2025年上半期の中古乗用車登録台数は前年比マイナス、今後の市場はどうなる?

日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)は2025年6月の中古車登録・届け出台数を発表し、これをもって2025年上半期の中古乗用車登録台数の中古車登録・届け出台数がまとまりました。

ライター
「普通乗用車」「小型乗用車」「軽乗用車」を合算した乗用車の中古車登録・届け出台数は2025年上半期の合計で281万4371台となり、前年比で約1万8000台のマイナスとなりました。上半期の比較ながら2022年を起点に2024年まで続いた成長は、2025年でわずかながら減少に転じたかたちです。


*中古車登録・届け出台数は、新規登録台数と名義変更の台数の合算で、販売数ではありません。
普通乗用車・小型乗用車は前年比マイナスも、軽乗用車は前年比プラス
では、個別に見ていきましょう。自販連が発表した普通乗用車・小型乗用車の中古車登録・届け出台数は、2025年上半期合計が161万2994台となり、前年同期間の合計(164万2369台)と比較して約2万9000台のマイナスとなりました。
2021年から上半期合計の推移を見ていくと、2021年が約171万台と突出していますが、2022年以降については2023年-2024年で約6万台増加するなど大きな成長が見られています。2025年はこの大きな増加の翌年にあたります。月別に比較していくと、2022年以降は微増・微減を繰り返しながらほぼ横ばいで推移している印象です。


*中古車登録・届け出台数は、新規登録台数と名義変更の台数の合算で、販売数ではありません。
一方、全軽自協が発表した軽乗用車の中古車登録・届け出台数は、2025年上半期合計で120万1377台となり、前年同期間の合計(119万0187台)と比較して約1万1000台のプラスに。こちらも2021年から上半期合計の推移を追うと2021年が約130万台となっていますが2022年以降はおよそ120万台前後で推移しています。
普通乗用車は2023年-2024年で大きな増加が見られましたが、軽乗用車ではそこまで大きな動きは見られません。月別の推移も普通乗用車と同様に2022年以降は微増・微減を繰り返しています。


*中古車登録・届け出台数は、新規登録台数と名義変更の台数の合算で、販売数ではありません。
前年同期比マイナスに転じた中古車登録件数、今後の見通しは?
わずかながら前年比マイナスに転じた中古車登録件数の推移について、リセバ総研所長の床尾一法はどのように感じ、また今後の見通しについてどのように見ているでしょうか。
当記事は筆者の個人的な主観・考察による内容で構成されています。公式の見解ではございませんのでご注意ください。

リセールバリュー総合研究所 管理運営者
中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
まずは、対前年比で若干のマイナスとなった中古車販売台数ですが、セグメント別で見ると軽自動車は前年比プラスとなりました。こうした動きをどのように見ているでしょうか?
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リセバ総研所長 床尾一法
ガリバー店舗での販売動向を見ても、軽自動車の販売台数は増えています。また、ミニバンの人気にも若干の陰りが見られ、物価の上昇やガソリン価格高騰などで消費マインドが落ち込んでいることが背景にあるのではと考えられます。
加えて、中古車の流通状況が変化してきている点も影響しているかと思われます。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
中古車流通の変化というのは、どのような要因によるものでしょうか?
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リセバ総研所長 床尾一法
リセバ総研でも繰り返し話題に出ている、「輸出」の影響です。
今期は各メディアでも報道されていますが、円安の影響で海外から見ると日本の優良な中古車を安く買うことができる状態が続いているため、国内の中古車販売店が良質で熟れた価格の中古車在庫を確保するのが難しくなってきています。
国内の中古車流通自体は増加しているのですが、中古車として消費者にも魅力的な価格帯の良質車、商品価値の高い中古車が減少しています。
ガリバーでも優良な中古車在庫を揃えるために様々な努力をしていますが、一方で帝国データバンクが発表した中古車販売店の倒産に関するデータを見る限り、この在庫不足を背景に厳しい状況に陥っている中古車販売店は少なくないでしょう。
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【クルマ大好きライター】井口裕右
消費マインドの落ち込みは今後の中古車販売にも大きな変化を生み出そうですが、これから中古車市場はどのように動いていくと感じていますか?
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リセバ総研所長 床尾一法
中古車の輸出が好調であることを背景にした国内における在庫確保の難しさと、消費マインドの落ち込みが国内販売台数に影響を与えていますが、一方でオートオークションなどを含めた中古車市場におけるエコシステムそのものは活況を続けています。
ただ、国内で販売される中古車の品質と価格帯のバランスは、これまでとは少し変わってくると考えられます。
想定より少し価格が高くなっても満足のいく品質の中古車を買う、あるいは想定している予算の中で内外装のやや評価が低めの中古車や低年式の中古車から買いやすいものを選ぶ、といった買い方の分化がより鮮明になる可能性もあります。
実際、リセバ総研の集計している買取査定データでも、10年落ち前後の低年式で低価格帯にあたる軽自動車の買取査定相場(平均売却予想)は上昇が続いています。これはオートオークションでそういった「安価な軽自動車」のニーズが高まっているということでもあります。
どういった中古車の選び方に推移するかは、消費者物価動向や賃金など踏まえた経済状況に大きく左右されると考えています。
まとめ
国内の中古車販売動向には、輸出好調による在庫確保の困難さ、消費マインドの変化、経済的な軽自動車への注目の高まりなど様々な特徴が生まれていることがわかりましたが、所長は「この状況が今後もトレンドになるとは言い切れない」と言います。
中古車市場のトレンドは、今後の経済状況の変化、消費者マインドの変化、人気車種のトレンドなどによっても変化する可能性があり、今後も市場動向に注目していく必要があります。リセバ総研では今後も中古車市場に関連する様々なデータを取り上げ、市場動向を分析していきます。