自動車情報メディア「CORISM」の大岡編集長が語る! 日産 ルークス試乗記〜脱オラオラ系デザインの評価は?ハイトワゴンではベストな走り〜

日産のスーパーハイトワゴン軽自動車「ルークス」がフルモデルチェンジし、2025年10月から発売を開始した。4代目となる新型ルークスも、先代同様に日産と三菱による軽自動車の合弁会社NMKVにより生まれたモデルだ。そのため、2025年10月29日より販売を開始する三菱eKスペースやデリカミニと、エンジンやミッション、プラットフォームなどを多くにメカニズム面を中心に共通化されている。まだまだ猛暑が続いていた2025年夏の某日、新型ルークスのプロトタイプ車に試乗した際のレポートをお届けしよう。

【自動車のプロ】大岡智彦

自動車情報メディア「CORISM」編集長

自動車情報専門のWebサイト「CORISM」編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、カスタムカーまで幅広くこなす。クルマは予防安全性能や環境性性能を重視しながらも、走る楽しさも重要。趣味は、コスパの高い中古車探しと、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

え?この顔でハイウェイスター?

新型ルークスの試乗場所は、日産追浜工場に隣接するテストコース「グランドライブ」。そこに、ズラリと並べられた新型ルークス。その顔立ちを見て最初に違和感を感じたのはその「おとなしさ」。会場スタッフに聞くと、すべてハイウェイスターだと聞き、ちょっと驚いた。

というのも、ルークスのハイウェイスターといえば、他メーカーのカスタム相当。デザインは、大きな顔に見せ迫力デザインが施されたオラオラ系と相場が決まっていたからだ。
先代ルークスは際立ってギラギラ感が強く、スーパーハイトワゴンのトレンドど真ん中感といったデザインだった。

先代ルークス ハイウェイスター
  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ところが、新型ルークスのフェイスデザインは、オラオラ系と対極にあると言っていい「癒し系」。

    なぜ、こうなった? このデザインで大丈夫なのか? と、驚きとともに心配も・・・

こうした脱オラオラ系デザインを採用したのには、当然ワケがある。新型ルークスの開発コンセプトは「先進技術が生み出す、上質な軽」。このコンセプトを勝手に解釈すると、オラオラ系デザインで主張するのではなく、落ち着いた大人の知性を感じさせるデザインといったところだろうか。

日産開発陣によると、軽BEV(バッテリー電気自動車)の「サクラ」はデザインの洗練性を高めたが、その過程のなかで日産デザインとしてオラオラ系に対して疑問符が付いた。その結果、ルークスでは「脱オラオラ系」な優しいデザインになっていったようだ。

個人的には、脱オラオラ系に賛成。小さいクルマをより大きく迫力あるように見せる手法には、ちょっと無理がある。

デザイン的にも破綻しているように見えていたた。小さいクルマには、小さいクルマに合ったデザインがあると思うからだ。実際、国産の他車を見渡しても、徐々にではあるがフルモデルチェンジする度にオラオラ系が薄まっていっているようにも感じている。

そんな新たなデザインに挑戦した新型ルークス。デザインモチーフとしたのは「かどまる四角」。ヘッドライトやリヤコンビネーションランプ、ドアハンドルにホイールなど随所に「かどまる四角」を取り入れた。広さ・大きさを象徴する四角から、角を丸くすることで、新型ルークスにぬくもり感と遊び心を与えている。

 

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    「かどまる四角」ね。

    そういえば、スズキ ハスラーも似たようなことを語ってたなぁ・・・
    なんと思いながら、新型ルークスを眺めていると、ちょっとあのクルマに似ているように感じた。

    あのクルマとは、2003~2008年位に発売されていた日産「キューブキュービック」。

日産 キューブキュービック

クラスを超えた12.3インチのセンターディスプレイと7インチのメーターディスプレイ

外観デザインだけでなくインテリアもそんな雰囲気が漂う。
デザインコンセプトは「Breeze(そよかぜ)」。リビングルームのような心地よい風と光を車内へ取り込み、乗る人全員がリラックスできる居心地よい空間を目指したという。

インテリアのカラーは、定番のブラック系をあえて外し、明るいベージュやグレー系が中心に設定。シートにはパインピングが施されていて、オシャレな空間を生み出した。この落ち着いた空間は、家のインテリアから発想を受けているという。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    こうなると、インテリアまでキューブ系。

    日産が過去に掲げていた「モダンリビング」コンセプトの再現だ。

    肌触りのよいシート生地なども含め、質感もクラスナンバー1といってもいいレベルの出来栄えだった。

新型ルークスは、プラットフォームなど多くの部分を先代からキャリーオーバーしている。そのため、デザイン以外の変化は期待していなかったが、Aピラーの角度を少し立てていた。これにより、さらに視界が良好になった。またAピラーをやや細くしたことにより死角も減り、運転しやすくなっている。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    そして、インテリアの装備で最も特徴的なのが、12.3インチのセンターディスプレイと7インチのメーターディスプレイ。

