CORISM編集長とリセバ総研所長のクルマ放談・特別編 「10ベストカー」発表目前!日本カー・オブ・ザ・イヤーのノミネート車を総チェック!
毎年、その年を代表する1台を決定する「日本カー・オブ・ザ・イヤー」。10月30日には、ジャパン・モビリティ・ショーの会場において最終選考の対象となる10台「10ベストカー」が発表されます。そこで今回は、今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーのノミネートに基づいて、注目のクルマについてリセバ総研の“ご意見番”であり日本カー・オブ・ザ・イヤーの運営にも関わっている自動車webサイトCORISM編集長の大岡智彦と、リセバ総研所長の床尾一法の二人が語り合いました。
自動車情報メディア「CORISM」編集長
リセールバリュー総合研究所 管理運営者
当記事における発言内容は、床尾一法と大岡智彦の個人的な主観・考察によって構成されています。公式の見解ではございませんのでご注意ください。
目次
「日本カー・オブ・ザ・イヤー2025-2026」ノミネート車両
今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされたのは、こちらのクルマたち。国内外の自動車メーカーから35台のクルマがノミネートされています。
| メーカー | 車種名 | |
|---|---|---|
| 1 | スズキ | e ビターラ |
| 2 | スバル | フォレスター |
| 3 | ダイハツ | ムーヴ |
| 4 | トヨタ | アルファード PHEV ヴェルファイア PHEV |
| 5 | トヨタ | クラウン(エステート) |
| 6 | 日産 | リーフ |
| 7 | 日産 | ルークス |
| 8 | ホンダ | N-ONE e: |
| 9 | ホンダ | プレリュード |
| 10 | レクサス | GX |
| 11 | アルファ ロメオ | ジュニア |
| 12 | アウディ | A5 シリーズ |
| 13 | アウディ | A6 e-tron シリーズ |
| 14 | アウディ | Q5 シリーズ |
| 15 | アウディ | Q6 e-tron シリーズ |
| 16 | BMW | 2シリーズ グラン クーペ |
| 17 | BYD | シーライオン 7 |
| 18 | キャデラック | リリック |
| 19 | シトロエン | C3 ハイブリッド |
| 20 | シトロエン | C4 |
| 21 | フィアット | 600 ハイブリッド |
| 22 | ヒョンデ | インスター |
| 23 | ジープ | レネゲード eハイブリッド |
| 24 | メルセデスAMG | CLE53 4MATIC+ カブリオレ |
| 25 | メルセデスAMG | E53 ハイブリッド 4MATIC+(PHEV) (セダン/ステーションワゴン) |
| 26 | メルセデスAMG | GT 43 クーペ GT 63 S Eパフォーマンス クーペ |
| 27 | メルセデスAMG | SL 63 S Eパフォーマンス |
| 28 | メルセデス・ベンツ | EQS 450+ |
| 29 | プジョー | 3008 |
| 30 | ポルシェ | 911 カレラ GTS |
| 31 | ポルシェ | マカン |
| 32 | テスラ | モデルY |
| 33 | フォルクスワーゲン | ID.Buzz |
| 34 | フォルクスワーゲン | ティグアン |
| 35 | フォルクスワーゲン | パサート |
ちなみに、日本カー・オブ・ザ・イヤーはどのような選定基準でノミネートや受賞を決めているのでしょうか?本題に入る前に、大岡さんに聞いてみました。
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【自動車のプロ】大岡智彦
日本カー・オブ・ザ・イヤーには、そもそも選定基準というものは存在しません。
選考委員は60名もいて、自動車評論家やジャーナリスト、有識者など様々な専門性を持った人たちが自分自身の評価軸に基づいてクルマを選ぶのです。
重要なポイントとして、日本カー・オブ・ザ・イヤーは“ただの人気投票”ではないということ。60名の専門家たちがそれぞれの専門性でクルマを評価し、そのなかで最も評価が高いクルマが選ばれるので、世の中の人気に関係なく“本質的によいクルマ”を決めるアワードだと言えるでしょう。
今年のランナップに潜む“神コスパ予備軍”
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リセバ総研所長 床尾一法
大岡さんには今年のカー・オブ・ザ・イヤーについて「10ベストカー予想」の記事を掲載いただきましたが、まずは今年のノミネートについての率直な感想をお聞かせください。
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【自動車のプロ】大岡智彦
BEV(バッテリーEV)が増えたなという印象ですね。
あとは、ハイブリッドという文字も増えました。
そして・・・つくづくSUVが増えましたね、本当に。
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リセバ総研所長 床尾一法
確かにそうですね(笑)
自動車評論家の方々は、近年の新車市場に対してそういったコメントをよくされるなぁ、という印象です。
ハイブリッドという点も、例えば「シトロエン C3 ハイブリッド」なんていう表記、私にとってはとても新鮮です。
欧州車の、なかでもラテン系のクルマの車種名に「ハイブリッド」という言葉を見ると時代の変化を感じます。さて、日本車は10台ノミネートしていますが、こちらのラインナップについての感想はいかがですか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
日本車にもBEVが多いし、SUVも多いですよね、やっぱり。
そのなかでクーペボディのプレリュードが入っているというのは、結構すごいことじゃないかとも思います。
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リセバ総研所長 床尾一法
ノミネートされた日本車の10車種のうち3車種がBEVですものね。PHEVも入れれば、EVが4つノミネートで5車種です。
ちなみに、大岡さんに書いていただいているリセバ総研の名物コーナー「神コスパ」シリーズでも、4車種がBEVやPHEVなんですよね。
なんだか、EVと神コスパ中古車は切っても切れない縁があるのかもしれませんね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
これから日本の中古車市場が神コスパだらけになりそうな気配もありますね。リーフは歴代モデルの中古車がすべて神コスパ状態ですし。
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リセバ総研所長 床尾一法
アルファードとヴェルファイアのPHEVは例外として、今回のノミネート車両を見ていると“神コスパ予備軍”と言えるクルマは結構あるんじゃないかと思います。
日産 リーフもそうですしスズキ eビターラも。
また国産車ではありませんが、中国のBYDも中古車としてのコスパを期待しちゃいます。
ノミネートの中から注目のクルマで大岡・床尾が本音トーク!
スズキ eビターラ
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リセバ総研所長 床尾一法
では、ノミネート車両の中からいくつか床尾が独断でピックアップして大岡さんの所感をうかがいたいのですが、まずはスズキのeビターラについて。
スズキが本気でEVを普及させようと意気込んでいる車種に思いますが、大岡さんの見解はいかがですか?

