ジャパンモビリティショー2025 レポート ジャパンモビリティショー2025でリセールバリュー診断(2)リセバ総研所長が注目した出品車は?

10月30日から11月9日まで、東京ビッグサイトでは自動車メーカー各社が発売予定の新型車両や近未来のクルマを表現したコンセプトカーを一挙展示する「ジャパンモビリティショー2025」が開催されます。そこでリセバ総研では、プレスデーとなった10月29日の会場に潜入!自動車WebサイトCORISM編集長の大岡智彦と、リセバ総研所長の床尾一法それぞれの視点で注目の新車をピックアップしていきます。今回は、今後発売予定の新型モデルのなかから、リセバ総研所長の床尾一法が独自の視点で“リセールバリューが高そうな注目の新車”をピックアップしました。

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。
小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

トヨタ センチュリークーペ

トヨタのクルマのなかでも最上位に位置する車名「センチュリー」を、「トヨタ」「レクサス」と並ぶ自動車ブランドのひとつとして展開することを発表したトヨタ自動車。これまで長年にわたりセンチュリーはセダンタイプのみのラインナップでしたが、2023年に登場したSUVタイプに続き、今回そのクーペモデルのコンセプトカーが初登場しました。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    もともとセンチュリーというクルマは、社用車や公用車として使われる「ショーファーカー」(専属の運転手がいるオーナー向けの車)であり、中古車市場ではあまり流通しないクルマです。

    今後のブランド展開によっては、希少性というよりも工芸品のような価値が生まれて高いリセールバリューが維持されるのではないかと思います。

    またこれまでは国内専売のクルマでしたが、今後は海外でもセンチュリーブランドの人気が広がるのではないでしょうか。中古車の輸出需要も生まれそうですね。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    「カローラ」や「クラウン」に続く大規模なリブランディングですが、これからの「センチュリー」はVIPカーの域を超えた孤高の存在として、新たなブランドの確立が期待できます。

    かつての「センチュリー」を知る人と、これからの「センチュリー」に触れる人によって評価が分かれるかもしれませんが、そうしたイメージの隔たりがあるなかでのリブランディングがどうなっていくのか、その行方が楽しみですね。

トヨタ ランドクルーザーFJ

トヨタの「ランドクルーザー」は、ボディの大きさに応じて「300」、「250」、「70」という3種類のラインナップを展開してきましたが、そこにシリーズの中で最もコンパクトな大きさのランクル「FJ」が加わりました。ちなみに「FJ」とは、「Freedom&Joy」の略。発売は2026年半ば頃を見込んでいるそうです。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    「FJクルーザー」の名前も継ぎましたね。

    大型のランドクルーザー兄弟たちの中では比較的コンパクトで、大きさも(おそらく価格も)多くの人にとって手が届く現実的なランクルが誕生しました。

    ちなみに、私も欲しい1台です。

    ランドクルーザーといえば、リセールバリュー界のキング的存在。おそらくこのモデルも、発売と同時には(注文殺到が殺到して)手に入らないことは確実でしょう。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    海外からの需要はまだ読めないところではありますが、ランクルシリーズの人気を考えれば高くなるはずです。

    リセールバリューもかなり高い水準から始まると思われます。

    仮に供給が安定して値崩れを起こしたとしても、十分に高いリセールバリューを維持するでしょう。長く乗ってもよし、短期的に乗り換えてもよしのクルマと言えるのではないでしょうか。

トヨタ ハイエースコンセプト

車中泊やアウトドアレジャーのお供として大人気のハイエース。その次世代モデルのコンセプトカーが世界初公開されました。市販についてはまだ未定ですが、現行のハイエースが登場から20年以上経過していることから、今後のモデルチェンジにこのコンセプトカーのエッセンスが盛り込まれることも期待されます。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    車中泊やアウトドアを楽しむ方やカスタムカーを楽しむ方には絶大な人気がある車種で、趣味のための移動空間を自分なりにDIYしているオーナーもたくさんいらっしゃいます。

    現在のハイエースは商用車が中心であることから、ミニバンが定着した中で「バン」のスタイルが一般の方々にどこまで浸透していくかは未知数ですが、モデルチェンジしても大人気になるでしょう。

    「働くクルマ」としても「趣味のクルマ」としても高いニーズがある車種ですので、リセールバリューも折り紙付きです。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    このコンセプトカーのまま発売して欲しいという思いもありますが、逆に(コンセプトカーっぽさが溢れる)デザインでは、モデルチェンジはまだまだ先なのかなとは思います。

    ただ、このタイミングで大々的にハイエースコンセプトを打ち出したということは、何かしらのメッセージの可能性もありますので、今後の動きに注目していきましょう。

マツダ CX-5(欧州仕様車)

