過去5年の新車販売台数と買取査定件数のデータからトレンドを読み解く

自動車業界のトレンドは年を経るごとに大きく変化しています。セダンやクーペが当たり前だった「いつかはクラウン」の時代から、大人数での旅行が楽しめる「ミニバンブーム」へと変化し、そして現在ではSUVがどの自動車メーカーも主力ラインナップに挙げています。こうした時々刻々と変化する自動車のトレンドをデータで見てみると、どのようなことがわかるのでしょうか?今回は、業界団体が発表している新車販売データとリセバ総研が発表した「リセールバリュー白書2025」のデータを参考に、新車販売と買取査定のトレンドを見てみましょう。

ライター
この記事の内容は、筆者の個人的な主観・考察によって構成されています。公式の見解ではございませんのでご注意ください。
新車登録台数の推移から見えてきた人気のクルマたち
まずは、新車販売のトレンドについて見てみましょう。新車販売データは、普通乗用車については一般社団法人日本自動車販売協会連合会が、軽自動車については一般社団法人全国軽自動車協会連合会がそれぞれまとめています。
普通乗用車の2020年から2024年までの5年間の車種別新車登録台数の推移については、トヨタの「ヤリス」と「カローラ」が首位と2位を独占している状況。ヤリスには「ヤリスクロス」が含まれ、またカローラは「カローラ」「カローラスポーツ」「カローラツーリング」「カローラクロス」など派生車種を合算したものであることから、この2車種が圧倒的な強さを見せています。

また印象的なのが、コンパクトSUV「トヨタ ライズ」の人気ぶりとその後。2023年に発覚したダイハツの認証不正問題により2023年以降は失速しますが、その直前まではSUVカテゴリーながら約12万台(2020年)、約8万台(2021年、2022年)と大人気となっており、2023年以降を見てもSUV単独でトップ10に入った車種はありません(2020年、2021年もSUV単独ではトヨタ ハリアーのみ)。登場当時からいかに人気だったかがよくわかります。
そして、最近注目される新型車が軒並みSUVであるなか、ミニバンも依然として高い人気となっていることも、データからわかってきます。トップ10には「アルファード」や「ノア」、「ヴォクシー」、「セレナ」といった定番のミニバンがランクインしており、根強い人気なのが伺えます。またこの5年の推移で注目なのが、コンパクトミニバンのジャンルの強さ。トヨタの「シエンタ」や「ルーミー」、ホンダの「フリード」などがしのぎを削り、「シエンタ」は2023年から3位に、「フリード」も2024年に5位に食い込んでいます。
一方の軽自動車は、ここ5年間でホンダの「N-BOX」の独走をスズキ「スペーシア」とダイハツ「タント」が追うという構図が続いています。この3車種にダイハツ「ムーヴ」とスズキ「ハスラー」「ワゴンR」、日産「ルークス」を加えた7台で販売台数の上位を争う状態がこの5年で続いている状況です。ダイハツ「ムーヴ」は2024年は大きく販売台数を落としていますが、今年満を持してフルモデルチェンジを果たしたことから、今年のランキングのどこまで上がってくるか注目です。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
ただ、N-BOXの販売台数の差は圧倒的で、しばらくは“N-BOX一強”の状態が続くと考えても過言ではないかもしれません。今後ゲームチャンジャーになる車種が登場するのか楽しみなところです。

人気車種上位の傾向が軽自動車にシフト?
ここまで普通乗用車と軽自動車の登録/販売台数ランキングを別々に見てきましたが、それではこれを合わせてランキングにするとどうなるでしょうか。普通乗用車と軽自動車でデータをまとめている団体が異なるため厳密にはデータの集計方法に若干の違いがある可能性がありますが、今回は単純比較をしてみることにしましょう。

普通乗用車と軽自動車の販売ランキングを合算してみると、2021年まで1位だったトヨタ ヤリスにかわり、2022年以降はホンダ N-BOXが首位を独走していることがわかります。2022年以降、全体で唯一年間20万台以上を売り上げているのも、ホンダ N-BOXだけ。2024年にはダイハツ スペーシアも2位に入っており、全体で見てもコストパフォーマンスに優れる軽自動車の人気車種が販売台数上位に食い込んできていることがわかります。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
2024年は上位5車種のうち3車種が軽自動車となっており、物価の高止まりが続くなか今後ランキングにどのような変化が生まれるのか注目です。
買取査定データから見る、“手放すクルマ”のトレンド
それでは、今度は買取査定の件数上位車種を見てみましょう。中古車販売店「ガリバー」で行っている全ての査定件数を集計した車種別買取査定件数を5年分まとめたところ、国産普通乗用車では「トヨタ プリウス」が5年連続でトップという結果になりました。2位は「日産 セレナ」でこちらも5年連続です。プリウス、セレナともに発売当初から大きく販売台数を伸ばした車種であることから、買い替えニーズも大きいものと推測されます。

一方で印象的なのが、2022年から「トヨタ アルファード」の買取査定が急速に増加していること。アルファードは近年リセールバリューが非常に高いことで注目されていることもあり、査定需要が伸びているものと考えられます。
そして、軽自動車の車種別買取査定件数については、こちらも「ホンダ N-BOX」が2023年に首位となり、大きく査定件数を伸ばしています。初代のN-BOXが登場したのは2011年。それから10年以上が経過したことから、買い替えニーズが年々高まっているのではないかと考えられます。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
新車販売でもN-BOXが年々販売台数を伸ばしていることからも、「N-BOXからN-BOX」という買い替えが進んでいることも考えられるでしょう。

一方で全体を見てみると、ホンダ N-BOX、ダイハツ タントとムーヴ、スズキ ワゴンRという上位4車種の顔ぶれは直近5年間変わりません。新車販売台数の上位にいるスズキ スペーシアがこのなかに入っていないのですが、2024年に5位にランクインしていることから今後査定件数が増えていくことも考えられます。これは軽ハイトワゴンに限った話ですが、買取査定時のクルマの経年数をまとめてみると「届出初年度から10年前後経過」が買取査定に出すひとつの目安になっていることが伺えます。逆に3年以内という早期に買取査定に出す件数は相対的に少なく、軽自動車の場合は「長く乗って手放す」というユーザーが多いといえるのではないでしょうか。

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【クルマ大好きライター】井口裕右
軽ハイトワゴンの場合、買取査定件数のボリュームゾーンが比較的わかりやすいことから、過去の新車販売の動向に注目してみると「これから先、中古車市場にどのようなクルマが増えていくか」が推測できるかもしれません。
まとめ
なお、リセバ総研が発行した「リセールバリュー白書2025」では、車種タイプ別の買取査定件数、ミニバン、SUV、軽ハイトワゴンなど人気カテゴリーの買取査定件数、走行距離や経年別から見た買取査定件数の傾向など、全国にあるガリバーの店頭で行われた買取査定データを元に、買取査定にまつわる様々なデータをご紹介しています。クルマの買い替えを検討している方や業界の動向を知りたい方はぜひダウンロードしてご覧ください。