自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! マツダ CX-80 試乗記〜3列シートの大型SUVは買いなのか?リセールバリューは?〜

マツダCX-80は「ラージ商品群」と呼ばれる後輪駆動用プラットフォームをベースとし、第1弾モデルとなったCX-60のホイールベースを伸ばして3列シートとしたSUVだ。ラージ商品群は、他にも海外向けのCX-70やCX-90がライナップされているが、先代にあたるCX-8が日本国内向けであったのに対し、CX-80はグローバルな販売展開が前提のモデルとなっている。また、マツダの「モノ造り革新」や「一括企画 」により、多くの新技術が搭載されたモデルでもある。
そんなマツダCX-80を日本国内市場でのライバル車たちと比較しつつ、試乗記、リセールバリューも含め、その魅力を徹底レポートする。

【自動車のプロ】大岡智彦

自動車情報メディア「CORISM」編集長

自動車情報専門のWebサイト「CORISM」編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、カスタムカーまで幅広くこなす。クルマは予防安全性能や環境性性能を重視しながらも、走る楽しさも重要。趣味は、コスパの高い中古車探しと、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

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マツダのラージ商品群への信頼を背負うCX-80

自動車の世界では、新型車の開発やフルモデルチェンジが行われた場合、既存の技術をベースに改良が加えられたものと、新たに開発された技術が組み合わされることが多い。

例えば、新開発のプラットフォームを投入したのならば、動力系や駆動系は既存の技術を磨いたものが継承される。
あるいは、プラットフォームは継承して改良にとどまるが、パワートレインは新開発した、といったパターンを繰り返すことがほとんど。

その理由は、開発コストの低減や投資の回収、熟成による信頼性の確保などが上げられる。これはクルマ以外の工業製品にもよく見られるサイクルだ。

信頼を回復するため技術改良を重ねて登場したCX-80

ところが、マツダのラージ商品群は、自動車を構成する重要な基幹部分、プラットフォームやパワートレインのほとんどを新開発して実装したという、かなり異例の手法をとっている。プラットフォームを一気に共通化するメリットがあるとはいえ、なかなか挑戦的な取り組みだ。

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    しかし、マツダのこうしたチャレンジは裏目に出てしまった・・・ラージ商品群の品質問題が表面化したのだ。

ラージ商品群はその異例な開発手法のためか、パワートレインやミッションを中心に不具合が頻発することとなり、CX-60では何度もリコールが発生。不具合をチェックするサービスキャンペーンも行われた。

この品質問題の影響で、2022年頃に発売される予定であったCX-80も同じパワートレインを搭載しているため、投入を延期。その後は徹底的に改良が行われ、CX-60の発売から遅れること約2年、2024年10月にようやくCX-80の販売となった。

マツダのデザイン哲学である「魂動デザイン」の文法に則ったロングボディのSUV

CX-80のボディサイズは、全長4990×全幅1890×全高1710mmと、国内SUVの中では大型のサイズとなる。

さらに、ラグジュアリーな3列シートSUVとしての室内空間を確保するために、ホイールベースは3120mmととても長いのが特徴。そのため、ロングノーズとロングルーフの組み合わせとなり、なかなか優雅なシルエットとなっている。

CX-80のデザインは、マツダのデザイン哲学である「魂動デザイン」がベース。フロントフェイスのデザインは、CX-60とほぼ共通のため、単なるCX-60のロングホイールベース版とならないようにこだわった

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    ボディサイドには、あえて分かりやすいキャラクターラインを入れず、面の張りや微妙な映り込みを意識した。

