自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! スズキ フロンクス 試乗記〜インド産SUVは売れるのか?リセールバリューは?WR-Vとの違いは?〜

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スズキ フロンクスは、インドで生産される全長4m弱のコンパクトSUVで2024年10月にデビューした。このクラスは、コスト競争力が求められる。そこで、スズキはインドで生産されているグローバルモデルであるフロンクスを日本に導入した。

奇しくも、2024年3月に、ホンダもインド生産のコンパクトSUVである「WR-V」を日本に導入済み。インド生産のコンパクトSUVが、にわかに注目を浴びている。

ただ、同じインド生産モデルであっても、フロンクスとWR-Vでは、全く考え方が異なるのが特徴。日本専用装備を満載したフロンクスに対して、WR-Vは徹底したシンプルさでコスパ重視。
そんなフロンクスは、売れるのか? 売れないのか? 中古車マーケットでは、リセールバリューがどのような観点で評価されるのか?

そこで、他の競合車種と比べつつ、試乗記を交えてWR-Vの素性を深堀りしてみた。

【自動車情報のプロ】大岡智彦

自動車情報メディア「CORISM」編集長

自動車情報専門のWebサイト「CORISM」編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、カスタムカーまで幅広くこなす。クルマは予防安全性能や環境性性能を重視しながらも、走る楽しさも重要。趣味は、コスパの高い中古車探しと、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

スズキ フロンクスの競合となる車種と比較する

ホンダ WR-V/トヨタ ヤリスクロス/トヨタ ライズとボディサイズを比較

ボディサイズ比較 スズキ フロンクス ホンダ WR-V トヨタ ヤリスクロス トヨタ ライズ
全長 3,995mm 4,325mm 4,180mm 3,995mm
全幅 1,765mm 1,790mm 1,765mm 1,695mm
全高 1,550mm 1,650mm 1,590mm 1,620mm
ホイールベース 2,520mm 2,650mm 2,560mm 2,525mm

フロンクスのボディサイズは、Bセグメント(全長3.8m~4.3m前後)と呼ばれるカテゴリーに属している。ライバル車と比べると、フロンクスのボディサイズは絶妙。

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    ポイントは、全高を1,550mmとしたことだ。これは、日本の都市部に多いやや古い立体駐車場の入庫制限である全幅1,800mm以下、全高1,550mm以下という条件をクリアしている。そのため、こうした立体駐車場を使うユーザーでも流行りのSUVに乗れるというメリットを提示している。

ただし、全高が低いと小さく見える。ライバル車と比較しても、フロンクスの全高が最も低い。これは、日本マーケットではマイナス要因のひとつ。日本では、大きく見えるデザインが好まれる傾向があるからだ。

しかし、フロンクスは、クーペルックのスポーティなデザインとすることで、個性をアピールし全高の低さをカバーしている。

逆に、WR-Vはこのクラスで最も全長が長く、全高も高い。大きく立派なのに、価格は安価。コストパフォーマンスの高さをアピールするボディサイズだ。

フロンクスと競合車種の価格帯を比較する(FF、ガソリン車のみ)

スズキ フロンクス 2,541,000円
ホンダWR-V 2,098,800~2,489,300円
トヨタ ヤリスクロス 1,907,000~2,551,000円
トヨタ ライズ 1,717,000~2,049,000円
*フロンクスはマイルドハイブリッド
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    フロンクスは、ライバル車と比べると全長と全幅は最小。しかし、価格はヤリスクロスと同等に最も高価になっている。コスパが悪そうに感じるかもしれないが、それは違う。フロンクスの装備は、このクラストップレベルの充実度だ。

例えば、ボディサイズのコスパに優れるWR-Vと比較すると、フロンクスには電制パーキングブレーキやシートヒーター、全車速追従式クルーズコントロール、全方位モニター付メモリーナビゲーションなどが標準装備されている。こうした装備類を加味すると、フロンクスは、ボディサイズこそ小さめだが装備類はクラストップレベルの充実度といえる。
WR-Vは、装備はシンプルにしてインド生産のメリットを生かし、とにかく価格重視顧客向けとした。かなりターゲットを絞ったモデルだ。

対してフロンクスは、インド生産ながら、日本メーカーが日本人の求める充実装備を日本仕様専用に設定。インド生産で得られる安価な価格としながら、徹底して日本人好みの仕様にしている違いがある。同じインド生産のコンパクトSUVながら、考え方は全く異なる。

スズキらしくないエモーショナルなデザイン

新型スズキ フロンクスの開発コンセプトは『扱いやすいクーペスタイルSUV』。開発コンセプトに「クーペスタイルSUV」とあることから、いかにデザインに注力しているのかが想像できる。こうした開発コンセプトを受け、「ダイナミックなクーペスタイルSUV」が開発コンセプトとなっている。