幅広いマツダのSUVラインナップのなかでも特に人気の高い1台である「CX-5」。世界的にも人気が高く、現在までに100以上の国と地域で販売され、累計販売台数は全世界で450万台以上を記録しています。その3代目モデルにあたるこのクルマは、今年7月に欧州で発表されたもの。日本では2026年の発売を予定しています。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    CX-5は中古車店なら「展示場に必ず在庫を置いておきたいクルマ」のひとつで、リセバ総研でもCX-5に関するページへのアクセスは多い傾向にあります。

    リセールバリューはトヨタやホンダの競合車種より低くなりますが、その分だけ質感が高くコスパのいい中古車が期待できます。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    例えば、「トヨタ ハリアー」や「ホンダ ヴェゼル」といった競合する車種と同じ年式、同じ価格帯で比べても、CX-5のほうが上質でよい状態の中古車が買うことができます。

    それでいてクルマとしての完成度も高く、高級感もあって満足度が高い。

    リセバ総研的には、登場から2〜3年が経って中古車市場に高品質でコスパのよい在庫が流通することに期待したいですね。

SUBARU Performance-B STI concept

スバルは、このジャパンモビリティショーでSTI(スバルテクニカインターナショナル:スバルのモータースポーツ部門)の名を冠する2台のコンセプトカーを展示。そのうち「Performance-B STI concept」はガソリン車のコンセプトカー(もう一台はEVのコンセプトカー)で、動的性能の高さや力強さと実用性を両立させたデザインを採用しています。市販化の予定などについては発表されていません。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    私もインプレッサのWRXを2台乗り継いだことがあるので、とても気になるコンセプトカーです。

    北米や欧州を中心とした海外でも人気が非常に高く、輸出需要も中古車価格高騰の一因となっています。

    仕様のバリエーションも多く、年式やモデルによってリセールバリューは変化しますが、いわゆるスバリストと呼ばれるファンのなかで人気は根強く、生産終了となったEJ20型エンジンの稀少性と相まって、異常と言えるほど取引価格が高騰していることもあります。

     

    このモデルの市販化は未定とのことですが、もしこれが新型WRXとして登場してくれたら、歴代のインプレッサ WRX STI Versionも含む旧モデルのリセールバリューはさらに高騰するのではないでしょうか。

床尾所長が感じた、ジャパンモビリティショーの印象は?

取材を終えて、今回のまとめとして床尾所長にジャパンモビリティショーの印象について聞いてみました。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    あくまで個人の「感想」になりますが、会場を回ってみていくつか気になることがありました。

    まず、実際に来場者が触れられる現行のクルマや発売予定のクルマがあまり展示されていませんでした。

    「モビリティ」のショーという言葉の解釈によるとは思いますが、これから購入対象になるかもしれないクルマたちが不在の中で、ショーを通じたメーカーの理解浸透やファンづくりはなかなか厳しいのではないでしょうか。

所長が欲しいクルマの筆頭、スズキの(新型?マイチェン?)クロスビー。かわいい。
新型もかわいかっこいい三菱のデリカミニ。「我が家のやんちゃな末っ子」的な顔立ちがたまりません。このデザインとフォルムは日本の軽自動車規格ならではの存在だけに、海外の記者が熱心にレポートしていた。
  • リセバ総研所長 床尾一法

    また、私はひさびさの自動車ショー取材だったのですが、誤解を恐れずに言うと「モビリティショーとは?」という部分が感じられなかったのも正直なところです。

    「モーターショーから何が変わったのか?」と聞かれても、答えに窮します。

    公共交通やシェアリングサービスなども含めた、広義な解釈での“モビリティの未来”も感じにくかったですし、メーカー各社についても同じように、未来のクルマづくりに向けたコンセプトやメッセージが感じにくかった。クルマのセールスやマーケティングを意識した「技術的な取り組み」の展示会になっている印象を受けました。

スズキの「Vision e-Sky」。 軽自動車を「生活の足」として生活に寄り添うEVをコンセプトとしている。2026年度内の量産化を目指しているそうだが・・・。
そうこうしているうちに、BYDは日本の軽規格に準拠したスーパーハイトワゴン「RACCO」の投入を発表。2026年夏に導入とのことだが、日本の軽自動車文化の象徴ともいえるスライドドアのハイトワゴンに、スズキよりもホンダよりも早くEVを投入したことに衝撃を受けた。
ハイトワゴンは重い電池を積むEVとは相性も良い。低重心化で走りもかなり変化するだろう。高速道路での横風によるふらつきも軽減されそうだ。
あとは価格が焦点だ。補助金も考慮し、車両価格が200万円台だったとしたら・・・少なくとも、都市部で一気に普及する可能性が出てくる。国内の軽自動車メーカーにとってはかなりの脅威だろう。
  • リセバ総研所長 床尾一法

    「ワクワクする未来を、探しに行こう!」というショーのコンセプトが示す通りの体験ができるかどうか、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

子どものころに夢見た、こんなトミカとプラレールの世界のような、わくわくする未来を期待したいですね。