    こうした手法は、マツダデザインの「引き算の美学」と呼ばれる考え方によるものだ。

CX-80のデザインコンセプトである「Graceful Toughness」通り、上質さや豊かさ、SUVらしいタフネスさなどをうまく体現している。

マツダ CX-80の競合車種とボディサイズ/価格/燃費を比較する

それでは、マツダ CX−80と競合するであろう車種とボディサイズや価格、燃費性能を比較してみよう。

3列シートで7人乗り仕様が設定されているSUVとしては、日産 エクストレイル三菱 アウトランダー PHEVがライバルとなるだろう。

CX-80/エクストレイル/アウトランダーPHEVのボディサイズを比較

まずは各車のボディサイズを比較してみよう。3列シート仕様のSUVの中でも、CX-80のボディサイズは際立って大きい。

メーカー マツダ 三菱 日産
車種 CX-80 アウトランダー
PHEV
エクストレイル
全長 4,990mm 4,720mm 4,660mm
全幅 1,890mm 1,860mm 1,840mm
全高 1,710mm 1,750mm 1,720mm
ホイールベース 3,120mm 2,705mm 2,705mm
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    同じ7人乗り3列シートSUVといっても、ボディサイズはCX-80が1クラス上といった印象。

とくに全長に関しては3車種の中でもCX-80が大幅に長い。

室内スペースに直結するホイールベースも、アウトランダーPHEVとエクストレイルは共通のプラットフォームを使うため同じ2,705mmなのだが、CX-80のホイールベースは3,120mmとなっており、なんと415mmも長い。このことからも、室内スペースはCX-80の方が広いであろうことが分かる。

CX-80/エクストレイル/アウトランダーPHEVの新車価格帯を比較する

次に新車価格帯を比較してみよう。3列シートに限定して比較すると、価格の上限はアウトランダーPHEVを上回り、下限はエクストレイルを下回っている。

メーカー マツダ 三菱 日産
車種 CX-80 アウトランダーPHEV エクストレイル
シート すべて3列 3列に限定して比較 3列に限定して比較
定員 6名/7名 7名 7名
新車価格帯 3,943,500~7,122,500円 5,970,800~6,685,800円 4,271,300~4,972,000円
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    CX-80は、3.3Lディーゼルターボ、3.3Lディーゼルターボ+マイルドハイブリッド、2.5L PHEVと3つのパワートレインをもち、廉価グレードはFR(後輪駆動)の2WDとなるため、新車価格はかなり幅広い点が特徴。

アウトランダーPHEVは、当然PHEVのみのラインナップで全車電動4WDとなり、新車価格帯はやや高めのレンジ。

エクストレイルは全車e-POWERと呼ばれるハイブリッドシステムだが、3列シート車に絞ると全車が電動4WDを搭載した「e-4ORCE」となるため、エントリーグレードの新車価格も高くなってしまう。また、最上級グレードにはPHEVの設定がなく、3列シートに絞るとグレードの価格差も小さいため、新車価格帯の幅は狭くなっている。

CX-80の新車価格は、3列シートに限定にして比較した場合、価格帯が大きく異なる同士のライバル2車種を丸呑みするような構図になる。

CX-80/エクストレイル/アウトランダーPHEVの燃費とEV走行時の航続距離を比較する

そして、燃料費も高騰する昨今で気になるのは、燃費やEV走行時の航続距離の比較。

それぞれ組み合わせるエンジンや駆動方式、定員、グレードによって細かく仕様が分かれるため、4WD車/2WD車/PHEVの3つに分け、7人乗を中心に比較してみた。ただし、エクストレイルのFF(前輪駆動)車は5人乗りのみの設定となる。

CX-80/エクストレイルの4WD車同士で燃費(WLTCモード)を比較

メーカー マツダ マツダ 日産
車種 CX-80 CX-80 エクストレイル
グレード XD Exclusive Sports X e-4ORCE
※3列シート車
定員 7名 7名 7名
エンジン 3.3Lディーゼルターボ 3.3Lディーゼルターボ 1.5Lガソリン
ハイブリッド なし マイルドハイブリッド e-POWER
駆動方式 4WD 4WD 4WD
燃費 ※注1 16.9km/L 19.1km/L 18.3km/L
※注1:WLTCモード
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    驚きなのは、CX-80が搭載するマイルドハイブリッドの燃費。
    車体はエクストレイルよりも大きく重いにもかかわらず、マイルドハイブリッドでありながらe-POWERのエクストレイルを上回る優れた燃費値となった。