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【自動車のプロ】大岡智彦
その通りですね。
グローバル展開するBEVなので、これはスズキのエンジニアの方もおっしゃっていましたが、「絶対に失敗できない車種だ」と。
スズキの電動化戦略の先駆者となる存在なので、確かに失敗できない車種ですね。
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リセバ総研所長 床尾一法
私の感想としては、パッケージやスタイリングなど、奇をてらわずいい意味で“普通のクルマ”に仕上がっていると感じました。
BEVということを意識させず、普通のクルマ選びのなかでチョイスしてもらいたいという意図が感じられます。
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【自動車のプロ】大岡智彦
全体的にリスクは取っていない印象だよね。
スズキの担当者も、ガソリン車から違和感なく乗り換えられるようにすることを意識したと話していました。
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リセバ総研所長 床尾一法
試乗した印象はいかがでしたか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
いいクルマに仕上がっていますよ。
特にAWD(四輪駆動)はよかったですね。ガソリン車から乗り換えても違和感ない印象です。
ただ、これは買う人にとって考え方は色々だと思いますが、BEVにはBEVらしい良さというのもあるので、ガソリン車に対して違和感がないのが本当に正義がと言われると、私はそう思わない部分もあります。
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リセバ総研所長 床尾一法
その論点は、前回の「クルマ放談」でもテーマにしましたよね。
高い費用でEVを買うからには、EVらしさ、EVだからこその性能をどう魅力的に売り出していくかという点が大事というのは、大岡さんが常々おっしゃっていますね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
(今までのガソリン車とは)違うという点にBEVの価値があると思うんだよね。
エンジンではなく、モーターで走るクルマだからこその違いは、明確にあったほうが私はいいかなと思います。
トヨタ クラウンエステート

