中古車相場のプロに聞く! 【最新中古車市況(8)】2025年第2四半期を振り返る:人気の高級ミニバンや高級SUVの相場下落が続く

2025年も第2四半期(4〜6月)が終わり、中古車市場も後半戦に突入。7月に入り、さっそく恒例となっている「中古車仕入れのプロ〝OKB〟」への四半期インタビューを行った。今回もさまざまな話が飛び出して内容も濃く、1度では紹介しきれない。そのため、4回に分けてお届けする。
2025年夏の初回(通算第8回)は第2四半期の振り返りとともに、世界中で人気の「あのSUV」の相場下落、中古車輸出を取り巻く状況についてお伝えしたい。

【中古車相場のプロ】〝OKB〟

中古車マーチャンダイジング部門管理職

大学生時代は自動車研究部でジムカーナや耐久レースに没頭し、2009年入社に旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)入社。 ガリバーの店舗で営業職を2年経験した後、本社に異動。電話によるクルマ買取サービスを2年担当する。その後、マーチャンダイジング部門で中古車買取価格の設計、オークションでの売却担当などを歴任。 現在はマーチャンダイジング部門の管理責任者として、中古車の仕入れや商品構成の設計を統括する。お客様のご来店を促進させる在庫構成を設計する、中古車のスペシャリストだ。

リセバ総研所長 床尾一法

リセールバリュー総合研究所 管理運営者

中古車情報誌の最大手での制作、自動車メディアの立ち上げ責任者などを経験。20年以上マーケティングのインハウスやコンサルタントで活動。2017年に人材開発へ転向。対話空間や学習空間の設計、言語化と構造化設計を得意とする。CompTIA CTT+ Classroom Trainer Certification取得。2023年より、マーケティングに復帰。中古車マーチャンダイジングの研究とともに、メディア運営設計を担っている。実は元カメラマン。

大型車の市場が冷え込み需要はコンパクト一強が続く

※当記事のインタビューは2025年7月上旬に行われています。

※当記事の内容は、各担当者の経験に基づく主観的な感想や予想を中心とした個人の見解です。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    まずは、2025年第1四半期(4月から6月)を振り返ってみて、ご感想をお聞きしたいと思います。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    んー・・・端的にで言うと中古車の市場が冷え込みました。

    消費全体が落ち込んだのかな、という印象です。そのため厳しい状況の同業者もあったようです。

    特定の車種というより、全体的に落ちていった感じですね。特に大きいクルマはきつかったですね。

    例年なら4月以降に大型のクルマが売れだすのですが、今年は動きが鈍かった印象です。アルファード/ヴェルファイアは動きも渋く、ファミリー層のご家庭が消費をかなり抑えたのではないか?というのが2025年4月から6月の特徴だと感じています。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    軽自動車市場の状況はいかがですか?活況なようですが。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    軽自動車は動きが戻ってきましたね。大型のクルマの不調に反比例するように、軽自動車の市況は回復しています。

    新車の販売に比例して、中古車の動きも良くなってきています。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    前回のお話では、スライドドアではない4ドアタイプの需要が多くなってきたとおっしゃっていましたが、変化はありましたか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    以前ほどの需要はなくなってきました。4月に入ってからはスライドドア系に切り替わってきています

    大きなワゴン車から軽のハイトワゴンに需要が移っている可能性もありますし、4ドアタイプは通勤用にコンパクトカーか?軽自動車か?という比較で、維持費を考慮した選択が大きかったのではないでしょうかね。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    以前のお話では、コンパクトカーや2000cc以下のクルマが結構売れているという話でしたね。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    引き続きその傾向は続いています。今の国内市場はコンパクト一強と言っても過言ではありません。

    昔のようなステーションワゴンは新車であまり作られなくなったので、選択肢としてはミニバンかSUVか軽かコンパクトの4つになります。

    はじめから軽自動車を選択しない方は、家族や人を載せるならミニバン、趣味嗜好を優先される方ならSUV、それ以外の方は「コンパクトで十分」という選択をされている状況でしょうか、圧倒的に伸びています。ハイブリッドで燃費がいいのも魅力ですね。

輸出需要が低迷した高級ミニバンとSUV

  • リセバ総研所長 床尾一法

    SUVの市況はいかがですか。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    引き続き人気はあります、が、これまで程では・・・という感じでもあります。

    コロナ明けのアウトドアブームで一時期SUVがグンと伸びましたが、最近はちょっと需要が弱まりましたね。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ランドクルーザーあたりの状況はいかがですか。オートオークション担当者の報告を見ていると、あまり活況ではないのかな?と感じます。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    ランドクルーザー系は今、かなり相場が下がってきました。自分もかなり買って(仕入れて)います。

