車検証でリコール対象になっているか確認を! ホンダ N-VAN e:の高電圧バッテリーに不具合:4,367台のリコールを届け出
ホンダは、主に商用車として販売している電気自動車「N-VAN e:」について、電動機用電源装置(高電圧バッテリー)の製造過程で異物が混入した可能性があるとして、4,367台をリコールしました。
ライター
高電圧バッテリー内の電池セルに異物混入の可能性
リコールの対象なるクルマは、電気自動車の「ホンダ N-VAN(型式:ZAB-JJ3)」で、令和6年9月16日から令和7年4月9日までに製造されたもの。対象の車台番号は「JJ3-1000034」から「JJ3-1007876」までとなります。車台番号は車検証に記載されているので、「N-VAN e:」をお使いの方は必ず確認するようにしましょう。なお、ホンダでは購入者(使用者)にダイレクトメールなどでも告知するとしています。
ホンダによると、高電圧バッテリー内の電池セルを製造する機器の管理が不適切だったため、セルの内部に異物が混入したものがあるとのこと。そのため、異物がセルを構成する電極層まで貫通すると、電解液が漏れてパワーシステム警告灯が点灯。そのまま使用を続けると、バッテリーの出力が低下し加速不良となるほか、低温環境下で電解液により温度センサーが損傷するとフェールセーフ(安全装置)が働き、バッテリーの出力を停止させて走行不能となるおそれがあるとしています。
リコール対象のクルマについては無償で点検・修理を行い、この高電圧バッテリーを良品と交換するとしています。
なお、国土交通省に提出された届出の内容によると、リコール対象の部品を原因とする不具合は8件発生しており、事故は発生していません。

早期発見と早期公表はとっても大事!工業製品の不具合は避けられない
海外ではBEV用バッテリーの発火による車両火災事故なども発生しており、そのショッキングな映像に「EVって本当に安全なの?」という不安を感じている方もいると思いますが、リセバ総研所長の床尾一法と自動車webサイトCORISM編集長の大岡智彦は、今回のリコールをどのように受け止めているでしょうか。2人にコメントを求めてみました。
リセールバリュー総合研究所 管理運営者
中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。
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リセバ総研所長 床尾一法
N-VAN e:の高圧バッテリーは、日産とNECが合弁で設立し、ホンダやマツダ、三菱などもパートナーとして参画しているオートモーティブエナジーサプライ社が製造しているということで、厳格な品質管理のもとで製造されていることが伺えます。
ガジェット全体を通してみても、日本製品の純正バッテリーは高価であるものの非常に安全に設計されていて、カメラ用のバッテリーでも純正バッテリーの信頼性や電圧の安定性は(当然ですが)抜群です。
社外品でも、有名な写真機材ブランドのバッテリーの中には厳格な品質管理で安心して使えるものもありますし、実際に私も使っています(※注)。
(※注:公式には非推奨です。カメラメーカーの保証は受けられませんので注意ください。)一方で、有名通販で販売されている出処不詳の粗悪な社外品バッテリーは、電圧の不安定さや実容量の低さ、膨張する危険性など、使用しているととても不安になります。
日本のメーカーが品質を管理している純正のバッテリーを買うということは、高価であっても信頼性を買っているとも言えるのです。しかし、これは工業製品全般に言えることですが、どれだけ厳格に品質管理をしても、このようなインシデントの発生をゼロにすることは非常に難しいということです。
メーカーは言えませんが、国産ブランドの純正バッテリーが3個同時期に膨張し、カメラに装着できなくなった経験があります。今回のリコール内容を見ると、混入した異物によって加速不良が起きたり、安全装置でバッテリーの働きを停止させることで走行不能になる可能性があるということなので、ただちに高圧バッテリーが発火したりする重大なリスクがあるものではありません。その点は冷静に捉えたほうがよいと言えるでしょう。
とはいえ、ガソリン車のエンジンがさまざまな理由でトラブルが発生するように、BEVにも高圧バッテリーに起因する不具合の可能性があるということは認識しておく必要があるのではないでしょうか。
自動車情報メディア「CORISM」編集長
自動車情報専門のWebサイト「CORISM」編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、カスタムカーまで幅広くこなす。クルマは予防安全性能や環境性性能を重視しながらも、走る楽しさも重要。趣味は、コスパの高い中古車探しと、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。
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【自動車のプロ】大岡智彦
今回のホンダの対応で評価できるのは、早い段階でリコールを決定して公表したことだと思います。
クルマというのは何万点もの部品で構成されているので、どこかで不具合が起きるのは避けられません。
大事なのはクリティカルな不具合が見つかった時点で(不具合の報告件数に関係なく)早くリコールを行い交換・修理を行うことです。
もちろん、不具合を公表しないまま重大な事故が起きてからでは遅いですからね。ホンダの対応は適切だと思いますし、対象車種を所有している方は早めにディーラーに点検・整備を依頼するべきだと思います。
まとめ
BEVの車種が増加している海外メーカーではバッテリーの不具合によるリコールがいくつか発生しているものの、国内の自動車メーカーでBEVのリコールが発生するのは非常に珍しいことから、今回はその詳細をまとめてみました。リコールの対象車種は早期に点検・修理を行うことで走行不能などの不具合発生を回避することができますので、お早めに販売店に相談してみることをおすすめします。