    とくに、12.3インチディスプレイは、横幅の狭い軽自動車のインパネだと、妙なくらい大きく見える。

    軽自動車最大級のディスプレイで、まさにクラスを超えた装備と言える。
    この大きなディスプレイだけで、新型ルークスが欲しくなるほどインパクトがあった。

コネクテッド系では、ついにGoogleを搭載した。GoogleマップやGoogle Play、Googleアシスタントなどの機能が使え、スマホとの連携も強化。より使いやすくなっている。

予防安全装備も進化している。新たに交差点の歩行者や対向・交差車両を検知し、衝突回避を支援する機能が加わった「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」を装備。その他、車線変更時の斜め後方の車両との接触回避をアシストする軽自動車初となる「インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)」、軽スーパーハイトワゴン初の「BSW(後側方車両検知警報)」、後退時に後方を横切ろうとする車両を検知すると警告音でドライバーに注意を促す「RCTA(後退時車両検知警報)」なども用意。

360°セーフティアシストを大幅に強化し、軽自動車トップレベルの予防安全性能を得ている。

スーパーハイトワゴンではベストな乗り心地

さて、試乗したのは新型ルークス ハイウェイスターGターボ。搭載されているエンジンは、先代ルークスからのキャリーオーバーである660㏄、BR06型直3ターボ。最高出力64㎰、最大トルク100Nmをアウトプットする。

さてこのパワートレイン、先代ルークスに装着されていたマイルドハイブリッドシステムが、今回の4代目新型ルークスでは外されていたのだ。

マイルドハイブリッドシステムを外せば、燃費も悪くなるだろうと思うのが普通。ところが、新型ルークス ハイウェイスターGターボの燃費は19.3㎞/L(WLTCモード、FF車)で、先代の同じグレードと比べると0.1㎞/L燃費が向上しているのだ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    燃費の向上は、先代よりマイルドハイブリッドシステムを外したことにより、車重が10㎏軽量化されたことも影響しているのだろう。

    であれば、先代ルークスのマイルドハイブリッドシステムはいったい何の意味があったのか?

    むしろそっちの疑問が残る・・・

いよいよ、試乗開始ということでコースイン。まずは、長い直線路なので、アクセルをグッと踏み込む。マイルドハイブリッドのモーターアシストが無くても、意外とアクセルレスポンスもよくグイグイと加速した。

その後、イッキに全開加速。エンジンのレヴリミット付近での走行が続いていたのだが、意外なほど静粛性が高い。ライバル車もターボ車は比較的静粛性が高い傾向にあるものの、新型ルークスの静粛性はライバルの上をいく。助手席の同乗者と「静かだね」と、大きな声を出さずに会話できた。

フロントガラスに遮音ガラスを採用し、ドア下端シーリング、2層遮音シートなど、徹底した遮音構造としたことで、高い静粛性を実現している。

長い直線の次は、急カーブが続くハンドリング路。

先代ルークスは、少し硬めの乗り味ながら、軽スーパーハイトワゴンの中ではトプクラスと思えるほどの操縦安定性と乗り心地を両立していた。それだけに、新型ルークスの操縦安定性には期待していた。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    軽くブレーキングしながらのターンインでは、ステアリングの舵角に対して想像以上にクルリと軽快に車体は向きを変えた。

    先代ルークスもより曲がるクルマだったが、さらにしっかり感も加わった印象だ。

    操舵に対して、曖昧なところが少なく、ドライバーの操作に忠実だ。

また、急カーブを走行中、車両が大きく傾いた状態で、やや大きめの凹凸を通過。通常なら、車体が大きく揺れ、不安定になりがちなシーンだ。ところが、新型ルークスは、大きく車体が傾いた状態でも車体が暴れずに、すぐに揺れが収まる。

重心高が高いスーパーハイトワゴンとは思えない軽快感とシッカリ感が新型ルークスにはある。
こうしたハンドリングの良さは、進化した電動パワーステアリングと、剛性を20%アップしながら中空化し軽量化したフロントスタビライザーなどによる恩恵だ。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ところで、優れた操縦安定性とは関係ない話だが、新型ルークスで据え切りをするとビックリするくらい操舵力が軽い。

    操舵が軽くなると、女性でもとても扱いやすくなる。

    また、軽い操舵力だと車両をコントロールするのが難しくなったり、ハンドリング面ではマイナス要因になることもあるのだが、新型ルークスは走り出すとしっとりとした適度な操舵力になる。

    こうしたところも、なかなか気が利いた味付けだ。

新型ルークスの乗り心地は、スーパーハイトワゴンではベストであるといえる。やや硬めではあるものの、先代ルークスよりは柔らかめになり、乗り心地と操縦安定性を上手く両立している部分が高評価ポイント。
高応答のショックアブソーバーを採用し、サスペンションゴムブッシュの前後方向硬さを-20%にするなどし、こうした乗り心地を実現している。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    ライバル車と比べると、

