中古車相場のプロに聞く! 【最新中古車市況(14)】中古車仕入れのプロからみたホンダとスズキの戦い方

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。

【中古車相場のプロ】〝OKB〟

中古車マーチャンダイジング部門管理職

大学生時代は自動車研究部でジムカーナや耐久レースに没頭し、2009年入社に旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)入社。 ガリバーの店舗で営業職を2年経験した後、本社に異動。電話によるクルマ買取サービスを2年担当する。その後、マーチャンダイジング部門で中古車買取価格の設計、オークションでの売却担当などを歴任。 現在はマーチャンダイジング部門の管理責任者として、中古車の仕入れや商品構成の設計を統括する。お客様のご来店を促進させる在庫構成を設計する、中古車のスペシャリストだ。

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根強い人気の「デリカD:5」と「デリカミニ」

  • リセバ総研所長 床尾一法

    続き

    ここまでは大きなカテゴリーについての動向をお伺いしてきましたが、次は車種単位で気になったクルマなどありましたか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    以前もお話しましたが、型落ちのトヨタ クラウン(先代モデル220系)は引き続き人気で需要があるようですね。あとは三菱 デリカD:5も7〜9月は良かったと思いますね。

トヨタ クラウンのガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
39位 トヨタ クラウン
年式 販売シェア 平均支払総額
2021年式 12.5% ¥4,259,272
2020年式 25.0% ¥3,303,160
2019年式 26.3% ¥3,212,694
2018年式 28.4% ¥3,257,211
三菱 デリカD:5のガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
16位 三菱 デリカD:5
年式 販売シェア 平均支払総額
2025年式 45.3% ¥4,844,943
2024年式 6.6% ¥4,357,260
2023年式 8.7% ¥4,243,569
2022年式 5.2% ¥4,108,252
2021年式 2.5% ¥3,917,638
2020年式 5.6% ¥3,748,107
2019年式 6.6% ¥3,480,529
2018年式 4.3% ¥2,712,504
2017年式 2.5% ¥2,600,153
2016年式 1.9% ¥1,916,574
2015年式 2.3% ¥1,981,723
2014年式以前 8.5% ¥1,454,086
  • リセバ総研所長 床尾一法

    デリカD:5は根強い人気ですよね。2025年式の登録済み未使用車がよく売れています。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    三菱のクルマは基本的にあまり在庫も豊富に出回っていないですし、値動きも流動的なんですが、デリカD:5だけはやっぱり強いですね。

    相場が上がる時期にはとても高騰しますし、相場が下がる時期には一定の下落はありますが、高年式の在庫が多く一定のリセールバリューは担保されています。

    末っ子の軽自動車「デリカミニ」も同じように高年式の在庫が豊富に出回っていて人気ですね。

三菱 デリカミニのガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
66位 三菱 デリカミニ
年式 販売シェア 平均支払総額
2025年式 59.1% ¥2,418,110
2024年式 29.9% ¥2,250,053
2023年式 10.9% ¥2,167,190

OKBも唸る「巧みな戦略ですよスズキさんは」

  • リセバ総研所長 床尾一法

    個人的にはスズキのハスラーも人気が根強いと感じていますが、いかがでしょうか?

  • リセバ総研所長 床尾一法

    スズキのクルマも人気で新車販売も強いですよね。めちゃめちゃ頑張っていると思います。世界戦略も国内戦略も恐ろしく巧みだと感じてます。

スズキ ハスラーのガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
7位 スズキ ハスラー
年式 販売シェア 平均支払総額
2025年式 4.8% ¥1,942,498
2024年式 9.1% ¥1,828,908
2023年式 5.9% ¥1,770,879
2022年式 7.3% ¥1,632,530
2021年式 5.9% ¥1,471,776
2020年式 13.5% ¥1,423,746
2019年式 6.9% ¥1,178,192
2018年式 10.5% ¥1,074,274
2017年式 6.8% ¥961,188
2016年式 9.7% ¥942,058
2015年式 9.9% ¥876,023
2014年式以前 9.7% ¥819,207
  • リセバ総研所長 床尾一法

    新車販売が好調だから、中古車にも良質な在庫が豊富に流れてくると。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    そうですね。

    昔のワゴンRも、新しいワゴンRハイブリッドも、コンパクトカーのソリオも、ラインナップ戦略はとても上手いと感じていますね。

    他のメーカーがどんどん車種の統廃合を進めて減らしているなか、スズキは車種ラインナップを拡大し続けている。

    最近ではSUVのフロンクスのような、これまでのスズキに持たれているイメージよりもちょっとサイズの大きなクルマも、グローバルな戦略車として売り出しています。そうした戦略は上手いと感じますね。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    そうですね。

    とても勢いのあるメーカーだと思います。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    スズキはインドだけでなくタイをはじめアジア各国に生産拠点があります。低いコストですぐに生産体制を整えられるという基礎はありました。

    それにしても「やるなぁスズキさん」と。

    クルマ屋の視点で現状の戦略を眺めていても、巧みな戦略だなぁと唸ります。

    中古車の市場でも、ほとんどのゾーンで偏りなく(スズキ車の)需要があるっていうのが強い。

    どのクルマもある程度の台数が新車で売れていて、ワゴンRのような人気車は圧倒的な販売台数がある。
    その結果、中古市場にも豊富に在庫が流れてきていて、コスパも良い。「このモデルって在庫ないよね?」というのがほぼないのがすごいと思います。

スズキ ワゴンRのガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
33位 スズキ ワゴンR
年式 販売シェア 平均支払総額
2024年式 0.4% ¥1,758,900
2023年式 0.4% ¥1,448,000
2022年式 2.3% ¥1,293,551
2021年式 2.3% ¥1,070,010
2020年式 3.9% ¥1,002,985
2019年式 7.4% ¥902,534
2018年式 10.1% ¥835,003
2017年式 10.1% ¥868,551
2016年式 5.1% ¥676,128
2015年式 8.6% ¥549,022
2014年式以前 49.4% ¥472,254