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    コンセプトはともかく、この新型フロンクス外観デザインの第一印象は「あれ? スズキ車らしくないよね」だった。と、いうのも、スズキ車といえば、シンプルでクリーンなデザイン、もしくはキュート系のモデルが多い。ところが、フロンクスはずいぶんとエモい。迫力とスタイリッシュさがいい塩梅でまとめられている。良い意味で「スズキ車」らしくないのだ。

フロントフェイスは、売れるSUVのデザイントレンドを踏襲。大きな顔に大きなグリルを組み合わせ、フェイス上部サイドにはLEDデイタイムランニングライトを装着。迫力とスポーティさを表現した。

サイドビューで注目なのが、ダブルフェンダー。通常のフェンダーに加え、ブリスターフェンダーが加わり、筋肉質な迫力あるスタイリングを生み出した。ただ、悩ましいのが16インチホイール。このダブルフェンダーを生かすのであれば、18インチ位の大径ホイールが欲しいところ。スズキがあえて大径ホイールを装着しなかった理由は、最小回転半径。フロンクスの最小回転半径は、なんと4.8m! このクラストップレベルの小回り性能を誇る。コンパクトSUVなのに使い勝手が悪いのでは意味がない。そこで、あえて16インチホイールとして、スタイリングより使い勝手を重視したのだ。

そして、リヤビューは横一文字のコンビネーションランプが目を引く。ダブルフェンダーとの相乗効果で、よりワイドで安定感あるスタイルとした。このリヤコンビネーションランプは、立体的に光るLEDランプ。コストを重視するスズキ車において、かなり贅沢な仕様。スズキ車の中では、異例なほどコストがかかっているだけあり、キレイな配光が印象的だ。

大岡編集長の本音「フル液晶メーターが欲しかった・・・」

インテリアのテーマは「力強さ・上質さ・洗練さを合わせ持つインテリア」。フロンクスは、SUVということもあり力強さをイメージさせるやや太めのセンターコンソールが特徴。上部には、9インチのディスプレイを装備した。

そのセンターコンソール上部には、高輝度シルバー塗装が施されたフレームを設置。シャープで広がり感あるデザインでスポーティさをアピールする。シート生地は、日本仕様用のボルドー&ブラックのレザー調&ファブリックとなっており、上質で落ち着いた空間とした。ライバル車と比べても、1ランク上の質感だ。

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    やや残念なのがメーター。アナログメーターと液晶を組み合わせたタイプ。今や、フル液晶のデジタルメーターが主流なだけに、新型車なのに少し古さを感じさせる部分だ。
    室内スペースは、ライバル車と比較すると、当然のことだがボディサイズが最も大きいWR-Vが後席・荷室共に広い。

フロンクスの荷室容量は、210L。ライズは303Lなので、フロンクスの荷室は後席スペースを重視したためか、やや小さめとなっている。

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    また、フロンクスは、クーペルックのデザインが採用されたことから、後席頭上スペースがややタイト。後席に乗り込むとき、慣れないとルーフに頭をぶつけそうになる。

そして、日本では重要視される予防安全装備も充実している。単眼広角カメラとミリ波レーダーを組み合わせた最新の予防安全装備パッケージ「スズキセーフティサポート」を全車に標準装備する。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、歩行者と自転車、自動二輪車を検知する。また、事故の多い交差点内では、右左折時の歩行者や自転車も検知。対向車両にも対応するなど、検知対象と検知シーンは多岐にわたる。クラストップレベルの予防安全装備と言える。

平凡だが扱いやすいエンジン

さて、試乗だ。フロンクスに搭載されたのは、K15C型エンジンを使用したマイルドハイブリッドのみ。101㎰&135Nm(FF車)の最高出力と最大トルクをアウトプット。3.1㎰&60Nmという出力の小さなモーターが組み合わされている。これにより、フロンクスの燃費は19.0㎞/L(FF、WLTCモード)となった。マイルドハイブリッドなので、燃費は純ガソリン車より、やや良好だ。ミッションは、CVTではなく6速AT。CVTの方が燃費アップに期待できるものの、グローバルではCVTを嫌がる傾向にあるためだ。

このエンジン、燃費・実用性重視といった印象。高回転域まで回しても、とくにパンチのある加速をするわけでもない。101㎰というパワーも控えめだ。ただ、スズキの軽量化技術により車重は1,070㎏(FF車)と軽量なこともあり、力不足感は無い。パワフルさという点では、ヤリスクロスがやや上回る。

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    ただ、市街地では淡々と過不足なく走り抜ける。アクセルを踏んだ瞬間、わずかにモーターアシストを感じられ、アクセルレスポンもややよい。ただ、高速道路などで一気に加速したいシーンなどでは、もう少しパワーが欲しいと感じる瞬間があった。

硬めなサスペンションで、スポーティな走りを演出

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    フロンクスの乗り心地は、カッチリとしたやや硬め。低速域で大きな凹凸がある路面だと、リヤサスからゴトゴトとした突き上げ感がある。ただ、不快なレベルではなく、このクラスでは快適な部類。速度が上がると、よりしなやかさを増してくるタイプだ。後席の乗り心地も良好だ。

このやや硬めのサスペンションにより、フロンクスはコンパクトSUVらしいキビキビとした走りを手に入れている。最近のスズキ車は、カーブで車体を傾けさせないようなセッティングを好む。フロンクスもカーブでは、フラットな姿勢を維持しようとする。そのため、S字カーブでは、車体の揺れ返しも少なく運転しやすいと感じる。狭い下りの山道などは得意分野で、パドルシフトを使えば、よりスポーティで軽快に走り抜けてくれる。

4WDモデルが最も気持ちよく走る!