    「硬めの乗り味で車体の傾きをとにかく抑え込むスズキ スペーシア」
    街乗りの乗り心地重視で速度が上がると少々物足りなさを感じるホンダN-BOX」

    これら両者の中間といったイメージだ。

12.3インチディスプレイを選択すると高価になるのが悩みどころな新型ルークスのグレード選び

新型ルークス ハイウェイスターは、エントリーグレードのハイウェイスターXから、ハイウェイスターXプロパイロットエディション、ハイウェイスターGターボ、ハイウェイスターGターボプロパイロットエディションの計4グレードが設定され、それぞれに4WD車が用意されている。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    悩ましいのが、価格設定。

    魅力的なオプション装備が用意されているが、なかなか高価なのだ。

例えば、ハイウェイスターX(約192万円)に12.3インチのディスプレイを装備したいと思うと、インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物 検知、3Dビュー機能付)+ステアリングスイッチ(オーディオ、ハンズフリーフォン)+NissanConnectインフォテインメントシステム+車載通信ユニット(TCU[Telematics Control Unit])+ドライブレコーダー(前後セット)+ETC2.0ユニット(ビルトインタイプ)+SOSコール+カーアラームといった装備がセットになる。

これで、約40万円アップとなり、計約232万円という仕様になる。このセットオプションを装着すれば、ドラレコやETCユニットまで装備されるので十分な仕様になる。
グレードによりセットオプションの価格がやや異なるものの、12.3インチディスプレイを装備すると、ざっくり30~40万円アップと考えておいた方がよい。

もし高価な12.3インチディスプレイが必要ないのであれば、インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物 検知機能付)、ディスプレイ付自動防眩式ルームミラー、ステアリングスイッチ(オーディオ、ハンズフリーフォン)、日産オリジナルナビ取付パッケージがセットになったオプション(約10万円)を選択するとことで、十分荷満足できる仕様となる。

搭載エンジンのオススメは、パワフルなターボ車だ。

新型ルークスは、スーパーハイトワゴンで両側スライドドアが装備されているため、車重が重い。そのため、自然吸気エンジンだと、高速道路などの移動などロングドライブだと少々非力に感じるシーンが多くなるからだ。
また、ターボ車を選択すると、インテリジェントアラウンドビューモニターも標準装備されるなど、装備も充実する。

ただし、ほとんど街乗りと割り切れるのなら自然吸気エンジンでも十分だろう。

  • 【自動車のプロ】大岡智彦

    新型ルークスを購入するなら、ターボ車を選択したい。

    そして12.3インチディスプレイ、さらにプロパイロットまで装着したハイウェイスターGターボプロパイロットエディションがお勧めとなる。

    とても、満足できる仕様となるが、セットオプションなどを加えると、楽々270万円を超えてくる価格になってくる。

    こうなると、もはやBセグメントのコンパクトカーも狙える悩ましい価格だ・・・

新型ルークスのリセールバリューを先代ルークスやライバル車と比べて予想してみる

・日産ルークス ハイウェイスターX(B4系)
・中古車相場(2020年式):約100~150万円
・当時の新車価格:約173万円
・新車価格比:約58~87%

<参考>
・ホンダN-BOXカスタムG・Lホンダセンシング(JF3、4系)
・中古車相場(2020年式):約110~150万円
・当時の新車価格:約175万円
・新車価格比:約63~86%

約5年落ち(2025年比)となる先代ルークス ハイウェイスターX(B4系)の新車価格比は約58~87%となった。軽自動車のスーパーハイトワゴンは、非常に人気が高いためリセールバリューも高い。先代ルークス ハイウェイスターX(B4系)も同様の結果となった。

ただ、新車価格比の幅が広い点に注意が必要。車両の状態や人気オプションの有無、人気ボディカラーによって、売却価格に幅が出ているようだ。

日産 ルークス
平均売却予想額(買取相場)の推移

  • 平均売却予想額
  • 査定件数
  • 平均走行距離

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また、ライバル車であり、圧倒的な販売台数を誇る「ホンダN-BOX カスタムG・Lホンダセンシング(先代JF3/JF4型)」と中古車相場や新車価格比を比較すると、ほぼ同等程度となった。

人気車という点では、N-BOXということになるのだが、中古車流通量もかなり多いので先代ルークス ハイウェイスターX(B4系)とほぼ同等程度になったと予想できる。

こうした先代モデルのリセールバリュー結果から、新型ルークスも高いリセールバリューを維持すると予想できる。

ただし、懸念ポイントもある。リセールバリューや中古車相場は、中古車マーケットの人気で大きく変わる。この中古車マーケットでの人気は、ほぼ新車人気と同じ。つまり、4代目新型ルークスが、新車でどれだけ売れるかがカギを握る。

4代目新型ルークスの懸念点は、オプションを選択して充実装備にすると新車価格がかなり高価になる点だ。
そして、定番のオラオラ系デザインではなく、日産らしさをアピールする上質な癒し系デザインに変更したことによる影響もある。

こうしたことが、新車・中古車マーケットに評価されれば、リセールバリューはかなり期待できるレベルになる。逆に、新車・中古車マーケットに評価されなければ、リセールバリューがやや低くなる可能性もある。

とはいえ、人気がとても高い軽自動車のスーパーハイトワゴン。極端にリセールバリューが下がることはないだろう。