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リセバ総研所長 床尾一法
次は、トヨタのクラウンエステートを取り上げましょう。
クラウンクロスオーバーから始まった一連のクラウンのリブランド戦略は、このクラウンエステートが最後ということでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
そうですね。
クロスオーバー、セダン、スポーツ、エステートの4種類になります。
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リセバ総研所長 床尾一法
ここまでの一連のクラウン大変革は、大岡さん的にはどのように見ていますか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
元々のクラウンの顧客層がどんどん高齢化していたので、このままではクラウンというブランドが終わってしまうという危機感が背景にあるのではないかと思います。
こうした状況なかで、(同時期の)カローラとともにリブランディングを成功させたというのはすごいですよね。
あとは、クラウンは元々セダンのクルマだったので、クラウンのブランドをSUV全盛の時代にあわせてシフトしていくという目的もあったのだと思います。
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リセバ総研所長 床尾一法
大岡さんの見立てでは、クラウンのリブランディングは成功だったと言えるんでしょうか。
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【自動車のプロ】大岡智彦
そうですね。
かなりの高級車になってしまいましたが、購入層は若年化していますし、クラウンスポーツはスタイリッシュでカッコいいじゃないですか。シリーズ全体でいいクルマに仕上がっていると思いますよ。
もちろん、従来からクラウンセダンに乗ってきた人たちの受け皿としてセダンもラインナップしている。
かつてアルファードが出たときには、クラウンユーザーがかなり流れてしまい、アルファードは“クラウンキラー”なんて言われたこともあったのだけど、今回のラインナップ拡充でクラウンユーザーにも様々な選択肢ができたわけです。これもまたリブランディングの狙いなのかなと思います。
ホンダ N-ONE e:

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リセバ総研所長 床尾一法
次はホンダ初の電気軽乗用車として発売された「N-ONE e:」です。
補助金を含めたコスパの良さが話題になっていますが、ホンダの(普及に向けた)本気度合いってどれほどのものなのでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
ホンダの本気度は高いと感じています。
というのも、現在のところホンダ車というのは売れ筋が「フィット」「ヴェゼル」「ステップワゴン」「N-BOX」の4台に集約されています。
なかでも「N-BOX」の販売台数や保有台数はものすごいじゃない。もはやホンダは軽自動車メーカーなの?みたいな状態になってきてしまっているし。
そうなると、軽自動車を求める消費者に対して豊富な選択肢を用意しないと他社に流れてしまうという危機感はあるのではないかと思います。
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リセバ総研所長 床尾一法
N-BOXがもっとも町中で遭遇しやすいホンダ車ですからね。
かつてホンダ車(とスバル車)ばかりに乗っていた身としては、さみしい限りですが。
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【自動車のプロ】大岡智彦
そういう背景もあって、ホンダは「N-ONE e:」の販売にそれなりに本気で取り組んでいるんじゃないでしょうか。
リセールバリューが低めになるBEV対策として、発売直後から低金利の残価設定ローンを用意したり、かなり積極的だと思います。
注目の輸入車たち:ドイツ車

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リセバ総研所長 床尾一法
続いては輸入車について。
まずドイツ車でノミネートされたラインナップを見て、どのような感想をお持ちですか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
アウディは電動化技術「e-tron」ばかりで、メルセデスはハイパフォーマンスモデルの「AMG」ばかりだなという印象ですね。
今年はあまり新型車がなかったというのもありますが。
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リセバ総研所長 床尾一法
ところで、スマホをいじっていると「自動車評論家が選ぶ」的なランキング企画の記事がレコメンドされて読む機会が多いんですけど、評論家やジャーナリストが個人の主観で選ぶクルマの上位に、必ずBMWがいます。
今回も、ノミネート車両のなかに「BMW 2シリーズ グラン クーペ」がラインナップしていますが、大岡さん的にはどのように評価していますか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
まず純粋にカッコいい。
あとはサイズ感が日本に合っていると思います。
BMWと言えば「3シリーズ」のイメージですが、フルモデルチェンジ毎にボディサイズが肥大化しているし。
日本の道路事情に合うカッコいいセダンというのは選択肢があまりなかったので、輸入車でセダンが好きな方にとっては最適なのではないかと思います。
強いて言えば、パワートレインがマイルドハイブリッドだけなので、BEVがないのが残念だなというところ。
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リセバ総研所長 床尾一法
日本車に例えると、スバルの「レガシィ」がアメリカ市場優先で大型化したことに対する受け皿として登場した「レヴォーグ」みたいな存在なんですかね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
うん。そんな感じですね。
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リセバ総研所長 床尾一法
にしても、BMWが評論家の方々の心を掴むのは、なぜなんでしょうか?
(と、あえてBMW好きな大岡さんに聞いてみる)
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【自動車のプロ】大岡智彦
自動車評論家の方々はみんなクルマが好きで、運転するのが大好き。
当たり前だけど。
とにかく、BMWのクルマは運転していて楽しいんですよね。ミリ単位のステアリング操作にもしっかり反応してくれるし、前後の重量配分も50:50、人馬一体の走りが楽しめる。
そうしたドライビングプレジャーをもたらしてくれることが、BMWの核にある価値なんじゃないかと思います。だから、評論家の人たちも“選ばざるを得ない”なのではないかな。
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リセバ総研所長 床尾一法
裏を返すと、そういうキャラクターのクルマが少なくなってきているということなんでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
いやいや、メルセデスはどんどんBMWに近い作り方になってきていると思います。
かつては、メルセデスとBMWというのは(クルマのキャラクターが)対極にあったような印象ですが、最近はメルセデスがBMWの走行フィールに寄ってきているのではないかと感じています。
注目の輸入車たち:アメリカ車

