中古車相場のプロに聞く! 【最新中古車市況(6)】2025年第1四半期の振り返りと初夏の展望:上半期の中古車流通市場はどうなる!?

2025年も第1四半期が終わり、ゴールデンウィークに突入する上半期の中間地点。これから中古車流通の市場はどのように変動していくのか、気になっている方も多いのではないだろうか。
2025年の最初に迎える中古車市場繁忙期の市況は、昨年末に予想した通りだったのか?引き続き、中古車仕入れのプロに2025年上半期の展望や、注目している車種について聞いてみた。

中古車マーチャンダイジング部門管理職

リセールバリュー総合研究所 管理運営者 兼 アナリスト
目次
2025年1~3月の中古車市場の相場は予想通り下降傾向
※当記事のインタビューは2025年3月中旬に行われています。
※当記事の内容は、各個人の経験に基づく主観的な感想や予想を中心とした非公式の見解です。
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リセバ総研所長
前回の「2025年予想」に続き、今年の中古車流通市場の動きについてお聞きしていきます。
早速ですが、まず2025年3月までの繁忙期※を振り返ってみて、感想を聞かせてください。
※例年、年初の1〜3月は、自動車業界の繁忙期に当たる。
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
市場の動きが鈍かった繁忙期になったかなという感想です。
物価上昇の影響もあり、全体的な消費意欲の低下が自動車業界にも影響したのではないか?と考えています。
年度替わりの時期は、新生活や企業の決算の影響でクルマの流通量が多く、中古車も1〜2月に売れる傾向にあります。ですが、人気のミニバンもあまり反響がありませんでした。
個人的にファミリー層の購買意欲が、今年はやや鈍いように感じています。
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リセバ総研所長
以前予測されていた「ミニバン市場が下落するのではないか?」という点は、予想通りになった感触でしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
はい、予想した通りの感触です。
前回の予想をリセールバリューのトレンドグラフで結果を確認する
リセバ総研が月次で更新している、「ミニバン」の査定件数と平均売却予想額のグラフ(2025年4月更新分)。ミニバンのリセールバリューは需要を反映しており、査定件数は増えているが平均売却予想額は下降している。(車種と年式ごとに知りたい方は、リセバ総研のトップページで車種を選択してご覧いただきたい。)
ちなみに2025年の予想を聞いた前回「最新中古車市況(5)」のインタビュー取材が行われたのは、平均売却予想額が上昇している12月中旬である。〝OKB〟の個人的な予想ではあるが、的中していた事がわかる。


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リセバ総研所長
特に動きが鈍かったと感じた車種はありますか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
中古車市場ではアルファードやヴェルファイアといった大型ミニバンの相場が下落しました。
セレナやヴォクシーといった販売の主流となっているミニバンの車種も動きが鈍っていましたが、特にLサイズのミニバンといわれる車種の下落が目立った印象です。

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リセバ総研所長
逆に、動きが好調だったミニバンはありますか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
うーん、特にないのではないでしょうか・・・トヨタのヴォクシーやノアは輸出にも支えられていた印象ですが。
ミニバンを検討するお客様の層は、アルファードのような高価で維持費のかかる車種より、ノア/ヴォクシーなどをお選びになる傾向に感じました。
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リセバ総研所長
根強い人気のある、ステップワゴンやセレナのようなミニバンの動向はいかがでしたか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
こちらの動きもやや鈍かったです。
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リセバ総研所長
物価の上昇や消費意欲の低下と連動して、お客様が価格的に吟味されているような印象ですか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
そう感じますね。
あとは、メーカー各社の新車の納車が、昨年と比べて早まっているという影響もあると思います。
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リセバ総研所長
中古車相場のトレンドが下がり基調のでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
相場は下がってきていると私は感じています。
表現が難しいですが、店頭で相場が下がっているとは感じにくいものの、トレンド的には下落傾向に向かっていると考えています。
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リセバ総研所長
では、成長が続いているSUVの中古車市況はいかがでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
SUVも全体的に動きが鈍かった印象です。

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リセバ総研所長
ミニバン需要では価格のレンジが下がったとのお話ですが、低価格帯のSUVも動きは鈍かったのでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
いえ、価格帯の低いSUVの動きは良かった印象です。市場全体を牽引してくれたと言えます。
SUVというよりも、軽自動車やコンパクトカーのような比較的価格の低い車種の方が動きは良かったですね。
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リセバ総研所長
どのあたりの価格帯のものがよく動いたのでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
だいたいですが、150万円以下の価格帯の需要が大きかった印象です。少し年式の古いものが中心ですね。
軽自動車は好調でスライドドアではない車種の需要が増加
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リセバ総研所長
小売で低価格帯の車種がよく動いたということですが、中古車の仕入れの要望が高まったり、仕入れの数が増えたりした車種はありますか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
軽自動車ですね。

