ファイナンシャルプランナー・高山一恵さんに聞く、物価上昇時代の「クルマの通勤・通学とお金」

食品や光熱費など、生活必需品の価格上昇で、家計が圧迫されていると感じていらっしゃいませんか?ガソリン価格の高止まりも続いているなか、マイカーでの通勤・通学をあきらめて、公共交通機関への切り替えを検討している方の声も聞こえてきます。理想のライフスタイルを実現するための、何かいい方法はないのでしょうか。そこで今回は生活者に身近なお金の相談を受けていらっしゃるファイナンシャルプランナーの高山一恵さんにお話をお伺いしました。

(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

中古車派のドライブ好きライター
家族を持ったことがきっかけで自家用車を購入し、子どもの誕生などライフスタイルに合わせて買い替えて今は3台目。旅行先ではレンタカーを借りて、いつもと違う車でのドライブを楽しんでいます。安全性と運転のしやすさ、デザイン重視。新車だと手が出ない車種に乗れるので中古車派。リセバ総研で書き始めてからは街で走っている車についつい目が行きます。日常とレジャーで年間1万キロほど走っている、一般的なカーユーザーの視点をお届けします。
物価上昇基調が続く見込み。食品やガソリン価格に注目
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【外部ライター】KY
生活必需品の価格上昇を肌で感じるようになりました。高山さんは昨今の物価上昇をどのように捉えていらっしゃいますか。
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【お金のプロ】高山 一恵
今後も物価の上昇傾向は続くと見ています。中長期的に見ていくと円安が進み、輸入品が高くなる可能性が高いのではないでしょうか。S&P500など外国資産への投資、Googleなど海外の大手ITの利用拡大によるデジタル赤字など、円安傾向に拍車をかける要素が多く、企業努力による価格抑制にも限界があります。
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【外部ライター】KY
さまざまな物の値段が上がっています。特に注目されていらっしゃるポイントを教えてください。
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【お金のプロ】高山 一恵
家計への影響を考えると食品の値上げに注目しています。帝国データバンクが国内の主な食品メーカー195社を対象に行った調査によると、7月に値上げされた食品は2105品目にものぼっています。円安が進むと輸入食品も値上がりするので、しばらく家計にはつらい状況が続きそうです。
マイカーを持っている家庭にとって大きな影響があるガソリン価格にも注目しています。
資源エネルギー庁が7月30日に公表した「石油製品価格調査の結果」によると、7月28日時点でレギュラーガソリンは1リットルあたり174.0円で、前週の173.6円と比べて0.4円の値上がりでした。ここ数年のガソリン価格は高い水準のまま横ばいで推移していて、通勤・通学でクルマを使う方々の家計を圧迫しています。
ガソリン価格は輸送費を左右するため、当然物価にも影響を与えます。7月の参議院議員選挙で話題となった「ガソリンの暫定税率廃止」が実現すれば、ガソリンの小売価格が下がるため、今後の国会での議論に注目していきたいところです。
クルマでの通勤・通学にかかる費用
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【外部ライター】KY
このまま物価が上昇していくと、クルマでの通勤・通学をあきらめないといけなくなってしまいそうです。
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【お金のプロ】高山 一恵
マイカーで通勤・通学するためには、購入費はもちろん、維持費がかかります。税金や保険、車検、駐車場、メンテナンス、ガソリンなどさまざまな費用が必要です。
日本自動車工業会「2023年度乗用車市場動向調査」によると、平均月間維持費(燃料代・修理代・有料駐車場代・有料道路通行料等で、車両代・ローン返済・保険料・税金は除外)は12,100円と2017年度より上昇が続いています。
維持費の「負担感が大きい」が60%を占め、「車検代」は約8割、「任意保険料」「燃料代」は7割以上が負担を感じており、「燃料代」は21年度より+10ポイントと大幅に増加しているという結果が出ています。特に注目したいのが、家族成長前期・後期の負担感は7割前後となっていることです。