さらに、CX-80のハイブリッドはディーゼルエンジンなので使用する燃料はもちろん軽油

レギュラーガソリンに対し、軽油は20円/L前後も安価な状況であることを考えると、「燃料費」からみた走行距離性能という面では大きな差になる。

CX-80/エクストレイルの2WD車同士で燃費(WLTCモード)を比較

メーカー マツダ 日産
車種 CX-80 エクストレイル
グレード XD S / X / G
定員 7名 5名
※FFは2列シート車のみ
エンジン 3.3Lディーゼルターボ 1.5Lガソリン
ハイブリッド なし e-POWER
駆動方式 FR(後輪駆動) FF(前輪駆動)
燃費 ※注1 18.3km/L 19.7km/L
※注1:WLTCモード

燃費性能に関しては、各車それぞれ異なるパワートレインを採用していることや、ボディサイズや装備による重量の差など、異なる部分が多いため単純に同列の比較はできないのだが・・・

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    一方で、CX-80は3.3Lエンジンのため、自動車税は58,000円程度と高額になる。

    一方のエクストレイルは1.5Lエンジンなので、30,500円程度。
    自動車税はエクストレイルが大幅に安価。そのため、トータルの走行距離によって燃料経済性の評価が異なってくるだろう。

CX-80 PHEV/アウトランダーPHEVで燃費(WLTCモード)と電力走行距離を比較(ともに4WD車のみ)

メーカー マツダ 三菱
車種 CX-80 アウトランダー
PHEV
グレード L Package G / P
定員 7名 7名
エンジン 2.5Lガソリン 2.4Lガソリン
ハイブリッド プラグインハイブリッド プラグインハイブリッド
駆動方式 4WD(後輪駆動) 4WD
燃費 ※注1 12.9km/L 17.2km/L
電力走行距離 ※注2 67km 102km
※注1:WLTCモード / ※注2:充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ)WLTCモード

PHEV同士の比較でみると、マツダ自慢のディーゼルエンジンではなくガソリンエンジンとなることもあってか、CX-80 PHEVの燃費性能(WLTCモード)はアウトランダーPHEVに大きく差をつけられている。

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    CX-80 PHEVは、EV走行時の航続距離が67kmと短めなのが残念。

    最新のPHEVなら100㎞程度は走って欲しい。

マツダ CX-80の購入でよく選ばれるエンジンや人気のグレードとボディカラー

それでは、マツダ CX-80の新車購入時にどのエンジンが選ばれているのか、人気のグレードやボディカラーはなにか、「売れ筋」を見ていこう。

CX-80購入時に選ばれている人気のエンジン

*発売日から2027年5月15日までのデータ。マツダ調べ

1位 3.3Lディーゼルターボ(SKYACTIV-D) 構成比:58.8%
2位 3.3Lディーゼルターボ+マイルドハイブリッド(e-SKYACTIV D) 構成比:38.3%
3位 2.5Lプラグインハイブリッド(e-SKYACTIV PHEV) 構成比:2.8%

CX-80のエンジンは、3.3Lディーゼルターボエンジンが最も売れていて60%弱を占めている。

このエンジンを搭載するグレードは、比較的安価な新車価格帯であるということも、多く選ばれている理由のひとつだろう。

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    驚きなのが、2.5Lプラグインハイブリッド。わずか2.8%しか売れていない。

    最上級グレードの新車価格は、700万円オーバーという高価な価格が影響していると思われる。

CX-80購入時に選ばれている人気のグレード

1位 XD L Package 構成比:30.0%
2位 XD Exclusive Mode 構成比:20.8%
3位 XD-HYBRID Premium Sports 構成比:15.8%
4位 XD-HYBRID Exclusive Sports 構成比:15.4%
5位 XD S Package 構成比:6.2%
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    人気エンジンである3.3Lディーゼルターボエンジン搭載グレードが上位を占めた。