スズキ最大のライバル?ホンダ N-BOXの人気はまだまだ続く

  • リセバ総研所長 床尾一法

    現状の軽自動車市場を見ると、スズキにとっての最大のライバルはホンダのN-BOXです。

    新車の販売も中古車の販売も、そして買取査定の件数も首位独走状態です。

    さて、いつまでこの状況が続くと思いますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    日本国内の軽自動車市場の大勢は崩れないでしょう。

    N-BOXの人気はまだまだ続くと考えています。この先もしばらくは崩れないと思いますね。

    完成度が高いのはもちろんですし、そもそもスーパーハイトワゴンが支配する軽自動車市場を作ったのは歴代のN-BOXですから。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    かつてのプリウスのような、「無難な一択」での指名のブランドになっているのでしょうね。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    ええ。

    既にかなりの販売台数を重ねているし、販売戦略も広告戦略もこの先ずっと力を入れていくでしょう。ある程度の新車販売台数も担保される

    そうなると、中古車市場にもどんどんクルマが流れてくるので、コスパの良さも担保されて、崩れることがないわけです。

ホンダ N-BOXのガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
ホンダ N-BOXのガリバー中古車販売統計(※)
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
2位 ホンダ N-BOX
年式 販売シェア 平均支払総額
2025年式 2.1% ¥2,028,951
2024年式 5.7% ¥1,973,177
2023年式 6.0% ¥1,753,620
2022年式 9.6% ¥1,630,469
2021年式 7.1% ¥1,459,209
2020年式 12.3% ¥1,380,892
2019年式 8.7% ¥1,306,712
2018年式 12.9% ¥1,188,639
2017年式 8.2% ¥1,089,398
2016年式 6.9% ¥895,297
2015年式 5.2% ¥836,084
2014年式以前 15.4% ¥699,026
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。

N-BOXと真っ向勝負せずにセグメントをずらしたスズキの巧さ

  • リセバ総研所長 床尾一法

    N-BOX、盤石だなぁ・・・。クルマを選ぶ側の視点で見れば、首位を脅かすような存在の登場にもちょっと期待してしまいますけどね。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    それこそ、N-BOXと本気で勝負できるメーカーはどこかと言われたら、スズキなわけですよね。

    (N-BOXと同じ系統と思える)「ワゴンRスマイル」というクルマもありますが、私個人としては本腰を入れているようには見えていない。

    N-BOXに対抗するクルマを開発しているという話も聞いたことはないので、そこが動かないとちょっと厳しいでしょうね。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    え?OKBさん的に競合は(ハイトワゴンの)「ワゴンRスマイル」ですか?同じスーパーハイトワゴンの「スペーシア」ではなく?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    スズキ スペーシアは絶妙に顧客層が異なっていると考えてます。

    中古車屋としての肌感覚ですが。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    確かに、我が家がスペーシアギアを選択した際は、N-BOXと全く競合してませんでした。

    スペーシアギア(先代MK53S型)のデザインとスタイリングで惚れ込んだので。

    ただ、購入後は納車までの間は、ネットでN-BOXとの比較をしまくりましたよ(笑)

    やはり立ち位置的にもスペック的にもスペーシアが競合と考えるのが一般的だと思いますが・・・

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    そういう所長の好みにマッチしたように、スペーシアは細かくターゲットが別れています。

    N-BOXとは顧客層がそれほど被っていないという認識です。

    そこで、ですよ。

    スズキさんはここでも上手いなぁと思うのは、N-BOXからの買い替えニーズの受け皿が、普通乗用車の「スズキ ソリオ」なんですよ、実は。

    ホンダのなかでN-BOXから買い替えようと考えると、候補に挙がるクルマがフリード。もしくはステップワゴンやオデッセイとなりますが、サイズも予算も大きなクルマになってしまう。

    価格帯的にも、ちょうどいい買い替え候補がないのです。

    それにソリオとソリオバンディットは(N-BOXにはない)マイルドハイブリッドを搭載していますし、実際にかなり売れていますね。

N-BOX/フリード/ステップワゴン/ソリオのガリバー中古車販売統計(※)
※中古車情報メディアに掲載されたガリバーの公開在庫を基準とし、販売成約に至った中古車(成約後のキャンセルも含む)を集計。販売状況は同一車種内での年式別シェア(割合)を表記。
※「支払総額」は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車した場合の価格。
販売順位 2025年7月1日~2025年9月30日に販売された車種
34位 スズキ ソリオ
年式 販売シェア 平均支払総額
2025年式 1.6% ¥2,662,750
2024年式 10.7% ¥2,282,867
2023年式 13.1% ¥2,007,250
2022年式 6.0% ¥1,748,947
2021年式 12.7% ¥1,904,438
2020年式 7.5% ¥1,512,501
2019年式 6.7% ¥1,317,794
2018年式 14.3% ¥1,284,229
2017年式 6.3% ¥1,200,395
2016年式 11.1% ¥1,005,060
2015年式 4.4% ¥633,369
2014年式以前 5.6% ¥540,069
  • リセバ総研所長 床尾一法

    なるほどぉ。

    価格帯的にもソリオがN-BOXからのステップアップ先や比較検討の競合になると。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    恐らく、スズキはこれを戦略的にやっているのではないでしょうか。

    ホンダのラインナップのなかでN-BOXとフリードの間にあるラインナップの空白をソリオで攻めて行ったと。

    スズキは先手を打ってシェアを取っているので、ホンダは後発でソリオのシェアを奪うのは簡単ではないと思いますね。

(つづく)

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