自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! ホンダ プレリュード(BF系)試乗記〜24年振りに復活のクーペにどんな価値が?〜

24年振りに6代目として復活したホンダ プレリュード(BF系)に試乗した。シビックタイプR譲りのシャシーに2.0L e:HEVを搭載し、ハンドリングマシンと呼べる爽快な走りを実現。新車価格6,179,800円のリセールバリューも予想する。
販売開始から1ヶ月の総受注は約2,400台と好調で、月間販売計画の約8倍を記録。購入者の中心は50代・60代の中高年層だが、ホンダが真に狙うのは「チャレンジング精神」を感じ取れなくなった若年層へのアピールだ。電動化時代にあえてクーペカテゴリーに挑む新型プレリュードの実力を、走行性能からフェアレディZとの比較、リセールバリュー予想まで徹底レポートする。

24年振りに新型で復活! 中高年のアイドルだったプレリュード

24年振りに6代目となるホンダ プレリュード(BF系)が登場した。バブル期にデートカーとして一世を風靡した3代目プレリュード(BA系)は、最強デートカーとして注目され、多くの若者の憧れの的となった。プレリュードの復活に、バブル期を知る中高年は車名の懐かしさに当時を思い出し狂喜乱舞。

その一方で、現在の若者は冷眼傍観。SNS上では「デートカーと言われても、今の若者に600万円以上のクルマが買えるわけがない!」「高過ぎる」といったコメントが多かった。Googleでプレリュードと検索すると、下端の「他の人はこちらも検索」に「プレリュード 新型 高すぎる」と表示されるほどだ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    購入者の年齢層は50代・60代の中高年が中心だという・・・

    まさに、中高年(だけ?)が垂涎のクーペ。

新型プレリュードは、ホンダを救うイメージリーダー?

もはや中高年のためのクルマとなっているような新型プレリュード。だが、ホンダの狙いは「高くて買えない」と嘆いている「若年層」にある。

なぜ、ホンダはプレリュードで若年層にアピールしたいのか?

ホンダの調査によると「チャレンジング精神のあるメーカーイメージ」は、2020年以前は圧倒的ナンバー1がホンダだった。ところが、2020年以降は徐々に右肩下がりとなり、直近では他社が肉薄。さらに、メーカー別年代別好意度になると、年齢層が下がるにつれてホンダへの好意度が下がっていく傾向があるという。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    言われてみれば、そりゃそうだよね、と納得。

    バブル期前後を知る中高年層にとって、ホンダのイメージはF1やオートバイWGPといったモータースポーツで数えきれない栄冠を手にしてきた。

    初代NSXやCR-X、シビック、インテグラといったスポーツモデルを続々投入し、当時のホンダは「チャレンジング精神の塊」だったからだ。

現在のホンダ車の売れ筋は、N-BOXにフリード、ヴェゼルといった実用車が中心。若年層から見れば「チャレンジング精神」を感じ取れないのも無理はない。

そこでホンダは、「あやつる喜び」を提供し続ける意思を体現するモデルとして新型プレリュードを投入した。電動化の時代にあっても、チャレンジング精神をもちスポーティで先進的なイメージをけん引するイメージリーダーとしての役割をプレリュードに与えたというわけだ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    個人的には、ほとんど売れないクーペカテゴリーにあえて挑戦するという姿勢だけで、十分チャレンジング精神に溢れていると思うし、高く評価したい。

     

    プレリュードは、単に売れた売れないという尺度で判断するクルマではないのだ。

クーペらしい流麗さが美しい外観デザイン

新型プレリュードのコンセプトは「UNLIMITED GLIDE」。大空を自由にどこまでも飛べるグライダーを発想の起点とし、優雅に滑空するような高揚感と非日常のときめきを感じさせるクルマを目指した。

外観デザインは、クーペらしい優雅なシルエットをもつ。低く平べったい顔は、歴代プレリュードを連想させスポーティさが際立っている。滑らかで張りのあるサイドビューの下端には、まるでレーシングカーをイメージさせるようなサイドステップを装着。スポーティな走りを予感させる。

リヤビューは、あえて大型のリヤスポイラーの類を装備していないところが大人っぽい。一文字のコンビネーションランプでワイド感をアップさせ、全体的にクーペらしい流麗さが美しく仕上がっている。

ブルー×ホワイトのインテリアコーディネイトは好感度高し!

