12月8日深夜に青森県東方沖で最大震度6強の地震が発生 北海道・三陸沖後発地震注意情報が発表:車中泊での避難を検討する人が注意すべきポイントは?

12月8日の深夜、青森県東方沖を震源とする最大震度6強(マグニチュード7.6)の地震が発生。気象庁と内閣府は9日未明に、北海道から関東にかけての太平洋沿岸部に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。これは、すぐに巨大地震が発生することを予知するものではなく、相対的に大きな地震が発生する可能性が高まっていることから、強い揺れや津波に対する防災対応や避難準備を落ち着いて行うことを呼びかけるものです。

これから自治体では避難所の開設準備などを進めるものと思われますが、一方で自分のクルマを車中泊できる避難場所として活用しようと検討している方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、車中泊での避難を検討する人が注意すべきポイントをまとめました。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

ポイント1:そもそも、クルマでの避難が適切かを冷静に考える

まずは、ご自宅周辺の道路事情や、海との位置関係などを冷静に判断して、本当にクルマでの避難が適切かを考える必要があります。

 

すでに十分な標高のある高台にご自宅があり、津波からの避難の必要性が少ない地域であれば、ご自宅の駐車場や大きい公園などで車中泊避難をするのは選択肢のひとつでしょう。しかし、海が近く速やかな津波避難の必要性が高い地域や、周辺に細い道が多く家屋の倒壊や建物火災などでクルマが走行不能になるリスクが高い地域などでは、クルマでの避難は絶対に避けるべきです。特に、お住いの地域で津波警報が発令された場合には1分、1秒でも早く高台に避難する必要があるため、渋滞の恐れがあるクルマでの避難はしないで、徒歩で近くの高台に速やかに避難するようにしましょう。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    災害避難の原則は「徒歩移動」です。避難のためにクルマを使用することはやむを得ない事情がある場合を除いて避けるようにしましょう。また、災害発生時には幹線道路などが緊急車両優先道路になる場合があるため、十分に注意しましょう。

ポイント2:クルマでどこに逃げるのか。経路などを確認しておこう

やむを得ず、クルマで避難する必要がある場合には、「どの道を使い、どこに逃げるのか」を事前にシミュレーションしておくようにしましょう。この場合も、家屋の倒壊や建物火災などで通行止めになるリスクはないか、交通集中で渋滞する可能性はないか、安全にクルマを駐車できる場所はどこかなどを確認しておくことで、実際に避難する際にも冷静に運転することができます。また、通行止めや渋滞のリスクを考慮して、避難ルートは複数検討しておくとよいでしょう。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    繰り返しになりますが、この場合も海が近く津波による浸水リスクが高い場合や、シミュレーションの結果、避難に長時間が掛かることが予想される場合などには、迷わずにクルマでの避難を断念して別の避難方法を検討することが非常に重要です。

ポイント3:クルマは、防災倉庫になる。必要な分だけ、適切な備蓄を

これは、クルマでの避難をする人も、しない人も実践できることですが、クルマの荷物スペースを防災倉庫として活用することをお勧めします。災害の備えとして、3日分〜1週間分の飲料水や食料、簡易トイレ、常備薬、着替え用の衣類や防寒具、衛生用品、電池や携帯ラジオなどを備蓄することが推奨されていますが、これらを自宅のなかに備蓄すると、家屋倒壊のリスクが高まった際にすぐに取り出すことが困難になります。その代わりとして、クルマの荷物スペースに備蓄する物品を保管しておけば、徒歩で避難する場合にもクルマからすぐに取り出すことができます。もちろん、災害の備えだからという理由で飲食品や物品を大量に買い占めてはなりません。ご自身の世帯で必要な分を把握して、適切な量を備蓄するように心がけましょう。また、スマートフォンのバッテリー切れに備えて、モバイルバッテリーや乾電池で使用できる充電器の用意もしておくとよいでしょう。

 

加えて、災害発生時にはガソリンスタンドが被災して使用できなくなったり、輸送網の麻痺により燃料の供給ができず、ガソリンが品切れになる可能性もあります。車中泊での避難を検討している人は、クルマの満タン給油を早めに済ませておくことをおすすめします。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    ちなみに、セルフ式のガソリンスタンドではガソリン携行缶への給油ができませんが、有人対応のガソリンスタンドの場合には身分証明書を見せることで携行缶への給油が許可される場合もあります。ガソリンスタンドに相談してみましょう。

ポイント4:慣れない車中泊で最も気をつけることは“エコノミークラス症候群”

実際に、車中泊での避難を余儀なくされた場合、最も気をつけるべきは、座った姿勢で長時間いることにより発生するリスクが高まる「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」です。これは、長時間座っていることで脚の血管に血栓(血の塊)ができ、それが血管を通じて移動して肺にある重要な血管を詰まらせてしまう病気で、この症状が出てしまうと重篤な場合には命に関わります

 

エコノミークラス症候群を避けるためには、「座ったままで過ごさない」「適度に身体を動かす」「下半身に血液が溜まらないようにする」という3つのポイントがあります。例えば、ミニバンやSUV、ワゴンタイプの軽自動車の場合には、車内にマットレスを持ち込んで脚を伸ばして横になれる場所を確保することができます。後部スペースの小さいセダンやハッチバックの場合でも、席をめいっぱい倒してクッションなどを敷くことで横になることが可能です。加えて、車中泊をする場合にはドラッグストアなどで売っている「弾性ストッキング」を履くと、血流が下半身に溜まることを抑えてくれることが期待できます。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    そして、クルマで長時間過ごす際には、1時間に1回程度、車外に出て身体を伸ばし、軽く運動することがおすすめです。家族や周辺で避難している人たちと一緒にラジオ体操をすることも良いでしょう。あらゆる方法で「座りっぱなし」の状態を避けることが重要になります。

ポイント5:意外と見落としがちな衛生管理とプライバシー対策

最後に、車中泊する場合に注意したいポイントとしては、衛生管理とプライバシー対策です。車内で長時間過ごすと様々なゴミが出たり、車内の空気が悪くなってしまいます。ゴミを処理するための袋やアルコール消毒液、除菌消臭スプレーなどを用意したり、定期的な車内換気を行うことで、車内の衛生管理をしっかりするようにしましょう。

 

また、屋外にあるクルマの中は付近を歩く人から丸見えなので、プライバシー対策も重要です。タオルや段ボールなどで窓を目隠しできるようにしておくとよいでしょう。

まとめ

今回は、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の発表を受けて車中泊避難で考えるべきポイントについてまとめてみました。繰り返しになりますが、クルマでの避難は原則として「やむを得ない場合」に行うものであり、津波をはじめとした緊急性の高い避難にクルマを使用することは絶対に避けるべきです。例えば、高齢の家族の避難にクルマを使用したい場合などもあるかと思いますが、こうした場合には災害のリスクが落ち着くまで安全な場所(親戚の家や避難所など)に事前避難をするという方法もあります。慌てず、冷静に、どのような備えができるかを考えていくようにしましょう。