ジャパンモビリティショー2025 レポート ジャパンモビリティショー2025でリセールバリュー診断(1)CORISM大岡が注目した出品車は?
10月30日から11月9日まで、東京ビッグサイトでは自動車メーカー各社が発売予定の新型車両や近未来のクルマを表現したコンセプトカーを一挙展示する「ジャパンモビリティショー2025」が開催されます。そこでリセバ総研では、プレスデーとなった10月29日の会場に潜入!自動車WebサイトCORISM編集長の大岡智彦と、リセバ総研所長の床尾一法それぞれの視点で注目の新車をピックアップしていきます。今回は、大岡智彦が今後発売予定の新車について、その特徴やリセールバリュー予想を独自の視点でチェックしました。
自動車情報メディア「CORISM」編集長
ライター
目次
日産 新型エルグランド

日産自動車のブースで最も大きな展示となっていたのが、約16年ぶりのフルモデルチェンジとなる4代目「エルグランド」です。発売は2026年夏を予定しており、大型ミニバン人気を牽引するトヨタの「アルファード/ヴェルファイア」にどこまで迫れるかに注目が集まっています。
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【自動車のプロ】大岡智彦
約16年ぶりのフルモデルチェンジということで、待ちわびた(待ち疲れた)という方も多いのではないでしょうか。これまでエルグランドは販売不振に苦しんできましたが、その理由がボディサイズとハイブリッドモデルの不在。ライバルのトヨタ アルファード/ヴェルファイアと比べてひとまわり小さく見えたところはマイナスポイントでしたし、e-POWERモデルがないのも痛手でした。
対して新型は全長30ミリ、全幅45ミリ、全高160ミリも大きくしてきたほか、新開発の発電専用エンジン(ZR15DDTe型)を採用した第3世代のe-POWERによる新しいハイブリッドシステム搭載されているので、まずは従来の弱点を克服できているのではないでしょうか。
リセールバリューについては、現行モデルも高めに推移していますので、アルファード/ヴェルファイアに対する弱点を克服したとなれば、新型モデルはアルファード/ヴェルファイア並のリセールバリューが期待できるのではないでしょうか。あとは「トヨタ」と「日産」というメーカーブランドの違いがリセールバリューにどれくらい影響してくるかという点ですね。
三菱 デリカD:5(一部改良モデル)

三菱自動車のブースからは、今年の冬に発売を予定している人気のアウトドア系ミニバン「デリカ D:5」の一部改良モデル。以前から人気の高い力強いスタイリングをさらにブラッシュアップしているほか、走行性能な内装装備も拡充しています。
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【自動車のプロ】大岡智彦
皆さんご存知のとおり、デリカ D:5はミニバンなのにオフロードも走れるという唯一無二の存在ですね。今回の一部改良では4WDに「S-AWC」という車両運動統合制御システムが搭載され、悪路走破性がさらに高まりました。(一部改良を繰り返しているため)現行型のデリカが登場したのは随分前になりますが、オフロードも走れる四輪駆動のミニバンという希少性から、販売台数そのものは少ないものの、リセールバリューは高く推移しています。今回の一部改良でさらに走行性能が高まったことで、リセールバリューもさらに引き上がるのではないでしょうか。
ホンダ CR-V e:HEV RS

本田技研工業からは、今年で初代登場から30周年を迎えたSUV「CR-V」。6代目となる新型CR-Vのハイブリッドモデルで、今冬に発売を予定している日本専用モデル「CR-V e:HEV RS」が登場です。CR-Vに待望のハイブリッドモデル登場ということで、会場でも大きな注目を集めていました。
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【自動車のプロ】大岡智彦
「アコード」と同じハイブリッドシステムを採用しているとのことで、2.0リッターのe:HEVを搭載しているものと思われます。実は、歴代のCR-Vというのは新車販売が低迷したことで、中古車市場ではSUVの割にはコスパがいいというクルマでした。この「CR-V e:HEV RS」はデザインもかっこよく刷新されましたので、リセールバリューは上がってくるのではないかと思います。
マツダ CX-5(欧州モデル)