新型プレリュードのインテリアは、スッキリとした爽快感ある空間になっている。インパネデザインは、最近のホンダデザイントレンドを踏襲。水平基調でノイズを減らしたデザインとし、開放的な視界を確保。運転のしやすさにも貢献している。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    好感度が高かったのは、ブルー×ホワイトのインテリアコーディネイト。

    室内が明るくなり高級感もアップする。

    座面やシートバック部分をブルーとすることで、汚れが目立たないようになっているのも実用面ではありがたい。

センターディスプレイはGoogle搭載の9インチ。中高年がメインのユーザーならば、もう少し大型化して視認性を向上させたいところだ。後席は普通のブラックで、どうせならリヤシートもブルー×ホワイトでまとめてほしい。そのほか、ブラック内装も用意されている。

クーペモデルということもあり、運転席に座るときは、グッと体を前屈させながら滑り込むように座る。体が硬い中高年には、ちょっと覚悟が必要だ。少し大きめのサイドサポートがあるシートに座り、低い着座位置とあいまって、なぜかワクワクしてくるから不思議。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    運転席に座り、シートポジションを合わせようとすると・・・まさかの手動式かい!

    600万円以上するクルマでしょ!? と、思わず叫びたくなる瞬間。

    デートカーなら、隣の女性も「エッ?」と思うはずだ。

後席は狭いものの、足元まわりはなんとかなるレベル。ルーフが低くなっているため、頭上部がとにかくタイト。身長170cm位の男性だと、頭を斜めにしていないと座れない。大人がリヤシートに座って移動するならば、30分位の短時間が限界のように感じた。

静粛性の高さは、まさにデートカー!

Dシェイプのステアリングを握り、ドキドキしながら走り出す。新型プレリュードのパワートレインは、シビックと同じ2.0L e:HEV。

最高出力184ps、最大トルク315Nmを発生するモーターで前輪を駆動する。そのため、突出した速さは感じないものの、ハイブリッド車らしい滑らかな加速感が特徴だ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    通常の走行モードであれば静粛性に優れ、アクティブノイズコントローラーのアシストもあり、助手席に座る同乗者との会話も弾む。

    標準装備のBOSEプレミアムサウンドシステムから流れる音楽も心地よい。まさに、デートカーとしては最適だ。

気分がアゲアゲになるホンダS+シフトとは?

プレリュードにはホンダS+シフトと呼ばれる操る喜びを提供するシステムが装備されている。このホンダS+シフトを起動させると、新型プレリュードは豹変する。2.0L e:HEVは、モーター駆動のハイブリッド車で複数段の駆動ギヤはない。

ところが、アクセルをグッと踏み込むとエンジンのサウンドが高まり、まるでスポーツATのようにシフトチェンジしていく。エンジンとモーターを制御して、エンジン回転数・前後Gを変化させ、疑似的にシフトチェンジしているように感じさせるのだ。

回生ブレーキの強弱をコントロールするパドルは、ホンダS+シフトを起動させるとパドルシフトになり、減速ギヤ・加速ギヤに入れたような疑似的演出が起きる。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    とくにシビレたのは、減速シフトをした時。

    ボンっとブリッピングし、まるで本当にシフトダウンしたような演出がされ、気分はアゲアゲ状態になった。

    これは楽しい!

走行モードは、スポーツ、GT、コンフォートと3つ用意されていて、モーターのトルクフィールやレスポンス、ハンドリングや乗り心地まで、それぞれ異なるセッティングになっている。その時の気分や走行シーンに合わせて、色々と楽しめるのも魅力だ。

まさにハンドリングマシン! もはやスポーツカー!!