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リセバ総研所長 床尾一法
続いては、リセバ総研では(流通量が少なくて)あまり話題にする機会がないアメリカ車について。
キャデラックの電動SUV「リリック」がノミネートされています。評価は上々のようですが、大岡さん的にはいかがでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
カッコいいし、大きいし、アメリカンな感じですよね。
まさに「キャデラックのSUV」というイメージ通りのクルマで、ちょっとユニークな存在かなという印象です。
これまでアメリカ国内で売れることを目指して開発されてきて、多少大味な乗り味でもアメリカ国内で受け入れられてきました。ですが、自動車メーカーはグローバル企業。ステランティスのようにアメリカメーカーと欧州メーカーが合併し、欧州やオセアニア、アジアなどより世界中で売っていかないと生きていけません。一部の国だけで売れればいい、という時代ではないんです。
そうなれば、世界のライバル車とも勝負できる仕上がりになっていくのは当然のことだと思います。

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リセバ総研所長 床尾一法
近年のアメリカ車といえば、テスラ。
モデルYがノミネートされていますが、こちらはいかがでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
操作系のほとんどをタッチパネルにしている点がちょっとやりすぎかなと。
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リセバ総研所長 床尾一法
なんだか大型モニターにユーザーインターフェイスを集約することが未来的で必然みたいな流れになっていますが、運転時の危険回避やフェイルセーフの観点で私個人は懐疑的です。
ソフト制御による改修の容易さや部材コストの削減効果はわかるんですが、メーカーの都合のように感じています。
Space Xがテスラと同じ感覚で宇宙船をタッチ操作化している映像を見たときは、ちょっと寒気がしました(※個人の感想です)。
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【自動車のプロ】大岡智彦
実は、ダッシュボードの中央にタッチパネルを配置するデザインって、右ハンドルのクルマには合わないんですよ。
日本人の大多数は右利きなので、ドライバーから見て左にタッチパネルがあると、必然的に利き手ではない左手でパネル操作をしなければならない。
これが相当なストレスなんですよね。
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リセバ総研所長 床尾一法
確かにそうだ、左手の操作になる。
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【自動車のプロ】大岡智彦
しかも、テスラはシフトレバーも無くして、シフト操作は画面上で操作する。
ますます左手で操作するのが難しいし、フラストレーションが溜まってしまいます。
テスラがきっかけで世の中のクルマのインターフェイスがタッチパネルになっていったという側面もあるので、一大ムーヴメントを生み出したのは間違いないと思いますが、それにしてもちょっとやりすぎかなと思いますね。
注目の輸入車たち:シトロエン/プジョー/ルノー

