商用車がこんなにカッコよくなるの?! 【専門家に聞いてみた】アウトドアカスタム界隈で商用車「トヨタ プロボックス」が大人気!その理由とは?

まだまだ厳しい残暑が続いていますが、秋のレジャーシーズンにはオートキャンプや車中泊をはじめアウトドアのアクティビティを楽しみたいと考えている方は多いのではないでしょうか。クルマが好きな方のなかには自分のクルマをアウトドアテイストにカスタムして楽しみたいという方もいらっしゃいますが、スズキ ジムニーやトヨタ ハイエースなどカスタムの幅が広いクルマが人気である一方で、商用車としてロングセラーモデルとなっている「トヨタ プロボックス」もカスタムのベース車両として大人気となっているのはご存知でしょうか?

そこで今回は、IDOMグループが展開するアウトドアカスタム専門店「Brat」を運営するIDOM Brat事業部の鳥海健太郎さんと、実際にアウトドアカスタムのデザイン・設計・パーツ調達を手掛ける専門チーム「Bratベース」から、カスタムデザイン担当の阿部さん、パーツメーカー担当の加藤さんに、カスタム業界から見たプロボックス人気の背景やカスタムのトレンドについてお話を伺いました。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。
アウトドアカスタム専門店「Brat」についてはこちらもチェック!

シンプルなデザインだからこそ広がる、カスタムの可能性

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    いきなり本題から伺いますが、トヨタ プロボックスは商用車としてかなりのロングセラーモデルですが、なぜいまアウトドアカスタム界隈で人気なのでしょうか?

  • Brat 阿部さん

    カスタムの定番車種と言えばスズキ ジムニーやトヨタ ハイエースが候補に挙がることが多いのですが、一方でどちらも相場価格がかなり高騰している状況があります。一方でプロボックスはベース車両のコストパフォーマンスがよく、ライトにカスタムを楽しみたいという人に受け入れられているのではないかと感じています

  • Brat 加藤さん

    プロボックスの人気が高まってきたのは現行モデル(160系)のひとつ前にあたる50系モデルからでした。パーツメーカーもこの人気を受けて様々なカスタムパーツを開発・販売していますね。人気の背景としては、いい意味で「デザインが今どきっぽくない」ところではないかと。今のクルマは未来的な流線型のデザインが多いですが、プロボックスはあくまで商用車なのでシンプルな箱型のボディをしています。だからこそ、カスタムできる余地が多くパーツメーカーもパーツを作りやすいのではないでしょうか

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    過去にジムニーのカスタムについて伺った際にも、角ばってシンプルなシルエットだからこそカスタムで遊びやすいというお話をされていましたが、シンプルなデザインだからこそカスタムの幅が広がるということなんですね。

  • Brat 加藤さん

    そうですね。独特の形状のボディをしていると、なかなかそこにカスタムを施していくとなった際に難しさも出てくると思います。逆に、角ばっていてシンプルなデザインであるほど、レトロ可愛い方向にも、男らしくカッコいい方法にもカスタムしていけるのではないかと思いますね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    なるほど。ジムニーやプロボックスなどカスタムの幅が広い車種だと実際にカスタムデザインを考案する際にもかなり選択肢が広いのではないですか?

  • Brat 阿部さん

    そうですね。特に昨今のアウトドアブームでカスタムパーツが本当に多くなってきたので、色々なテイストのカスタムが考えられて実際にデザインしていて面白いですよ。

「なにもない」ところから考える、自分色のカスタム

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    プロボックスのアウトドアカスタムについて具体的に伺ってみたいのですが、どのような部分をカスタムするケースが多いですか?

  • Brat 阿部さん

    プロボックスが持つ商用車感を自分の好みにあわせてオリジナリティあるカスタムにしていこうという方が多いですね。例えば、Bratでも得意なボディの全塗装をされる方も多いですし、フロント部分のフェイスチェンジをされる方もいます。カスタム予算を抑えたい方はフロントグリルを変えてみたり、トヨタのエンブレムを変えてみたりなど、ライトなカスタムをされるケースもありますね。クルマが持つ雰囲気を変えておしゃれに乗りたいという方が多いと思います。一方で、ジムニーのカスタムで人気のステッカーについては、プロボックスのカスタムではあまり多くは見られませんね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    内装のカスタムについてはどうでしょうか?プロボックスは内装もかなりシンプルだと思いますが。

  • Brat 阿部さん

    そうですね。内装は本当にシンプルで、あえてそこがいいところでもあります。自分で手を加えられる幅が広く面白いんですよね。内装のカスタムは実はDIYで作られるケースが多いのですが、Bratでもオリジナルのラゲッジボードなどを販売していたりもします。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    シンプルな室内のなかを自分で好きなようにコーディネートするようなイメージですね。内装、外装ともにパーツのバリエーションという点では、やはりフロントグリルやステッカーなどが多い印象でしょうか?

  • Brat 加藤さん

    パーツのバリエーションに関しては、ありとあらゆる部分のカスタムパーツが何でも揃っていると思います。特に、アウトドアニーズにあわせたルーフラックやリフトアップを目的にオフロード系のタイヤなども豊富です。内装については、ちょっと高級感を演出できるステアリングや、ウッド調のパネル、内装の雰囲気に合わせたシートカバーなどもバリエーションがありますね。阿部さんがおっしゃる通り、商用車なので“なにもない空間を自分好みにアレンジできる”というのがプロボックスカスタムの醍醐味だと思います

プロボックスのアウトドアカスタムの事例はこちらをチェック!

カスタム込みで200万円前後からという相場感が人気を牽引

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    プロボックスの中古車を購入してカスタムした場合の相場感についてはいかがでしょうか?