新型プレリュード最大の美点といえるのがハンドリングだ。シャシーは、スポーツモデルであるシビックタイプRをベースとし、新型プレリュード用に専用チューニングされている。シビックよりワイドトレッドで、しかもショートホイールベース化されているため、運動性能は大幅に向上している。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ブレーキングしながらカーブに進入すると、フロントがスパッと一瞬にして向きを変えた。

    想像以上に早くイン側に付き過ぎるという状態で、かなり驚いた。

    4ポッドのブレンボ製ブレーキと、235/40R19という大径コンチネンタル・プレミアムコンタクト6の相性もよく、まったく不安がないままブレーキングポイントがドンドン奥になっていく。

これは、シビックタイプR譲りの高剛性ボディと、フロントのデュアルアクシス・ストラットサスペンションのメリットだ。

コーナリング中に大きくステアリングを切り足しても、フロントタイヤの接地感にほとんど変化は感じられず、グイグイ曲がっていく。FF(前輪駆動車)は、ハンドリング面でとにかくフロントタイヤの役割が大きいだけに、このデュアルアクシス・ストラットサスペンションの効果は絶大。

少し路面が悪くても、フロントタイヤの追従性がよく安心して曲がれるし、アクセルもグイグイ踏めた。車体の傾きもしっかりと抑えられ、フラットな姿勢を保ち続ける。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    これは、気持ちいい!

    もはや、スポーツカーだ。

    ただ、これだけよく曲がると、もっとパワーが欲しくなる。

新型プレリュードには、アジャイルハンドリングアシストの新制御バージョンも搭載。ターンイン時にも前輪内側のタイヤにブレーキをかけ旋回力をアップするブレーキトルクベクタリングも行い、軽快なハンドリングを支えている。

想像以上に快適に走れるコンフォートモードがお勧め

新型プレリュードのサスペンションは、可変減衰力タイプのアダプティブ・ダンパー・システムを採用。このサスペンションもシビックタイプRのものをベースとしている。走行モードにより、コンフォート→GT→スポーツという順に硬くなる。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    コンフォートモードでの乗り心地は快適で、多少の凸凹なら滑るように走る。

    しかも、やや攻めた走りをしても車体をコントロールしやすくレスポンスもよいので、運転しやすい上に気持ちよく走れた。

    このコンフォートモードが、個人的にベストだと感じた。

スポーツモードにすると、グッと引き締められた乗り心地になる。シビックタイプRほどガチガチではなく、適度にしなやかさがあるセッティング。路面が良ければ硬さはそれほど感じないが、タイヤのゴツゴツ感は十分に分かるくらいだった。

ハンドリングマシン的な新型プレリュードだが、シビックタイプRのようなレーシングな味付けではなく、あくまで公道を爽快に駆け抜けるクーペといった印象。ロングドライブも快適で楽しく走れる数少ないクーペといえる。

同じ600万円台級の新型プレリュードとフェアレディZを比べてみた

悩みどころとなるのが、新型プレリュードの価格。
新車価格は6,179,800円だ。

600万円前後のクーペといえば、ハイブリッド車ではないもののライバル車として日産フェアレディZ(Z34系)が浮かぶ。そこで、パワートレインも駆動方式もまったく異なる新型プレリュードとフェアレディZを比べてみた。

ボディサイズ/車重比較
項目 新型プレリュード フェアレディZ
全長 4,520mm 4,380mm
全幅 1,880mm 1,845mm
全高 1,355mm 1,315mm
車重 1,460kg 1,620kg(バージョンST)
乗車定員 4名 2名