    ちなみに、上位4位までがレザーシートを装備した上級グレードで、新車価格はほぼ500万円以上のモデルとなっている。

    やはりラグジュアリーSUVらしいグレードが売れているようだ。

また、3位と4位はマイルドハイブリッドシステムを搭載した上級グレード。

3位のプレミアムスポーツグレードは、タンカラーのレザーシートを採用。4位のエクスクルーシブスポーツは、ブラックレザーシート仕様となってる。

CX-80購入時に選ばれている人気のボディカラー

1位 ジェットブラックマイカ 構成比:21.3%
2位 ロジウムホワイトプレミアムメタリック 構成比:20.1%
3位 アーティザンレッドプレミアムメタリック 構成比:17.9%
4位 メルティングカッパーメタリック 構成比:14.8%
5位 マシーングレープレミアムメタリック 構成比:10.2%

CX-80はラグジュアリー指向のSUVということもあってか、70%弱もモノトーン系のボディカラーが選ばれている。

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    ラグジュアリー指向のSUVの場合、レッド系のボディカラーが人気の上位に入る機会は少ないのだが、こだわりのアーティザンレッドプレミアムメタリックが3位とよく売れているのが、マツダ車らしいところ。

    新たなボディカラーの提案でもあるメルティングカッパーメタリックも好調だ。

マツダ CX-80試乗記〜改善された乗り心地と軽快なハンドリング〜

それではお待ちかねの試乗記といこう。まずはインテリアのデザインや使い勝手をチェックしてみる。

CX-80のインパネデザインは、CX-60とほぼ共通。サイドルーバーがドアトリムへ喰い込む造形が採用され、よりワイドな空間とした。
また、極太のコンソールは、トランスミッションと縦置きエンジンの存在を感じさせるデザインだ。

上質で快適な室内空間はクラストップレベル

フロントシートはやや大型で、ゆったりとした座り心地が魅力。特に上級グレードになると、かなり上質な質感となる。
洗練された空間は、このクラストップレベルだ。

2列目シートは、グレードにより2名乗車のキャプテンシートか3人乗車のベンチシートとなる。主に廉価グレード系が3人乗りのベンチシート。
上級グレードは、2人乗車のキャプテンシートとなる。

ホイールベースが3120mmもあるので、2列目シートの足元は余裕がある。キャプテンシートであれば、横方向のスペースも余裕があるので、リラックスした移動が可能だ。
しかも、多くのグレードにシートベンチレーションが装備されているので、夏場の快適性は大幅にアップする。

3列目シートは、身長170㎝の乗員が快適に移動できるように設計されたという。裏を返せば、170㎝以上の乗員は少々窮屈ということになるだろう。

さすがに、MクラスやLクラスミニバン並みに広いとはいえず、とくに頭上周辺スペースにタイトさを感じた。3列目シートは、子供や小柄な女性なら快適だろう。

  • CX-80の荷室容量は、フロア下の容量を含み3列目シート格納時で687L。3列目シート使用時で258Lとなっている。

    荷室そのものはそれほど広いとはいえない。乗員スペース重視といった仕様といえる。

CX-80は、全長4990mm、ホイールベース3120mmという大柄のボディサイズをもつ。これだけ長いホイールベースだと、6mを超える最小回転半径になるケースが多い。

しかし、狭い駐車場や道が多い日本でも扱いやすくするために、CX-80の最小回転半径は5.8mと小さめに設定。360°ビューモニターなどもあり、ボディサイズの割には、運転しやすいと感じるだろう。

3.3Lディーゼルターボエンジン+マイルドハイブリッドが秀逸!CX-80にはベストなエンジン!

続いてはドライビング性能を確認してみよう。まず試乗したのは、「48Vマイルドハイブリッドシステム」を搭載したXDハイブリッド。3.3L直6ディーゼルターボエンジン(254㎰&550Nm)に、モーター(16.3㎰&153Nm)が組み合わされている。

マツダのラージ商品群は、独自の「一括企画」や「モノ造り革新」によって、後輪駆動用プラットフォームに48Vマイルドハイブリッドシステム、トルコンレス8速AT、プラグインハイブリッドシステムといった新技術を一気に大量投入している。国内で投入された第1弾となるCX-60を皮切りに、第4弾となるCX-80も同様の構造だ。

