若者のクルマ離れに変化の兆し?都内の若年層免許保有者の約4割「カーシェアリングを利用」

ライフスタイルの多様化や経済的な負担などを背景に、「若者のクルマ離れ」が自動車業界全体にとって大きな課題となっていますが、その傾向に変化の兆しが見えてきたかもしれません。下北沢自動車学校株式会社が、東京都内在住で18歳から24歳の普通免許保有者304名を対象に行ったアンケート調査によると、回答者の40.1%が「カーシェアリングを利用している」と回答したのです。

小さい頃からのクルマ好きで、大学生で免許を取ると貯めたバイト代で中古車をすぐに購入。以来、年間数万キロを走り回って無事故を維持していることを密かな誇りにしている。趣味は、ドライブ旅行とモータースポーツ。カメラを持ってサーキットに行くと流し撮りに命を懸ける。一般ドライバーの視点で、カーライフとリセールバリューの「これってどういうこと?」を紐解いていきます。

当記事は各種統計や調査結果データを元に筆者の個人的な主観・考察による内容で構成されています。リセバ総研の公式見解ではございませんのでご注意ください。

若者のクルマ離れはどうして起きたのか?

諸説ありますが、若者のクルマ離れが顕在化したのは2000年代に入ってからと言われています。警察庁がまとめた「運転免許統計」と総務省がまとめた「人口統計」をもとに算出すると、2000年には約91%あった20代の運転免許保有率は、2023年には約79%まで低下。かつては運転免許を身分証明書として活用するいわゆる「ペーパードライバー」もいましたが、最近ではマイナンバーカードの普及もあり運転免許保有率は下がり続けています。

若者のクルマ離れには様々な要因が挙げられますが、ひとつは経済面での課題です。給与所得の中央値はここ10年ほどでほとんど変わりませんが、一方でクルマの価格やガソリンなどの維持費は上昇を続け、若者の所得ではクルマを購入し、維持するのが困難になってきたという要因が考えられます。そしてもうひとつは都市部への人口集中とライフスタイルの多様化です。都市部は公共交通や生活インフラが充実しているためクルマを所有しなくても移動や生活には困らず、また余暇の楽しみ方の選択肢も多いためクルマでレジャーを楽しむということへの興味関心が希薄になってきたとも言われています。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    都市部の若者を中心に「クルマが生活に欠かせない」という状況が薄れたことで、若者がクルマを購入することに関心を持たなくなったといえるのではないでしょうか。

若者層に刺さった「カーシェアリング」はクルマへの憧れを再び生み出せるか

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    これまで、自動車業界は「どうすれば若者が再びクルマに関心を持ってくれるか」を大きな課題としてきました。こうしたなか下北沢自動車学校が行ったアンケート調査は、この課題解決に新しい示唆を示しています。

調査によると、都内在住の若年層(18歳〜24歳)で普通自動車免許を保有している人の約4割にあたる40.1%が、カーシェアリングサービスを利用していることが明らかに。利用頻度については「年に数回」が39.3%で最も多く、2位が「2〜3か月に1回」で26.2%、3位が「月1回程度」で13.1%という結果に。カーシェアリング利用者の約6割が2〜3ヶ月に1回以上はカーシェアリングを活用しているのです。

そして、カーシェアリングの利用目的(複数回答)については、「旅行・観光」が63.9%で最も多く、2位の「趣味(アウトドア・スポーツ等)」(34.4%)、3位の「レジャー施設への移動」(31.2%)、4位の「ショッピング」(25.4%)という結果を総合すると、主に余暇を楽しむ目的、レジャー目的で利用していることがわかりました。

  • 【クルマ大好きライター】井口裕右

    この結果は、「都市部での生活にクルマは不要だが、レジャーを楽しむためにはクルマを活用したい」という若者たちの意向を示唆しており、クルマの有用性やその楽しさを体験している若者層が一定数存在していることを意味しているのではないでしょうか。

このことは、「カーシェアリングサービスを利用して良かった点」を尋ねた質問(複数回答)の結果でも示唆されています。1位は「予約・返却が手軽」(45.9%)とカーシェアリングそのものの利便性への評価になりましたが、1位に匹敵する支持を得た2位には「行動範囲が広がった」(45.1%)とクルマの有用性そのものを評価する声が。また別の質問でも、カーシェアリングを利用している人の約75%が「以前より行動範囲が(大きく/やや)広がった」と回答しているほか、約65%は「生活の質(QOL)が(大きく/やや)向上した」とも回答しており、カーシェアリングを利用した若者層がクルマの利便性やクルマのある生活の豊かさを体験していることが示唆されています。

調査の結果はこちら(外部リンクに移動します)

まとめ

調査結果からも、カーシェアリングサービスが「日常生活の中で手軽にクルマを活用できる」という利点を活かして、若年層に「クルマのある生活」「カーライフの楽しさ」に対する関心を喚起することに大きく貢献していることが見えてきました。ここからさらに若者のクルマ離れという課題を解決していくためには「クルマのある生活って楽しい」という体験をする人たちをさらに拡大させていくこと、そしてその中から「いつかは自分の好きなクルマに乗りたい」というマイカーへの憧れを生み出していくことが大切なのではないでしょうか。現在は若年層である10代〜20代の人たちが、歳を重ねて家庭を持ち家族が増えてクルマの必要性や感じたときに、カーシェアリングで感じたクルマ移動の利便性や楽しさからクルマの購入に興味を持ってくれるか。今後の動向に注目したいところです。