新型プレリュードは乗車定員4名なのに対して、フェアレディZは2名。そのため、フェアレディZの方が新型プレリュードよりひと回り小さく、全高も低い。

パワートレインスペック比較
項目 新型プレリュード フェアレディZ
パワートレイン 直4 2.0L e:HEV V6 3.0Lターボ
最高出力 184ps(モーター) 405ps
最大トルク 315Nm(モーター) 475Nm
  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    大きな差になっているのはパワートレインの出力。

    V6 3.0Lターボエンジンを搭載するフェアレディZの圧勝だ。

    フェアレディZは、ある意味で古典的なスポーツカーのエンジン。対して新型プレリュードは環境を重視した未来のスポーツカーのパワートレインといった印象で、まったく違ったアプローチとなっている。

燃費比較(WLTCモード)
車種 燃費(WLTCモード)
新型プレリュード 23.6km/L
フェアレディZ(9速AT) 10.2km/L

ハイブリッドの新型プレリュードは、V6 3.0Lターボを搭載するフェアレディZに対して約2.3倍という燃費差となっている。

環境性能では、圧倒的に新型プレリュードが勝っている。何を求めるかによって評価は変わるとはいえ、この燃費差は大きい。

新車価格比較
車種 新車価格
新型プレリュード 6,179,800円
フェアレディZ バージョンST 6,759,500円

新車価格差は約58万円とやや開きがある。運転席・助手席パワーシートを標準装備するフェアレディZ バージョンSTに対し、パワーシートが設定されていない点が新型プレリュードで残念なポイントだ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    古典的なフェアレディZに対して、最新ハイブリッドシステムを搭載する新型プレリュード。どちらが安いか高いかは、選ぶ人の価値観によって大きく変わりそうだ。

新型プレリュードのリセールバリュー予想

リセールバリューは、中古車の需要と供給で決まる。新型プレリュードのリセールバリューを予想するのは難しい。参考になる車種がないからだ。そこで、前述で比較したフェアレディZを参考にして予想してみた。

フェアレディZは、デビュー時の長期納期により、中古車価格は高騰し新車価格越えの車両が大半だった。最近になり納期が安定化したこともあり、中古車相場も下落。2年落ち(2025年比)の2023年式で新車価格の約83〜108%となっている。

フェアレディZ リセールバリュー参考データ
項目 内容
車種 日産 フェアレディZ(Z34系)バージョンST
年式 2023年式
中古車相場 約550〜720万円
当時の新車価格 約666万円
新車価格比 約83〜108%

基本的にスポーツカーやクーペ系は、新車販売台数こそ少ないものの、アツいファンに支えられ中古車相場は高値を維持する傾向が強い。フェアレディZもその傾向と合致している。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    新型プレリュードはフェアレディZのような純粋なスポーツカーではなく、スポーティクーペ。

    そのため、どこまで中古車マーケットで人気が出るかが不透明だ。

    恐らく、純スポーツカーのような高リセールバリューは期待できない可能性が高いだろう。場合によっては不人気車になり、リセールバリューがかなり低くなる可能性さえある。

こうしたマイナス要因を含めると、新型プレリュードの新車価格比は、2年落ちで新車価格の約60〜70%程度になると予想した。

ホンダ プレリュード(BF系)スペック一覧

項目 スペック
代表グレード プレリュード(BF系)
全長×全幅×全高 4,520×1,880×1,355mm
ホイールベース 2,605mm
最低地上高 135mm
車両重量 1,460kg
総排気量 1,993cc
エンジン型式 LFC
エンジンタイプ 直列4気筒DOHC16バルブ
エンジン最高出力 141ps(104kW)/6,000rpm
エンジン最大トルク 182N・m/4,500rpm
モーター最高出力 184ps(135kW)/5,000-6,000rpm
モーター最大トルク 315N・m/0-2,000rpm
燃費(WLTCモード) 23.6km/L
駆動方式 前輪駆動(FF)
サスペンション 前:ストラット 後:マルチリンク
タイヤサイズ 前後 235/40R19
最小回転半径 5.7m
バッテリー種類 リチウムイオン