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    このエンジンが、なかなか秀逸。

    マイルドハイブリッド無しのディーゼルエンジンでも、3.3Lの排気量で低回転域から大トルクを発揮できる点がウリ。

とても細かい部分で言うと、3.3Lディーゼルターボエンジンはアクセルオフでエンジン回転数が下がってから再びアクセルをオンにしたときに、ほんのわずかだが過給遅れ、いわゆるターボラグがある。これはターボエンジンである以上は仕方のないことだ。

だが、48Vのマイルドハイブリッドシステムをプラスしてモーターのトルクが加わり、わずかに感じたターボラグさえも消し去っている。

その結果、アクセルオフからのアクセルオンといった、日常頻繁にあるシーンで抜群のアクセルレスポンス得ることができる。とくに、山道などを気持ちよく走りたいシーンなどでは、クルマとの一体感が増してくる。

もちろん、このマイルドハイブリッドシステムは燃費にも大きく貢献している。マイルドハイブリッドシステム無しのモデルより、14%前後の燃費向上を実現した。

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    優れたアクセルレスポンスと力強さ、そして卓越した低燃費性能。

    CX-80には、3.3Lディーゼルターボ+マイルドハイブリッド(e-SKYACTIV D)がベストなエンジン!

問題を解決したトルコンレス8速AT

ところで、CX-80に搭載されているミッションは、トルクコンバーターレスの8速AT

トルクコンバーターは、主にスムースな発進や変速にかかわる重要メカニズムのひとつだが、動力伝達の遅れなどのデメリットもあった。
ミッションの重要な役割を「素早く」「滑らかに」「無駄なく」路面に伝えることであると定義しているマツダは、それらを軽量でコンパクトなミッションで実現することを目指し、特殊なクラッチを用いてトルクコンバーターをなくすという手法を選択している。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ただ、世の中、そんな想定通りに上手くいかない・・・

    同じプラットフォームのCX-60に搭載された8速ATは、低速域でストップ&ゴーを繰り返すシーンではギクシャクして、シフトショックも気になった。

しかし、こうした問題点はCX-60でのリコール対応を含め、大幅に改善されていた。渋滞路の微低速では、たまにギクシャクしることがあったが、不満に感じるほどではない。

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    通常走行では、シフトアップやシフトダウンを感じさせないスムースさが際立ち、アクセル操作に対するダイレクト感ある加速が気持ち良かった!

    このフィーリングは、他のエンジンでも同様。

乗り心地も向上!デカいのに軽快なハンドリングは秀逸!

マツダのラージ商品群の第1弾となったCX-60の乗り心地は、強烈なリヤサスペンションの突き上げがあったり、揺れが収まらなかったりと、芳しくない評価となっていた。

CX-80ではリヤのスタビライザーを外し、細かい改良や再セッティングが施され、乗り心地は大幅に改善されている。

とはいえ、CX-80は走りにこだわるマツダ車ゆえ、やや硬めの乗り心地。235/50R20という大径タイヤの影響もあってか、大きめの凸凹を低速域で通過するとゴトゴトとしたショックが伝わってくる。だが、少し速度が上がるにつれて足回りのしなやかさも増し、グッと快適性がアップする。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    CX-80はやや硬めのサスペンション設定で、ハンドリングはなかなかスポーティ。

    タイトなカーブが続く山道では、しっかりと前輪に荷重移動し、ステアリングを操作すると長いノーズがスッとイン側に向きを変える。

デビュー直後のCX-60ほどの切れ味ではないが、とても2.1トンという重量級ボディとは思えないほどの軽快感があった。

また、リヤスタビライザーを外したことが影響してか、速度域の高いカーブではやや車体は大きめに傾くものの、CX-80は車体が傾くスピード(ロールスピード)が緩やかなので、怖さを感じることはないだろう。

しかし、せっかく高性能なダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションを装備するなど、サスペンションにこだわったのなら、車体を大きく動かして乗り心地を確保するという手法は微妙。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    個人的な好みを加えると、リヤスタビライザーを外すという選択は、やり過ぎ。

