中心に査定件数が大幅に減少し、売却予想額が軒並み上昇している。特に2009年式以前は2005年式を除き10%以上も増額し、特に2007年式は22%も増額している。2024年第1四半期の2007年式軽自動車の査定件数が前四半期から55%も伸び、平均売却予想額が1%減額だった状況とは真逆である。
とはいえ、低年式車の軽自動車は中古車そのものの相場が低めであり、実質増額分の金額は1万円前後といったところだ。

2024年第2四半期:輸入車の査定件数と平均売却予想額

輸入車について過去20年間の登録年式別でみると、通常はリセールバリューがそれほど高いわけではない輸入中古車であっても、やはり査定件数の減少とともに平均売却予想額が上昇している。
中でも2012年式、2010年式、2009年式は30%を超える増額となっており、2004年式は(査定件数自体が少なく査定車種に依存するものの)50%も増額している。
輸入車も売りドキであるとも言えるが、2018年、2011年式、2007年式のように流通量が減っても平均売却予想額が減額しているケースもあり、あくまで車種や年式、グレード、車両の状態によって変動する点は注意されたい。

2024年第2四半期:ミニバンの査定件数と平均売却予想額

ミニバンについて過去20年間の登録年式別でみると、2017年式以前の低年式車の査定件数が減っていく傾向は同様だが、平均売却予想額の増額は比較的おとなしい。全体的に数%の増額幅だ。
むしろ2022年式以降の高年式が伸び悩んでおり、平均売却予想額は4〜5%ほど減額している。300万円を超える2022年式以降の高年式ミニバンは、第1四半期の繁忙期と査定件数にそれほど差はなく、平均売却予想額の伸び悩みにつながっているのかもしれない。

2024年第2四半期:SUVの査定件数と平均売却予想額

SUVについて過去20年間の登録年式別でみると、平均売却予想額の増額傾向を牽引していることがよく分かる。いまや売れるクルマの標準形がSUVなのだ。突出して平均売却予想額が伸びた年式はないものの、10%前後の増額となった年式が多数を占めている。興味深いのは2004年式で、19%の増額。実質増額分の金額も9万円程度の差があり、低年式のSUVでも買取額が期待値以上になる可能性も高い。

車種と年式単位での検証レポート

2024年第2四半期:国産車の査定件数上位20車種

国産車の査定件数は、相変わらずプリウスとアクアが各登録年式で上位を占め続けている。日産のセレナとノートの査定件数が減少したことで、トヨタの上位独占状態がますます色濃くなった。

2024年第2四半期:軽自動車の査定件数上位20車種

軽自動車の査定件数上位も、変わらずN-BOXが上位を占めるが、ダイハツ勢の査定件数が大きく減少しているため、N-BOXを押し上げている形になっている。また、スズキ勢の査定件数も減少し、ワゴンRが20位圏外となった。

2024年第2四半期:輸入車の査定件数上位20車種

輸入車の査定件数は、ミニとフォルクスワーゲンが占める中で、ボルボ V40が微増ながら査定件数が伸びたことで、相対的に上位にランクインしている。また、査定件数が微減にとどまったジープラングラーも、相対的に順位が上昇している。

前四半期比で変動比率の高い車種と年式の検証レポート

2024年第2四半期に査定件数が増加している20車種

※四半期内での査定件数が30件以上の車種

次は各四半期ともに査定件数を30件以上に限定し、前四半期に比べて増加している車種を見てみよう。まず、2005年式のホンダ エアウェイブが一気にプラス25件の査定件数となっている点が興味深い。5ナンバーのステーションワゴンで、2010年まで販売されていた。後継車種はフィットシャトルになる。同様の低年式車としては、2012年式のムーブコンテもプラス20件の査定件数と目を引く。

メジャーどころではランドクルーザープラドが2015年式、2017年式、2020年式と一気に査定件数を伸ばしてきている。2017年式は平均売却予想額も16%上昇し、海外各国の中古車輸入規制に多い「登録後7年以内」の範囲のため、人気となっているのかもしれない。

2024年第2四半期に査定件数が減少している20車種

※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数を30件以上に限定し、前四半期に比べて減少している順に見てみよう。第1四半期に急増して第2四半期に「もとに戻った」状態の車種も多いが、その中でも2021年式のジムニーシエラが気になる存在。査定件数の水準は前々四半期にあたる2023年第4四半期と変わらないが、人気車種でもあり平均売却予想額は上がり続けている。今後も中古車需要は高まり続けるだろう。

査定件数が減少しつつ平均売却予想額が10%以上も上昇している車種は、2013年式のN-BOX+、2015年式のパッソ、2013年のフィットシャトル、2007年式のオデッセイ、2009年式のライフ、2019年式のミニ、2009年式のストリームだ。値段がつかないかな?と思っている低年式車でも、車種によっては中古車需要が高まってる場合もあるので、乗り換えを検討している方は諦めずに買取査定を検討してみてもよいだろう。

平均売却予想額が増加した50〜99.9万円の車種TOP20

※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い50~99.9万円の車種を見てみよう。中古車仕入れの現場では「指名買いの引き合いが多い」(中古車仕入れのプロ〝OKB〟談)と言われているホンダ フリード。第2四半期では、2015年式のフリードが平均売却予想額を25%も増額している。その他、2017年式のエブリィ、フィット、アクセラスポーツ、2015年式のN-BOXスラッシュが20%以上の増額となっている。

その他、上位からトヨタ車がランクイン数を減らし、ホンダ車やマツダ車の躍進が目立つ。中古車の流通量不足からも、リセールバリューの高いトヨタ車だけではなく他メーカーも平均売却予想額を上昇させており、中古車が手に入りにくくなった市場の様子を表す結果となっている。

