高齢ドライバーと運転免許返納を考える〜年齢で線を引かない交通安全の実現〜

運転免許証の更新期間満了日における年齢が75歳以上になる場合、満了する日までの6カ月以内に認知機能検査などを受けなければなりません。検査に合格しているドライバーから運転免許や運転する機会を奪うことの弊害にも目を向ける必要があると考えます。

モータージャーナリスト
年齢で区切って運転免許返納をすることの是非
近年、高齢者の重大事故報道をきっかけに「一定の年齢になったら運転免許を返納すべき」といった声が高まっています。
しかし年齢だけで一律に線を引くことは、果たして正しいのでしょうか。
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医師に聞いたところ、運転をやめることで認知症が進んでしまうケースがあるそうです。
自分の力で行きたい所に行けないと、精神的に落ち込んでしまいます。
移動の自由を奪われたことで、「社会から切り離された」と感じ、数か月でうつ症状や認知症が進行してしまうリスクもあるといいます。
もちろん、月に1回は車を擦ったり、凹ませたりしていたら運転をやめたほうがいいでしょう。次に事故を起こさずに、運転を継続するための簡易的なチェック方法をご紹介します。
運転継続に必要なチェック
運転を継続しても問題ないかどうかを簡単にチェックする方法をご紹介します。ドライバーはもちろん、不安を感じているご家族も活用いただける内容です。
車体外観をチェック
フェンダーやバンパーの擦ったあとはありませんか?洗車時にチェックして記録すると変化に気づきやすくなります。傷や凹みを指摘した際に本人に自覚がない場合は要注意です。
視力や視野をチェック
視力を定期的にチェックするだけではなく、自覚しにくい視野欠損も検査が不可欠です。緑内障などが原因で視野欠損が進むと運転が難しくなってしまいます。医師に相談しながら予防と治療に努めましょう。
運転の滑らかさ
ブレーキをかけた際にガクンガクンとなったり、加速時の急発進が増えたりしたら、反射神経と筋力の低下サインです。急ハンドルも要注意の傾向の一つで、判断力が衰えている可能性があります。同乗者の方が気づきやすいので、指摘することが必要です。
車両感覚をつかめているか
右ハンドルの場合、左前輪がどこを走っているかをつかめていますか?意識的に把握する練習をすると、狭路でも安全に走れるようになります。
例えば道路のデコボコや石ころ、マンホールがあったら、踏んで走ったり、またいで走ったりするとだんだん感覚がつかめてきます。理想としては4つのタイヤがどこを走っているかを把握することです。道路に物が落ちている場合に踏まずに避けられるようになるレベルを目指しましょう。
運転技術を向上させるために
年齢を経ても運転技術を向上させることは可能です。安全運転のために、正しいドライビングポジションを把握しましょう。そのためにシートの前後スライド、高さ、リクライニングの角度、ハンドルの位置を調整しましょう。
実は、運転している人の多くが遠すぎる傾向にあります。お尻の下に隙間が空かないように深く座り、アイポイントを高めに合わせます。
次にフットレストを思いっきり踏ん張っても膝が曲がるように調整します。
ハンドルの9時と3時の位置を握って、シートバックに背中をつけ、そのまま右手を11時、または左手を1時に置いても肘が少し曲がった状態になるようにします。
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【自動車のプロ】菰田潔
つまり、肩から背中、腰、お尻、大腿部をシートに密着したまま、すべての運転操作ができることがポイントです。
遠いままのポジションで運転をしていると、急ブレーキが必要な場面で強く踏むことができずにぶつかってしまいます。また膝が伸びた状態だと事故の衝撃がダイレクトに腰や大腿部にくるため、骨折する率が約30%アップするというデータもあります。思いっきり踏ん張っても膝が曲がるポジションに調整しましょう。
スポーツと同じで運転技術を上げたいと思ったらフォームが大事です。正しいポジションを手に入れないと、いつまで経っても車両感覚を掴むこともできません。
線引きから伴走へ
事故ゼロ社会を目指すなら、運転の可否を年齢で一律に判断するのではなく、能力を客観評価しながら伴走する仕組みが必要です。家族や地域、医療、行政が連携し、移動手段確保の観点も考慮することで、高齢ドライバーの尊厳と安全は両立できると私は考えます。運転免許の返納や運転をやめることを検討する場合も、頭ごなしに進めるのではなく、よく話し合いましょう。