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リセバ総研所長 床尾一法
続いては、再び欧州に戻ってシトロエン C3 ハイブリッド。
デザインから随分と“シトロエンらしさ”がなくなったような、でもシトロエンっぽいと言えばシトロエンというか、なかなか意欲的なデザインになった印象ですが、大岡さんいかがでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
少しドイツ車っぽい印象にはなっているかなと思いますね。
シトロエンといえばもう少し柔らかい、丸い感じのデザインだけど、このC3ハイブリッドはかなりパキッとしていますよね。
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リセバ総研所長 床尾一法
シトロエンが普通のクルマのデザインになったという意見もあるようです。
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【自動車のプロ】大岡智彦
製品デザインでよくあることなんだけど、“(従来のデザインから)変える”ことが目的になってしまうことも多いんじゃないかと。
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リセバ総研所長 床尾一法
フツーの仕事の現場でもよくある、“変える”ことが目的化してしまうケースですよね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
「これまでのシトロエンはこうだったけど、私ならこう表現する」みたいな、チーフデザイナーのアピールみたいな側面があったのかもしれない。
一方で、他社だとノミネート車両にも入っている同じグループのプジョー「3008」なんて、プジョーらしさ全開だったりするもんね。

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リセバ総研所長 床尾一法
プジョー 3008はプジョーらしさが際立っているという印象なんですね。
走りの面ではどうですか?プジョーらし差という点で。
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【自動車のプロ】大岡智彦
“猫足”なんて表現もされたプジョーらしい乗り味は昔から象徴的ですよね。
フットワークの良さにプジョーらしさを感じるというか。
デザインを含めて、他のどのメーカーにも似ていないというのがプジョーらしさなのかなと思います。
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リセバ総研所長 床尾一法
シトロエンもルノーも、ラテン車はみなそういう立ち位置だと思いますね。
ところで、3008を見てて(個人的な感想として)現行の日産 ノートを連想したんですが、改めて現行ノートは結構いいデザインだな思いはじめてます。
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【自動車のプロ】大岡智彦
日産 ノートはモデルチェンジで新型のデザインが結構好き嫌い分かれているみたい。
私もあのテック感のあるデザインはモデルチェンジ前よりもよくなったと思いますね。
新型ルークスのデザインでも日本の工芸品をモチーフにしたという説明がよく出てくるんだけど、日本の自動車メーカーも日本の伝統的なデザインを製品デザインに取り入れるようになってきたと言えるのではないでしょうか。
それはそれでいい傾向だと思うし、マツダのように余計な要素をデザインに足さない“引き算の美学”もいいと思うし。国産車のデザインに“日本らしさ”というのが出てきつつあると感じています。
注目の輸入車たち:BYD SEALION 7

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リセバ総研所長 床尾一法
最後はアジアの新興EVメーカーについて。
今年も中国のBYDからもノミネート車がありますが、いかがでしょうか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
BYDはEVの世界販売台数でナンバーワンになってしまうほどの自動車メーカーに成長しましたね。
クルマのクオリティは高く、コスパもいい。そりゃ世界一のEVメーカーになるよねと納得できる印象です。
ただ、今回ノミネートしているシーライオン7はちょっと飛び抜けた印象がないというのが私の感想ですね。安くていいクルマだと思うけれど、今ひとつ“これすごい!”というものがないっていう印象。
それでも、日本のBEVがもう太刀打ちできないレベルまで成長しているとは思います。
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リセバ総研所長 床尾一法
日本のメーカーとBYDで一番差をつけられているところはどこでしょう?
やはり価格ですか?
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【自動車のプロ】大岡智彦
そうですね。
日本のメーカーは補助金ありきの値付けで「補助金を含めた実質金額はこれくらい」という見せ方をするので。
でもBYDの場合はもはや補助金がなくてもいいんじゃないのかというくらいのコスパを実現している。これは立派だと思いますね。
クルマのアップデートも早くて、例えばスポーツセダンの「シール」はもうアップデートモデルになって、しかも価格も下げてきました。もはや手が付けられないですね。
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リセバ総研所長 床尾一法
個人的な意見ですが、EVって設計の思想がデジタルガジェット由来の感覚なんだろうなという解釈です。
ソフトウェアでアップデートしていけば良いというか。
ただ、生産ラインも簡単に変えられるものじゃないし、そういう対応力も含めて従来の自動車メーカーとは根本的に何かが違うのかもしれませんね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
経営のスピード感、意思決定の速さが背景にあると思います。
元々BYDはバッテリーのメーカーでエンジニア集団だったりするので、エンジニアリングに関しては結構自信を持っているみたいですね。
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リセバ総研所長 床尾一法
日本市場でのマーケティングも力が入ってるなと感じます。
とある駅を降りて気づいたんですが、駅前の広場でがBYDがこんな広告を出していたんですよ(下写真)。ビジネス街や乗り換えのハブとなる駅ではなく、小さな商店街がある住宅街の駅です。
狙いがあってこの場所に広告を出したんだと思いますが、通勤・通学・買い物に駅前を通る生活者をターゲットに訴求している。
BYDは日本国内のブランディングをはじめ、戦略的にも丁寧に日本市場でのビジネスを進めている印象があります。