  • 【IDOM Brat事業部】鳥海健太郎

    カスタムの内容にもよりますが、外装については全塗装をした場合で60万円前後からのカスタムが多い印象ですね。そこから様々なカスタムによって100万円前後くらいまで幅がありますが、ライトなカスタムを含めると印象としては40万〜50万前後のカスタムが多い印象です。

  • Brat 阿部さん

    ベースになるプロボックス本体の中古車相場がだいたい120万円〜130万円前後で、それにカスタム費用を上乗せしていく形ですね。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    トータルで概ね200万円前後からと考えると、ジムニーなどと比較してコストパフォーマンスは相当良さそうな印象ですね。ジムニーもハイエースもベース車両の高騰が続いているので、それに対してプロボックスは価格的にも手が出しやすいという点も人気の秘密なのでしょうね。

  • Brat 阿部さん

    そうだと思います。カスタムされるお客様の年齢的にも幅が広く、若い人にも人気が高いですね。例えば、荷物を積み込んでパートナーの方と一緒にアウトドアレジャーを楽しみたいけれど、ハイエースほど大きく高価なクルマは要らないという方が多い印象ですね

  • 【IDOM Brat事業部】鳥海健太郎

    ただ最近では、カスタムしたプロボックスを街乗りニーズで使うという方も多いですね。クルマの見た目で自分自身の個性を表現して、“ファッション感覚でクルマを楽しむ”という人はプロボックスの購入者にも増えてきていると思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    以前のインタビューでジムニーは最近女性からの人気も高いというお話をされていましたが、プロボックスについてはいかがでしょうか?

  • 【IDOM Brat事業部】鳥海健太郎

    ジムニーほど高くはないですが、女性からの注目も高いですね。

  • Brat 阿部さん

    車両の展示イベントなどにカスタムしたプロボックスを持っていくと、女性の方も興味を持って見てくれますね。またプロボックスをメインで乗っている女性YouTuberの方もいらっしゃったりして、その影響で興味を持ったという女性のお客様も増えています。

車中泊はできる?日常使いの利便性は?プロボックスの疑問あれこれ

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    ところで、最近車中泊ブームが盛り上がりつつありますが、屋根が低いワゴンタイプのプロボックスでは車中泊できるものなのでしょうか?

  • Brat 阿部さん

    そうですね。実は後部座席のシートは倒すことができるので、荷室全体で180センチ程度のスペースを確保することができます。家族4人でというのは厳しいと思いますが、パートナーと2人で寝るのには困らないのかなと思いますね。

  • Brat 加藤さん

    最近ですと、様々なメーカーからプロボックス専用のベッドキットを出していたりもしますし、市販のマットレスもサイズが合えばちゃんと入りますので、それらを活用すると余裕で車中泊できるのではないかと思います。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    カスタムされているとはいえベースのプロボックスは商用車ですが、日常での使い勝手はどうでしょうか?

  • Brat 阿部さん

    これはプロボックスだけでなくハイエースでもよく出る質問なのですが、ハイエースもプロボックスもあくまで商用車がベースなので、正直言って日常使いの実用性については「文句なし」なんですよね。ただ一方で、これまで一般的な乗用車にしか乗ってこなかった人や同乗する方にとっては、シートの座り心地が異なることなどから乗り心地に若干の違和感があるかもしれません。なので、趣味を楽しむというところに焦点を当てつつ、生活スタイルや日常的なカーライフにマッチすれば、いい相棒になるクルマなのではないかと思いますね

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    カスタムも楽しめるし実用性もあるけれど、乗り心地については商用車としての素性が出てしまうと。趣味を楽しむというところに重きを置くか、日常的な運転時の乗り心地を重視するか、どちらを軸にクルマを考えるかというのが重要になってくるということですね。

  • Brat 阿部さん

    そうですね。ただ、そうは言ってもプロボックスは商用車のなかでも乗り心地は良いほうだと思います。ただ、走行時のロードノイズは少し気になるかもしれませんね。

  • 【IDOM Brat事業部】鳥海健太郎

    商用車は乗用車で求められる静粛性や快適性を割愛している分、コスパよく作られてるわけです。一方で、考え方によっては乗用車に搭載されている機能や性能ってすべてが必ず必要というわけでもありません。シンプルな商用車を日常使いでも楽しめるように、自分が気になるところをカスタムしてみたり、自分のほしい機能や性能を付け足してみたりなど、自分自身の好みにあわせてカスタムできる最高の素材がプロボックスなのかなと思います。「ベース車両を“レベル1”として、そこに内装・外装を自分好みにレベルアップしながら自分だけの1台に仕上げていく」というのが、プロボックスカスタムの楽しみ方だと思いますね。

  • Brat 加藤さん

    プロボックスは燃費もいいし、小回りも利くので狭い駐車場などでも取り回せる。基本性能はいいクルマですし、カスタムパーツのなかにはリアシートをリクライニングにできるキットなども用意されているので、ニーズに合うカスタムパーツを組み合わせて世界に1台だけの「自分オリジナルのプロボックス」を作ってみてほしいですね。

まとめ

お話を伺って、プロボックスはシンプルな箱型デザインと実用性を重視した機能を備えたクルマだからこそ、そこに様々なパーツを付け加えて自分が欲しいと感じた機能を追加してみたり、ボディのカラーリングを自分の好きな色にしてみたりしながら、自分の個性を表現した1台を作り上げていくというのがプロボックスカスタムの醍醐味だということがわかりました。ベース車両の中古車相場も踏まえると、ライトにアウトドアカスタムを始めてみたいという初心者の方にもおすすめの1台と言えるのではないでしょうか。