同調査では実際に、「現在クルマを保有しない理由」として、「ガソリン代や駐車場代が負担」が30%と最も高く、「車検費用が負担」が25%で続いてます。さらに地域別で見てみると、首都圏では「ガソリン代や駐車場代が負担」が39%、「車検費用が負担」が32%と高く、地方圏は「高齢、病気、体力理由」が27%となっています。
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【外部ライター】KY
クルマの維持にも物価上昇の影響を感じますね。
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【お金のプロ】高山 一恵
クルマの主使用用途は「買物・用足し・他」が4割強で、今回のテーマである「通勤・通学」が3割強となっており、過去の調査と比較するとあまり変化は見られません。
購入したい車への考え方は、「多少価格が高くても燃費のよい車」が+6ポイントで78%と増加しており、ガソリン価格の高騰を意識している方が多いことが想像できます。
今後の車の保有を減らす・やめる理由として、「車検費用が負担」が29%、「ガソリン・駐車場代が負担」が23%となっています。特に「ガソリン・駐車場代が負担」は21年度より9ポイント増加しており、家計への影響がうかがえます。
物価上昇時代のクルマ維持戦略
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【外部ライター】KY
車の維持の大変さばかりに目を向けると、クルマでの通勤・通学を諦める結論になってしまいそうです。
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【お金のプロ】高山 一恵
大切なのは、生活において何を大事にするのか、優先順位をつけることです。クルマ通勤・通学にはもちろんメリットとデメリットがあります。2024年に執筆した「クルマ通勤と電車通勤、どっちを選ぶべき?」でも触れた、メリット・デメリットをおさらいしてみましょう。
クルマ通勤には「時間の縛りが少ない」「荷物を運びやすい」「座れる」といったメリットがあります。一方、デメリットには「渋滞にはまる可能性がある」「運転中に他の作業はできない」といったようなものがあります。
最近は猛暑が続いていますので、外を歩かないで済むクルマ通勤には暑さ対策もメリットとして挙げられます。
また、コロナ禍後に鉄道運賃の値上げが相次いでいます。2023年には東急や、京急、京王などが値上げに踏み切り、2024年、2025年も各社が改定を実施しました。さらに2026年春の改定に向けて、JR東日本や西武、つくばエクスプレスが申請中です。そのためマイカー通勤・通学との差が縮まる可能性があります。
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【外部ライター】KY
物価上昇に負けずにクルマ通勤・通学を維持するためのアドバイスをいただけないでしょうか。
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【お金のプロ】高山 一恵
節約と収入アップの両面から考えることが必要です。
節約でまずやるべきことは固定費の削減です。保険や携帯電話のプラン、電力会社の比較検討などから始めましょう。私に相談にいらっしゃるお客様の中には、いわゆる“ポイ活”で賢くポイントを貯めている方や食費を減らしている方もいらっしゃいます。ここで大事なのが、楽しみながらやることです。食費をただ切り詰めると栄養面も悪くなりますし、味も落ちてしまいます。うまくやっている方は、レシピや食材を工夫すること自体を楽しんでいます。
クルマ関連ですと、自動車ローンや自動車保険を適当に選んだり、営業マンの言うことを鵜呑みにせず、しっかりと調べて決めることが大切です。賢く無理なくクルマを使っている方々は、皆さんよく勉強されています。
節約だけですと限界があるので、収入アップにも取り組むこともお勧めです。投資や副業、資格取得、キャリアアップなどさまざまな方法があります。私のお客様でもインターネットを活用して、ブログのアフィリエイト収入を得たり、インスタグラムを活用してインフルエンサーになったり、SNSのコンサルティングをしている方もいらっしゃいます。
今はスポットで時間ができたときにアルバイトができるサービスもあるので、無理なく数時間だけの仕事を気軽にすることもできます。
クルマでの通勤・通学を叶えるための手段は今、たくさんあります。ライフスタイルに合わせて優先順位を決めて、行動することをおすすめします。
まとめ
今後も物価が上昇していくことを考えれば、節約や収入アップのために行動が不可欠です。ガソリンの暫定税率が廃止されれば維持費の負担が軽くなるのでニュースをチェックしたり、マネーリテラシーを高めていくことが求められます。大切なのは生活の中でクルマをどう位置づけるか。物価上昇時代でも賢く行動すれば、クルマでの通勤・通学をあきらめる必要はなさそうです。