平均売却予想額が増加した100〜199.9万円の車種TOP20

※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い100~199.9万円の車種を見てみよう。中古車仕入れの担当者が「高価格帯、低価格帯はさておき、普通の中古車の真ん中の価格帯が仕入れにくい。」(中古車仕入れのプロ〝OKB〟談)と嘆いている現状がよく現れている。上位9車種の平均売却予想額がすべて20%以上も増額している。

まず、目立つのはトヨタ ハイエースバン。普段から人気が高いが、第2四半期はさらに需要が増していているため流通量が少なく、査定件数も大幅に減少している。2011年式、2015年式、2013年式と3つの年式が上位にランクインし、中でも2011年式は査定件数が26%も増加しているにも関わらず、他の年式と同様に平均売却予想額は21%の増額だ。

次に、2016年式と2017年式の86。80〜90年代のネオクラシックは別として、珍しく2ドアクーペのスポーツタイプが平均売却予想額の急上昇に2つの年式でランクインしており、2016年式は23%も増額している。
そしてホンダ ヴェゼル。2014〜2017年式と4つの年式がランクインしており、特に2014年式と2016年式は査定件数がふえつつも、平均売却予想額はそれぞれ21%と25%の増額となっている。
他にも、FJクルーザーの査定件数が13%上昇しながら平均売却予想額が21%の増額するなど、2024年第2四半期に平均売却予想額が増額した100〜199.9万円クラスの車種群は注目ポイントが多い。

平均売却予想額が増加した200〜299.9万円の車種TOP20

※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い200~299.9万円の車種を見てみよう。前四半期に続き、ランドクルーザープラドが強い。査定件数を見ると2015年式は54%、2016年式は42%も伸びている。それでも世界中で旺盛なプラドの中古車需要を反映して、平均売却予想額はそれぞれ9%の増額だ。

トヨタのハイラックスとRAV4も、平均売却予想学とともに査定件数を大きく伸ばしている。2018年式のハイラックスは査定件数が42%増、平均売却予想額は10%の増額。2019年式のRAV4は査定件数が20%増、平均売却予想額は7%の増額となっている。

そして、ここでもやはりヴェゼルの伸びが目立つ。100〜199.9万円クラスだけにとどまらず、2020年式のヴェゼルが平均売却予想額を10%増額させて、200万円超のクラスにもランクインしている。しかも査定件数は64%増となっていて、需要が盛り上がっていることがわかる。
「ヴェゼルとかCX-5、CX-8あたりは、ハリアーのようなSUVの定番どころを外した選択肢として需要が高いので、必ず展示しておきたいクルマ。」(中古車仕入れのプロ〝OKB〟談)といいうように、国内販売での需要が高い。

また、上記のコメントにもあるマツダ CX-8も、2021年式の査定件数が27%減少し、平均売却予想額は8%上昇。リセールバリュー競争では苦戦しがちなマツダ車だが、CX-8は第1・第2四半期連続で、平均売却予想額200〜299.9万円の増加率TOP20にランクインを続けている。

平均売却予想額が増加した300万円以上の車種TOP20

※四半期内での査定件数が30件以上の車種

同じく各四半期ともに査定件数が30件以上に限定し、前四半期に比べて平均売却予想額の増加率が高い300万円以上の車種を見てみよう。前四半期と変わらずトヨタ車が独占する価格帯であり、ランドクルーザー系とレクサスばかりだが、ランクインした車種ラインナップに変化が見られる。

まず、ノア/ヴォクシーの高年式車が目立つようになった。特に2022年式のノア ハイブリッドは査定件数が55%増加し、平均売却予想額は110%の増額だ。ヴォクシー ハイブリッドも2023年式が前四半期に続いてランクインし、さらに26%も査定件数を伸ばしつつ、平均売却予想額は7%の増額となっている。

そして、200〜299.9万円クラスだけではなく、300万円超のクラスにもハイラックスとRAV4がランクインしている。ハイラックスは前四半期に2022年式が300万円超のクラスにランクインしていたが、今回は2021年式と2023年式がランクインしており、特に2023年式は査定件数も49%増。RAV4も2023年式がランクインしており、ともに登録から1年ほどが経つ2023年式の中古車が本格的に出回り始めたといったところだ。

2024年第2四半期:中古車売却相場の総括

  • 【リセバ総研所長】床尾 一法

    2024年も半年が過ぎ、いよいよ2023年式のクルマが多く流通し始めた。本文中では触れていないが、平均走行距離も順当に伸びてきているため、実際に公道で使われていた中古車が流通しているものと考えられる。

    しかし、昨今の中古車市場での価格高騰を受け、さらに高年式車となると、価格も高止まりで動きが止まっている状態になっている。むしろ、中古車として売買しやすい価格帯の70〜200万円代のクルマ、年式でいうと2015〜2019年式あたりのクルマの流通量が減っており、価格も上昇中である。中古車販売店でも仕入れの難易度が上がり続けている状態だ。

    そして、とどまるところを知らない海外への輸出需要。トヨタ ハイエースバンのランクインが目立ったが、これは右ハンドル圏への輸出のための需要増加であると推察される。ランドクルーザープラドをはじめ、トヨタの中古車に対する高い海外需要は変わらず続くだろう。

    とはいえ、輸出需要は流行り廃りの変動要素も大きく、需要のある車種は日ごとに変化している。また、2024年7月時点での円高傾向もあり、輸出需要が変動する可能性もある。
    平均売却予想額が高騰中である車種の売却を検討している方は、売りドキのタイミングを見逃さないよう、リセバ総研をチェックいただけると幸いである。