    サスペンションにしっかりと仕事をさせて、フラットライドな姿勢を維持したハンドリングの方が、より運転を楽しめるはず。

ラグジュアリーSUVらしい乗り心地のためというのであれば、電子制御サスペンションという選択もあったであろうが、マツダのエンジニアに聞いてみると「電子制御サスペンションも選択肢にあったが、まずはメカでの制御を極めてから。」という判断になったらしい。

ラグジュアリーSUVらしさを最も感じさせる「PHEV」

次に試乗したのは、CX-80 PHEV。

2.5LガソリンエンジンをベースとしたPHEVで、高出力モーターを採用したこともあり、システム出力とシステムトルクは、327㎰&500Nmと非常にパワフルな仕様となっている。

システムは、エンジンとミッションの間にモーターを設置した1モーター2クラッチ式。通常は、充電された電力を使用しモーターで走行し、モーター出力以上の出力が必要な場合、エンジンからの出力が加わる。

搭載されたリチウムイオンバッテリーの容量は17.8kWh。充電電力使用時走行距離(EV航続距離)は、やや短めの67㎞(WLTCモード)。ハイブリッド燃費は、12.9㎞/L(WLTCモード)となっている。

モータードライブ車ゆえにアクセルレスポンにも優れ、スムースに加速を始める。高速道路含め、エンジンの出力が必要になるシーンはほとんどなくモーターのみでの走行が可能だった。

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    あえてエンジンの出力が加わるようにアクセルをグッと踏み込んでみると、500Nmという大トルクが約2.2トンの重量級ボディを軽々と、かつ豪快に加速させる。

    エンジンは始動時の静粛性も高く、あくまで黒子に徹している印象だ。

CX-80 PHEVは、一般的な走行時にはモーターのみで走行するので、静粛性はもちろんCX-80シリーズで一番。ラグジュアリーSUVらしい静粛性を重視するなら、PHEVがお勧めだ。

シリーズ中で最も乗り心地がよいのも「PHEV」

CX-80 PHEVの乗り心地は、車重が最も重いこともあってシリーズで最もソフトな乗り心地ではあるが、他のSUVと相対的に比較すると少し硬め。

普通に乗るのならこれで十分満足できるレベルにあるが、走りにこだわるマツダ車となると少々評価が異なってくる。

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    高速道路など、高い速度域で大きなうねりのある路面を通過すると、車体は大きく上下に揺すられる。

    そして、約2.2トンもある「PHEV」の車重が影響し、この上下動を収める動きが良くない。

この上下動の収束が、他のグレードのようにもう少し早く収まれば、さらに快適で高速移動が楽なSUVになるだろう。

一方で、カーブでの安定感はシリーズトップといえる。
PHEVゆえに大容量で重いリチウムイオンバッテリーを床下に積み、車体の重心高が下がることでコーナリングの安定感は抜群。スポーティな走りが楽しめる。

マツダ CX-80のおすすめグレードは?

マツダ CX-80のグレード選びは、まずはエンジンの選択から始めたい。なるべく安価にというのであれば、3.3Lディーゼルターボを搭載したXD系グレードということになる。

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    イチオシなのは、パワフルさと低燃費を両立した「3.3Lディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッド」のXD ハイブリッド系のグレード。

    誰にでもおすすめできる、バランスのよいエンジンだ。

静粛性を重視したい人、日常生活で短距離移動が多い人で、予算に余裕があるならばPHEV系をおすすめしたい。
充電電力使用時走行距離(EV航続距離)は、67㎞(WLTCモード)あるので、日々の送迎や買い物、通勤などであればガソリンを使わない生活が可能となる。

乗車定員は、CX-80はラグジュアリーSUVであることを考えると、2列目シートがキャプテンシートになる「6人乗り」がおすすめ
その上で、ラグジュアリー感を満喫したいのであれば、レザーシートを標準装備したLパッケージ以上のグレードがよい。

さらに、上質感を求めるのであれば、XDハイブリッドかPHEVのモダン系グレードがおすすめだ。
このモダン系グレードは、ピュアホワイトのレザーシートを採用。なんとも贅沢な空間になっていて、とても満足度の高い仕様になっている。

そして、人気が高いのがスポーツ系グレード。
エクスクルーシブスポーツはブラックレザーシート、プレミアムスポーツ系はタンカラーのレザーシートとなる。モダン系と比べると華やかさは無いものの、無難な選択といえるだろう。

マツダ CX-80のリセールバリュー予想は?