マツダからのピックアップは、欧州でフルモデルチェンジが行われ日本での発売も期待されているSUV「CX-5」です。約9年ぶりのモデルチェンジとなります。CX-5は現在のマツダ車のアイデンティティでもある「魂動デザイン」を初めて全面採用したクルマで、今度のモデルチェンジでどのような進化を遂げているかにも注目です。
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【自動車のプロ】大岡智彦
3代目CX-5の大きな特徴は、ボディサイズが変更された点です。基本プラットフォームは(先代と)共通ですが、ホイールベースを少し伸ばしてボディサイズも少し大きくしています。今までのラグジュアリーなイメージよりも、もう少し使い勝手にこだわったというのがポイントになっていて、後席の乗り降りのしやすさ、室内空間や荷室の広さが特徴です。加えて、内装では15.6インチという非常に大きなディスプレイが搭載されているのも印象的です。
ひとつ懸念点を挙げるなら、パワートレインに2.5リッターの24Vマイルドハイブリッドしか用意されていないという点。もともとクリーンディーゼルが主力で高い評価を得てきたクルマなので、その点が販売面の苦戦を招くのかなという印象です。来年度中をめどに「スカイアクティブZ」という新エンジンと新開発のハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインが投入される予定なので、それまではちょっと苦しい闘いになるのではないでしょうか。
リセールバリューについては、現行モデルもスタイリッシュなデザインや質感の高さなどが評価され、比較的高めを維持しています。新モデルも現状維持だと思いますが、やはりガソリン+マイルドハイブリッドのモデルしかないというのがリセールバリューにどのような影響を与えるのかが気になるところです。
BMW iX3

輸入車からは、フルモデルチェンジとなったBMWの電動SUV「iX3」をピックアップ。第6世代BMW eDriveテクノロジーを採用したことにより走行性能や航続距離を大幅にパワーアップしているのが特徴で、2026年夏以降の国内発売を予定しています。
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【自動車のプロ】大岡智彦
先代のiX3はガソリン車のX3とほぼ同じエクステリアだったのですが、新しいiX3はX3とは全く違う雰囲気になりました。これだけイメージが(X3と)違うと、明らかに電気自動車だというのがひと目でわかると思いますね。また、航続距離は最大805キロで、システム出力は469馬力。非常にハイスペックで、とても力強く走ることが期待されます。
リセールバリューについては、EV全般に言えることですが、車両本体価格からEV関連の補助金を引いた金額を基準にリセールバリューを考えるため、あまり期待はできません。一方で中古車市場においてEV全般がコスパのいいクルマとして販売されているため、iX3も中古車での購入がお勧めと言えるのではないでしょうか。
BYD RACCO

アジアの新興EVメーカーBYDからは、ついに登場した輸入車初の軽EV「RACCO(ラッコ)」をピックアップ。2026年夏の発売を予定しているモデルで、同社初の日本専用モデルとなります。BYDのEVはコスパの良さが評判で、どのような価格で発売されるのかにも注目が集まります。
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【自動車のプロ】大岡智彦
日本の軽自動車規格に対応したBEVとなります。日本の軽EVには日産の「サクラ」やホンダの「N-ONE e:」がありますが、どちらもヒンジドアのクルマ。このRACCOは両側スライドドアを採用しているということで、日本で一番売れているスーパーハイトワゴンの電気自動車としては初めてとなり、注目度は非常に高いと思います。
加えて、BYDはEV補助金に頼らなくてもコスパよく買える価格設定が特徴でもあるので、補助金が適用されればさらにコスパの高さが光るクルマになるのではないでしょうか。もちろん、EVとしてのポテンシャルは(これまでのBYDの実績を踏まえると)立派なものだと思うので、静粛性も含めてパフォーマンスは高いだろうと思われます。ただ、リセールバリューについてはEVということもありやや低めになると予想されます。裏を返せば、中古車としてはかなりコスパの高いクルマになることも予想されます。
大岡さんが感じた今年のモビリティショーに対する印象は?
最後に、大岡さんとともに各メーカーのブースを周り終えたところで、今年のジャパンモビリティショーの印象について聞いてみました。
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【自動車のプロ】大岡智彦
輸入車メーカーの出展が少ない印象でしたね。特にアウディやフォルクスワーゲンなど欧州メーカーの不在は寂しい印象でした。一方で、中国のBYDや韓国のヒョンデなどアジアの新興メーカーは活況だったと思います。
国内メーカーでは、やっぱりトヨタ自動車の気合の入り方が印象的でしたね。会場のワンフロアを占有してトヨタ/レクサス/センチュリー/ダイハツとグループのブランドを結集して展示を展開していました。また、eビターラの投入から電気自動車戦略を本格化させるスズキも、とても元気な印象を受けました。
一方、経営難に陥っている日産自動車ですが、そんな状況を全く感じさせないような意欲的なブース展開が印象的でした。一般的に各メーカーの目玉となる展示は(発売未定の)コンセプトカーになることが多いのですが、日産自動車は発売が決定している「エルグランド」を目玉に据えてきた。ここに「魅力的な新車をしっかり売っていくんだ」という日産の意気込みを感じましたね。
自動車メーカーだけでなく部品メーカー各社のブースにも立ち寄り、最新技術をくまなくチェックしていった大岡さん。ジャパンモビリティショーの取材は夕方遅くまで続きました。

