なぜN-BOXはここまで強いのか?販売台数首位独走の背景にある消費者の心理とは?

ホンダ N-BOXの快進撃が止まりません。一般社団法人全国軽自動車協会連合会が毎月発表している軽自動車の新車販売数でもトップを独走しており、2025年7月時点での年間累計販売台数はおよそ12万台。2位のスズキ スペーシアに2万台以上の差をつけてぶっちぎりの首位となっています。なぜN-BOXはここまで人気なのか、様々なデータとリセバ総研所長のコメントでまとめてみましょう。

ライター

リセールバリュー総合研究所 管理運営者
ホンダ N-BOXとはどんなクルマ?
ホンダ N-BOXは初代モデルが2011年に登場した軽スーパーハイトワゴンで、現行モデルは2023年10月にフルモデルチェンジ。広い室内空間と後席を倒せば自転車も積めるほどの広く使い勝手のよい荷室スペースが特徴で、日常のお買い物からレジャーへのお出かけまで幅広いニーズに応えるクルマとなっています。ファミリー層を中心に人気は絶大で、常に販売ランキングの上位を独走しています。
現行モデルはホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」を全タイプに標準装備。軽自動車初(当時)となる「急アクセル抑制機能」も搭載され、安全性が高まりました。また、軽自動車として初めて(当時)ホンダのコネクテッドサービス「Honda CONNECT」に対応している点も特徴のひとつです。

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【クルマ大好きライター】井口裕右
メーカーが公表している車両本体価格は173万9,100円~247万5,000円。
標準モデル以外にも「N-BOX CUSTOM」や「N-BOX JOY」「N-BOX ファッションスタイル」といったスタイリッシュなエクステリアが特徴的な派生モデルもラインナップしています。
パワートレインはガソリンまたはガソリンターボの2種類で、ハイブリッドモデルの設定はありません。
新車販売台数のトップを独走するN-BOX
N-BOXの人気は新車販売データでも明らかになっています。
2025年1月から7月の車種別新車販売台数の推移を見てみると、N-BOXは一度もライバルに譲ることなく首位を独走。2位のスズキ スペーシアやフルモデルチェンジを行ったダイハツ ムーヴの追随を許さない勢いを見せています。
ダイハツ ムーヴはモデル末期となった2025年5月には販売台数を大きく減らしているものの、モデルチェンジ直後の2025年6月からは大幅に販売台数を増やしており、今後N-BOXの人気を脅かす存在になっていくか注目です。


中古車相場の傾向は?リセールバリューは?
では、中古車の在庫状況はどのようになっているでしょうか?「ガリバー」のウェブサイトで在庫を検索してみたところ、記事執筆時点(2025年8月24日)でN-BOXの現行モデルは50台程度がヒットしました。走行距離が1万キロに満たない在庫が多く、支払総額は160万円台から190万円前後が多い印象です。
一方で、2017年に登場した2代目N-BOX(前モデル)を含めると在庫数は200台を超えるため、最新モデルにこだわらずに探すと値ごろ感のある在庫が見つかるかもしれません。
現行型よりも旧型のほうが圧倒的に在庫数が多いですが、モデルチェンジで新しい機能の搭載や安全性の向上はあるものの、極端に旧モデルが劣って見えるようになるというものではありませんので、中古車は旧モデルのほうが希望の価格帯で選びやすくなっています。

◆ 支払総額について
支払総額は、記事執筆または取材した時点の当月に在庫掲載店舗の所在地で管轄内登録(届出)し、店頭で納車したの場合の価格です。
◆ 中古車在庫の例について
・上記の在庫例は、2025年8月24日時点での在庫情報の取材をもとに、一例として紹介しています。
・在庫の確保および価格を保証するものではありません。販売状況により変動します。
・購入時にオプションプランやサービスを選択された場合は、支払総額が変わります。
・中古車が展示されている店以外での購入には、車両運搬費がかかります。
・ご購入される店舗によって、車両運搬費や適用されるサービスが異なります。
一方、N-BOXは買取査定件数でも上位にあがっている1台です。リセバ総研がまとめた「リセールバリュー白書2025」によると、N-BOXの査定件数は2021年から右肩上がりで増加しており、2022年には年間8,000件、2023年には1万件を突破。2024年には年間1万2,000件の買取査定を行っています。
初年度からの経過年数別査定件数では「届出初年度から8年以上」の件数が最も多く、長く乗って手放すというユーザーが多い傾向のようです。また、ハイトワゴンはもともと中古車市場でも人気が高く、モデルチェンジしてもさほど大きな性能差も出ないため、5年落ちでもリセールバリューが高い状態が続いています。

リセバ総研所長はN-BOXの圧倒的な強さをどう見る?
それでは、こうしたN-BOXの人気をリセバ総研所長はどのように見ているのでしょうか。コメントをご紹介します。
以下の内容はリセバ総研所長の個人的な主観・考察による内容で構成されています。公式の見解ではございませんのでご注意ください。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
リセバ総研所長は、ホンダ N-BOXの人気ぶりをどう捉えていますか?
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リセバ総研所長 床尾一法
N-BOXは一言で表現すると「長所が多く欠点が少ない」クルマで、軽ハイトワゴンの選択肢として定番化している印象です。
クルマとしての個性は、2位のスペーシアをはじめ他の車種のほうが尖っているかもしれませんし、それぞれの性能を細かく比較すると他の車種のほうが優れている点もあるとは思いますが、N-BOXはトータルでのパッケージングが完成度高くまとまっていて「間違いのない選択」となっている点が強さになっているのではないでしょうか。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
不満が出ることがない「無難な選択」でもある、ということですね。
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リセバ総研所長 床尾一法
ええ、もちろんクルマに対する価値観は人それぞれですので、自分なりの価値観でクルマを選びたいという方は他の選択をするかもしれません。
ですが特にこだわりがなければ、「どの軽自動車にしようか」と迷った際に、「みんなN-BOXを買っていて売上も1位だから自分もN-BOXを買えば間違いない」という消費者心理になっているようにも感じます。
実際、購入したユーザーの満足度も高く長く乗り続けることができるため、コンパクトカーや(ファミリーの場合は)ミニバンへの買い替えニーズが起きにくいという状況は、ホンダにとってジレンマになっているかもしれませんね。
まとめ
床尾所長のコメントの通り、軽自動車の販売台数首位を独走するN-BOXの強さは、完成度の高いパッケージが持つ総合力の高さとこれまでの販売実績が、消費者に「これを選んでおけば大丈夫」という安心感を与えていることが大きな要因ではないでしょうか。
これはスマートフォンで「みんなiPhoneを使っているし、同じ選択をすれば大丈夫」という消費者心理が日本市場における圧倒的なシェアに繋がっている現象に似たものを感じます。
今後、独走するN-BOXに追いつき首位を脅かす車種は登場するのか、今後の動向に注目です。