フロンクスには、日本のニーズに合わせ日本仕様のみに4WDの設定がされている。同じインド生産のWR-Vに4WDの設定は無い。
フロンクスのFF(前輪駆動)は、軽快さがあったが、4WD車はよりスイっと曲がり、旋回中もより安定している印象を受けた。旋回中のステアリング操作に対しても、よりリニアに反応。良く曲がって安定感のあるコンパクトSUVだった。
さらに、この4WD車は、静粛性にもこだわった。4WDは、やや静粛性面ではFF車よりやや不利になる。だが、一般的にFFでも4WDも吸音・遮音材などに差がないのが普通。

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    しかし、フロンクスの4WDは、プロペラシャフト共振による振動低減など、音と振動対策を施している。その結果、FF車よりも静かなのでは? と、思えるくらいの低振動・静粛性を手に入れている。予算や使用環境を抜きに、単にクルマとしての楽しさという点では、4WD車がおすすめだ。

フロンクスのおすすめグレードは? フロンクスは、グレードを選べない?

フロンクスは、インド生産。インドは遠い。そのため、船で運ぶには長い時間がかかる。多種多様なグレードやオプションを設定すると、納期が非常に長くなる車両も多くでてくるため、フロンクスは1グレードのみの設定と割り切った。選択できるのは、ボディカラーや駆動方式(FFもしくは4WD)程度だ。

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    街中中心で降雪地域ではなく、アウトドアレジャーもしないのであれば、FFで十分。逆に降雪地域に住んでいたり、アウトドアレジャーを積極的に楽しんだりしたいというのであれば、4WDがおすすめだ。

フロンクスのリセールバリュー予想! 高リセールバリュー、ほぼ確定?

フロンクスは、人気の高いコンパクトSUVなので、高リセールバリューはほぼ確定だろう。
たとえば、同じコンパクトSUVでフロンクスより若干ボディサイズが大きいエスクードの中古車相場は、2022年式で約220~260万円。新車価格が297万円だったので、中古車価格は新車価格比で約74~88%と高値を維持している。これは、中古車流通台数がとても少ないことも影響している。フロンクスがエスクードと同じような傾向になると予測する、高リセールバリューが十分期待できるだろう。

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    ただし、長期的な懸念材料もある。それは「売れ過ぎ」だ。スズキは、10月16日の発売から10月末時点で1万台の受注があったことを公表している。これは、販売目標1,000台/月の約10倍以上。これだけ売れていると、いずれ中古車流通台数も増えてくるのは確実。中古車流通台数(供給)が需要を上回ると、リセールバリューは下がる傾向になるのだ。ただ、人気カテゴリーなので、極端に落ちるリスクは少ないだろう。

また、短期的にはフロンクスのリセールバリューが爆上がりすることも予想できる。販売好調による大量なバックオーダーを抱えることで納期が超長期化。すでに、フロンクスの納期は6カ月以上になっているようだ。これにより、転売ヤーなどによる新車価格越えの未使用車が流通し、リセールバリューが爆上がりする可能性もあるのだ。

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    ただ、こうした超長期納期によるリセールバリュー爆上がりは一時的とみられる。納期が安定してくれば、リセールバリューは徐々に下がっていくからだ。

スズキ フロンクスグレード別新車価格

*グレードは、1グレードのみの設定。
・2,541,000円(FF、6速AT)
・2,739,000円(4WD、6速AT)

スズキ フロンクス スペック一覧

代表グレード フロンクス FF、6速AT
全長×全幅×全高 mm 3,995×1,765×1,550
ホイールベース mm 2,520
トレッド(前/後) mm 1,520/1,530
最低地上高 mm 170
車両重量 kg 1,070
エンジン型式 K15C型
エンジンタイプ 直列4気筒DOHC
総排気量 ㏄ 1,460
エンジン最高出力 kW(ps)/rpm 74(101)/6,000
エンジン最大トルク N・m(kgm)/rpm 135(13.8)/4,400
モーター型式 WA06A
モーター最高出力 kW(ps)/rpm 2.3(3.1)/800-1,500
モーター最大トルク N・m(kgm)/rpm 60(6.1)/100
燃費(WLTCモード ㎞/L) 19.0
サスペンション 前:マクファーソン式 後:トーションビーム式
タイヤ 前後 195/60R16
最小回転半径 m   4.8