CX-80は2024年10月に発売されたばかりの新型車(2025年5月時点)なので、中古車の流通量が極めて少ない。そのため、一定の傾向を導き出すのは難しい状況だ。

ただ過去の傾向からも、中古車市場で高リセールバリューになるのは最上級グレードであるケースが多い。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    PHEVを除き、実質的な最上級グレードである「XD-HYBRID Premium Sports」が中古車で高リセバとなる可能性が高い。

    その次は「XD-HYBRID Exclusive Sports」と予想する。

しかも、この2つのグレードは人気のスポーツ系。日本の中古車マーケットは、スポーツ系グレードの方が高いリセールバリューになるケースが多い。

だが、悩ましいのがボディカラー。
ボディカラーの選択を誤ると、人気の最上級グレードでもリセバが数十万円単位で変動することも珍しくない。そのため、高いリセールバリューを期待したい場合は、ボディカラー選びにも注意したい。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    無難な色選びなら、たはり白や黒のモノトーン系。

CX-80の新車人気ボディカラーは、ベスト5中3色がモノトーン系。
そのため、新車でのナンバー1人気からであるジェットブラックマイカ、2位のロジウムホワイトプレミアムメタリックであれば、高リセバを大きく外すことはないだろう。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    新車人気3位のアーティザンレッドプレミアムメタリックは、リセバ予想が難しい。

レッド系カラーは、中古車市場でリセールバリューが高くなるのか低くなるのか、予想がしにくい。
他車のラグジュアリーSUVだとレッド系カラーは敬遠されることが多く、低リセバになるケースが多いからだ。

しかし、レッド系カラーはマツダ車を象徴するカラーでもあり、マツダファンからは絶大な人気を誇っている。

ともかく、中古車市場での評価がどちらに転ぶか分からないボディカラーではあるので、リセールバリュー重視ならリスク回避のために選択肢から外す方が無難だろう。

マツダCX-80新車価格

■3.3Lディーゼルターボエンジン

車種 XD XD S Package XD L Package XD Exclusive Mode
2WD(7人乗り) 3,943,500円 4,383,500円 - 5,071,000円
4WD(7人乗り) 4,180,000円 4,620,000円 - 5,307,500円
2WD(6人乗り) - - 4,779,500円 5,214,000円
4WD(6人乗り) - - 5,016,000円 5,450,500円

■3.3Lディーゼルターボマイルドハイブリッド

車種 XD HYBRID Exclusive Sports XD HYBRID Exclusive Modern XD HYBRID Premium Sports XD HYBRID Premium Modern
4WD(7人乗り) 5,824,500円 - - -
4WD(6人乗り) 5,967,500円 5,967,500円 6,325,000円 6,325,000円

■2.5LガソリンPHEV

車種 PHEV L Package PHEV Premium Sports PHEV Premium Modern
4WD(6人乗り) 6,391,000円 7,122,500円 7,122,500円

マツダ CX-80 スペック一覧

代表グレード CX-80 PHEV Premium Modern
ボディサイズ 全長4,990×全幅1,890×全高1,710mm
ホイールベース 3,120mm
車両重量 2,210kg
駆動方式 4WD
最小回転半径 5.8m
エンジン型式 PY-VPH型 直4 DOHC 16バルブ
排気量 2,488㏄
エンジン最高出力 1,88PS(138kW)/6,000rpm
エンジン最大トルク 250N・m(25.5kgf・m)/4,000rpm
モーター型式 MS型
モーター最高出力 175PS(129kW)/5,500rpm
モーター最大トルク 270N・m(27.5kgf・m)/400rpm
WLTCモード燃費 12.9㎞/L
充電電力使用時走行距離 67㎞
動力用主電池種類 リチウムイオン電池
動力用主電池総電力量 17.8kWh
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーンス/マルチリンク
タイヤサイズ前後 235/50R20