中古車相場のプロに聞く! 【最新中古車市況(10)】2025年小規模中古車販売店の倒産増加〜その兆候は昨年からすでに見えていた?〜

2025年も第2四半期(4〜6月)が終わり、中古車市場も後半戦に突入。7月に入り、さっそく恒例となっている「中古車仕入れのプロ〝OKB〟」への四半期インタビューを行った。今回もさまざまな話が飛び出して内容も濃く、1度では紹介しきれない。そのため、4回に分けてお届けする。
2025年夏の第3回(通算第10回)は、ニュースにも取り上げられている「中古車販売店の倒産が過去最多」(帝国データバンク調べ)となっている話題ついてお伝えしたい。実は過去のインタビュー取材で〝OKB〟はすでにこの状況を予見していたのだ。

【中古車相場のプロ】〝OKB〟

中古車マーチャンダイジング部門管理職

大学生時代は自動車研究部でジムカーナや耐久レースに没頭し、2009年入社に旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)入社。 ガリバーの店舗で営業職を2年経験した後、本社に異動。電話によるクルマ買取サービスを2年担当する。その後、マーチャンダイジング部門で中古車買取価格の設計、オークションでの売却担当などを歴任。 現在はマーチャンダイジング部門の管理責任者として、中古車の仕入れや商品構成の設計を統括する。お客様のご来店を促進させる在庫構成を設計する、中古車のスペシャリストだ。

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。

現場から見た「自動車の売り方/選び方」の今

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ここ数年、過度な輸出需要で、日本国内の中古車市場では在庫確保の難易度が格段に上がっていますね。

    仕入れ担当者のみなさんは、良質で値頃感のある中古車の仕入れに日々奔走されていますが、一方で中古車の在庫に対する中古車販売店の現場の声、お客様から中古車選びに対する戸惑いの声のようなものはありますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    日々良質な在庫確保に努めているので、販売現場での売りにくさや、中古車が選びにくくなったという印象は持っていません

    それよりも、そもそも中古車がクルマ選びの選択肢から外れてきているのかな?という気配を個人的には感じます。

    お店に来ていただいているお客様の層に変化があったわけではなく、どちらかというと、今まで新車を買うか中古車を買うかの2択だったところに、新車のサブスクや認定中古車など、選択肢の幅が広がってきているというところです。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    クルマを買うにしても、商品が新品か中古品かという選択肢に加え、持つか借りるか、どんな契約をするか?どのように支払うか?

    さまざまな選択肢が出てきているということですね。
    (そのあたりの話はまた別の機会に・・・)

    では、クルマの買い方の一つである「中古車販売店」の領域に絞って、なにか気になる動きはありましたか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    面白いなぁと感じるのは「◯◯専門」といった中古車専門店が増えているということです。

    ただ、業界全体を通して見ると、継続的な動きとは言えないと思ってます。最終的には一般的でオーソドックスな中古車店が主流に戻っていくとされていくと(個人的には)考えています。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    専門店型にも、世の中の流れというか、時流があると。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    ともかく、今は専門店や多種多様な指向に特化した(自動車販売の)サービスに流れていると感じています。

    乗り方にしても、リース車でいいという感覚も広がっているかもしてませんが、2026年にかけて、やっぱり車は所有した方が良いよねという流れが来るのではないか?と感じています。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    それはどういうところで感じるのですか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    市場を見続けていた上での、私の直感です

    いろいろな選択肢を試した結果、「やっぱり中古車を買うのが一番いいよね」ということに気づく人が増えるのではないかと思います。根拠があるというよりは、ずっと業界を見てきた上での感覚です。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    根拠はないけど、自動車流通をずっと見てきた直感、ということで(笑)

中古車販売業者の倒産が増加する兆候は昨年から見えていた

  • リセバ総研所長 床尾一法

    実は2024年12月のインタビューで、小規模な中古車販売店の倒産が「これから増えるのでは?」と予想されていました

    さすがにセンシティブな内容なので、記事にはしなかったのですが・・・その後、この春以降にニュースでも取り上げられ、話題になりました。

「中古車販売店」の倒産動向(2025年1-5月)※帝国データバンク公式サイトに遷移します

https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250609-chuukosya1-5/

  • リセバ総研所長 床尾一法

    こういった兆候は、どういったところでを掴めたのでしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    出所が不明瞭な車両を頻繁に見かけるようになったことです。

    自動車流通業界のさまざまな場所に顔を出していると、ディーラーさんあたりからもこういう話が出てきて、最近なんだかおかしいな?という状況でした。
    お客様がローンを支払えずに引き上げてきた車両が増えていたりして、いろいろと情報収集してみると、「危険な状態」にある事業者の噂も出てきていました。

    大手の中古車販売事業者は大丈夫なのですが、資金繰りが厳しい業者さんが手持ちの車両をともかく売却する、といった話が全国の市場で聞こえてきてきたのが2024年の12月ぐらいです。ともかく怪しげな車両の流通量が増え始めました。

    もちろん、我々仕入れ担当者はそこを見極める仕事をしているんでご安心ください。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    オークション会場でも兆候として見えていたのでしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    いくつかの兆候がありました。

    オークション会場では会員ごとに(車両取引の)融資枠が決まっているのですが、その融資枠が減少している業者さんがいました。落札した車両の支払い遅延が起きると融資枠の上限が低くなるので、資金繰りの兆候が見えてきます。

    あと、オークション会場では、中古車を仕入れて2週間以内に代金を振り込みしなければいけないのですが、その支払いが遅れる業者さんも増えていました。

中古車をどこで買うべきかをじっくり考える

  • リセバ総研所長 床尾一法

    輸出需要による相場高騰で中古車仕入れの難易度も上がり続けていますし、小規模な中古車販売店には厳しい状態が続きますね。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    最近も、とある事業者が行方知れずになり、お客様が車を買ったのに車が来ない、お金も戻らないということがありました。

    これまでも、小規模な事業者でそういった話がなかったわけではないのですが、2022〜2023年に中古車業界の不信につながるような事件が大きな問題となって以降、メディアでも中古車業界のさまざまな事象が細かく報道されることが多くなりました。

    昔から「怪しい中古車販売店では買わない」という顧客の警戒はあったとは思いますが、お客様は常に見てらっしゃいます。
    中古車を買うことへの警戒心も増して、「どこの販売店で買うか?」を考える人が増えているのではないでしょうか。
    仕入れや売買のガバナンスがしっかりしていない業者は厳しくなってくるでしょう。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ただ、一般のお客様が、品質やサービスにリスクを伴う中古車販売店を見抜くのは難しいかもしれませんね。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    一般のお客様が見極めるのは、なかなか難しいでかもしれません。

    私の場合は、お店の様子が何か今までと少しでも違う変化があったとき、「大丈夫かな?経営が変わったのかな?何かあったのかな?」と感じますが・・・何か違和感があったお店は警戒した方が良いということぐらいしか言えませんね。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    展示車のラインナップがだんだん古くなってきて、程度の良い車も少なく、時間が止まったようになっているというか・・・

    展示車が埃をかぶり始めた、といったところでしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    それはあります。仕入れをしていないと、展示台数が減って、売れない在庫だけが残っているという状況になりますし。

    常に展示在庫が一定数あって、展示の仕方やラインナップも頻繁に入れ替わっていて、展示場を見学するお客様を見かける機会が多いお店は、販売も好調だということがわかります。
    それが判断材料のすべてではないのですが、常に活気があるお店で選びたいですね。

次回、第11回に続きます。