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【自動車のプロ】大岡智彦
BYDは短期的な収益を追うのではなく、中長期的に日本のマーケットを開拓していこうとしている印象はありますね。
極端な話、10年、20年くらいは赤字を覚悟しているのかもしれません。
それを感じたのは、BYDが日本に本格参入した際に著名なタレントをCMに起用したとき。あれって、超絶異例なんです。
日本進出を果たしたばかりの海外メーカーが日本人の人気タレントを起用して、日本独自のCMを使うなんて、相当なコストになるわけです。知り合いのインポーターに「(BYDのような広告戦略は)普通のインポーターでもできるものなのか」と聞いてみたら「ありえない」と話していましたからね。
日本のマーケットにBYDブランドを根付かせるために、まずはしっかり投資して種まきをするという考えで進めているのではないでしょうか。
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リセバ総研所長 床尾一法
私が見た街頭の広告も含めて、まずは接点を増やしてブランドの認知をしっかりと獲得していきたいということでしょうね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
その知り合いのインポーターが興味深いことを言っていたんだけど、世界的に見て海外メーカーが日本マーケットで成功するというのは稀なことでらしい。
だから日本でちゃんと売れているという実績は、世界にアピールする価値があるという考えがあるようなんです。
日本の消費者がプロダクトの品質に対する要求が厳しいというのは、世界中の自動車メーカーが言っています。
そんな日本で、国内勢や他の海外メーカーに負けじとちゃんと売れていることが証明できたら、相当な価値があるということなんでしょう。だからこそ、収益性を度外視してでも日本での展開に力を入れているんだと思います。
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リセバ総研所長 床尾一法
そういった企業の姿勢が垣間見える話は興味深いですね。
ではBYDのクルマづくりについてはどうでしょう?
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【自動車のプロ】大岡智彦
クルマそのものの価値については、10年ぐらい経ってみないとわからない。
10年後もしっかり走れるクルマになっているのか、はたまた10年も持たずに廃車になるようなクルマだったのかは、その時になって評価されるんだと思います。
ただ、BYDは今度のジャパンモビリティショーで軽のBEVを公開することを予告していますよね。そういうところからも、日本でクルマを売りたいという強い思いを感じることができます。
コスパの良さも期待されるところで、日本の消費者が求めるものを察知して投入するという、これまで日本のメーカーが海外に展開する際に実践してきた“マーケットイン”の思想でビジネスを考えていることがわかりますね。
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リセバ総研所長 床尾一法
スズキがインドに進出した際にもそうでしたが、日本企業って現地の地場にどのように浸透していくかということを考えますもんね。
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【自動車のプロ】大岡智彦
おそらく、日本メーカーのビジネス展開にBYDも学んだんだと思います。
ノミネート35車種から大岡・床尾が選ぶ“気になる1台”
床尾の気になる1台:スズキ eビターラ

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リセバ総研所長 床尾一法
私自身がスペーシアギアに乗っていて、「(現在は)スズキ好き」というのもありますが、国産EVとしても「フツーに良いクルマ」としても期待している1台です。
ガソリン車だ電気自動車だといった議論ではなく、良いクルマだから買おうという存在になってくれればいいなと思っています。
以上、新型(ビッグマイナーチェンジ?)のクロスビーに乗りたいリセバ総研所長からの選出でした。
大岡の気になる1台:ポルシェ 911カレラGTS

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【自動車のプロ】大岡智彦
試乗して感動した1台です。
電動ターボチャージャーってこれほど凄いのかと。
ハイブリッドで使用する電動モーターをターボチャージャーとして使用するので、いわゆるターボラグが全くない。
電動化技術をクルマのパフォーマンスに活用している面白い例ですし、ハイブリッドを燃費向上に使うなんてこれっぽっちも考えていないと思えるほどの潔さが新鮮です。