    特にランドクルーザー250は相当下がっています。本来であれば輸出でもっと高値になるはずなのですが、急に下落しました。

    ちょっと特殊な状況です。

トヨタ ランドクルーザー250の平均売却予想額推移
※グラフは月次で更新されます。
※閲覧時期によって見解と異なる場合があります。

  • 平均売却予想額
  • 査定件数
  • 平均走行距離

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  • リセバ総研所長 床尾一法

    下落した原因は何でしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    輸出先の関税制限が早々と期限切れになったためなんです。

    本来であれば夏ごろまで続いたはずの販路がなくなってしまい、一気に購入数が減ったので一時的に暴落している状況です。

    具体的には、マレーシアなどの国が関税の設定を変更し、日本からクルマを持って行きすぎだということで、高い税率で関税をかけるようになりました。香港向けも同様の状況です。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ランドクルーザー以外の車種も同様の影響を受けているのでしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    影響を受けているのは主に高級車です。

    トヨタ系の高級車志向の車種、例えばアルファードでも最上級のサンルーフ付きやモデリスタ仕様、ランドクルーザーのZX、レクサスのLX、NXあたりです。

トヨタ アルファードの平均売却予想額推移
※グラフは月次で更新されます。
※閲覧時期によって見解と異なる場合があります。

  • 平均売却予想額
  • 査定件数
  • 平均走行距離

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  • リセバ総研所長 床尾一法

    これらの車種もランドクルーザーと同様に相場が落ちてきているということですね。

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    相場は落ちていますね。でも、また上がると思います。今は一時的な下落です。

    経験則ですが、下がっている期間が長ければ長いほど、また需要がきて一気に「買い」が始まるタイミングが来ます

    そのタイミングがいつなのかはわかりませんが、いずれ価格は上がるであろうということで、相場が下がった今のうちに仕入れておこうという動きもあります。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    マレーシアや香港以外の国が買い付けるという可能性もあるのでしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    ランドクルーザーに関しては、基本的に東南アジアの国がハブとなって経由していて、そこから他国に行っているようですが・・・。

    本当の仕向け地(輸出先)というのは、我々もわかりません。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ところで、去年の今頃に話題となったロシアの中古車市場はいかがででしょう?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    ロシアは相変わらず元気ですね。

    SUVですね、エクストレイルとか。2リッターまでの車種が人気です。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    ロシアと言えば、ステップワゴンのガソリン車は?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    あ、そうですね、ステップワゴンも相変わらず人気です。

    止まらない状況が続いています。

相変わらずの輸出需要と競合する中古車仕入れの難しさ

  • リセバ総研所長 床尾一法

    あと、私もよく聞かれるのですが、トランプ関税の影響は感じますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    今のところ、トランプ関税はあまり問題ないですが、アメリカと中東との関係や状況が変化して緊張感が高まると、場合によっては中古車市場に強く影響すると思っています。大きなダメージが来るかもしれません。

    クルマを運ぶ船の運賃上昇も起きているので、例えば輸出向けの中古車流通が止まるとか、さまざまな可能性を考えないといけません。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    相変わらず中古車輸出に振り回される日本の中古車市場ですが、最近のオートオークションの状況を見て、仕入れ担当者として何か感じることはありますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    やはり今は「良いクルマは海外に行ってしまう」というのが実感です。

    日本国内の仕入れ担当者としては、辛いところです。もちろん、高品質の中古車を店頭にお届けするために、仕入れ担当者も奮闘しています。

    以前からお話している「200万円前後の中古車の空洞化」は、ここ数年ずっと続いています。ノア、ヴォクシー、ステップワゴン、アクア、プリウス、スズキのジムニーも含めて、中古車として魅力的なレンジの人気車種は、ほぼ輸出業者が持っていっている状況です。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    そうした中で、仕入れ担当者としてどのような工夫をしていますか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    良質な中古車をお届けするために、なるべく買いやすさと品質のバランスが取れるよう、仕入れの条件を調整しています。

    あとは、登録済み未使用車(登録はしているが走行が少なく実際には使用されていない中古車)の仕入れは太刀打ちできない状況ので、そこでの仕入れの競合は諦めています。

    以前に登録済み未使用車が流行りましたが、新車に近い状態のアルファードなどは今は仕入れるのが難しく、1年落ちで5000キロ以内、3000キロ以内というような中古車も、なかなか仕入れられません。中古車の品質が新車に近ければ近いほど、お買いになるお客様にとっては良いことなのですが、その分、中古車の価格が新車より高くなってしまう状況もあります。

  • リセバ総研所長 床尾一法

    登録済み未使用車や、それに近い高品質の中古車の仕入れは太刀打ちできないとおっしゃったのは、輸出に行ってしまうからという意味でしょうか?

  • 【中古車相場のプロ】〝OKB〟

    そうですね。中古車として価格が見合わなくなってしまいます。

    ただ、今は最初にお話したような需要の停滞もあって、他社さんも含めそれほど競争は激しくありません。

    我々も、中古車として値頃感のある価格と品質を保ってお届けできるよう、仕入れに努めてます。

次回、第9回に続きます。