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リセバ総研所長
やはり軽自動車ですか。特に目立ったのはどの車種でしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
新車でも人気のあるN-WGNのようなスライドドアではないタイプの軽自動車です。維持費の安い軽自動車の需要が目立ちました。
いわゆる“足グルマ”と呼ばれるようなタイプの車種で、一家で1人1台づつクルマを所有するような地域でも根強い人気がありますね。
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リセバ総研所長
スズキのアルトやダイハツのミライースなどでしょうか?
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はい、あとワゴンRもですね。
このあたりの価格帯であれば、メーカーによる需要の違いはあまり感じませんでした。
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リセバ総研所長
軽自動車の需要が高かったといっても、ハイトワゴン※が中心だったわけではなかったのですね。
※ホンダ N-BOX、スズキ スペーシア、ダイハツ タントなど、車高が高く、スライドドアを装備した車種。
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
むしろハイトワゴンはそれほど動きの活発さはありませんでした。
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リセバ総研所長
価格的な側面で動きが鈍ったのでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
推測ですが、ハイトワゴンを購入するお客様の層は新車を購入する層と近いからではないか?と考えています。ですから、新車を買うか、あるいは「登録済み未使用車※」やそれに近い中古車かの選択になっているのではないでしょうか。
価格的に有利であればお客様も中古車もお選びになりますが、中古車市場での現在の軽ハイトワゴンの価格は、新車を購入するのとあまり差を感じていただけない状況であるとも思えます。
スライドドアではない軽自動車の方が、新車購入時の金額との差分を実感できますし、需要も大きいのではないでしょうか。
※登録済未使用車とは、初度登録された車両で、かつ使用または運行に供されていない中古車と指します。
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リセバ総研所長
スライドドアではないタイプの軽自動車は今後も縮小傾向なのかな?と個人的に思い込んでいたのですが、やはり需要は根強いんですね。
普通の4ドアタイプの軽自動車の動きが活発だったというのは意外でした。
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
はい、根強い需要がありますね〜
日産で言えば、「デイズルークス」(現行型は「ルークス」)ではなく「デイズ」の方なんです。2025年に入ってからは特にその傾向が強まったという印象です。
150万円以下の車種に需要がシフト
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リセバ総研所長
話を戻しまして、この繁忙期は150万円以下の中古車の需要が強かったというご感想ですが、支払総額でいうとどのくらいの価格帯が中心でしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
感触としては100万円台の前後、といったところですね。
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リセバ総研所長
ここで一旦お話を整理して・・・以前に(インタビュー記事にはしていませんが)「200万円台の中古車流通が減少してきた」というお話を伺ったことがあります。
300万円前後の中古車か、あるいは200万円を切る150万円前後で、中古車の流通が二極化がしているような印象だと。
2025年の第1四半期に関しては、消費意欲の低下もあってか300万円台の中古車の動きが鈍くなっている。
中古車を探しているお客様がコストを重視される傾向が強まり、150万円よりもさらに価格の低い中古車に需要がシフトしていっているのではないか?・・・という理解でよろしいですか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
その通りです。
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リセバ総研所長
200万円前後の価格帯の中古車が流通量が減少しているのは、需要も伸びない状態が続いているからなのでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
いや、本来であれば200万円台の中古車は最も需要のある価格帯のはず・・・なのです。
まず流通量に関してですが、もともと200万円前後のゾーンに該当する中古車は輸出需要と重複していて影響も大きく、市場価値が激しく変動している状況です。そのため、新車価格との逆転現象が起きている車種もあります。ですから、中古車の仕入れ難さにもつながっています。
一方で国内の需要に関しては、さきほどお話したように、最近は新車の納車待ちが解消されてきています。
以前は普通のミニバンでも納車1年待ちということがありましたけど、新車の供給も安定し始めたので、中古車の需要が減少してきているのではないかな?と感じています。
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リセバ総研所長
まとめると、
300万円以上の価格帯の中古車は消費の冷え込みの影響を受けて動きが鈍くなっているのではないか?
200万円前後の価格帯の中古車は輸出需要と競合し、新車の納期回復もあって動きが鈍いのではないか?
150万円以下の価格帯の中古車は消費の冷え込みによるコスト圧縮志向から需要があるのではないか?
ということでしょうか?
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【中古車相場のプロ】〝OKB〟
はい、輸出需要に関しては中間に位置する価格帯の中古車が現在最も影響を受けています。
どんな車でも輸出可能というわけではなく、年式規制などさまざまな制約があります。古い車は輸出の対象外となるため、比較的新車から数年以内のものが該当します。
その規制と仕向国(輸出先の国)の需要が、ちょうど200~300万円のゾーンと重なるのです。
次回予告:2025年上半期の後半に向けての展望は?「ウリドキ」「カイドキ」な車種たちは?
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リセバ総研所長
では、お話はいったん区切らせていただいて・・・
次回は、2025年上半期の後半に向けての展望や、「ウリドキ」「カイドキ」に感じる旬の車種たちについてお聞きしたいと思います。
ありがとうございました!